第142話-3 創造主の石~人に創られし人の一族~と―…
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
「アルタフ様。」
と、一人の女性が声をかけてくる。
アルタフは、その声をかけたのが近くにいる自身の秘書であることをすぐに理解し、秘書のいる方、右隣の方へと視線を向ける。
サモーラは自身が気持ち悪い存在であることを知っているので、普段から見ないアルタフの秘書には視線を合わせないようにして、秘書の女性を不愉快な気持ちにさせないように配慮している。
過去にサモーラはただ、声をかけただけで、女性に対して不愉快な思いをさせてしまったことがあるので―…。あくまでも、その女性が落としたものを女性に渡そうとしただけなのに―…。
その経験がサモーラの心の中でマイナスなことになっているのは確かである。
さて、アルタフは女性の方へと視線を向けた後―…。
「サモーラ君には初めてだったようだ。今日から私の秘書をしてもらっているディケル=リファーネさん。彼はサモーラ議員。私と同僚で、将来、サンバリアを背負えるほどの人材だと私は思っている。見た目は人が好かないようだが、それを覆い隠してしまうほどに、人に対して優しく、誰でも公平に接することができる中身がしっかりとした人物だ。」
と、アルタフは言う。
リファーネの人柄に関しては、まだそこまで詳しくは知っていないようにしているが、サモーラの方はある程度知っているので、リファーネにこういう人物であることを紹介しておく必要がある。
怪しい者ではない、と―…。
リファーネは、サモーラを見ながら―…。
(見た目は気持ち悪く見えるけど、勘からして大丈夫のようね。人は見た目ではないことを示してる?)
と、心の中で思う。
気持ち悪く感じるという気持ちは持っているようだが、それは見た目だけの話であり、見た目に関しては、いろいろとケアをしたり、整形をすれば、整えることができるので、そうすれば良いと思う。
だけど、性格に関しては、それ以上に変わらない面があったりするし、合わないととことん合わないことは十分にあり得る。
そして、リファーネ自身は自分がかなり若い部類であるし、サモーラを異性として好きになるようなことはないだろう。サモーラはすでに三十代に入っているし、年齢からしても離れすぎていると思い、恋愛対象にはそもそも入らない。
まあ、年齢差なんて関係ないと思っている人もいるので、年齢を基準に判断することがすべての面において正しいかどうかと言われると、正しいとは言えない。
リファーネは、アルタフの言葉の後に―…。
「初めまして、アルタフ様の秘書となりました、リファーネです。リファーネとお呼びください。」
と、言う。
これは、あくまでも身分差というものがあるということの表れである。
サモーラもすぐにそれは気づいているし、自身はすでに妻帯のある身であり、パートナーはかなり綺麗な人で、サモーラの一目ぼれであり、サモーラはパートナー一筋なのだ。
そういう意味で、リファーネを恋愛対象で見たりすることはない。
ちなみに、サモーラを最初は嫌っていたサモーラのパートナーであったが、サモーラによって助けられることがあり、それ以後は惚れてしまっているのだ。サモーラがお金ではなく、自らの身を挺したということがあるのだろう。これ以上は蛇足になってしまうので、避けることにしよう。
「こちらこそ。私はサモーラです。アルタフ院は、サンバリアにおいて絶対に必要な人であり、過去には国のナンバーツーとなり、王を支え、侵略戦争からの解放に尽力された御仁です。彼から学べることは多いでしょう。頑張ってください。あなたの将来に期待しています。」
と、サモーラは言う。
ぺこりとすることも忘れない。
議員の秘書になるのは、秘書から議員となりたい者が多いし、サモーラはリファーネのことをそのように判断したのだ。若い人で議員の秘書になれるのは、優秀な存在であると認められないといけないからだ。
ゆえに、将来はサンバリアを背負うほどの議員になるのだと思っているのだ。もしくはサンバリアのトップに―…。
「はい。」
と、リファーネは返事をする。
今のリファーネの気持ちに関しては、ここで触れる必要はないだろう。
なぜなら、将来、サンバリアのトップになることは―…。
そして―…。
「では、そろそろ向かうとしましょうか、サモーラ君。」
「ええ。」
言いながら、二人は議会のある部屋へと向かおうとする。
アルタフは忘れていたのを思い出したのか、リファーネに―…。
「今日は、儂の幼い孫の誕生日。孫にプレゼントを買わないといけないから、今日の会食は中止してくれるかい。」
と、アルタフは言うのだった。
そう、今日、アルタフの孫の一人が誕生日なのだ。
まだ、かなり幼いのであるが、幼い子ほど、周りの大人がいっぱいいた方が将来にとって良いだろうと、アルタフは考えているし、母親と子だけが世界の全てではないのだから―…。
人を見る目を養うのにも、多くの人を見るということが小さい頃から大事なのだ。
幼い子を劣った存在で見るのは危険なことでしかない。大人よりも優れている面はあるのだから―…。
それを説明できるほどの専門家ではないが、年齢を重ねるごとに優れるものと劣っていくものがあり、そのことに気づきながらも、今の自分を受け入れられるだけの度量を持つことが必要であることは説明できる。
若い頃がすべての面で良いとは限らないことに関しては当然のことであるし、同時に若い頃の素晴らしさもまた忘れてはならない。
生きるとは簡単なことではないのは確かだ。
「アルタフ様、そんなことをしてもよろしいのでしょうか。相手はサンバリアの産業の中心的人物とのものとなっていますが―…。」
と、リファーネが言う。
リファーネからしたら、サンバリアの中でもかなりの影響力がある人物であり、アルタフでも断ることはできないものであろうと、感じるし、それをドタキャンしたらその人物からどんな妨害をされるか分かったものではない。
権力者は周囲から自分が大事にされることを望んでいる者が多いのだから―…、無視されるとすぐに怒って感情的となり、アルタフを妨害するような行動をとってきてもおかしくはないのだ。
そんなことを意図的に起こすのは止めた方が良いのではないかと、リファーネは思うし、アルタフの孫のためなら、社会を敵に回す行動は止めて欲しい。
「大丈夫。そいつらは私を抑えつけようとしているだけだろ。軍事産業で儲けられているから調子に乗っているヒヨッコどもだ。本当の経営者というのは、自分だけでなく、会社、社会をも、視野に入れて自分の哲学を語り、部下が動きやすいようにするもんよ。責任は自分がとると言ってな。ということで、孫に比べれば、無視しても良いほどの些細な存在でしかない。ということで、頼む。」
と、アルタフは言う。
この言葉を聞いてサモーラは、
(…………………………………孫と軍需産業のトップを比較してるよ、この人―…。)
と、心の中で思う。
優秀な人であると分かっているのだが、孫に関しては甘い、と思ってしまうのだ。
サンバリアの軍需産業は、サンバリアの扇の要と言われているほどに重要な基幹産業である。軍事技術とそれを一般向けに下した技術によって繁栄の極みを気づいているのがサンバリアである。
ゆえに、軍需産業にとって、侵略戦争は自らの軍事技術がどれだけの成果を出すのかを試すにはちょうど良い場であるし、それを止めることは決して、彼らにとって良い心象とは逆の気持ちをもたらすだけなのだ。
純粋に知りたい、自分達の技術がどれだけの効果を示すのか、そのことによって自分達や周囲、それだけでなく世界にとってどのような影響が及ぼされるのか、という面を視野狭窄の状態にして見えてなくして―…。
つまり、悪い影響を及ぼす可能性よりも自分達の素晴らしい技術の内容ばかりに囚われてしまい、最悪の可能性の考慮を考えず、突っ走ってしまった結果、社会にとって危険な状況を出現させるのだ。
そのことによって有利になる勢力や人、組織はいるだろうが、それと同時に、自らの存在に対する危機を抱くであろうし、人類のすべてを崩壊させるような結果を導くことだって十分にあり得るのだ。
そんな恐怖と多くの人々は向き合うことになるし、それを排除したくなるのは当然の理である。
そうすることで、人々は自らの身の安全を守ってきたのだから―…。
一方で、人類をも破壊するかもしれない技術を手に入れることによって、自らを優位に持っていく者たちにとっては、それは自らを優位させていくために必要な技術となるので、それを排除されたり、破壊されるようなことを恐れるし、自らの優位が消失されることを基本的には望まない。その例外はあるかもしれないが、ほぼないと言った方が良い。
自らの優位な状態を一回失えば、再度、戻って来れるかは分からないし、二度と戻ってこれないのではないかということを考え、恐れる。その恐れを排除したくて、優位な状態をもたらしている技術にしがみつき、その強さを知りたいという好奇心が人類を滅ぼすかもしれない可能性から目を逸らさせる。いや、頭の中のかなり隅っこへと最悪の事態の可能性を降りやり、封印するのだ。それを解除する者たちもいるだろうが、それをなせない者たちにとって、その優位を誇りに思う輩は神のような存在となる。
その神に縋り、その神を骨の髄までしゃぶりつくして、自らの優位を維持し、自らの欲望のままに行動する。
それが、自らを破滅させることであったとしても、快楽によって気づかないようにして、目を逸らす。危険なことでしかない。
要は、どんなものにもデメリットが存在し、そのことにしっかりと目を向けないといけないし、対処法をしっかりと作っておく必要があるということだ。
そして、それは人類の歴史上、数々と存在しているかもしれないが、それを判断するのはかなり難しいことであるし、以上の詳しく述べたようなことから、敵対する者、勢力、組織、社会などからの関係によって成り立ったものであろう。危機が人に何かしらの解決策を与えることがあるのだから―…。そうでない時もあるが―…。
さて、話を戻す。
リファーネは呆れながら、
「分かりました。」
と、言う。
リファーネからしても、孫と軍需産業のトップを比較するようなことはあり得ないし、仕事での人間関係はしっかりとした方が良いだろうと思ってしまう。
だけど、リファーネにとっては、孫の誕生日優先のアルタフである方がありがたいということは確かだ。それは、アルタフのサンバリアにおける立ち位置と状況を考えれば、すぐに分かることであるから―…。
リファーネは、二人を見ながら、現実世界における携帯電話のような機器を出し、別の秘書官に連絡を入れるのだった。
その動きは、まだ、慣れていない人のようなものでしかなかった。
リファーネ以外にアルタフを見ている者が一人。
(あれがイバラグラの政敵が一人、アルタフ。サンバリアが王政の最後の王の時代に宰相として活躍した男で、二年前はアルタフのせいで妥協しなければならなかったとイバラグラが腹を立てていたな。まあ、この二年間はイバラグラにとっても有効な期間であり、いろいろと追いつめるための戦力も整ったものだ。我々はイバラグラのためではなく、フェーナの部下だから、フェーナの意向のために行動するとしましょうか。)
と。
この人物にとって、イバラグラという存在は従うべき相手だと思っていないが、フェーナが従っているので、従うという感じだ。
そして、サンバリアは二年前に王政が崩壊し、共和政へと移行した。
この二年間、サンバリアのトップの地位にあったのは、イバラグラであり、彼は議長となり、この国の権力を掌握し、少しずつ自身の味方を増やしていったということだ。
そして、この人物からしてみれば、このような歴史などどうでも良い。
大事なのは、自分達はフェーナの部下であり、フェーナの意向に従うということだ。
この国の本当の支配者はイバラグラではない。
そのイバラグラでさえ、本当の支配者にとっては、馬鹿で恥ずべき存在でしかなく、一回ぐらいは殺したぐらいに―…。
そして―…。
まあ、本当の支配者は、あまりサンバリアの政治には二年の間、介入していないようだが―…。
さて、話に戻すと、この人物はアルタフを監視し続けるのであった。
第142話-4 創造主の石~人に創られし人の一族~と―… に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正および加筆していきたいと思います。
次回からは、サンバリアの議会での論戦が始まります。
補足がかなり長いものとなります。
私個人としては、かなり書くのが難しく感じることはありましたが、苦には感じなかった場面です。数回分があります。
では―…。