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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
660/747

第141話-5 船は沈めさせない

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 ランシュがなぜこんな場所にいるのか。

 その疑問を思う人間はいるだろうが、今はそのことについて述べることでもなかろう。

 クロニードルからしてみれば、なぜ、ランシュにバレているのか不思議に思わないでもないが―…。

 (シエルマスの残党か!!!)

と、クロニードルは一つの結論に達する。

 シエルマスの残党なら、クロニードルの野望を探るのは簡単なことでしかないし、優秀な人間がランシュの側についているのは知っている。

 そうだと分かれば、冷静になることはできる。

 ここを逃れられるかどうかは別だが―…。

 「ランシュ様、直々にお越しになるとは―…。ならば、玄関から堂々とやって来られれば良いのに、どうして、暗部のようなやり方で登場するのでしょうか。お聞かせ願いたいものじゃ。」

と、クロニードルは言う。

 クロニードルからしたら、余計なことを言わない。

 それに徹することが重要だ。

 言葉を発する数の多さは関係ないが、必要な情報以外は何も出してはならないし、論理的なことを考えてはいけない。

 非論理的で、非理性的なことを言っている方が得である。

 なぜなら、矛盾を指摘されようが、子どもが駄々をこねるようにして、会話にならないことをやれば、簡単に事態を悪化させることはないということを知っているからだ。相手は尋問をおこなう上で、嘘の供述がないかを探る可能性があるからだ。今のリースの体制ではその可能性が高い。

 ということは、尋問であったとしても、無理矢理言わされたことに対しても、しっかりと裏を取るはずだ。そこが彼らの弱点であり、裏さえ探られるようなことがなければ罪を着せるようなことはできないだろうし、着せようとしても会話できないような輩なら、無罪にしないといけない場合だってある。

 そういうところを狙っているのだ。

 まあ、全員が全員、そんなことをするわけではないが、そういう輩がいることはリースでも十分に知っているので、対策はあるというものだ。

 クロニードルもそのことを知っているはずであろうが、そうでもない。時間稼ぎをして、相手の降参を待つ、ということをも知っているからこそ、その考えが余計に、頭から失念させているのだろう。

 「暗部のような登場をしたつもりもないな。俺は、ちゃんと正々堂々とやってきたつもりだがな。俺以外にも、俺が暗部のような登場させてくれる素晴らしい部下がいるのだからなぁ~。それに、今回はスペシャルゲストもいるから、十分に楽しめるかもしれないなぁ~。………さてと―…。」

と、ランシュは一回、間をおいてから言い始める。

 ランシュとしては、この場に自身がいる理由はしっかりと分かっているのだ。

 その理由とは―…。

 「俺からしてみれば、お前なんて簡単に殺せるわけだ。誰だったかな、ミラング共和国の対外強硬派の実質のトップで、謀略組織なんて言っていたシエルマスのトップなんて言われながら、あまりにもあっさりと殺されたのは―…。暗部ならもっと鍛えておけよ、と思ったぐらいだ。グルゼンを殺したとか何とかと言って裏で威張っているようだが、グルゼンの足元にすら及ばない。」

と、ランシュは言う。

 最後の方は完全に圧をかけている。

 ランシュから言わせてみれば、グルゼンの方がラウナンよりも圧倒的に強かったし、グルゼンがこんな奴に敗れるとは到底思えなかった。

 そして、グルゼンの生存に関しては、ベルグはランシュに一切教えていない。

 そうである以上、ランシュからしても、不思議でしかないが、それを今、この場で疑問として口に出す気はない。グルゼンともう戦うことはないだろうということが分かっただけでも十分だ。

 自らの目的を増やしたいと思ったことはないのだから―…。

 今は、増やしたところで問題はないだろうが、リースの政務に追われている以上、増やせるかは分からないが―…。

 そんなことよりも、目の前の場面に集中しよう。

 (!!!)

と、クロニードルは心の中で驚く。

 勿論、最近、ランシュによってラウナンが殺されたということを知った。

 だけど、その時にも驚きはしたが、ランシュの実力ならラウナンを倒すことは可能であろう。それだけの実力があるのは、ラーンドル一派からの話で分かっていたのだから―…。

 それでも、あり得ないと思えるのは、ラウナンを簡単に倒してしまったということだ。

 その話をランシュ本人の口から聞かされるようなことがあったのだから、驚かないわけがない。ただし、感情を見せないようにする。必死に―…。

 (ラウナンは、あの時点でシエルマスのトップとして、ミラング共和国の天成獣の宿っている武器を扱う者の中で一番強い存在。それをグルゼンの足元に及ばないだ……と。出まかせに決まっておる!!!)

と、クロニードルは心の中で結論付ける。

 クロニードルからしてみれば、ランシュの実力を把握できているわけじゃない。

 クロニードルは、天成獣の宿っている武器を扱うような人生を歩んできたわけじゃないし、戦闘訓練を受けてきたわけではない。商人であり議員を輩出している一族の中に生まれ、議員として生きていたのだから―…。今は商人であり、各国に対して、自分の属している商会が有利になるように行動しており、そのためのコミュニケーションと相手の心の隙を会話で突くということが重要な道具であり、手段となった人生を送っているのだから―…。

 そうだとすると、ラウナンが敵わない以上、クロニードルが戦って勝てるようなことはないし、今、ナガレダはここにいないのだから、武力という観点では絶望的な状況でしかない。

 だからこそ―…。

 (ここから逃げ出すことが先決じゃ。だけど、簡単に逃がしてくれることはない。何かしらのこじつけの理由が必要じゃ。)

と、クロニードルは心の中で考えながら、機会を窺う。

 そんななか、ランシュは、冷静に会話する。

 「少し話が横道に逸れたな。グルゼンもいない、ラウナンもいない。そうである以上、ファウンダ=クロニードルが俺から逃れる術はない。ちゃんと知っているぞ。天成獣の宿っている武器を扱う者……がいるアルぺエスか。あいつらは船上におり、例の三人組の命を狙っているので、ここにはおらず、お前を捕まえるのにちょうど良い機会となった。それに、例の三人組の実力をつけさせるためにアルぺエスは逆に利用させてもらったとさ。どこかの老婆によると―…。」

と、ランシュは言う。

 その間、ランシュは魔術師ローという存在の恐ろしさを理解するのだった。ローの実力というよりも、まるで、何かしらと瑠璃たちを戦わせるための実力をしっかりとつけさせようとしていること。その何かしらを倒すためなら、何かしらの狙いすら利用することを平然とする、まるでどこか冷酷さというものを感じたのだった。

 そういう意味でランシュは、魔術師ローにそこまで関わりたいとは思わなかった。

 関わってしまった以上、逃れられるものではないものであろうが―…。

 ローという存在はそれだけ大きなものである。

 ローに関して、詳しいことは今のところ言えるものではない。

 「そして、ファウンダ=クロニードル、お前にはラーンドル一派を使って、クーデターを仕掛けた罪がある。失敗してしまった以上、さっさとリースから出ていくべきだったな。しっかりと証拠は押さえさせてもらっている。観念しろ!!!」

と、ランシュは続ける。

 ランシュからしたら、こんな人物の確保なら部下でも簡単にできるだろうに、と思ってしまうが、王妃の命令より仕方なく来たということなのだ。

 ランシュからしたらゆっくりと明日のために寝たいという気持ちがあるのだ。

 仕事が忙しすぎるので―…。

 書類仕事が特に―…。

 一方で、クロニードルは心の中で悔しそうにしながらも、考える。

 そして―…。

 「ラーンドル一派がクーデターを起こそうとしたのは知っておる。それを王妃に復帰されたリーンウルネ様が阻止されたとか―…。だけど、それはラーンドル商会の財源を使った上でおこなったことであろう。儂らに関わる予知などありはしない。そう、やつらは儂の住んでいた国を滅ぼした主要勢力じゃぞ。そんなのに協力するなんて、真っ平ごめんじゃ。政治の世界を知らぬ輩が妄想で言っていることに過ぎん。」

と、クロニードルは言う。

 傲慢な口調を交えながらであるが、そこには嘘がないと相手側に思わせるだけの言い方はしっかりと心得ていたりする。

 嘘もまた一つの武器であり、矛盾をなるべく発生させないようにすること、それと同時に矛盾が指摘されたとしても、その矛盾が正しいかということを証明させないようにすることにはかなりの自信を持っている。それだけクロニードルはそういう経験をかなり実践という場で積み上げてきているのだ。

 だけど、自分の血筋が良いという面もあり、そこまでの実力があるのかは不明であるが、成功したという体験によって、自身の自信へと昇華させることにはなっている。

 さて、話を戻し、クロニードルは考えながらも、体を僅かばかりでも動かすようにしている。

 嘘を吐く時に人は動かなくなりやすいので、体を動かすことを意図的にするようにしている。

 そのことにランシュが気づかないわけがない。

 (なるほど。交渉の場で嘘だと気づかれないように体を意図的に動かしているが、あまりにも不自然だ。不自然な動きをしてしまえば意味などない。後は、帳簿と……………確実な証拠を使うか。)

と、ランシュは心の中で言う。

 ランシュからしてみれば、証拠はしっかりと押さえているのだ。

 そして、クロニードルが言い逃れできるということは一切ない。

 証拠は今、運ばれているのだから―…。

 「妄想ねぇ~。政治の世界もしっかりと体験させてもらっているからこそ分かるが、どんなに敵であったとしても、真の同盟がないことは分かっているが、自らの目的のために邪魔となる存在を出し抜くためなら、そいつらから目を欺くためにかつての敵であったとしても協力することは十分にある。そして、クロニードル……お前は、ラーンドル一派のクーデターを成功させて、裏からリースを乗っ取り、そこから今度は自分達がラーンドル一派や商会からリースの人々を救うようなことをした上で、今のリースの領土をすべてミラング共和国を復活させ、自分の傀儡を支配者として、自分の思い通りにしようとしていたのじゃないか。だけど、ラーンドル一派がクーデターに失敗し、今度はサンバリアの力を借りて、リースを滅ぼそうとしているのか。こっちはサンバリアにも知り合いがいて、そいつは教えてはくれないだろうが、そいつの関係者がリースにいれば、こっちはすぐに気づく。それも、ファウンダ=クロニードルと交渉しているのだからなぁ~。それも三人組を始末することで、サンバリアの力を借りて、リースを滅ぼそうとしているのだからなぁ~。」

と、ランシュは言う。

 これ以上はグダグダになりそうなので、ここで一端区切る。

 そのようにランシュは思っているからこそ、区切ったのだ。

 そして、ランシュはその間も、クロニードルが逃げることのないようにするために、隙を見せないようにする。

 その隙があったとしてもすでに―…。

 「あ~、あと、この部屋には俺だけでなく、何人か俺の側の人間がいるんだわ。」

と、ランシュは言う。

 そうすると、ヒルバスが姿を現わし、

 「ランシュ様、クロニードルが逃げ出す時に私が登場して、他の人で覆った方が良いでしょうに。そこは空気を読んでくださいよぉ~。」

と、ヒルバスはランシュに対して文句を言う。

 その文句は、ヒルバスとしてはそっちの方がクロニードルのメンタルを削ることができるし、絶望感というものを与えることができる。

 そういう相手の動きも考えた方が良いだろうに、という叱責である。

 それでも、ヒルバスが油断しているように素人であるクロニードルには見えないだろうが、しっかりとヒルバスはクロニードルを警戒している。

 「悪かったなぁ~。」

と、ランシュは申し訳ない気持ちは言葉と裏腹にないという感じで言う。

 その間に、クロニードルは、

 (今じゃ!!!)

と、すぐに心の中でゆっくりと気づかれないように逃げ出そうとする。

 だけど、ランシュとヒルバスは気づいているし、それを追うようなことはしなかった。

 なぜなら―…。

 「ふ~む、初めて会うの~う。ファウンダ=クロニードルよ。」

 そう、やってきていたのだ。

 「リーンウルネ!!!」

と、クロニードルが驚きながら言うのだった。

 それは、クロニードルにとっての絶望でしかなかった。

第141話-6 船は沈めさせない に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正および加筆していきたいと思います。


さあ、船上での襲撃事件の大詰めがやってきましたぁ~。

次回、次々回でなんとか仕上がるかもしれません。

ということで、サンバリアの話を交えながら、欲望の策動がぁ~。

では―…。

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