第141話-7 船は沈めさせない
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
話は船上へ。
そこでは、すでに捕縛しており、後は船員と船上の警備関係の人に身柄を引き渡すだけになっている。
だけど、まだ夜なので、どうしようもない。
(起きるまで待つのは大変だけど、そろそろ―…。)
夜が明ける。
そう、思っているのが礼奈である。
今夜の襲撃によって、首謀者で、実行犯であるアルぺエスのメンバーの多くを捕まえることができたが、全員というわけではないし、そのことには今のところ、瑠璃たちは気づいていない。
まあ、姿を見たわけではないので、全員の―…。
そんななか、ミランは体を動かしながら、変なことをしていないかを見張る。
そんななか―…。
少しずつ日の明かりが見えるようになる。
(朝ね―…。)
と、ミランは心の中で思いながら、こちらの方へと誰かがやってくる。
「なんですか!!! これは!!!」
と、声がする。
その後、やってきた船員に事の次第を説明することになった。
その説明を聞いた船員の人たちは納得してくれたけど、これだけの暗部の人間を預けることはできないと判断し、困ってしまうこととなり―…。
「船長と相談することになります。」
と、言って、どこかへと消えて行ってしまうのだった。
その様子を見たミランは、
(アルぺエスのメンバーとかじゃないと良いんだけど―…。まあ、この数をラナトールまでの間、見張っておくなんてことはできないし―…。この船だと牢屋のようなものはないし、軟禁したとしても、逃げ出される可能性があるのは否定できないわ。)
と、心の中で思いながら、困り果てるのだった。
実際に、困っている。
数が多いのもあるが、軟禁すれば、確実にまた、襲って来る可能性があり、毎晩、寝ることもできないし、場合によっては、一日中警戒しないといけなくなり、こちら側がじっくりと休むことができず、自分達の側に犠牲者を出すような展開になってもおかしくないのだ。
そのような選択肢を肯定的に受け入れるようなことはできないし、する気もない。そんなのは嫌だ、その気持ちでしかない。
どこかへと船員が行っている間、クローナの方も体力を取り戻したのか、動き出し、礼奈のいる方へと向かう。
「お疲れさん。」
と、クローナは言う。
「クローナ、大変なことを押し付けてごめん。だけど、あの矢の攻撃は防がないと、船ごと沈没していたかもしれないから―…。そして、矢を放った人間は船の中に隠れた。一体、誰なんだろうね。」
と、礼奈は言う。
少しだけ落ち着け、余裕が出てきたので、肝心なことがまだ解決されていないなというのを感じた。
そう、アルぺエスのメンバーと戦っている時に、船を沈没させるほどの威力で矢を放った人物は一体、どういう存在で、何を考えて、このような行動をとってしまったのか、気になるのだ。
こんなことをしたら、船に乗っている人の多くを犠牲にする可能性があり、このような作戦を実行するのに躊躇がないのは、何かしらの妄信という類のものがなければならない。
礼奈は気になりはしているが、妄信の類にまでは気づいていない感じだ。
子どもが、そのようなことに気づけるのであれば、十分に天才であるとか達観しているとかという表現の方が正しく、そのような子どもとは思えない雰囲気が似合っていると周囲が感じてもおかしくはない。
礼奈はそうではないし、このような異世界の出来事に巻き込まれている以上、平和の国の子どもが経験するようなことが生涯にとってあるかないかと言えば、ほとんどの人がないと言ってよいことを体験しているのだから―…。
そうである以上、少しでも考えることが増え、物事に対して、多角的に捉えないといけないということになってもおかしくはない。人の裏の部分や狂気的な部分に関して―…。
平和な世界であったとしても、人の良き面について多様な部分を考えるようなことは十分にあるだろうが、それに気づくのには時間というものがかかったりする。種類における分類してではなく、一面的にしてしまうせいで、多様な面に気づきにくいのであるが―…。
これが事実ではあるかは分からないが、ある意味で、一部分的に正解ということもあり得るだろう。経済的な概念の部分解をすべての場面に当て嵌まることである全解として社会に流すようなことをしている人々よりもマシなものであろうが―…。
さて、話を戻し、礼奈は矢を放った人間がまだ生き残っていると判断して、これからはこの件が一時的なものか、断続的なものであるかをどこかで判断しないといけない。
(はあ~、勘だと、この矢を放った人間とは、どこかで邂逅しそうな感じなんだよねぇ~。)
と、礼奈は心の中で思う。
女の勘。
そんな類のものだ。
直感は、無意識によって頭の中に浮かび上がるもので、それを理由付けするためにはいろんな得られている自身の経験、知識などの情報を再度、探り出して、最もらしい繋がりを見つけないといけないのだ。その判断基準には、自分やそれ以外との関わりによって納得させられるということを自身の中での経験に基づいて、妥当と判断できる基準が当てられる。
要は、自分と他人を納得させられるだけの説明と根拠が必要であるということなのだ。
「分からない。」
と、クローナは元気よく答える。
クローナからしてみれば、矢を放った人間を見ることができたとしても、その要旨を特定できるだけの根拠を持ち合わせていない。
そうである以上、クローナからしても、そのような人物を探し出すことは不可能に近いということは分かり切っていることなのだ。
だけど、見つけることができるのであれば、事情を聴きたいという気持ちはあった。
そして、クローナの答えを聞いた礼奈は納得して、暫くの間、船員が戻ってくるのを待つのだった。
船員が戻ってきた後。
船員とともに、船長自らがやってくるのであった。
船長が自己紹介を終えると、ミランが交渉する。
「では、彼らは海の上に置き去りにするということで―…。あまり人道的な方法だとは思えませんが―…。」
と、ミランは言う。
ミランからしても、人道的な方法をとりたくないわけではない。
この船は軟禁しても逃げ出せないようにすることができる場所はないし、牢屋の代わりになるようなものはない。
そうだと考えると、お客の要望に応えるためには、船の中にある緊急ボートを使って、彼らを海のど真ん中に放置するしかない。
この海の中であったとしても、万が一の場合、生き残れる可能性は僅かばかりでもあるのだから―…。
そして、このような人道的ではない意見に賛成しないといけないのは、ミランたち自身の命を守るために必要なのだ。
これを正義のおこないだと思い、正当化してはいけない。
我々は、本来望んでいた最大限に人道的な選択へと持ち込むことができなかったのだ。そう、我々は残酷な選択に一敗してしまい、そのような判断しか下せなかった自分を悔いないといけない。
そして、学ばなければならない。次こそは良い選択をするために、自分の中にある知識の応用だけでなく、学び、知識を吸収し、そして、経験として周囲の人々に広めることができ、それを周囲の人々が誰でもできるように洗練しないといけない。
それが知識であり、知恵であり、役に立てることなのであるのだから―…。
人類が土器を広め、農業を広め、騎馬を広め、などの数々の発明とされたものを共有できる場面にある者たちが、共有し、そこに後に繋がることになる要素の追加を乗せられるようにしていったように―…。
そのようなことを無視して、自らの完全性というものに意識的もしくは無意識的に陥っている者達は、人類のこのような歩みという名の歴史を見落としてしまい、自らの都合が良い内容を歴史として満足して、新たなことを知ろうとしない愚か者となり果て、変化していく未来を何も変化しない未来であり過去であると捉える愚を犯す。
そのような奴らのために、周囲の人々が不幸に巻き込まれるのは悲しい出来事でしかなく、それに陥らないと思っている人ほど、自分の今の状況の完璧もしくは完全であると思っていることに、注意しないといけない。注意しすぎてもし足りないものでしかないのだから―…。
「仕方ないでしょう。我々は彼らをラナトールまでの航路の間に、捕まえておけるだけの方法を持ち合わせていないのですから―…。残酷ですが、私たちはこのような選択肢しか提示できません。お客様の安全を保障するには―…。」
と、船長は言う。
そして、気絶している間に、それを実行しないといけないと考えると、迷っている時間はない。
人は選択する時に、時間の制約をもろに受けることを避けることはできない。思考は時間を消費し、選択の結果は、ある未来の一地点において示される性質を持ち合わせているのだから―…。
選択の結果に関しては、正しくはある未来の一地点において示された人が感じるだけに過ぎないのであるが―…。
ミランの方も船長が言っていることがわかるからこそ、嫌でも賛成するしかない。
「分かっています。」
と、ミランは返事するしかなかった。
そして、以後、アルぺエスのメンバーは海へと緊急用のボートの上に乗せられ、海上へと船から離され、放置されるのだった。
それを瑠璃や礼奈、クローナは、悲しそうな表情で見つめるが、自分達が我が儘を言えば、自分達の身を危険に晒す可能性があるので、思いとどまるようには言えなかった。
それを正しい選択だと思う気にはなれない。
以上にも示したように、自分達の不甲斐無さでしかないことは確かなのだから―…。
こうして、一連の事件は幕引きとなるのであるが、アルぺエスのメンバーの一部は生き残っているし、海へと放置されたメンバーを助けるようなことはできない。
できるのは、無事を祈ることのみであったが―…。
その後、瑠璃たちは自分達の部屋へと戻る。
船長は申し訳なさそうにしていたが、瑠璃たちからしてみれば、自分達が招いた可能性もあるので、船長に対して、責任を問うことができなかった。
以後、その翌日は、眠いのを我慢したせいか、ぐっすりと眠るのであった。瑠璃たちは―…。
さて、話は別の場所―…。
ラナトールの近郊―…。
その場所では、一人の人物がいた。
(ラナトールか。馬鹿おやじがリース近郊で活動しているのは知っていたが、それでも、暫くの間、外に出させてもらえなかったなぁ~。だが、イスドラーク近くにいたから抜け出すことができた。さて―…。)
と、一人の人物が心の中で思う。
この人物にとって、血の繋がった父親に対しては、あまり良い印象はない。
過去に囚われている存在であり、過去の幻影を追いかけ、今いる子どもたちのことを無視しているのだから―…。
そんな人間を許せる気持ちにはなれないし、復讐の一つぐらいしてやりたい気持ちでいっぱいだ。
それと同時に、復讐は無意味だということを、虚しいことだということを見ていたからこそ分かる。
ゆえに、もう一人の家族のために、止めないといけない。
(リースの方へと向かうことにするか。)
そう思いながら続ける。
(馬鹿おやじ、許さない。)
と、強く思いながら―…。
【第141話 Fin】
次回、王政の遺物は命を狙われる に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正および加筆していきたいと思います。
次回からは、第142話の内容です。
内容は、サンバリアの中だよ。
ドロドロとしているよぉ~。
では―…。