第146話-1 砂漠へ―…
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
【第146話 砂漠へ―…】
数日後。
瑠璃たちは、ラナトールのとある場所にいた。
ラナトールの中心部であり、いろんな仕事を斡旋しているギルドのある場所。
ここには、いろんな仕事の依頼が張られており、砂漠越えをしていく中では、隊商の護衛の依頼を受けるのが一番良かったりするものだ。
ただ、ここに全員が依頼をするかと言えば、そうではないとしておこう。
その理由は、斡旋業者に依頼すると、依頼料というものがとられることもあるが、その額が明らかに法外なものであったりする場合があるのだ。
ラナトールの斡旋ギルドにおいては、むしろ、法内においてもとんでもない依頼料をとられたりする場合があったりする。
瑠璃たちは気づいていないが、この斡旋ギルドの依頼料は、ラナトールの支配者層にとっては大きな収入源であり、港湾事業と同じ規模で重要であったりするのだ。
ゆえに、依頼料収入を大切にし、自分達の私腹を肥やすために使う。
決して、斡旋ギルドを強化するようなことはほとんどしない。
だからこそ、斡旋ギルドに依頼する者は貧しい中小規模の隊商においては、おこなわれないということもあったりするのだ。それが多くて、砂漠を超えて届く生活必需品の輸入が少し前よりも少なくなっている状態で、危険を冒さないといけない状況になっている。
それも起因してか、大手の隊商は賄賂によって依頼料を安くしたりとするようなこともあるが、依頼料はここ数年、どんどん料金が改定され、値上げされている。
それはより、中小規模の隊商が斡旋ギルドを使わないという結果になっているのだ。
負のスパイラルに陥っているが、ラナトールの支配層は気づいていない。
自らが儲かっているという成功体験を一度し、今度もその方法で可能だと思っているし、その体験というかそこから得られた利権を簡単に放棄するなんてことはできないし、美味しい思いをしたのだから、その方法で良いだろう。
その時に、彼らが見ている視界の中には、ラナトールに住んでいる人の顔など見えていない。いや、しっかりと見ようとは一切しない。そんなことよりも利益を欲しているのだ。
結局、視野狭窄に陥ってしまっており、その状態を暗に認めてしまっており、そこから抜け出す気力すらなくなってしまっているのだ。
要は、不幸な結末を望んでいないのに、訪れるというやり方をしているだけに過ぎず、彼らもまたどこかで崩壊していく運命にあることに、無知となり、無視してしまっているのだ。やってきた時にまさかと思ってしまう具合に―…。
さて、話を戻し、瑠璃たちはラナトールの斡旋ギルドの建物の目の前にいた。
「ここで、イスドラーク行きの隊商の護衛依頼を受けるのよねぇ~。」
と、瑠璃は言う。
瑠璃たちは、昨日、ミランからイスドラークへと向かう砂漠越えの方法を聞いたのだ。自分達だけで砂漠越えは危険なことでしかないというのは、ラナトールの外の砂漠が海の地平であるかのように広がっているのを見て、すぐに気づくことができた。
それに、砂漠は食料や飲料水などがないし、砂だらけなので、道に迷ってしまうことだって十分にある。
そのような場所に、砂漠越えをしたことがない人間が、馬鹿やって突っ込んでいくのは愚かなことでしかない。
なので、隊商の護衛の依頼を受けようと、ミランの勝手な方法で決まるが、全員、それに賛成するのだった。
ゆえに、斡旋ギルドへとやってきたというわけだ。
数日の買い物の間に、斡旋ギルドに関する情報をお店の人から聞いてきたのだ。
「ええ、あんな砂漠、私たちで越えるのは無理だから、まずは砂漠の中間地点にある都市イスドラークへと向かう。そこから、今度は食料や飲料を整えた後、サンバリアへの隊商の護衛を受けて向かうことにする。それが一番安全だし、その間に、自身を鍛えるということで十分だわ。ローが砂漠を越えさせるルートをわざわざ選んでいるのだから、何かあるに決まってるわ。」
と、ミランは言う。
ローと言っているが、普段はローさんと言っていたりする。
あくまでも、ローの目の前だけだが―…。
ローという人がどういう人間かはほとんど分からないが、ラナトール行の豪華客船に乗せられた時から、明らかに砂漠越えを瑠璃たちにさせる意図をずっと感じていたのだ。
サンバリアの刺客から襲撃されたことを考えると、リースでいくらランシュをランシュ側が仕掛けてきたゲームで倒せたとしても、あくまでも一対一の戦いでしかなく、刺客が強襲しているところから考えると、一対一での戦いの可能性は低くなるだろうし、現実の戦争での戦いはそんなものだ。
異世界において、自分一人に何人もの、いや、何十人、何百人の人が自身の命を狙ってくることがあり、戦わないといけない状況に陥ることがある以上、その経験をしっかりと積ませ、かつ、個々人の実力を上げる必要があるのだ。
サンバリアの刺客がサンバリアの中で下っ端の可能性を考えると―…。
それに、今回、砂漠越えをさせるのは、「人に創られし人」の一族に瑠璃を引き合わせようとしているのではないかと、ミランは推測しているのだ。
明らかに砂漠越えを想定しての行動だと思ったし、アウリア大陸の大砂漠には、「人に創られし人」の一族がいるのは分かっている。
彼らは略奪行為を働く場合もあるかもしれないが、それと同時に、隊商の護衛と都市での交易品の販売をおこなったりしているし、あそこには高いレベルでの医療技術が備わっていたりする。あまり聞きなれないが、それと同時に、「神の御業」なのではないかと称される医者がかつて存在しており、その子孫は多い。
その医療技術により、一般には治せないとされている病気も治したりするほどだ。
まあ、すべての病を治せるわけではないけど―…。
それでも、治せる病の数が多いのだから、そういう意味では、一般的なこの異世界における医者よりも優れているという面で、「神の御業」と言われてもおかしくはないのだろう。
そして、ミランは言葉を続ける。
「じゃあ、行くわよ。文句は昨日、聞いたから―…。」
と。
そして、瑠璃たちは、斡旋ギルドの中に入っていくのだった。
斡旋ギルドの建物内。
そこは、煉瓦造りの建物であり、壁面は白から灰白色の色だということがわかる。
さらに、そこにボードの互いを無理矢理、釘などを使って張っている感じであり、窓の類はあるが、ガラスというものはなく、斡旋ギルドのフロントホールの中を風が優しく抜けていくのだ。
熱さへの対策であろうことは十分に分かる。
ラナトールには、現実世界におけるエアコンや扇風機の類はないし、団扇もないのだから、こうなるのは避けられないであろう。
まだ、かなり熱いシーズンに突入していないので、過ごしやすいという具合だ。
そして、貼り付けられているボードからは、大手対外貿易商の隊商護衛依頼の紙がたくさん貼られていたりするし、それ以外にも人材派遣などの多様なものを斡旋したりしていた。
そのボードを見ることも簡単であろうが、ミランからしてみれば、大規模の商人および商会による護衛に関しては、信頼できる相手ではない限り、護衛依頼を受けない方が良い場合もある。
中小規模でも同様であるが―…。
ミランは、それを自分達だけで判断するのは危険だと感じ、受付の人に聞くことにしたのだ。
受付へと向かう。
「はい、何か御用でしょうか。」
と、受付担当の人はいつも通りのことを言う。
仕事である以上、職務に忠実にしているだけである。
このラナトールの斡旋ギルドにおける受付は何人もおり、現実世界における異世界ものにあるギルドの受付は美人ばかりというのは嘘でしかなく、美人もいれば、そうでないと第三者から判断される人はいるし、美醜によって仕事ができるかどうかを判断することができるものではないし、仕事のできの良し悪しは結局、その人の仕事ぶりというものになる。
そして、今回、ミランと話している受付の人は、美人よりではないが、愛嬌のある若い女性であり、対応はかなり丁寧な人であったりする。
機械的な言い方もするであろうが、そういうのは結局、一面的なものに過ぎないということだ。
ミランもまた、用を言うのだった。
「ええ、イスドラークへと向かう隊商の護衛の依頼があれば、受けたいのですが、ラナトールに来たのは初めてなので、どういうのがあるのか教えてもらえませんか?」
と。
ミランがラナトールに来たのは初めてではないが、それでも、ここでこのような嘘を言ったとしても要点では嘘ではないので、相手に分かりやすくするための嘘ということで、嘘を吐いている。
まあ、嘘が良いとはミランの方も思っているわけではないが―…。
嘘を吐くことが良いことだと思っている人がいるのなら、それは大間違いのことであり、相手に分かりやすく伝えるために、大まかな事実を変更しないようにしながら嘘を吐いているだけに過ぎない。
初めて来たと、一回来たことがあるということを変更したとしても、今のミランの言っている言葉に大筋が間違うことはない。
ゆえに、前提の変更や、自分達が何を求めているのかという面で意味が伝えやすくするためなのだ。
さて、話がこんがらがってしまうので、これ以上は言及すべきではないので、話を進めていく。
「そうですかぁ~。イスドラークですかぁ~。」
と、受付の人は申し訳なく考えるのだった。
(……………イスドラークは、今、不穏な動きがあると聞いていますから~。)
と、心の中で思いながら、
「では、イスドラーク行きへの隊商の護衛の依頼がないか探してみます。」
と、言いながら、ファイルを見始める。
依頼を受けた受諾した場合、ファイルの中に原本を入れ、それを手書きで書き写したものをボードの方に張り出すようにしている。
そして、ファイルを見ながら、さらに、他の受付の人のところへと向かい、イスドラーク行きの隊商の依頼がないかを探す。
五分後、結果が出る。
五分後。
「はい、調べさせていただきましたところ、イスドラーク行きの隊商の依頼はないようです。イスドラーク行き以外の依頼だと、いくつかあるのですが―…。あと、イスドラークの方は、最近、大手さんの方が言っていたのですが、政情不安な状態で、スラム側と領主側が争いになるのではないかとして、あまり派遣していないようです。イスドラーク行きの隊商の護衛依頼を待ちますか。」
と、受付の人は言う。
調べた結果と、大手商会からの情報があり、イスドラークの政情は不安なので、大手はそっちへの商隊の派遣を一時的に取りやめているという感じなのだ。
中小規模の場合は、そんな状態であったとしても、派遣するようなことはあるだろうが―…。
そうなってくると、大手がイスドラーク行きの隊商の護衛の依頼があるまで、待つのかと尋ねるしかなかった。
「いえ、こっちとしては、イスドラークからサンバリアへと向かいたいので―…。」
と、ミランは言う。
瑠璃たちが向かいたいのイスドラークではなく、サンバリアであるが、イスドラークの方が都市なので、食料や飲料が補充できると踏んでいるからだ。
そうだと考えると、イスドラークに向かわずにサンバリア方面へと向かった方が良いのかもしれないということが頭の中に過る感じであろうが―…。
(駄目ね、素人が王道コースを外すのは危険でしかないわ。)
と、ミランは心の中でそう判断し、
「じゃあ、別で探します。」
と、ミランは言うしかなかった。
そうなってくると、瑠璃たちは最悪の場合、自分達だけで砂漠越えをしないといけなくなるのだった。
「そうですか、お力になれず申し訳ございません。後、サンバリアでも向こうの協力関係にあるギルドから不穏な動きがあると言われているので、向かう際は気を付けてください。」
と、申し訳なさはあるが、それでも、少しでも受付に来てくれてきた人の利益になるように言うのだった。
「分かりました。」
と、ミランは言う。
その後、斡旋ギルドの外に瑠璃たちと一緒に出るのだった。
溜息を一つ吐きながら―…。
第146話-2 砂漠へ―… に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正および加筆していくと思います。
少しだけ休んだのですが、再開が近づくにつれて疲れが増したような感じがします。他のことをしすぎたせいだと思います。反省―…。
そして、ここからは、砂漠越えへと向けての準備という段階と、ご都合主義だろ、とツッコみたくなるような場面もでてきます。それが終わるといよいよ砂漠の中です。
今、砂漠の移動の段階を書き始めている状態です。
では―…。