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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
680/746

第143話-7 イバラグラ

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 「ドグマロー…。」

と。

 ミランはその人物についてのことは知っているが、この人物の父親が誰で、家族構成がどうなっているのか。

 そして、この人物のことはミランが生理的に嫌悪するぐらいの存在である。

 「ミランさ~ん~。と言ってこっちから抱き着きたいという気持ちはあるのだけど、こっちとしても馬鹿親父の暴走を止めないといけないので、ここで時間を潰す気にはなれないのだよ。」

と、ドグマロと言われた青年は言う。

 この人物はどこかしらある人物に似ているなぁ~、という感じを礼奈と瑠璃は気持ちとして抱くのだったが、ミランの表情がかなりドグマロのことを嫌っているのが分かり、何も言わないのであった。

 今のミランに話しかけられるほどの勇気があるのは、ドグマロだけなのだから―…。

 「なら、さっさとそっちの方に向かったら。手遅れになる前に―…。そして、一生帰ってこないでいただけるとこっちとしては助かるわ。」

と、ミランは言う。

 この言葉が出るぐらいには、ミランはドグマロのことを嫌っている。

 その理由を説明する気にはなれないが、ミランにとってはとても嫌なことであったことだけは分かるであろう。

 「そんなことを言われると手遅れになった方が良いと思ってしまうのだよ。同じ「人に創られし人」の一族であり、従兄妹なのだから―…。そして、ここには()()いるのだからねぇ~。俺と、ミランと、そして―…。」

と、ドグマロは結論を言う。

 それはあることを突きつけることになる。


 一方、サンバリアでは―…。

 今日も通常議会があり、議員達が議会のある場所へと向かっている。

 そんななか―…。

 (アルタフ師がいません。昨日の夜に起こった事件もアルタフ師のご自宅であった以上―…。)

と、サモーラは心の中で思う。

 サモーラとしても、アルタフの家で火の手があがるという事件を聞いて、心配で心配でならなかった。

 その理由は、アルタフがイバラグラの勢力から命を狙われているし、実際に暗殺未遂事件が何度も怒っているからだ。

 暗殺することが不可能だと悟ったので、この頃は大人しい感じであったのだが―…。

 昨日のボヤ騒ぎから考えると、かなり危険な目に遭ったのではないかと思えるし、アルタフがサンバリアから逃げ出したというニュースが放映されていたので、どうなっているのか、不安な気持ちになってしまっており、自分の存在を消しながら、議会へと向かっているのだ。

 そして、サモーラが知っていることはニュース以上の情報はない。

 それだけ権力側が上手く情報を秘匿しているのだということを理解させられる。

 権力者側からしてみれば、自分達にとって不都合な情報を自分の敵となる可能性のある勢力に漏らしたいとは思わないだろうし、そのようなことをするのは自殺願望のある存在か、相手を舐め腐った態度で見ている者など以外に考えるのは難しいぐらいだ。

 そして、情報が漏れていないことから考えて、アルタフの家でのボヤ騒ぎはかなり権力者側にとっての不都合なことが隠れており、一般の庶民は権力者側の情報を鵜呑みにして、それだけを信じるようになれば良いのだと思っていることがひしひしと伝わってくる。

 そうすることで、権力者側の支配を正当性のあるもののようにしたいであろうが、それは、支配される側の生活や安全をしっかりと保障している場合に限られ、信用と実力が失われたと主観的に判断されれば、権力者側の権力や実権などは崩壊してしまう運命にあるし、それから逃れる術はどんなに自分が特別な存在だと思っていたとしても存在しないのは確かである。

 そうである以上、生き残るためには、変化をしないといけないし、変化してはいけない部分を見極めて、そこはしっかりと守らないといけない。そうしても、無駄な時もあるだろうが―…。

 「アルタフの野郎がサンバリアから逃げたって。ざまあみろ。」

 「旧時代の遺物のせいでサンバリアはおかしくなったのに、いつまでも政治家として出っ張ってくるなよ。」

 「これで清々するわ。今はイバラグラ様の時代。彼の政策こそが正しい。反対する輩は人ではないわ。」

 ヒソヒソ話の声がする。

 その声は、イバラグラの側についている議員からなされるものである。

 彼らは、イバラグラと結びつくことによって、自分達の利益を得ている議員であり、その利権に与っているのだ。

 そして、軍事産業とも結びつきが強く、レオランダ王の時代には軍事産業は戦争という場での兵器実験ができなかったことに対して不満を抱いていたのであり、共和政になってからは、周辺諸国への侵略戦争ができるようになり、実験がやりたい放題になっており、それを推進してくれるのだから、イバラグラ派になるのは当然の理と言われてもおかしくはないことであろう。

 だが、同時に、彼らは自分達の行動が悪い面を及ぼしていることに気づくはずもなく、自分の利権のためなら、誰がどうなろうとも関係ないとさえ、思っているのだ。自分達の利権を脅かそうとしている人間は、敵でしかないという感じで見ながら―…。

 だけど、人が選択した行動には、善悪が伴う場合があるし、その善悪自体は主観的なものでしかないが、それを考慮に入れないと、返って、悪い面が自分に跳ね返ってくることが往々にしてあるし、そのことによって自身が気づかないうちに最悪の結果へと辿っていたという結末もあり得るのだから―…。

 気づいてからでは遅いということはある。

 ゆえに、自身の行動における正当性に関して、常に自問自答しながら、不安を時々ではあるが、抱くべきであろう。周囲には自信というものを見せながらも、心の内では不安をしっかりと抱けるようにしないといけないし、そのことをしっかりと見破れるだけの人間にならないといけない。

 それを察せられることによって、どういうことが周囲の人に対して、何をしてあげられるのかを考えることができるし、その解答を導き出すことができるし、周囲からの信頼を本当の意味で勝ち取ることができるのだ。

 そのような考えは、ヒソヒソ話をしている者達にはない。

 持っているのであれば、このようなヒソヒソ話に対して、嫌悪感を抱くであろうから―…。

 「不細工サモーラか。あいつ、アルタフの野郎と一緒にいた―…。あいつは誰につくべきかも分からない、馬鹿だ。アルタフなんかに目をつけられたから、今、酷い目に遭ってるんだ。」

 「あいつもサンバリアを滅ぼそうとしているかもしれないわよ。議会から弾劾処分をさっさと下すようにしないと―…。アルタフがサンバリアに攻めてきたら、危険だわ。」

 「それなら、殺した方が得だろ。いや、自分から死んでもらうのが良いかぁ~。ガハハハハハハハハ。」

 『ガハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ。』

 ヒソヒソ話をしている者達は、サモーラを見つけ、悪口、陰口を言う。

 その言葉はサモーラにもしっかりと聞こえていた。

 いや、聞こえるように言ったのだろう。

 彼らは、イバラグラという権威に対して笠を着ているだけの存在でしかないが、自分達がそういう存在であることに気づいていたとしても、自分の偉さや強さを本物の自分の力であるというふうに思い込んでいる。それも強く―…。

 自身の思い込みに洗脳されているのは確かであろう。

 その言葉を聞いたとしても、サモーラは反論することはなかった。

 自身が負けたとか、屈したとか、そういう類のものではなく、先を見た上での判断であった。

 サモーラの悪口を言う議員らと異なって、目の前の有利ではなく、自分の発言後に起こるであろうことを相手の視点も含めて、直感的に考えながら、自分にとっては何をしても優位になることはないことであろうから、最小限になる方法を選ぶことができる。

 その選択が無視することだ。

 悪口を言われて突っかかれば、返って、周囲に悪い心象を与えるだろうし、それもイバラグラ側のマスコミがサモーラの悪口をあることないこと含めて、自由に書き上げて、ニュースもしくは記事などにしていくのは分かっている。

 それを信じる人間は多数ではないけど、マスコミらによってそれだけに占められるようになれば、サモーラの言葉などを信じてくれる存在などいやしない。

 結局、人々が得ている情報の多くは、マスコミの手が加わっているし、政治家や国による検閲のようなものが加わっているのだ。裏で―…。

 だけど、絶対に誰もが情報を完全に掌握し、都合の良い情報ばかりが流れるということはない。人が完璧にも完全な存在にもなれないということから逃れられないということが確定している以上、どこかしらに弱点が存在しているのは確かなことである。

 自分の思い通りに進んで、自分の望んだ結果になるどころか、その真逆の望んでいない結果になることは十分にあり得るのだから―…。その逆も然り。

 そうである以上、完全な情報の封鎖と言論の自由の抑圧をおこなったとしても、結局、意味のない結果に未来のある地点で訪れるだけでしかないので、意味のないことだ。それなら、ある程度自由に言える言論空間をしっかりと作っておく方が、結局は、いろんな情報に触れるので、情報に対する判断をしっかりと身に付ける人もいるだろう。身に付けられない存在も同時にいる可能性を否定することはできないが―…。

 そして、サモーラは、逃げ出すことは絶対にせず、無視しながら議場の方へと向かって行く。

 まるで、陰口など聞こえなかったと言わんばかりに―…。

 それでも、心の中では―…。

 (好き勝手言っていれば良い。アルタフ師がいない以上、大人しくしておくことは避けられないだろうし、彼らとは権力者の後ろ盾という存在がある面では同じですが、それを威張ったり、自分が何でもしても良いという勘違いしている人達とは違う。そのことはしっかりと頭の中で理解しておかないと―…。)

と、冷静になりながらも、どこか心の中で怒りという感情は消えずにいた。

 その怒りの感情を消し去るのは危険なことでしかないが、それを無理矢理の増長させるのも危険なことでしかない。

 そうである以上、どこかで発散をさせつつも、忘れないようにしないといけない。

 サモーラからしてみれば、今、自分が強く相手に対決するようなことをしても不利な状態でしかないのだから、大人しくして、好機を待つしかないのだ。

 奢れるものは、必ずどこかしらで大きなミスをして、悪い方向に周囲を巻き込むことが定石化しているのだから―…。

 その時まで、しっかりと自身の力を蓄えることが必要である。

 そうだと思えれば、何とかだけど、ギリギリのラインで耐えることはできる。

 (アルタフ師がどこで何をしているのか分かりませんが、生きていることだけを期待するしかありません。今の自分にできることは限られているのだから―…。)

と、心の中で続けるのだった。

 無視されたことに対して、怒りの感情を見せたイバラグラ派の人物は、サモーラに突っかかろうとしたのか―…。

 「おいおい、無視するなよ、サモーラ君。君を目にかけてくれていたアルタフの野郎がいなくなって感想の一つぐらい言ってくれたら良いだろうに―…。」

 この人物は、サモーラを煽って、反抗的な態度をとった時に、言いがかりつけてサモーラを議会から排除して、イバラグラから良い評価を貰おうとしている。

 なぜなら、イバラグラの評価が上がれば、議会の中でも影響力を拡大させることができるし、有力な貴族や家と結びつくことができるし、軍事産業から献金もたんまりと貰えるであろうということを考えながら、成果を挙げようとする。

 そのための踏み台にサモーラを選んでいるだけなのだ。

 結局、出世していくほど、影響力が拡大していくほど、こういうどうしようない輩が増えてくるのはどの世界においても同じであろうが、その性質が違ったりすることが往々にしてある。

 そんな輩は自らの権力を増大させることにしか興味がなく、他者のことは有力な金づるや権力を持っている者以外は何かしらの不幸が他者の側にあったとしてもどうでも良いとさえ思っているのだ。

 結果、自分が良い思いをすれば良いと思いながら―…。

 そのような考えの中でも、周囲や社会の良き結果に繋がれば、まだ黙っている人は多いだろうが、そういうことになるのは稀なケースでしかなく、大抵は大きな失敗をし、周囲や社会を悪い方向に巻き込みだけでしかなく、そういう輩は自分に責任はないという気持ちで逃げるのだ。加害者なのに、その加害者が生んだ不幸の尻拭いを被害者にさせる。

 そういう輩に限って、媚びるということの大切さを理解しているのか、それを平然とおこなうのである。だからこそ、そういう輩の過去の行動はしっかりと調べておく必要があるのだ。また、同じ失敗で、周囲と社会を不幸にさせないために―…。

 人々は物事の出来事から逃れることは自らの命を絶つことでしかそれができないし、逃れたとしてもその先に何があるのか分からないし、不幸の後に、自らがしっかりと対処することで、乗り越え、幸福状態にもっていくことも不可能ではない。

 そうだと考えると、自らの命を絶つよりも、逃れることよりも、真向から一人で立ち向かう人間の方がよっぽど格好いいだろうし、そういう人間を社会は大事にした方が良い。崇め奉るのではなく、一人の人として受け入れるということを心の中でしないといけない。それが真向から立ち向かっている者達が救われるために必要なことなのだから―…。

 後、そのようにしているフリの人もいるので、しっかりと真向に立ち向かっている人の過去および行動をしっかりと調べておく必要があるし、甘い言葉ではなく、その人から出る真の意味での言葉を聞く必要がある。それは難しいことであるが、謙虚になりながらも、人々がやらないといけないことである。

 逃げるな、抗うしかないのだから―…。

 「済まない、君の言葉はどうもへなへなで、私には一切、聞こえなかった。それと、これから議会が始まるので、失礼する。」

と、サモーラは言って、議会の方へと平然と向かうのだった。

 煽ろうとしたが、逆に煽られる結果となったのだ。

 サモーラからしてみれば、彼らをあしらう方法は考えればいくつかあるが、同時に、激情した言い方は良くないので、冷静にまるで、普通に人と接するかのように言ったのだ。

 サモーラを煽ろうとした議員にとっては想定もしていないことを考えて―…。

 そのサモーラの罠に嵌ったのか、少しの間、サモーラを煽ろうとした議員は動きを止めてしまうのだった。

 その間に、議会の中へと進むことができた。

 そして、取り残された議員、サモーラを煽ろうとしたのだが、失敗してしまい―…。

 「クソッ!!!」

と、激昂するのだった。


第143話-8 イバラグラ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆していくと思います。


世の中、虐めの類はなかなかなくならないものです。

自分が優位になるためだけに、他者の中で貶めても良い人物を簡単に貶めるからでもあります。

そして、その判断があまりに自己都合的なものになるのを、客観性だとか、本当だとか、というので、その判断もややこしいぐらいに難しかったりするんです。

世の中、簡単なことばかりではございません。

考えることも必要なことです。

さて、サンバリアの暴走が少しずつ始まってきているように見えます。

では―…。

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