第146話-7 砂漠へ―…
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
そう、三人は過去に一度会っている。
レオランダ王を迎えにこの村にアルタフが来た時に―…。
「あの時は、まだ、儂も「長」という地位にはなかった。それに、最前線で戦う一人の戦士に過ぎん。でも、あの頃より体は老いてしまっており、このように皆からの尊敬があるために、「長」という地位に祭り上げられているだけに過ぎん。「長」なんて嫌だとは言えんのがな。それに、聡明でポカをやらかすアルタフよ。」
と、ランドロは言う。
ランドロからしたら、アルタフのことは聡明な人であるという認識はあるが、どこか不器用な感じのある人であり、それと同時に、ポカをやらかすことを知っているので、そのことを思い出して、揶揄い半分で言うのだった。
ランドロからしたら、親しい者へと悪戯好きな挨拶にしか過ぎない。
そういう面では、ランドロの性格の悪さというものが出ているが、性格がすべての面で悪いというわけではないし、戦いの中では仲間思いな面も見られる素晴らしい人物であったりする。
どこか、だと思っている人もいるであろうが、それはこれから分かることである。
ランドロは、カルフィーアの「長」の地位にはそこまで興味もなく、なりたいとも思っていない。
ゆえに、誰か代わりの人が出てくれることを心の奥底から待ち望んでいる。
「これでも、サンバリアでは完璧超人を演じてきたつもりだが―…。まあ、ここはサンバリアからの監視もないだろうから、安心して、聡明でポカな素の自分を出すとしましょうか。」
と、アルタフは言う。
アルタフからすれば、完璧超人を演じることは癖になっているが、それはそうしないとサンバリアの中で足元をすくわれるのは分かっているので、必要に迫られて、やっているだけに過ぎない。
それをする必要がないと思えば、聡明ではあるが、ポカをやらかす人間になることは簡単にできる。
欠点のない人間はいない。
正しくは、欠点と他者や自分が主観的に認識しているだけに過ぎず、それが重要な長所であり、良いものになることは状況によって、十分にあり得ることなのである。
そして、アルタフからしたら、この程度の意地の悪い言い方なんぞ、サンバリアの政界に巣くう魑魅魍魎共に比べれば、可愛いものであるし、心地よく聞こえさえする。
なので、こんな言葉に上手く返事を返すのは簡単なことでしかない。
自分の素というものを平然と言えるぐらいに―…。
「魑魅魍魎共の中で上手く誤魔化しているだけのことはあるの~う。儂だったら簡単に、言質を取られて追放処分だな。失脚は確定―……、そんな感じでなぁ~。まあ、そういう馬鹿な挨拶はここまでにして、無事だと聞いて良かった。スメラも元気そうで何よりだ。」
と、ランドロは言う。
アルタフのパートナーの名はスメラと言い、彼女も天成獣の宿っている武器を扱うことができるので、かなりの実力者であることは間違いないがすでに年齢もあり、表立って戦うということはしなくなっている。自分自身を守るための戦闘は今でも十分に発揮させることができるが―…。
スメラに向かってこのように言うのは、必要以上に会話をかわす必要がないということと、ここで、馬鹿にするようなことを言えば、確実に、自分の方がやられるという本能が告げている以上、無難な言葉を選ばざるをえないということになる。
そういう空気の読み方は、長年の経験からできたりするし、空気を読んでしまったからこそ、「長」という地位に就いてしまったということもある。
実力がなければ、支配することも難しい。カルフィーアとはそういう場所である。
ただ、強ければ良いということではなく、人格面というのも重要な要素となり得る。
腕っぷしだけでは組織のトップになることができないのと同様に―…。
そして、ランドロの言葉をほとんど聞き流しながらも、しっかりと答える。
「ええ、元気にはしてるわ。旦那のポンのせいで、うかうかと呆けてすらいられないから―…。刺激的な日々を過ごしているわ。」
と、スメラは言う。
スメラからしたら、旦那への嫌味を言いながらも、アルタフが聡明であることに関しては認めていたりする。
その理由は、サンバリアというかなり発展した場所で教育を受けたこと以上に、柔軟な考えをすることができるということと、物事の見通しに関してはしっかりとしているからであろう。
そういう意味では、サンバリアの宰相の地位まで昇り詰めたこと自体、天職へと出世したことは幸運というほかない。そういうのを旦那に持つことができたので、スメラ自身の運は良かったのだと思っている。
それに、スメラ自身もお金持ちとか、地位が高い人だけというだけで、結婚相手を決めようとは思わない。そんな地位やお金ばかりで人を選んでいて楽をしようとすれば、結局、自分も相手も破滅させることにしかならないし、自分は自分でしっかりとほどほどに自立しながら、心から愛せる人を愛したいと思っているのだ。
そういう意味では、アルタフへの恋愛感情はしっかりとある。今も……である。
そして、スメラの方はこれ以上、自分の身の回りについて話すことはしない。子どもはいつまでも可愛いし、孫も可愛い。幸せに間違いないのだから―…。そこに苦労やらの他の感情があるのは否定しない。
ランドロはリガの方に視線を向けながら、ある人物へと視界を向ける。
「リガ、そこの変なことしか言わない者は誰だ。」
と、ランドロは惚けた感じで言う。
「ええ、エンゲルが馬鹿なことを言って、空気を乱してしまったので、「長」にその裁定をおこなっていただきたく―…。」
と、リガは淡々と言う。
リガからしたら、エンゲルは兎に角、自分から面白いことを言うことを二度としないで欲しいので、「長」であるランドロからしっかりと裁定を下されて、苦しんでいれば良いと、考えていたりする。
そのように考えるのは、カルフィーアにいる者達であれば、すぐに肯定の頷きができるものであることは確かだ。
それだけ、エンゲルが自身で面白いと思っている話は迷惑なものでしかないのだ。
ということで、エンゲルの裁定を委ねられてしまったランドロは、溜息を一つ吐くのだった。
(エンゲルめぇ~。儂はお前のようなしょうもない話のための裁定何ぞしたくはない。真面なことをしろ。でも、こいつが空気をビミョーにすることで、それを受けた側に良い空気も流れていることから、完全に止めさせることもできん。こういう判断が厄介なんじゃ。)
と、ランドロは心の中で悩む。
というか、ランドロは、エンゲルの周囲からどうしようもなくつまらない話をしていることに気づいているし、それがどういう効果を持ち合わせているのかをしっかりと理解している。
カルフィーアの村の者達が気づかないところまで、しっかりと気づいていたりする。
ゆえに、こういうのを裁定しなければならないのは、かなりきついことでしかない。
エンゲルという人間が、自分では気づいていないところで、自分を敵にすることで、周囲を上手く溶け込ませているのだ。
エンゲルとランドロ以外の人達がそのことに気づいていないことに対して、いい加減気づいても良い頃なのに―…。それが気づかれていないのだから、ランドロは苦労するのである。
どんな地位にあったとしても苦労する時は苦労する。そういうものである。
苦労しない人間はいないだろうし、主観的認識によってそれを判断している以上、第三者から見れば苦労をしているということに分類されることがあったとしても、本人からしたら苦労はしていないと判断されることだって十分にある。
認識には、人それぞれ、個性というものがある。個性とは違いである。そのような認識で間違うことはないとは言えないが、その間違いが何であるかは、まだ、ここで判断できるほどの思考にはいたっていない。なので、そのことに気づけるような素晴らしい考察をできる人がいるのであれば、その人は凄い人かもしれない。その面では―…。
ランドロは悩みながらも、何かしらの結論を出さないといけないことは、十分に分かっている。
(ふう~、言わないといけないかぁ~。)
相当に悩んでいるようだが、時間が待ってくれるということはない。あの曖昧な概念は、自由奔放なのかと思わせるようなものであるのだから―…。
「エンゲルよ。お主がつまらぬ話で人に迷惑をかけているのは事実だ。儂も知っている。」
と、ランドロは言う。
そのことに対して、リガはうんうんと頷くし、これ以上、エンゲルが馬鹿な話をして、気まずい雰囲気を作り出すのはもう二度と止めて欲しいと思っているし、そのようなことをしっかりと裁定を下してもらって、しっかりと反省させないといけない。
そうすることで、カルフィーアにはしっかりと平和が訪れるのだから―…。
これはカルフィーアに住んでいる人の全員が望んでいるのだから―…。
ランドロもそのように思っているに違いない。
そんな感じで―…。
リガの思っていることが、ランドロが本当の意味で思っているとは限らない。今、このことに気づいている人は少ない。
「だけど―…、それでも、俺はいろんな人を笑顔にしたいんだ。俺の話を聞いて良かったね、という感じで―…。」
と、エンゲルは言う。
エンゲルからしたら、ランドロに自分のやっていることが理解されていないことに対して、絶望まではしていないが、やっぱりガッカリとした感情にはなっている。
エンゲルは、自分のしていることを間違っているとは思えないのだ。
自分が面白い話をすることで、幸せな気持ちになる人が一人でも多く現れて欲しいのだ。その気持ちは誰にも負けないと、エンゲルは自負している。
だからこそ、エンゲルはどんなことを言われたとしても、誰かを笑顔にするためには自分の信念を通して、面白い話をするのだ。
それだけは、何が何でも譲れない。
ランドロは、エンゲルの気持ちを理解したのだが、自分の力はどういう風にあるのかを理解しているからこそ、残酷なアドバイスになるが、それを「長」である自分からするのはかなり危険なことでしかない。
ゆえに、ここは申し訳なく思いながらも、リガが連れてきたことから判断すると、アルタフの方もエンゲルのつまらない話を聞いたりしたであろうから、外の客人なら、しっかりと説得できるのではないか。さらに言えば、サンバリアで宰相にもなったことがある人物なら、と期待するのである。
そのランドロからの目線を感じたのか、アルタフは言うのだった。
スメラは、今回はあちゃ~、という感じはなかった。
知っているからだ。こういう場で、アルタフはしっかりとしたことが言えることを―…。
「外野からこういうことを言うのは申し訳ないのだが、私もエンゲル君の話を聞いたからこそ、何かしら言う権利はあると思うので言わせてもらっても良いかな、ランドロ殿。」
と、アルタフは言う。
アルタフも、ランドロは自分が何をエンゲルに向かって言って欲しいのかを察している。しっかりと―…。
決して、ここでポカやポンをやらかすような人ではない。
なぜなら、ここは政治と同じ場だと思っているし、人にとって重要な場なのだから、人生の岐路にもなるぐらいの―…。
「ええ、構いませんが―…。」
と、ランドロも心の中で安心しながら、アルタフに任せるのだった。
リガからしたら、何か変な展開になっているのではないかという感じにはなっているが、ここに口を出す勇気はない。
だけど、それでも、エンゲルにはキツイ裁定が下されることに間違いないと思っているし、それがカルフィーアの村の総意なのだから―…。勝手に思ってしまっている。
「では、言わせていただきます。エンゲル君。君の話は正直、面白いとは思えない。ラナトールに現れる話は面白い話ではないし、これはアイビックサソリによる愛する人たちを失われたことによる復讐でしかない。ならば、その時の自分の泣いた姿を笑いにするのではなく、その復讐から感じた自分の感情をしっかりと伝えるためのことを言うべきだし、さらに、面白い話をするのなら、自分の経験をしっかりと話すべきであろう。」
と、アルタフは言う。
まるで、エンゲルに対して、厳しい一言であるが、何も間違っているわけではない。
エンゲルのことは、どうしても失礼な感じのある言い方だったので、そういうのをしっかりと矯正させるためには、しっかりと気づかせるのが一番良いのだが、気づけない場合は、誰かがしっかりと指摘しないといけない。
それと同時に―…、アルタフも気づいていた。
「サンバリアの宰相まで昇り詰めた人も―…。」
と、エンゲルが言いかけるがそれを遮るように―…。
「だけど、君には自分が敢えて敵になって、雰囲気が悪い双方の側を歩み寄らせる才能がある。君自身は感謝されたいのかもしれない。それは君自身のためでしかないし、誰かのためにはならない。大事なのは、誰かを笑顔にさせたい、誰かと誰かを仲直りさせたい、そのために、自分が彼らに対しての心象を悪くしても良いという気持ちになれることじゃないのか。」
と、アルタフは言う。
エンゲルの話の後、雰囲気から何となくどうなるかが分かる。
アルタフは、ランドロが言いたかったことはこういうことであろうし、アルタフもエンゲルは自分を敵だと周囲に認識させることで、仲の悪い人々、気まずい雰囲気の人々や勢力同士を共通の目標に向かわせることができるだけの才能がある、ということを―…。
アルタフもポカばかりの駄目な人間ではなく、観察力やしっかりと経験、どういう言葉が重要かを理解できるだけの能力を持ち合わせている。
ゆえに、次の言葉で―…。
「だって、私は君のさっきの話を聞いて、そのように思えた。サンバリアの宰相としての地位まで出世したからではなく、一介、アルタフという人間として、そう思えた。だからこそ、君自身は辛い道のりだが、「長」であるランドロ殿や、私などのように本当に、君の気持ちを理解してくれる人はいる。だからこそ、周囲の反応を見ながらも、自分の信念を曲げず、同時に、他者からの意見を聞き入れ、反省しながら、成長していって欲しい。外の私から言えることはこれだけでしかないが、自分が褒められたいためにやるようなことだけはせずに、誰かのために、そのために、という気持ちを一番にして頑張って欲しい。エンゲル君、期待しているよ。」
と、アルタフは言う。
長い言葉であっただろう。
そして、誰かのためにであり、自分が褒められたい、賞賛されたいという気持ちではないことを誰かを笑顔にするためにしないといけないことである。
そう、教え諭しているのだ。
その言葉にエンゲルは納得できないわけではないが、それでも、自分が今まで、自分が賞賛されたいがためにしていたこととは違うものを感じ、自分が少しだけ恥ずかしくなり―…。
「分かりました。」
と、エンゲルは返事するのであった。
第146話-8 砂漠へ―… に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆をしていくと思います。
恥ずかしい失敗―後書きのものを前書きに書いてしまいそれを投稿するという失態―をしたことに気づき、気持ちとしては少しだけ落ち込み気味です。反省、反省。
そして、ミスをしないように気をつけないといけないと改めて自覚することができました。その点はプラスなのか?
そして、『水晶』は、この話が終わると、砂漠越えのための行動に―…。
ということで、『水晶』を今後ともよろしくお願いいたします。
では―…。