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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
674/746

第143話-1 イバラグラ

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 塔から炎が揺らめくのが見える。

 (…………………………………………………。)

 沈黙が支配する。

 その沈黙が人に考える時間を与えてくれる。

 静かに冷静に、今の炎のある場所で起こっていることを正確に予測しやすくする。

 (……派遣した者の中に、火の属性はいない。なら、アルタフ側が雇った人間―…。頼んでいる可能性があるとすれば、伝手のある「人に創られし人」の一族を雇った可能性が高い。考えられるのは………、リガー…。彼女で間違いないだろうね。フフフフフフフフフフフフ、二年前の()()()に対する復讐かしら―…。)

と、フェーナは心の中で言う。

 フェーナは知っている。

 リファーネの正体を―…。

 彼女の狙いを―…。

 だけど、リガだけではないことも同時に推測することができ、今のところ、そのリガという人の命を狙う必要はないし、逆に利用できるのだから、利用しないわけがない。

 サンバリアへの復讐心があるのなら、その復讐心は必ずサンバリアの方へと向かって来る。

 ゆえに、生かしておく方が得だと思うのだ。

 「味方に手をかけた気持ちはどういう気持ちかなぁ~、()()()()()()()。」

と、フェーナは口にするのだった。

 あの二年前の過去の報告を聞く時、報告してくるリアファーネレという人物を思い出しながら―…。


 【第143話 イバラグラ】


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ。

 燃え盛る炎。

 その存在は、誰もがその光景を見れば、目をくぎ付けにするだけの魅力を兼ね備えている。

 それは、何もかもを燃やし尽くすことによる自分がその中に入ったら自らの命が消えるという名の恐怖によって足が竦むのと、同時に、その火の存在が自分にはできない無へと()すことへの憧れを同時に抱かせるのだ。

 まさに、王者の威圧のごときものであろう。

 その明るさは夜という闇の中で目立つごときであり、希望の光のように感じさせられ、誰もがその火へと視線を向けさせるために、目覚めを導く。

 そのような状況の中―…。

 (このような大きな火の技を使ってくるとは―…。私としたことが攻撃だと見誤った。攻撃ならワンガース=レッドがその隙を突いて、アルタフを暗殺させることができたが―…。終わったものを悔いても仕方ない。)

と、ラナは心の中で思いながら、ワンガース=レッドを呼ぼうとする。

 そんな心の中で思ったことを言い終えた後―…。

 「勝手に行きやがって。おまけに、アルタフの護衛に苦戦するとは―…、なぁ~、ラナ。」

と、言う声が聞こえるのだった。

 この人物からしたら、もう少しフェーナの意図というものを理解するようにした方が良いと思っているのだ。

 なぜなら、上の人間が素直に命令の意図を伝える時もあるだろうけど、伝えない時も往々にしてあるのだから、そのことにしっかりと気づかないといけない。

 そうしないと、とんでもない裏切りに遭ったりすることがあるのだから―…。

 自らの命を落とすことのないようにするためには、意図を正確に理解することは避けて通ることはできないのである。

 「ワンガース=レッド。」

と、ラナは恨み節の言い方をする。

 ここまでやってくることができるのであれば、さっきの「炎の壁」が発生する前に、リファーネを攻撃すれば良いだろうに、そうラナは思っているのだ。

 ゆえに、ワンガース=レッドの今の行動は、チャンスを潰してくれたことに対する苛立ちにしかなかった。

 こいつはどこかで、フェーナによって粛清されれば良いと思ってしまうのだった。

 「あんまり恨み節のような視線を俺に向けないでくれるかい。フェーナ様の意図を何となくだけど、理解できたのだからさぁ~。」

と、ワンガース=レッドは言う。

 フェーナがわざわざ、アルタフの護衛に天成獣の宿っている武器を扱う者で、かなりの実力者を要して人に創られし人の一族の人間を雇っているのに、暗殺計画の実行を許可し、自らの部下をバレる可能性、返り討ちに遭う可能性のある場所に派遣するとは思えなかった。

 そうだと考えると、この暗殺計画自体が失敗することに、フェーナには何もダメージがないか、本当の目的において、然したるものでないか、もしくは、アルタフの暗殺計画の失敗自体こそが狙いであるのかもしれない。

 その結論に達すると、ワンガース=レッドにとっては、フェーナがどのような行動をとるかの中で、最悪の想定が思い浮かぶものである。

 (俺らを捨て駒としているのかねぇ~。)

と。

 そう、ワンガース=レッドとラナを犠牲にして、アルタフの暗殺計画を失敗させて、二人に責任を押し付けようとしているのだろうか。自分達がフェーナを裏切るのではないかと思いながら―…。

 そうだとすると、疑問点がないわけではない。

 フェーナは一応であるが、イバラグラの部下であり、アルタフとは繋がっていないのが前提である。裏で繋がっているのであれば、アルタフをサンバリアから逃がすためにワンガース=レッドとラナという自分の部下を使うことになるし、サンバリアの今の体制であるイバラグラを裏切るようなことをするのではないか。

 そんなことをして、フェーナの得になるのだろうか、と考えると、そうだとは思えなかった。

 ワンガース=レッドはそのような疑問点のある結論を下すのであった。

 矛盾は解消されていないが―…。

 「フェーナ様の意図―……。そんなもの、フェーナ様の言われた言葉以上のものは存在しない!!!」

と、ラナははっきりと言う。

 ラナにとって、フェーナの言葉は言葉そのままに受け入ることが正しいと思っているのだ。フェーナが発している言葉は、そのままの意味以上に何も持ち合わせていないのだと―…。

 それは結局、ラナの思い込みでしかないのだが、本人はそれに気づきもしない。

 ワンガース=レッドは呆れるしかなかったのだ。

 「そうかよ、どこかの狂信者かって、貴様は―…。で、馬鹿な話をしている暇はないとして、どうするんだい。この炎の壁みたいなもの。」

と、「炎の壁」によってつくられた壁のように聳え立っている炎を見ながら言う。

 ワンガース=レッドの方も―…。

 (ここまで燃えていると群衆が集まってくるかもしれないなぁ~。そうだとすると、いつまでもここにいるわけにはいかないかぁ~。)

と、そろそろこの場から離れようとするのだった。

 それでも、炎ばかりは延焼する可能性もあるので、何とかしておかないといけない。

 ここで、死者が出るようなことになってしまえば、イバラグラに対する不信感を抱く者達が出てきてもおかしくないし、反イバラグラ側の人間に好機を与えるだけに過ぎない。

 そうだと思うと、炎を消し、さっさとここから離れるという選択が正しいと自然と導かれるのである。

 「さっさと消し、アルタフの暗殺計画を実行する。」

と、ラナは言う。

 ラナは、フェーナから告げられた任務を失敗するわけにはいかないのだから―…。

 ラナからしてみれば、フェーナの役に立つことが史上最高の喜びで、その喜びを手に入れたいという気持ちのために、命令を絶対に実行し、成功させる。

 その考えに取りつかれている。

 ゆえに、いろんな可能性を見落としてもいる。

 そんなことに気づかないラナのことをワンガース=レッドは哀れな気持ちを心の奥底で思いながら、目の前に広がっている「炎の壁」を破壊しようと試みるのだった。

 ワンガース=レッドは集中し、両手を前に出す。

 そこから小さく水の球体が展開される。

 それは数秒のうちにどんどん大きくなっていく。

 「我の属性は水、全てを飲み込み無へと帰せ。」

と、ワンガース=レッドは言う。

 ワンガース=レッドからしてみれば、こんな厨二のようなセリフを言いたいわけではないが、そういう言葉にすることによって、技のイメージがしやすくなるのだ。

 ワンガース=レッドが天成獣の宿っている武器を扱って戦っていく上で、必要な技法として自身が確立したもので、他人に教えることもできるであろうが、あまり評判は良くない。

 ということで、ワンガース=レッドとしては、こういうことをしないと大技のほとんどを出せないのは、かなりプライド的に傷ついたりするものである。

 だが、今、そのようなことを言っている暇もない。

 「炎の壁」を消すことができなければ、「炎の壁」の中に入ってでも、アルタフを探すのではないかと思い、急いで技を発動させるのだった。

 水の球体は両手で触れ、横の長さがワンガース=レッドの腹部の長さぐらいになったところで、丁度良い発動タイミングになったと、ワンガース=レッドは判断する。

 「水破乱(みずはらん)。」

 ワンガース=レッドの言葉とともに、「炎の壁」に向かって水の球体から水が発射される。

 ブオオオオオオオオオオオオオオ。

 そのような音をさせながら―…。

 そして―…。

 水の球体から発射された水は、「炎の壁」に衝突し、「炎の壁」を水が広がりながら、飲み込もうとするのだった。

 その様は、まるで、一匹の生物体が炎を食しているそのものであった。

 ラナはこの光景を見たとしても、驚くこともないし、さっさと「炎の壁」を消滅させて、アルタフを探し出し、暗殺しないといけないのだから―…。それがフェーナから与えられた任務である以上、絶対に……。

 ワンガース=レッドは―…。

 (「炎の壁」の消化までの時間を考えると、逃げられている可能性が高いだろうなぁ~。サンバリアがいくら城壁を持ち合わせている都市であったとしても、要人のための逃げ出すルートはいくらでもあって、それは王政に関係のあった一部の人間にしか知らされていないだろう。イバラグラ議長が知っているかどうかだな。)

と、心の中で考える。

 消化までの時間を考えれば、アルタフやリファーネに逃げられていたとしてもおかしくはないのだから―…。

 そうだと思うと、こちらのアルタフ暗殺計画は失敗していると判断しても良い。

 なぜなら、アルタフは、サンバリアから抜け出す道をいろいろと知っている可能性が高いのは分かっている。王政時代において、かなりの有力な職に就いており、いざという時の抜け道を知っていてもおかしくはない。それをサンバリアの今の権力者であるイバラグラ側に情報提供をしていない可能性は十分にあり得るはずだ。

 だとするなら、追うのは不可能であろう。

 そうワンガース=レッドが考えている間に、「炎の壁」を飲み込んだのか、熱に当てられたのか、爆発するような感じで、水が四方に細かい粒子の感じで散乱する。

 「炎の壁」があった周囲には雨のような感じが降りしきり、そこから「炎の壁」のあった向こう側を見ることができるようになる。

 そこには、家の壁があるだけだった。

 そう―…。

  (逃げられたか。)

と、ワンガース=レッドは心の中で思うのだった。

第143話-2 イバラグラ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正および加筆していきたいと思います。


では―…。

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