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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
684/746

第144話-3 人に創られし人はこの場に三人いる

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 砂漠の中。

 アルタフらは「人に創られし人」の長のいる場所へと向かう。

 そんななか、大人しくなったのか、冷静に会話ができるようになったのか、会話する。

 「まあ、俺らからしたら、レオランダ国王が二年前の事件で殺されたという話を聞いて、怒りの感情が湧かない理由なんてない。あの人は天成獣の宿った武器を扱うことができるのに、扱うことができない人間にそう簡単に殺されることはないんだよなぁ~。あの人、しっかりとした実力もあり、将来有望だと過去に言われていたのだから―…。」

と、エンゲルは言う。

 エンゲルからすれば、レオランダという人がどういう人物かは聞いたことがあるだけだ。

 その情報によると、レオランダは天成獣の宿っている武器を扱うことができ、それなりの実力を有している人であり、王の地位にあったとはいえ、簡単に殺されるような人ではない。

 そうだとすると、何かしらピンチになることがあり、殺されたのかもしれない。

 王族は皆殺しにされたというのが、公式の報告になっているのだから―…。

 そうだとすると、どうしても天成獣の宿っている武器を扱えない人間に殺されるとは思えないのだ。

 「私もそれは分からない。あの事件の時、私と国王は別々の場所にいて、城は炎に包まれていたのだから―…。文書の類は火や地震、老朽化に耐えられる結界の類をしていたから何とかなったが、それ以後は文書の保管には、気を付けるようにはして、同じ文書を作成し、二か所に増やしたぐらいだ。余計なことを言ってしまった。それに、王が殺されたことを聞いたのは事件後で、かなりイバラグラ側の声明が中心だからなぁ~。だけど、違和感のあるものは見つけているから、イバラグラ側の言っていることは正しいとはどうにも思えないのだよ。」

と、アルタフは言いながら思い出そうとする。

 アルタフとレオランダは、その事件の時、離れ離れであったことは事実であるし、レオランダの命が奪われたことをイバラグラ側の声明で後日聞いただけで、怪しいと思って、少しだけ調べているのだ。

 そこから、レオランダが本当に命を落としたのか、断定させることができないような証拠がどんどん発見された。反論できるぐらいに―…。

 だけど、そのようなことをイバラグラ側に指摘してしまえば、彼らは血眼になってレオランダを探し、殺して、見せしめとしてその首を市中に晒すことは十分に分かっている。

 だからこそ、イバラグラ側にはこの二年間、自身から発言することはなかったし、調べた人間にも口封じとしての十分な資金を渡し、サンバリアの影響が及ばない地域へと避難させた。そうすることで、レオランダが本当は命を落としていないのではないかと思われる可能性を知っている人間を、サンバリアの中にいないようにさせたのだ。

 それを二年間ほどずっと黙ったままでいたのだ。

 そして、アルタフ自身への暗殺計画の事件をきっかけにサンバリアの外に出た以上、聞かれる可能性はかなり低いと判断して、つい言ってしまうのであった。

 そうであるからこそ、それと同時に、アルタフはレオランダが生きている可能性を目の当たりにして、ほんの僅かなものであったとしても、それに縋り付いているからこそ、レオランダの命があの事件で奪われていないという可能性に執着してしまうのだ。

 まあ、気持ちが分からないわけではない。

 そうである以上、アルタフの言葉は話半分で聞くのが一番である。

 時に、事実であることもあり得るであろうが―…。

 エンゲルはその言葉を聞きながらも、必要以上に追及すべきではないと思うのだった。

 「あ~、まあ、生きているのか、死んでいるのかなんて、実際に自分の目の前で確認しなくちゃ分からんもんっすからねぇ~。アルタフ議員の望みが叶うことに対して、俺は力になれねぇ~わ。だけど、僅かでも可能性があるのなら、縋り付くのも悪くはないっすよ。」

と、エンゲルは言う。

 エンゲルからしたら、可能性は低いことであろうが、それでも、ひょっとしたら何かしらの要因で生き延びていることもあろう。ゆえに、今は、否定するも、肯定するのではなく、相手の言っていることをありのまま受け入れるのが妥当であると判断したのだ。

 そして、否定するようなことを言ってしまうのは、こちらの心情的にもよろしくないことであるし、実際に、事件に遭遇したリガからしたら、そのような否定を聞かされることよりも、レオランダが生きている可能性を指摘される方が、過去に仕えていたラーナが生きているという希望を抱けるので、そっちの方が良かったりする。

 そういう場の空気を読んで、エンゲルは発言している。

 そういう意味では、彼は自分の言っていることを実行しているだけに過ぎない。それが周囲に伝わっていないことが彼のアピールの下手さに繋がっているせいで、評価されないということなのだ。

 相手に対して、自分の言っていることの全てがそのままそっくり伝わるということが完全という状態であるから、あり得ないことなのだ。だからこそ、要旨を捉え、そこから想像力で補うしかないのだ。相手の言っていることを―…。

 そして、アルタフらの一行は進んでいく。


 一方―…、クルバト町近く。

 ブサッ!!!

 その音があっても良いのではないかと思える状態がそこにある。

 何かが刺さる音。

 それは人の腹部に鋭利なものが深く刺さって、突きぬける音。

 「うっ……………ナッ…………………………。」

 声がする。

 その人物は、アンバイドではない。

 そうだとすると、分かることであろう。

 アンバイドの武器である長剣によって、腹部を刺され、突き抜かれたのだ。

 アンバイドの侵入に対処しようとしたヤズドランの部下が―…。ベルグの部下である―…。

 ゆえに、その声は、その部下のものとなる。

 「さて、死ぬ間際で言ってもらおうではないか、ベルグの居場所を―…。ベルグはどこだ!!!」

と、アンバイドは問い詰める。

 クルバト町にいるのは分かっているのだ。

 だけど、何かしらの原因があって、クルバト町の中に侵入することができていないのだ。

 ゆえに、確認しておく必要がある。

 そして、ベルグのいる場所へと侵入するためには、何かしらが必要だと理解できるのであれば、それを聞き出そうとする。

 アンバイドからすれば、リースの城の中で聞こえた情報に付け加えて、敵側の情報を確かめることができ、それが一致しているのであれば、この場所にベルグがいることは間違いないことになる。

 それを今、この場で引き出したいのだ。アンバイドは―…。

 自らが望む復讐を実現させるために―…。

 「そ……ん……な……………も……………………の………………………………こ…た………え………………る…………………わ………………………………け……………………………………………………に……は………。」

と、アンバイドへ対処しようとした者は言う。

 言葉たどたどしくなっているようだけど、アンバイドに聞こえるようには言えているようだ。

 この人物からしたら、アンバイドにベルグの居場所を教えるつもりなど―…。

 「いかない!!!」

 急に、言葉のたどたどしさがとれる。

 それがどうしてなのかは、アンバイドには分からない。

 一体、どうなっているのだ、と思いたいかもしれないがそんなことを思う時間もなく、アンバイドによって腹部を貫かれた側は叫ぶ。

 「俺はベルグ様をお守りする守護部隊の人間!!! ワイセッセだ!!! お前みたいな男に負けるはずがない!!! たとえ、自らの命を落とすことになったとしても!!! ベルグ様をお守りするのだ!!! 武器になれ!!! 俺の血液!!!」

と、叫ぶと、体中から血が噴き出す。

 アンバイドに腹部を貫かれた者から―…。

 まるで、その言葉を合図としているかのように―…。

 その光景を、アンバイドは目の前で見せられてしまうのだ。

 そう、血が噴き出し、ある場所に球体の形で纏まろうとしているのだ。

 アンバイドは自らの命に危機が迫っているのを感じるが、今、攻撃するのは無理だと判断し、敵の腹部を貫いている剣を離し、距離を取る。

 そして、貫かれた人物はこと切れたかのようにして倒れる。

 すでに、出血のため、自らの命がなくなってしまったようだ。

 その場の確認ではそのような判断しか下すことができないが、アンバイドは何か危険なことを相手はしてくるのだと判断して、警戒度をマックスにする。

 (何をするつもりだ。自分の命を捧げるかのようにして―…。ベルグの野郎―……、こんなものを―…。)

と、アンバイドは心の中で思う。

 実際に、敵が命を失ったことに対して、そこまでの悲しみはないが、あまりにも人道性が欠けるという今の目の前のものを見せられてしまうと、ベルグへの恨みというものが一層に強くなるのであるが、それと同時に、このようなことを平然とおこなえる侵入者へと対処しようとした者に対する恐怖も抱く。

 それと同時に、ベルグは人をこれが正義だと思えるような洗脳をおこなっているのではないかとさえ、思う。

 このようなことを賛美できる人間ではない。アンバイドは―…。

 このようなことに対して賛美できる人間にろくな性格の者はいないであろう。それは、他人の命を踏み台にして、自分の功績だけを称えるような人間にしか見えないし、こういう危険性が肯定されるのは社会にとっては猛毒でしかない。

 社会の誰を犠牲にすることを肯定する人間にとって、自分が社会のために犠牲になることを拒むような存在がほとんどなのだから―…。

 それと同時に、いつも犠牲になるのは無垢な何も知らされていない人間であり、同時に、窮乏化や貧困という状態に苦しむ経済的弱者のように、何かしらの社会の中で不利な状況に置かれている人々ばかりなのだから―…。

 それを称える犠牲によって得られる社会は、本当の意味で楽園なのか。それを知らないことによって手に入れた幸せな世の中や社会は、本当に良い状態なのか。

 このように考えてしまうと、本当の意味での幸せではないと思えるし、これによって手に入れた幸せな社会はどこかしら問題を先送りにしているか、過去に紡がれた今に繋がる出来事の良くないと判断される面を排除するという視野狭窄に陥ったものでしかなく、最後は悲劇で終わるだけのものでしかない。

 悲劇から逃れる方法はどんな社会であったとしても、難しいことであろうし、ほとんどが悲劇によって終わるだけなのだから―…。

 我々は、しっかりと犠牲になったものを称えるのではなく、彼らに対して、本当の意味で罪の意識を抱きながらも、彼らに起こった犠牲を忘れることなく、それを未来において同様の悲劇を防ぐために考えながら、悩みながら過ごすしかない。それを不幸だと思うのなら、思っても構わないが、大事なのは、ちゃんと思い出す時間をつくることが大切だし、彼らを思い、彼らの悲劇の選択にならないように、しっかりと過去を学ぶことなのである。

 楽しい、栄光の歴史も重要だが、それとは反対のものをも含めて、しっかりと学ぶこともまた歴史を学ぶことであるし、それを知ることによって幸せが逃げるのではなく、未来のためのより良い選択のために考え、それを広め、未来のある地点での良き選択になるために生きるのも、それはきっと幸せなことなのである。

 この世の中、苦痛だけではないし、幸せなことだって十分にあるのだから―…。

 楽しい事ばかり考えるだけのようなつまんない人間にはなるな、ということであり、犠牲になった者を時々は思い出し、どうすれば良かったのかを考え、未来に生かす時間も人が生きる上では必要なことである。

 そして、胸糞なことをベルグに対して思いながらも、今できることへと対処するため、アンバイドは目の前の光景をしっかりと焼き付ける。

 そして―…。


 一方、ラナトール。

 ドグマロとミランたちが出会ってしまっていた。

 そして、ドグマロは、三人目に向かって指をさすのだった。

 「そのお嬢ちゃんだよ、君―…。」

 その言葉に誰もが驚くのだが、ミランだけは驚くことはなかった。

 自らの首筋に水晶が埋め込まれているからこそ、気づいているのだ。

 「私?」

 指さされたのは、瑠璃であった。

 その言葉は、ミランによって、最悪のことでしかなかった。


 【第144話 Fin】


次回、アンバイドVSワイセッセの戦いに決着+三人目とは、「人に創られし人」?

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆していくと思います。


では―…。

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