第146話-3 砂漠へ―…
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
ミランは李章の言葉に呆れるしかない。
それと同時に、腹が立つ。
今の状態を見れば分かるだろ。
今のミランを見れば―…。
「あの~、李章君。君は私の今の状態を見て、男性として言うべき言葉がまず第一にあるでしょう。私は瑠璃とクローナのせいで、いっぱい買わないといけない羽目になって、両手を塞ぐほどになってるの。つまり、どういうことか分かるでしょ。」
と、ミランは言う。
ミランからしてみれば、分かって当然のことである。
すぐに気づけぐらいのレベルで―…。
そんななか、李章は考えてしまうのだった。
どうしてそのようなことになるのか。
第三者から見ても、不思議に思うことであるかもしれないが、人という生き物は冷静になれば気づくことができるかもしれないことに対して、その場面に遭遇して判断するような状態になってしまえば、気づかないということは普通に起こったりするのだ。
それは、人は完璧という存在でもなければ、完全になれるような存在でもないので、このような李章のようなことが起こったとしてもおかしくはないのだ。
要は、空気を読めないという行動を―…。
李章には察して欲しかったのだ。
だけど、李章に察するのはかなり難しいことでしかないが、それと同時に、何で瑠璃はこいつのことを好きなったのか不明でしかない。
「ミランさんは私に手伝って欲しいということですか?」
と、李章は言う。
その表情はおちゃらけたというものとは真反対にあるものであり、真顔で、本当に言葉以上の意味はなく言っているのだ。
李章の今の言葉を聞いて、礼奈は呆れながらも手助けする気持ちにはなれない。
この場で、李章を手助けしたとしても、李章が他人の気持ちをこの場合において、経験として次に良き行動に繋がるかと考えると、そうではないと思っているからだ。
気を遣うということが李章はできないわけではないが、鈍い時があるので、それを修正する方向に向けないといけない。そういうことに気づく場であることに間違いない。
そして、ミランの方は―…。
「見ればわかるでしょ!!!」
と、李章に対する怒りの感情をぶつけるのだった。
ミランからしてみれば、自分は瑠璃とクローナの買い物の荷物持ちをさせられてしまっているので、李章も手伝いなさいということを状況から伝えているのに、それに気づかない李章に対して、こいつは駄目だという評価を下さざるをえない。
どうして、瑠璃は李章のことを好きになったのだろうか。
それに加えて―…。
これ以上はよそう。
ミランは、ここで、意地を張って、自分が持っている荷物を持ちなさいということを言わないようにしている。
頑固なところがあるのだろう。
それでも、意地になるのは、李章は今の場の空気を自分自身の力で察して欲しいと感じたからだ。
そのような気持ちは無駄になることであるのは、決まり切ってしまったことだ。
男の子である李章は、女の子の気持ちを理解するのはかなり苦労しそうであるが―…。
李章本人はそのことに気づいていないという感じであるが―…。
一方―…。
「これで、砂漠越えの間の食糧はばっちり。」
と、クローナは言う。
クローナからしてみたら、砂漠というものがどういうものであるか、リースにいる時に説明を受けてはいるのだが、それでも、実物の砂漠を見たことがないので、どれぐらいの期間がかかるかは予想できない。
それが確実とはいえなくても、ある程度予想ができそうなのがミランしかいない以上、いろいろと準備しておく必要があるのだ。
それに加え、ラナトールの名物を探そうと必死にもなっていた。
クローナは食べることが好きか嫌いかと問われると、好きである方によるだろうし、旅をしているので、旅行の気分を味わうために、自分が食べたことのない食べ物を食べようとしているのだ。
もう二度と来れないかもしれないと思いながら―…。
そういう意味では好奇心旺盛であることが分かる。
クローナと一緒で、瑠璃の方もリースでは観光している暇がランシュの仕掛けたゲームとその後のせいで、ほぼなかったので、自分達のことを知らないであろうラナトールでは思う存分したいと思ったのか、クローナと一緒にいろんなものを買ったり、食べたりしているのだ。
それでも、現実世界における石化のことを一切、忘れていないわけではないし、一日でも早く、その解除が大事ではあるが、それはベルグという人の居場所が分からないと、意味はないし、それに、自身がサンバリアの刺客から襲われている以上、自分は襲われたことに関して気にしなくても、周りはサンバリアにはしっかりとした態度を示しておかないといけなので、自分の気持ちは少しだけ封印しながら、サンバリアへと向かっているのだ。
瑠璃の気持ちとしては、別の意味でサンバリアがどういう場所なのか、なぜ、自分は襲われないといけないのかで、気にはなっているが、そこに復讐という気持ちはない。
何かしらの理由があるのか聞き出したいという気持ちと同時に、ベルグの居場所が分かるのではないかという薄い希望を抱きながら―…。
「だね。」
と、瑠璃は同意する。
いくら買ったとしても、重すぎれば移動の速度が遅れることを理解し、ここまでにしたのだ。
おかげで、砂漠越えへの十分な食料が揃ったのだ。
そして、荷物は近くにいたミランに持たせ、自分達は堪能するのだった。
「赤の水晶」の別空間の中に収納するのは簡単であるが、それを周囲の人に見せるわけにはいかない。これは「赤の水晶」の能力であるが、この異世界における一般の人々が見れば、瑠璃が能力者であると勘違いされるからだ。
これは、瑠璃の血の繋がった両親であるイルーナから聞かされたことである。
この異世界では、能力者が自ら能力を有するということは隠さないといけない。その能力は、誰かの一部のものの利益のために、悪用されることの方が多いからだし、危険な能力であれば、始末されることだって十分にある。
ゆえに、能力者にとっては生きにくい世の中であるし、同時に、この異世界において、能力者がどういう存在であるかを彼らの行動や考えから、掟みたいな慣習で理解することができる。
人という生き物は自らが優位になるために、力だけでなくある意味での強い者を利用したりすることは往々にしてあるし、力が強いだけでは、人におけるトップに上り詰めることはできない。そして、他者との交渉力と同時に、自分を良く見せ、人のことを上手く説明することができる言葉達者な人間が上に就くこともあるだろうし、それが裏でトップとなり、傀儡を表のトップにすることだってある。
簡単にトップがいるからと言って、実権がどうなっているのかを探らないと、大きなミスというか勘違いをすることになる。
気をつけないといけない。
人の世界は、生きるのが難しいのである。こういう意味で―…。
さて、瑠璃とクローナは、今の瑠璃の返事とともに、李章や礼奈のいる場所へと戻ると―…。
少しだけ思考を停止してしまうのだった。
そう―…。
「李章…君……。」
「おお~、凄ぉ~い。」
瑠璃は、驚きながらも李章の状態を理解したのか、察したのか、少しだけ申し訳なさそうになる。
一方で、クローナの方は、李章が両手でいくつもの荷物を持っているのを見て―…、凄いと褒めながら、それと同時に―…。
パチパチパチ。
と、両手で拍手をするのだった。
そのようにしている理由は、李章が両手で持てない量の荷物を持っていることに対する感動した態度だ。
クローナ自身では、李章のような方法で両手に荷物ことができないからだ。
そういう意味で、少しだけ悪い事をしたなという気持ちになりながら、ミランの方も少しは荷物を持っているような感じになっている。
それと同時に、李章は瑠璃とクローナのいる方向へと、自分の背よりも高いわけではないが、持ったことによって、自分の背よりも上の頂点がある荷物から自身の顔を出し、見せる。
どうして、このような状態になっているのかを言うために―…。
「今、ミランさんのお手伝いをしています。」
と、李章は言う。
今、ここで会話が嚙み合っていないと判断した者がいるのなら、そのことに対して、反対することはできない。
なぜなら、李章はミランによって強制的に、荷物持ちをさせられているのだ。瑠璃とクローナが買った分の商品が入っている袋を―…。
そして、酷い目に遭わされたことに気づいているミランは、その主犯である二人に対して―…。
「ほお、私に散々、荷物持ちをさせておいて、自分達は荷物を持たない。そんなことが許されるのかしら。」
と、ミランはかなりの怒り口調になっていた。
それもこれも、瑠璃とクローナが人に荷物を持たせ、他の店に行くからだ。
そうである以上、ミランの怒りというものが正当性を持ち合わせているのは当然のこととなる。
ゆえに、ミランからしてみれば、この二人に対して、言うべきこと、やらせるべきことは決まっている。
「分かっているよねぇ~、あんたたち。」
と、ミランは続ける。
すでに、礼奈も一部の荷物を持っており、瑠璃とクローナを庇うような気持ちにはとてもなれなかった。
というか、買いすぎだろと思ってしまうのだった。
そういう礼奈の呆れ顔というものを見せながらも、それに気づかない瑠璃たち一行。
そして、瑠璃とクローナの返事は決まっている。
「「はい、手伝わせていただきます!!!」」
ということで、瑠璃とクローナの荷物持ちが決定するのだった。
ミランの荷物の一部を瑠璃とクローナが持つことになる。
自分達が原因なので、申し訳なく思うことと、これ以上、ミランを怒らせることは得策ではないということを、本能で理解してしまったからだ。
そして、瑠璃とクローナの二人が荷物を持つと―…。
「よし、これで、砂漠越えの食糧には十分すぎるくらいに余裕があるわ。イスドラーク行きの護衛依頼は斡旋ギルドにはなかったから、明日、自分達で砂漠越えをするわ。」
と、ミランが言う。
そこまで、長くラナトールで護衛依頼があるのを待っているわけにはいかない。
そういうことで、明日にはさっそく、出発することになった。
それに反対を言わせる有無はない。
ということで、瑠璃たちは自分達が泊っているホテルへと向かって行くのだった。
一方、ラナトール。
瑠璃たちの近く。
気配を消しながら、今の言葉を聞いていた人物が一人。
(あいつら―…、サンバリアへと向かっているようだな。ここでゆっくりしてくれれば、ラナトールの裏の奴らを使って、始末しようとしたが―…。まあ、伝手はなかったし、意味はないな。それに、ラナトールからは不穏な動きの匂いを感じる。さっさとここから砂漠の方へと離れてくれるのなら有難い。砂漠なら奴らがいる―…。)
と、心の中でこの人物は思う。
自らの功績、それだけでなく、自らの姉のために成果を挙げようとする。
たとえ、天成獣の宿っている武器を扱うことができたとしても弱いと言われている人物であったとしても―…。
第146話-4 砂漠へ―… に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正および加筆していきたいと思います。
では―…。