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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
688/748

第145話-4 真実を知ることは残酷なことでしかない

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 再度、発生する煙。

 これは、侵入者アンバイドとアンバイドを撃退しようとしていた者との戦いで発生したもの。

 その一撃は周囲の木々に大きなダメージを与えるには十分なものであった。

 そして、その中に確実に生き残っているのが分かっているのは、アンバイドだけだ。

 アンバイドは警戒を解くことなく周囲へと視線を向ける。

 (こう煙ばかりだと、倒させたのか、そうでないのかを視界で確認することができねぇ~。)

と、心の中でイラつくのだった。

 アンバイドからしたら、こんな雑魚の敵を本気になって倒している暇などないのだ。

 目的は、ベルグへの復讐である以上、自らの力をしっかりと温存しておかないといけないことは、分かり切っていることだ。

 ベルグの実力はかなりのものであり、伝説の傭兵と周囲から呼ばれるアンバイドであったとしても、勝てる可能性はかなり低いものであるし、ベルグの側近は、ベルグには及ばないが、アンバイドに対抗できるぐらいの実力を有しているものがいてもおかしくはないのだから―…。

 現実、存在しているし、アンバイド以上の実力を有していてもおかしくないのは、幹部の中にいる。

 ゆえに、アンバイドはこんな相手にはあっさりと一撃で倒せることが求められるのだ。

 だけど、そうではない結果となっている以上、ベルグへの復讐は後に延期した方が良いのではないかと考える人はいるかもしれないが、そんなことをしていれば、ローたちによって先を越される可能性は十分にあるのだ。

 ローは、ベルグと直接戦うようなことはないかもしれないが、確実に、ローが気に入っていると思われる瑠璃はベルグとの直接の戦いとなることははっきりと分かっている。

 ローという存在は、「私」という存在に、自分が気に入った実力者になるものと戦わせているのだ。それをアンバイドは、聞いたことがあるので、知っているが、実際にその場面に出くわしたわけではない。

 だからこそ、確定させることは本来できないのであるが、直感という類が仕事の関係上、鋭くなっているので、確定させることができるのだ。

 アンバイドは、粉塵の中にいながらも、動くこともないが、警戒はしていると―…。

 次第に、粉塵が晴れ始めるのであった。

 (ようやく晴れるのか―……。辺りは、木々が一部消失しているな。)

と、アンバイドは心の中で思う。

 粉塵が晴れていくにしたがって、半径五メートル前後ぐらいの木々がさっきの両者の攻撃によって消失しているのを確認する。

 その様子に、戦いの規模が結局、どんなものであったのかを理解してしまう。

 これは、相手の力を利用したから、アンバイドにとっての天成獣の力の消費量は多くはないけど、まったくゼロではなく、さらに、一発分の力の量を借りているので、ベルグまで到達するまでにしっかりと回復させておかないといけないと判断する。

 雑魚にばかり対処している暇はない。

 アンバイドは自らの天成獣の宿っている武器での戦いにおける成長はそれなりにしているし、リースからここにやってくる段階で、すでに十分にこなしていると思っている。

 なので、これ以上は無理に自身を鍛えるよりも、温存しながらベルグへの復讐へと向かった方が得だと判断するのだった。

 ベルグに対する復讐を確実に達成させるために―…。

 アンバイドが周囲を確認している間に、粉塵は一部を残し、晴れるのだった。

 アンバイドは自分の目の前を見る。

 そこには、球体はもうなく、土の方が一部黒くなっていることだけは分かる。

 さらに、周囲を見回す。

 (俺を襲ってきた敵の死体がないな。誰かがやってきたという感じはなかった。なら、さっきの攻撃か前の爆発で、燃え尽きたのだろうなぁ~。)

と、アンバイドは心の中で思いながらも、つい口にする。

 「お前の主人がお前のために動いてくれるわけがないだろ。お前の主人は、自分のためにしか行動することができないような存在だ。お前の主人がベルグならそうだろ。もし、お前を大事だと思っているのなら、こんな人道にも劣る仕打ちをすることはないだろう。そう―……、お前は主人を間違えたんだよ。」

と、アンバイドは言う。

 アンバイドからしたら、ベルグが人間として素晴らしい人間性を持ち合わせているとは思わないし、復讐対象に対して、そのような感情を抱くことはできないし、する気もない。

 アンバイドから見たベルグは、自分のパートナーを殺した殺人者でしかなく、危険な存在だとしか言えない。

 ゆえに、アンバイドは復讐鬼としての存在となり、ベルグに後悔させてやるのだ。自分の命をそこで散らすことになったとしても―…。

 そして、アンバイドが今のような言葉を言ったのは、そのようなベルグの残忍さを知っているからこそ、ベルグへの敬愛を持ち合わせていたであろう、部下の部下に対して、もうここにはいないが、言ってしまうのだ。

 また、アンバイドはこの言葉を言うことによって、自身の正当性をもはっきりさせようとする。

 それは、自身の行動が間違っているという片隅にでもある気持ちを押し殺し、自分は間違っていないという気持ちで示させる必要があると、無意識的に判断したからに他ならない。

 これによって、アンバイドはあの残酷な光景に対して、恐ろしいという感情を完全ではないが、押し殺すことができた。

 人の感情から恐怖を完全に排除することはできない。

 なぜなら、感情というのは人が生きるために必要なことであるし、行動を起こすための原動力にもなるものであるからだ。そして、恐怖はいらないとか言っている人がいるだろうが、恐怖は自分の行動が間違わないために、必要なことであるし、自分が調子に乗り過ぎないようにするブレーキのような役割をする。

 ただし、恐怖もまた、諸刃の剣のような効果を持ち合わせており、恐怖というものが酷くなれば、返って、何も行動することができなくなるし、行動によって手に入れることのできる経験、知識、体験などの類を得る機会を喪失してしまうということもある。

 ゆえに、感情というものは、ある程度のコントロールが必要であり、喜怒哀楽、その場に相応しい感情的な振る舞いをしっかりと、どういう場で出せば良いのか、日頃から学ぶことが大切なのである。失敗も時には、成長のために必要であったりする。

 そのことを忘れてはならない。

 アンバイドは、すでに消滅してしまった敵に対する自身の感情的な言葉を言った後、もうここには用はないし、侵入者を撃退するために数多くの兵士がやってくるだろうと判断して、素早くどこかへと移動し、身を隠すのだった。

 余計な消費は、自分の復讐目的を果たす可能性を駄目にしてしまうかもしれないと判断したからだ。


 場所は変わって、ラナトール。

 その港湾。

 瑠璃たちがやってきた豪華客船は、出航の準備で大忙しであった。

 船員の多くが、瑠璃たちを襲った事件以来、その数が少なくなっているのだから、そうであるからこそ、船員の募集をおこなっていたが、リース規模の都市ではないラナトールである以上、どうしても集まりにくかったのだ。

 そうなると、船員一人一人における負担というものが大きくなる。

 だけど、それを乗客に知られるわけにはいかない以上、乗せる客をこちら側から減らすようなことはできない。

 そんななか、一人の客がその船に乗り込もうとするのだった。

 (こりゃ~、豪華客船かぁ~。俺もイスドラークでしっかりと稼いでおいて良かったぁ~。まあ、隊商の護衛が結構、羽振りの良い商会だったからもあるしぃ~。スウィートルームはさすがに無理だろうが、こういう船旅も良いものだ。)

と、心の中でウキウキする。

 この人物にとって、豪華客船に乗るのは初めてのことであるし、興奮するなというのは不可能なことであろう。ラナトールの今の情勢というのは、しっかりと把握しているが、そこに構っている余裕はない。

 この人物、ドグマロがしないといけないことの優先準備が一番高いのは、自らの父親の復讐行為を止めることだ。

 その理由は、復讐に意味があるとは思えないし、そんな過去に囚われて良いことなんてないのだから―…。

 ドグマロからしたら、最低の父親であることに変わりないのだが、それでも、血が繋がった親である以上、馬鹿なことをして欲しくないとも思ってしまう。

 見捨てることはできるだろうが、そのような踏ん切りをつけられるほどの冷静さを持ち合わせてはいない。

 見捨てることを悪いという意味で言っている人が多いが、見捨てる行為が捨てられる側にとって嫌なものであることは事実であるし、そこに反論をすることが良いとは思っていない。

 だが、相手との関係が自分を悪くさせるような結果にならない場合には、相手との関係を切ってでも、自分を守らないといけない時がある。そのために、必要最小限の悪として、見捨てるという行為は必要なのかもしれない。

 それでも、見捨てられるような結末にならない方が良いだろうし、見捨てるまでに最悪の結果にならないように行動しないといけないのは確かであろう。双方もしくは片方が悪いと簡単に断罪するのは危険なことでしかないが、何かしらの要因があることをしっかりと調べ、理解し、次はどうすれば良いのかまで考える機会ぐらいは設けた上で、慎重にどんな原因があったのかという判断を下すことは重要なことであろう。

 そして、ドグマロは自らの父親を自分一人だけであれば、見捨てていたであろうが、もう一人の家族のためには見捨てることができなかったのだ。

 そういう意味では、ドグマロは誰かのために行動することができる人物であることを、この時には示せているだろう。将来において、どのように変わるかは分からないが―…。

 歩きながらも、周囲を見渡し、警戒しないということはない。

 (ミランさんに会ったのは嬉しかったなぁ~。やっぱり、俺とミランさんの中には運命の糸とやらがあるのだろうなぁ~。)

と、ドグマロは心の中で思う。

 ミランがもしこのようなドグマロの言葉を聞いていたら、吐き気を感じてもおかしくはないだろう。そういう意味で、ミランはこの場にいなかったことは自身にとっても救いであるに違いない。

 ドグマロはミランに恋をしている。

 そのことを否定する気持ちはドグマロに一切、ない。未来においては分からないかもしれないが―…。そうであったとしても、ドグマロは好きな相手に対して、「好きです」、と言えるだけの度量はある。

 羨ましいと思える人もいるだろうが、迫られている側からしたら、嫌いな相手に対して言われたら、最悪でしかない。

 ミランがそうなのだから―…。

 ミランは、ドグマロのことを嫌っているし、「好きです」、と言われてまくっており、周囲から揶揄われるので、嫌な気持ちしかしない。

 ゆえに、ミランは絶対に、ドグマロに会いたくないし、ドグマロのいる場には一緒にいたくはない。

 そのように思っており、ドグマロを異性として好きとなる段階ではすでにもうない。

 ミランは完全に、ドグマロのことを嫌っているのだから―…。

 (そして、もう一人―…、自らの首筋に水晶がある女の子がいたねぇ~。「人に創られし人」―……、その子孫を示す重要な証拠―…。「儂」と「私」の戦いの呪縛からは逃れられないかぁ~。世の中とは残酷なものだな。あの女の子は自分がどういう血縁の人間かを知っている感じはしなかった以上、真実を知れば絶望するに間違いないだろう。真実を知ることは残酷なことでしかない……嘘にまみれた世界がどれだけ心地よいことか。)

と、ドグマロは心の中で思いながら、リースへと船に乗って向かうのだった。


 これは「儂」と「私」との長きに渡る戦い。

 あの日、女の娘が殺された日、生み出してしまった。

 望んでしまった。

 そうしなければ、女自身の命も奪われていたとしてもおかしくはなかったのだから―…。

 世界は残酷だ。

 何かを失う可能性のある試練を、不完全な存在ごときに与えるのだから―…。

 そして、今もまた、この戦いの結末は―…。


 【第145話 Fin】


次回、砂漠越えを安全に始められるのか? に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆していくと思います。


ドグマロが何者であるか、予想できる人はいると思いますが、今のところはネタバレをしたくないので言いません。

これから、瑠璃たちは砂漠を安全に越えられる保証に関しては、第146話、第147話あたりを読み進めていけば分かるようになってくると思います。2025年5月、6月は、この第146話と第147話をメインで投稿していくことになります。

あっ、ドグマロは家族思いの人かもしれません。

ということで、次回の投稿日は、2025年5月13日頃を予定しています。

疲れたので、休みます。

では―…。


2025年4月27日 以下を修正します。

「【第146話 Fin】」を「【第145話 Fin】」に修正します。

これは、話数カウントミスです。次回からが第146話です。すいませんでした。確認不足です。


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