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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
672/746

第142話-10 創造主の石~人に創られし人の一族~と―…

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 半月が南の上に来る頃。

 すでに夜は月明り以外はほとんど沈み切っている頃。

 サンバリアは大きな都市であり、周辺に広大な領土をもつ帝国主義国家であり、その夜は完全に闇に沈み切ることはなかった。

 ゆえに、視界はある程度確保されやすい。

 そんななか―…。

 アルタフは、家の廊下を歩いていた。

 メリサの誕生日が終わり、息子夫婦と簡単な話をし、家へと帰ってきており、アルタフの妻の方は家へと帰ると、部屋の中で就寝につく。

 それでも、アルタフは今宵、何かしらの予感を感じたのか、家の中庭が見える廊下を歩きながら、半月を見ながら、物思いにふけるのだった。

 (………………………生き延びられているのも奇跡のようなもの。二年前に、最悪の場合、死んでいてもおかしくはなかったであろうが、こうして生き延びれた。ならば、すべきことはサンバリアを不幸にしないことか―…。それでも、最悪の場合は―…。)

と。

 アルタフにしてみれば、この二年というのは、自分の人生の延長戦だと思っている。

 二年前の王政崩壊の時に、自分の命が奪われていたとしても、おかしくはない。

 それだけの地位に就いており、長く政治をおこなっていたのだから、不満分子によって殺されていてもおかしくはなかった。

 だけど、奇跡的に生き残っている。

 それは、ある人物のおかげかもしれないが、王が()()()()()()()()()()()()と思っている以上、この二年は自分にとってサンバリアの今の体制への復讐ではなく、今の体制によって弊害を受けている人達の味方であろうとした。

 なぜなら、不満はどんな政治体制でも蓄積されるものであろうし、彼らが意見を述べられる機会は少なく、向かい合うことは為政者側からしたら不可能に近いのだ。

 その溝によって、王政は崩壊したと思っている。

 ゆえに、その反省から今、贖罪という形でなしているのだろう。次の失敗を起こさせないために―…。

 その意見を聞くことは、イバラグラ側にはないのであろうが―…。

 やれるだけのことはやっているという感じであろう。

 人々の意見はしっかりと目で見て、聞いて、確かめるのが一番良い方法だが、限度があるが、しないといけないことである。

 そのような感じで、アルタフは自らの罪を贖うために、この二年があるような感じであるが、日に日に感じていた。

 イバラグラは自身を暗殺してくるような行動をとってくるのではないか。

 イバラグラは短慮な面があるし、イバラグラを利用して自分のためだけに出世しようとしている輩が多くおり、彼らはサンバリアの国民とか、サンバリアに住んでいる人々の繁栄させようとか考えているように見えないのだ。

 そうであるからこそ、サンバリアが彼らのような者たちが権力ある地位を独占するようなことがあれば、サンバリアにとっては不幸なことでしかない。

 そして、そのせいでサンバリアの財政が良くない水準まで低下したのは歴史上の事実であるし、戦争にはどうしても国家予算が、年度分を数倍にも超える費用が、かかってしまうのだ。そのことに気づかない者達が、勝利の余韻に浸りながら、戦争で略奪したあの感覚をもう一度味わいたいために戦争を起こし、自分達の蓄財だけを増やそうとしている。

 あの感覚というものに対する恐ろしさがあるのは、傍から見ているからこそ分かっているし、その悲惨な戦場となった場所をいっぱい見てきた。

 そして、戦争に駆り出されたサンバリア国民の悲惨な結末を見てきた。

 さらに、追いつめられた者達が事態を打開させるために、戦争を起こすことだってある。その戦争での勝利を得ることができれば良いが、それが永続的に保障されることはないだろうし、その経験から、次も同じことをやって、それ以上の成果を得ることができるという期待を抱くものと確実に思う勘違いは恐怖でしかない。

 それは勝利という名の毒であることに間違いない。

 その毒に侵されてしまうと、正常な判断を下すことができなくなり、戦争を美化し、他者に押し付けようとし、反対する者達を暴力的に排除することだってある。反対する者達の命を奪うということをしながら―…。

 このことは、以上に述べた悲惨な結末を迎えることでしか終わりがないようなものである。

 永遠に勝利や優位が約束されるようなことは一切ない。自分を特別な人間、同様の存在と思っているのなら、そいつは危険な存在でしかない。不幸を呼ぶ存在でしかないのだから―…。

 そう思えば、戦争なんて一部の人間にとって得のように見えるが、続ければ破滅という未来の見えるものでしかないし、どこかで終わらせないといけない。そういうものである。

 ゆえに、平和で何かしらに怯えることのない社会がどれほど素晴らしいものかを知っている。平和であれば、国民やそこに住んでいる人々の福祉や教育に対して、多額の投資をすることができ、そこからこれからのサンバリアを支えることができるだけの人材を育成し、それが未来のより更なる繁栄に繋がっていくのだ。変化していくとともに―…。

 ただし、問題点がなくなるわけではないことに注意しながら、その点についてしっかりと考え、対処し、向き合わないといけない。それは決して、放置して良いものだとは限らないのだから―…。

 さて、話がかなり逸れていると思われるので、本筋へと戻す。

 アルタフはこのように真夜中の夜空を見上げながら歩きつつ、考え事をしている。

 最悪の場合には、自分や家族とともにサンバリアの外に出て、どこか別の場所へと亡命しないといけない。国に忠義があったとしても、自らの命を失ってしまったら意味がないことだし、少しでも可能性があることなら、しっかりとそこに賭ける時が重要な場合だってある。逆に、賭けるようなことをしたらいけない場合も存在するが―…。

 そして、アルタフは状況によっては、その賭けをしないといけないことを嫌でも理解させられるのだった。

 サンバリアは周辺よりも明らかに発展しており、異常なほどだ。

 サンバリアの歴史を見れば、ある大陸から渡ってきたある一族の裏切り者が裏から現地の人間を傀儡として建国した国とされ、歴史は、百九十年あるとされている。

 そして、この国が憧れているのは、二百年前に栄えたとされ、すぐに滅びた技術大国であった()()()()()()だ。

 その国の歴史は謎に包まれており、その一部をアルタフは知っているが、それを誰かに話せるような状況にはなっていないどころか、あんな悲惨なことができる国を憧れてはならない、と教えることはサンバリアでは禁じられており、王政の最後の王の時代の一部の時期でしか実現できなかったのだから―…。

 そして、アルタフはそのようなことを思いながらも、一つ、足を止める。

 そこには―…。

 「リファーネ。何でここにいるのですか?」

と、アルタフは尋ねる。

 アルタフからしたら、秘書である人間が、この雇い主の家に真夜中にいるのは明らかにおかしいことである。

 だけど、アルタフはそこに疑問を抱いているのではない。

 「あのねぇ~、私は護衛をしないといけません、アルタフ様。あなたの奥さんが、旦那の命が狙われているから護衛をしてくれ、と依頼してきたのよ。それに、こんな真夜中に外に出られたら、暗殺者に命を狙ってください、と言っているものよ。理解して欲しいわ。」

と、リファーネは呆れるように言うのだった。

 そして、リファーネが秘書をしているのは偽装であり、本来は、アルタフの護衛が目的であり、アルタフを暗殺者の魔の手から守って欲しいとアルタフのパートナーが、依頼を送ってきたのだ。ある一族に―…。

 ゆえに、リファーネは直接の護衛という形で、請け負っているのだ。それ以外にも―…。

 「すまん。じゃが、いろいろと考えないといけなくなると、昔からの癖で、外に出て、空を眺めながら、歩きながら考えるようにしている。そのおかげで、何かしらの決意を固めることができるのだ。レオランダ王の時代から―…。」

と、アルタフは言いながら、過去のことを思い出す。

 あの時代が一番、やりがいのあった時代であったことは今も思ってしまう。

 過去に戻りたいという気持ちはあるが、それでも過去のある時を完全に再現できることはできないと頭では分かっている。

 ゆえに、過去へ戻るようなことを政治的信条にはしないようにしている。

 過去を学ぶことは大事だし、そこから得られることは今の時代においても役立つ可能性があることは考慮に入れた上で、今の時代にあった方向に変化させないといけない。すべてが同じような時間が流れているのか疑問に思えるようなことは絶対に起こりえないのだから―…。

 未来へと何かしらの要素を変化させながら進めるしかないのだ。時代に適応した、その時の環境に適応し、人々の本来の問題を本当の意味で解決できるような方法を採用しないといけない。

 実際に、そのことが難しいのであるが―…。

 アルタフのこのような癖に関しては、そこまで気にする必要はないが、このことで、昔、王宮の関係者がアルタフを探すような事件になったことがある、ということだけは記しておこう。

 その結果、アルタフは護衛とともに夜の散歩をするようにさせられたのである。レオランダ王からも忠告されて―…。

 「……………………………………。」

 リファーネは沈黙する。

 レオランダ王の名前を聞いたからだ。

 だからこそ、あの過去のことを思い出し、命を落としてしまった人間のことが頭の中にこびり付き、離れない嫌な過去がループしつつ、過去が強く、リファーネの感情に問いかける。

 あの女が憎くないか、と。

 それでも、今は仕事中のこともあり、感情を抑えるのだった。

 あの女がサンバリアにいるのは分かっているし、リファーネに過去に親しかった人物を手にかけた以上、どこかで仇を取りたいという気持ちは消えない。消えるはずもない。

 自分ができなかった過去を思い浮かばせるのだから―…。

 いや、実際、親しい人にはもう一人いて、その子は実際に、殺されるところを見たのだから―…。

 そして、気持ちを落ち着かせて、リファーネは私情を心の底において―…。

 「そうですか。死んだ人は帰ってきませんから―…。」

と、振り絞る感じをありながらも、それをアルタフに悟られないように言う。

 気持ちをはっきりと表立って出すのは、今、護衛の仕事をしている以上、大事なところでのミスに繋がる可能性は十分にあるのだ。

 アルタフも、リファーネの感情を理解したのか、あまり口を挟まないようにしていた。

 「そうだ。死んだ人間は帰ってこない。だからこそ、後悔しないように必死に生きるしかないし、失ったことに対して、後悔し続けることもできないし、それを永遠に防ぐこともできない。まるで、頑張っても無駄みたいなことを、どこかで笑われているような気がするよ。無駄な努力だと言われながら―…。」

と、アルタフは言う。

 アルタフからしたら、失うことには慣れたくても、慣れないものだと思っている。

 それに、二年前のあの王政が転覆した事件に関して、後悔がないと言えば嘘になるし、もう二度と失わないようにしたとしても、今の自分状況を思うと、本当に失わないようにできているのかと問われれば、そうであると自信を持って答えることはできない。

 それを誰かのせいにしたい心の奥底の気持ちがアルタフの中にも出ているかもしれない。

 そうであるからこそ、兎に角、無理矢理でも奮い立たせるようなことができるのであれば、したいと思ってしまっても悪いことではないだろう。

 アルタフはゆっくりとリファーネとともに歩きながら―…。

 「無駄かは分かりません。人にできることには限度があるので、頑張っても駄目なら駄目で、仕方ないと割り切るしかありませんよ。」

と、リファーネは言う。

 自身も復讐したい、仇をとりたいという気持ちがあったとしても、それが叶うかなんて分からない。だからこそ、今は、そのことを抑えてでも、仕事に集中する。忙しくすることで考える時を減らしていくしかない。

 「しっかりと自分の役割を分かっているようでなりよりだ。これほどしっかりとした護衛がいれば、暗殺事件など―…。」

と、アルタフが言いかけた時に―…。

 (泡?)

と、アルタフは心の中で言う。

 アルタフの目の前には小さい泡が立っているのだ。

 それが何を意味するかは分からないが、何となくだけど、触ってはいけないと思い、触れないようにしている。

 「!!!」

 リファーネの方はすぐに気づいたのか、すぐに、アルタフを泡の方から無理矢理にでも引き離すのだった。

 引き離しているのと同時に―…。

 「!!!」

 アルタフは目の前で気づくのであった。

 バン!!!

 泡が爆発したのだ。

 それも周囲、数メートルを巻き込むかもしれない勢いで―…。

 アルタフは驚くしかなく、泡が爆発するという日頃では絶対にお目にかかることのできない状況に出遭い、目を丸くするしかなく―…。

 (………この暗殺方法―…。サンバリアの軍事技術であったとしても可能な領域にはなっていない。だとすると、天成獣の宿っている武器を扱う者か!!! フェーナの側が私の暗殺に関与していることか!!!)

と、アルタフは心の中で言う。

 天成獣の宿っている武器を扱う者は、サンバリアではフェーナの管轄下に今は置かれており、彼女の許可なしでは、彼らを動かすことができないことになっている以上、フェーナがアルタフの暗殺に関与していることは明らかであり、アルタフは気づかないわけがない。

 そして、アルタフは最悪の事態であることを理解するのだった。

 (サンバリアでの私の活動はこれまでか―…。)

と、心の中で思わざるをえなかったのであった。

 

第142話-11 創造主の石~人に創られし人の一族~と―… に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正および加筆していきたいと思います。


ようやく、事態が動きますねぇ~。

議場の議論対決はいろいろと考えることが多かったので、大変でした。

次回で、第142話は完成だと思います。

では―…。

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