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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
677/748

第143話-4 イバラグラ

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 「まずはそうねぇ~。今回のアルタフ議員の暗殺計画は成功しても、失敗しても問題は、私の方からすれば問題は何もないのよ。」

と、フェーナは言う。

 フェーナの言葉から嘘という感じはしなかった。

 ワンガース=レッドからしてみれば、このような今のフェーナの言っている言葉に関して、驚きは感じない。

 何を考えているのか分からない、フェーナはそんな感じであるが、何かしらの大きな存在によって動いているのではないかと感じさせられることだけは分かる。

 そして、ワンガース=レッドはフェーナの言葉を聞き続ける。

 「むしろ、アルタフ議員ら一族はしっかりと「人に創られし人」の一族のいる場所に逃げ延びって欲しいのよ。」

と、続ける。

 そのことに驚き、ある事にワンガース=レッドは気づく。

 (そんなことをしたら、サンバリアは暗殺事件のことを説明して、さらに、アルタフ議員の説得により、「人に創られし人」の一族がアルタフと協力して攻めてくる口実を与える可能性がある。レオランダ王が殺されたという理由で一回、サンバリアへと攻めようとしたが、それを止まるよう説得したのはアルタフ議員だったのは何らかの裏の事情に通じていれば、知られていてもおかしくない話。そうだったのなら、今回、レオランダ王への恨みと説得した人間を暗殺しようとしたことによって、サンバリアが攻められる可能性は十分にある。そして、数日前に、ラナとラーグラをリースの方に派遣していたし、ラーグラはまだ戻ってきていない。これは無関係だと考えるべきは分からんが、そうだと結論付けることは避けないといけない。まだ、線が繋がらないのに、繋がっているのではないかと疑ってしまっている。何なんだ、この感覚は―…。)

と。

 ワンガース=レッドは、サンバリアを攻めさせる可能性を考慮した上で、フェーナはアルタフが逃げ出せるように、すべてではないが、協力しているともいえる。

 暗殺計画が失敗し、逃げられるようなことがあれば、サンバリアから外に抜けられる下水道の近道に自らの部下を派遣していてもおかしくないのに、それをしていないということを暗に言っているのだから―…。

 そうだとすると、ワンガース=レッドが感じていたフェーナの裏の意図というものが何となく説明されているような感じがするが、それを完全にすっきりと納得できるというか、理解できたという領域には到達していない違和感というものを感じるのだ。

 そんな感覚だからこそ、気持ち悪さというものが強く感じられてしまうのだ。

 そういう感覚は必要なことであり、物事を正確に判断していく上で重要な直感の類をしっかりと身に付けていることの証明となる。

 フェーナの方は、ワンガース=レッドの何かしらを感じ取っているが、それを具体的な理由に落とし込められていないのを見ると、彼を自らの部下にしたことを後悔するよりも、誇らしく思ってしまうのだ。

 優秀な部下は何人いても良い。

 制御するのは大変だけど、それに見合った利益もしっかりと得られるのだから―…。

 「逃げ延びれば、アルタフと「人に創られし人」の一族が協力関係になって、サンバリアを攻めてくるのではないか? そうだとすると、サンバリアの国力は低下して、恨みに思っているサンバリアの周辺にいる勢力が裏切ったりするんじゃないのか。それはこちらにとっても悲惨な結果にしかならない。」

と、ワンガース=レッドは言う。

 サンバリアにとっては、最悪の事態でしかない。

 この悲惨な出来事によって、サンバリアに住んでいる者がどれだけ命を落とすのか計算なんてできないが、多くの者におよび多くの孤児だけでなく、親しい人がいなくなるという結果になるし、サンバリアの産業技術が外に漏れたり、それを利用して、サンバリア以上の国力を手に入れる存在も出てくれば、サンバリアは一たまりもない。

 そうだとすると、フェーナのしていることは、サンバリアへの反乱でしかないし、売国行為だとしか感じられない。

 「ワンガース=レッドは、しっかりと気づいているようね。私としては安心したわ。私は、いや、私たちは…と言った方が良いでしょう。私の後ろ盾となっている人がある計画を実現するために、リースにいるある三人をこちらへと陽動しないといけなくなったのよ。それに加え、あの魔女は、その三人を私たちの陽動であることを理解した上で、こちらへと向かわせているのよ。報告によると―…。ラーグラには暫くの間、彼らをつけさせてもらうことにしたわ。そして、あの三人は、どこかで必ず「人に創られし人」の一族と接触するわ。あの魔女もそれを織り込み済みで動いている。そして、アルタフ、例の三人、「人に創られし人」の一族、この三者がサンバリアへとやってくる。彼らの実力と成長具合を考えれば、最悪、時間稼ぎをすれば良いということになっているわ。そして、後ろ盾の人が考えている計画が実現されれば、今のサンバリアが対外戦争によって得られた利益などちっぽけなものになるほどのものが得られるのよ。そのためなら―…、サンバリアの住民が少しぐらい犠牲になるようなことがあっても問題にはならない。」

と、フェーナは言う。

 フェーナは、ベルグから与えられた任務である瑠璃たちがベルグのいる場所に向かわせないようにするための時間稼ぎを成功させるだけ。

 そのために、サンバリアがどうなろうとも構わない。

 ワンガース=レッドの方でも、すべてではないが、重要なことは理解できただろうと、フェーナは思っているのだ。

 ワンガース=レッドは理解度が素晴らしい部下であることが分かるし、このような人物を殺すような展開にはなるべくしたくはない。

 そして、フェーナは、ワンガース=レッドを殺すことができるぐらいの実力は有しており、ワンガース=レッドもそのことは十分に理解している。

 「つまり、フェーナ様の後ろ盾のために、サンバリアを攻めさせて、最悪、サンバリアが滅んでも構わないということですか。」

と、ワンガース=レッドは言う。

 (………おいおい、聞くんじゃなかったぜ。だけど、俺にはわざわざ話すということは何かしらあるのだろうな。意図が―…。そして、三人というのは具体的に伏せられているが、探るべきではないな。自分の命はまだまだ惜しいし。この三者を相手取ることを俺らに強いるというわけかぁ~。)

と、心の中で思う。

 ワンガース=レッドからしてみれば、こんなサンバリアを滅ぼすようなことを聞かされると、動揺しないことはないが、それでも、冷静に立ち振る舞うことができ、判断を下すことができる。有能な存在であることに間違いない。

 そして、サンバリアは、アルタフを戦力として考えないで良いと判断すれば、「人に創られし人」の一族とフェーナが言っている三人組らと、戦わされることになるし、サンバリア側が負けるということが十分にあり得ることであり、犠牲者は出るということなのだろう。

 とんでもないことに巻き込まれていることは理解できるし、そこから逃れる術はないと見える。

 「そういうことよ。ちなみに、サンバリアを本当の意味で支配しているあの方からの許可を受け取っているわ。どんな技術があろうが、創造し、発明することを怠り、漸進しようとしない輩や政治家を生かす必要はない。必要なのは、儂が認める人物たちがいれば良い。ということよ。そして、あの方はイバラグラの命すらもその手で左右できるほどよ。そのあの方が私の後ろ盾になっている人の側近の一人なのだから―…。このサンバリアは、レオランダが王の時に奪われただけで、あの方はずっとサンバリアを手中に収めているわ。これ以上は言わなくても分かるわよね、ワンガース=レッド。」

と、フェーナは言う。

 フェーナからしたら、ワンガース=レッドはフェーナの意図を読み取れたというよりかは、しっかりと裏で情報を収集しているであろうし、サンバリアがどういう国かも分かっているだろう。

 ゆえに、どういうところに自分がいるのかをしっかりと理解できるであろう。

 (後ろ盾に関しては分からないが、あの方というのも誰かは分からないが、サンバリアを裏から牛耳っていた人間って―……………。)

と、ワンガース=レッドは心の中で思いながら、あることに気づく。

 「ラング家。」

 そう、サンバリアを裏で牛耳っているのはラング家であるということを―…。

 ラング家は、サンバリア建国時から有名な一族で、王族を支えてきたという王家からの信頼も絶大であるが、レオランダ王の時代に排除されている。そうだと、イバラグラの権力を支えている基盤には、ラング家の者が関わっているということになる。

 ラング家なら、サンバリアを追放されていたとしてもこの周辺にも伝手がある可能性があり、そこで、自分達がサンバリアの国政で実権を握るための策謀をしていてもおかしくないし、サンバリアの中にも協力者がいてもおかしくはないということ―…。

 そして、フェーナの後ろ盾とラング家の者が繋がっていることをワンガース=レッドは理解し、この二年間は共和政で民主主義であると言っているようだが、実態はラング家による専制であり、仮初のものでしかなかったのだということを―…。

 実際は、ラング家の人間がそこまで必要以上に介入していないので、民主主義が完全に仮初であったということは嘘になるであろうが、完全な民主主義であったということも同様になる。

 ワンガース=レッドは、驚きと同時に、ラング家がまだ崩壊していなかったことを知り、とんでもないものに巻き込まれていることを、さらに、自覚させられるのだった。

 「わかったようだね。これ以上は知らない方が良いし、君ならさっきも言ったけど、サンバリアに大きな危機が訪れようとも、生き残ることはできるわ。なぜなら、ワンガース=レッドの実力は私がかっているのですから―…。」

と、フェーナは言う。

 そう、フェーナは嘘を言っていない。

 ワンガース=レッドは優秀な人間であり、ラング家の中でトップの地位にある者にもきっと気に入られることを理解しているからだ。

 その人物は、優秀な人物以外はこの世界にいらないと思っているような人間であり、何かしらの目的のために動いており、ベルグと()()()()にあり、そのためならサンバリアをも犠牲にすることができるのだ。

 そうだと思うと、どれだけの実力者がフェーナの後ろ盾についているのかを理解するし、フェーナが期待している以上、ラング家の者からも評価されているのではないかと思うが、あまりにも大きすぎて、ワンガース=レッドからしてみれば、驚きでしかないし、事態を冷静には見られなくなってしまっている。

 ゆえに―…。

 「お話を聞けて感謝いたします。失礼させていただきます。」

と、ワンガース=レッドが言うと、部屋から退室するのであった。

 (ワンガース=レッド。彼はラング家にも推薦できる人材ね。優秀な部下として―…。彼ぐらいでないとあの家、実験材料としかみなさない当主がいるのだから―…。自身の息子さえも用済みとなれば、兵器の実験材料にしてしまうぐらいなのだから―…。)

と、フェーナは心の中で思うのだった。

 世界は残酷だ。

 大きな力を持つ者がいる一方で、そこから搾取される大半の人々がいるのだから―…。

 だが、その搾取される人を蔑ろにすれば、酷い目に遭うことは避けられないし、人である以上、完璧にも完全にもなれない。

 ゆえに、ふとした時に、立場が逆転することは十分にあり得るのだから―…。

 その逆転がどのように起こるのかは、ある程度のことを理解することは可能であろうが、理解できない偶発的なものだって十分に存在する。

 ゆえに、世界は善人に良いことを与えることもないし、悪人に酷い結末を与えるとは限らないのだ。

 善悪が主観的なものから逃れることができないからだ。

 そして、フェーナは、議長護衛室から外を見ながら、サンバリアの外の方を見るのであった。


 議長護衛室の外の廊下。

 そこにはワンガース=レッドは歩きながら、考える。

 さっきのことを―…。

 (ラング家が関わっているとはなぁ~。まあ、それは関係ないが、あの家の黒い噂はいくつか知っているが、彼らが昔、サンバリアの近郊で、サンバリアのような征服国家を建国した、という噂があったなぁ~。もしかして、ラング家の目的は世界支配か?)

と、ワンガース=レッドは心の中で思う。

 これは噂の類でしかなく、真実かどうかは確かめられるものではない。

 ラング家。

 いまだにサンバリアの実権を握り続ける二百年の歴史のある家。

 彼らの存在を確かめたワンガース=レッドは気を遅れしながらも、自分の住んでいる寄宿舎へと戻るのであった。

 そのラング家は、ワンガース=レッドが想像する以上の秘密を抱えた家である。

 あの魔女とも―…。

第143話-5 イバラグラ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆していくと思います。


ラング家。この家に関する設定は奇跡的な面もありますし、いろんな意味で伏線となっています。まだ、驚く回が第143話以降のどこかで待っていると思いますが―…。

それがサンバリアの章の重要な要素であり、第1編の最終章でも触れられることになると思いますが―…。

ということで、伏線回収と伏線張りが大変な日々ですが、無理をしないように頑張っていきます。

では―…。

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