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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
692/747

第146話-4 砂漠へ―…

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 場所は変わって砂漠の中。

 そこから近くには、集落のようなものがある。

 オアシスもあるようだ。

 いや、正確に言えば、オアシスのある場所に集落の拠点を作っているようだ。

 そして、その場所が見えると、ある一行は―…。

 「到着したわ。」

と、リガが言う。

 彼女が先頭を歩いていたので、自らの視界の中に入り、皆に伝える。

 そう、リガらが属す、「人に創られし人」の一族が住んでいる場所なのである。

 この場所へとやってくるためには、砂漠を越えないといけないし、さらには、その砂漠越えすら簡単なものではないし、方向感覚をしっかりと持っておかないと辿り着くのは偶然の要素がなければ不可能なものでしかない。

 そういう意味で、このオアシスはサンバリアから攻められる可能性はかなり低いのであり、迂闊に手を出すようなことはできない。

 天然の要塞という性質に付け加えて、「人に創られし人」の一族の多くの者は、天成獣の宿っている武器を扱うことに長けており、その実力は折り紙付きであるということ。

 つまり、少数の兵力であったとしても、大軍と渡り合えるだけの戦力を有しており、軽い気持ちで戦いを開始するようなことがあれば、返って、仕掛けた側が悲惨な目に遭うということになってもおかしくはないのだから―…。

 そういうことをしっかりと理解しているからこそ、彼らと敵対関係になることを避ける。

 そうやって、相手の実力を冷静に計りながら、上手く行動しなくては生き残ることなんてできやしない。理想ばかりを口にしているだけでは、現実を生き残るのはかなり難しいことであるし、穿った目で相手や敵を見ないようにしないといけない。間違いは誰にでもあることだし、完璧なものの見方であるという自惚れはしない方が良い。

 自分が本当に正しいのだろうか、という疑問を抱く程度が良い。そうすれば、変な行動には出ないであろうから―…。

 さて、話を戻して、「人に創られし人」の一族が住んでいるとされるオアシスが見える場所に到着した知らせを聞いた者達は―…。

 (やっと、到着か。まあ、数日の移動であったけど、この暑さは堪えるな。)

と、エンゲルが心の中で思うのだった。

 エンゲルとしても、砂漠の暑さには慣れているのだが、それでも、サンバリアからここまでやってくるのにはかなりの体力を使うし、大勢の移動であったことから、いろんな人の気持ちを萎えさせないようにするために、普段以上に(はしゃ)ぐようなことをしたので、余計に疲れているのだ。

 エンゲルのこのような努力と言ってもおかしくないものは、結局、誰にも理解されず、という結果にしかならなかったが―…。

 エンゲル本人としてはそのようなことを気にしないわけではないが、仕事である以上、なるべく感情には出さないようにはしていた。まあ、コミカルなシーンになるぐらいのことはしていたが―…。

 「もう三十年以上前のことか。前に来た時とは何も変わっていないな。サンバリアとは違って―…。」

と、アルタフは言う。

 アルタフからしたら、この砂漠のオアシスの地がここ二、三十年で簡単に変わるとは思えなかったし、変わっているのであれば、驚きもしたであろうが―…。

 「悪かったわね、変わってなくて―…。」

と、リガは不満を口にする。

 リガからしてみたら、この「人に創られし人」の一族が住んでいる場所は、二、三十年も経てば、少しだけでも変化はするだろう。建物や景観の変化は少ないであろうが、人の変化は大きなものであったりするのだ。

 年を取るということもあろうし、新たな命が生まれ、老いた命がこの世界から離れたり―…、と。

 そうであるからこそ、変化しないものはない。

 いや、変化をするまでの期間やその変化量というものもいろんな意味でまちまちなのである。

 そう考えると、我々は変化とは何かを完全には知っていないが、同様に知らないというわけでもないし、その変化を見つけられないというわけでもないし、その全てがどう変化しているのかを理解できるわけでもない。

 リガが不満を口にしたことに対して、アルタフは申し訳なさそうにしながら答える。

 「済まないな。だけど、変わっていないことが良い場合もあるもんだ。サンバリアは過去の理想的な時代と奴らが思っている時代に戻ろうとしている。それに比べたら、この場所の風景の変化がない方がよっぽど良い。変化しないといけない時に変化できない者や社会、国家は、時代についていけなくなり、崩壊していくだけだ。人はそれを変容として、悪いように解釈するが、私から見れば、それは主観的なものでしかなく、良い変化もあれば、悪い変化もある。悪い変化ならば、変化しない方が良い。それに、良いものがその悪い面を改良しながらより良くなるのは、変化と言えるかどうかは分からんが、良いもの…良い部分をしっかりと受け継いでいくのは、人々の繁栄にとっては重要なことだ。この場所が、良い意味での変化がないことには、期待したい。今のサンバリアよりは期待できる。」

と。

 言っていることの意味が曖昧で分かりにくいと感じる人もいるだろうが、要は、全ての面において変化をしないということはないし、変化する部分というのは期間がそれぞれまちまちであるし、その時の変化量もそれぞれ異なるということである。

 また、変化していく中で人は主観性を完全に排除することなく、良い変化と悪い変化というのを判断するし、アルタフの言っていることの中盤辺りのことを説明すると、変化することが人々が生き残る上で必要なことであることは当然のことであり、社会や国、それに付け加え、組織においても、同様のことが言える。

 そして、その変化を変容という感じで、あまり良くないことだと判断し、過去の時代が良いという理想化する者達がいる。

 ここからアルタフの意図をさらに詳しく見ていくと、今のサンバリアという国は、王政最後の王より前の時代の建国時代からの征服戦争をあまりにも美化しており、そのことによって生じている自国での被害や、征服戦争に巻き込まれ、征服された土地、国において、そこに住んでいるもしくは住んでいた人々に対して、どんな悲惨なことが起こっているのかということに目を向けないように、向けさせないようにしているのだ。

 そこに目を向けないのは、彼らの目的にとって、些細なものであると同時に、自分達の行動は正しく、サンバリア以外を見下すような態度という名の根付いたものを自身らの考えの正当化のためのものであり、そこには悲惨な目に遭っている者への蔑みによってであろう。

 いや、それだけでなく、サンバリアに住んでいる人々に気づかれることを恐れているからであろう。自分達の不都合を知られるということを、自分達が人々から敵対され、危険な状態になることを恐れて―…。

 悲惨な目に遭っていたり、些細なことでサンバリア以外を見下す態度に至っている者達は、そういう態度が自らにおける視野狭窄を招くものであり、そこに気づかないのはかなりの重症であることを示していると言える。

 そのことに気づける人間であれば、成長という可能性もあろうが、閉じこもったような、自分の考えは正しく変化する必要はなく、決めつけに走ることばかりしている者達にとって、気づかせるのはかなり大変なことであり、最悪の結果にならないと分からないことだって十分にある。いや、そんな人物が生きている間には、気づかないということは十分にあり得るのかもしれない。

 それを幸せの生涯ということに対して、疑問に感じるかもしれないが、このことに対する判断という名の答えは主観性のかなり強いものでしかないことだけは確かであろう。

 そして、サンバリアの軍事力などの暴力的、物理的な力の強さを象徴する見た目で分かることだけに自身を依存させ、そのことによって発生する不都合なことに対して目を向けずに、無視するようなことになってしまえば、その国家の未来は暗いものでしかない。

 軍事による領土の拡大、征服戦争というものにおいては、結局、どこかで限界を迎え、今度は自分達にそのことによる加害から被害への状態と移り、自分以外の周りが大きな被害を受けることになり、その周りへの被害が甚大なものになるのだ。

 当の本人は、自分の思い通りになって気持ち的に良いかもしれないが、巻き込まれる側にとっては不幸でしかないし、巻き込む側に権力という暴力装置が加わっているのなら、余計に止めるのが難しくなってしまうのだ。

 要は、暴走を放置せざるを得ないという不幸が発生するのである。

 そのようなことにならないために、良い部分を見極めて、そこは変化させないようにしないといけない。付け加えないといけないのは、良い部分の見極めを、人という存在が簡単にできるかと言えば、難しいことでしかないし、間違うことは往々にしてあるからこそ、自分を疑いながら、多角的に見るようにすることを忘れてはならない。それを実践しないといけない。

 一方で、悪い面については、変化させないといけない。良い方向に向かって―…。良い部分の見極めと同様なことがあるので、自分の考えを疑うようなことはしっかりとしないといけない。

 最後に、アルタフはサンバリアの変化と「人に創造されし人」の一族のいる場所の風景の変化のなさを比べながら、後者の方が良いと判断している。

 これは、サンバリアの今の変化が以上で述べたように、アルタフから見れば良くない方向に向かっているものとしか感じられないし、決して、サンバリアにとって良い結果を生み出すとは思えないし、最悪の結果になってもおかしくはないのだ。

 二百年前にも巨大な領土を誇った軍事国家が簡単に、滅んでしまったのだから―…。ただし、ここでの簡単というのは、期間が短いという言い換えでしかなく、実際に体験した人達にとっては、その真逆のものでしかなかったのであるが、詳細はいずれ分かるかもしれない。

 そして、アルタフは、「人に創られし人」の一族の多くがいる場所の今、見ている景色の方が良いままでいく可能性の方が高いと思うのだ。

 まあ、何かしらの方針の変更で変わるということは十分にあり得ようが、そういうことがなければ、大丈夫だろうという意味でも、アルタフからしたら、期待はできるものである。

 そのアルタフの言葉の意味を深く考察するかのように長く述べることになったのは、再度言うが、アルタフが議員としての答弁の癖によるものである。

 「分かりにくいような分かりやすいような言い方ね。ここは議場じゃないのだから、簡単に言ってくれると助かるわ。」

と、リガは言う。

 リガからしてみたら、アルタフの言おうとしていることは分かるし、「人に創られし人」の一族のいる場所のことを馬鹿にしているよりも、褒めていることは分かる。

 ゆえに、分かりやすく言ってもらわないと、本当に褒められているのか分かりなかったりするのだ。

 人に対して話す時は、相手にとって分かりやすいように伝えることが大切であり、議場のような政敵達を貶めることに特化した感じの言葉回しは止めて欲しい。

 ここは、議場ですらないし、政敵もいないだろうに―…。

 「済まんな。癖というものは簡単には抜けない。気を抜けない日々を過ごしていると、それがいつの間にか当たり前のこととなり、年をとればとるほど、それを改めるのに時間というものがかかるようになるのだ。経験から来るのか、動きの鈍さによるのか、科学技術が研究者たちの理解よりも遥かに劣る私からしてみれば、分からないものであるが―…。」

と、アルタフは、申し訳なさは少しだけなくした感じで言う。

 年をとることがすべてにおいて悪いことかと問われれば、そうではない、と言えるし、成長する面もあれば、衰える面もある。それもまた、変化と言って差し支えないものである。

 衰えることを恐れる気持ちは当たり前のものであるが、そこばかりに集中しすぎて悲観するのは勝手だが、自分が成長してきている面にもしっかりと目を向け、双方を上手く折り合いをつけながら、やっていくしかない。

 人は完璧にも完全にもなれない生き物なのだから―…。

 「私も科学技術とらの意味もサンバリアに来なかったら分からなかったわ。それに、皆も疲れているでしょうから、村の中に入りましょう。」

と、リガは言う。

 そして、サンバリアが逃れてきた者達と、その護衛についている「人に創られし人」の一族らが「人に創られし人」の一族がいる村の中へと入っていくのであった。

 疲れというものがあったので、そのリガの今の言葉の最後の方を聞いて、気分が上がったのか、少しだけ歩くペースが速まるのであった。そう、早く休みたいという心の奥底から湧き上がる、意識的に出てくる気持ちに体が正直になりながら、という心と体が一致しているので、すぐに行動することができた。

 それに付け加えて、安堵というものもあったからであろう。


第146話-5 砂漠へ―… に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆していきたいと思います。


では―…。

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