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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
659/748

第141話-4 船は沈めさせない

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 瑠璃は近づいていく様子を見る李章。

 (「緑の水晶(すいしょう)」が反応しない。大丈夫ってことなら、瑠璃さんが敵の親玉を倒したということになるのですか。よかったです。)

と、李章は心の中で安心するのだった。

 李章としては、瑠璃が傷つけられることを嫌うのだから―…。

 大切な人なのだから、そう思って当然のことであろう。

 一方で、瑠璃はナガレダの方に近づいていき、近くまで来る。

 (襲われている感じはない。何か仕掛けてあるという感じもしない。本当に倒されたのでしょうか。警戒はしっかりとしないと―…。)

と、瑠璃は心の中で思いながら、慎重に向かって行く。

 全身の感覚をはっきりとさせながら、周囲にあるものの違和感を見落とさないようにしながら―…。

 その動きは慎重すぎるものであり、もう少し速く歩くことができるだろうというものであろうと指摘する人もいるかもしれないが、瑠璃の動きは現段階においては正解の可能性が高い。

 なぜなら、ナガレダが罠を仕掛けていないという可能性を否定できるだけの根拠を瑠璃は感じていないし、分かるのは「緑の水晶」を持っているか、その手の能力を持っている能力者ぐらいのものだ。

 そうである以上、慎重であることは悪い選択肢ではないことになる。

 そして、瑠璃はナガレダのいる場所に辿り着く。

 (…………………………………。)

と、瑠璃はナガレダを見る。

 変な違和感を感じないか数秒の間―…。

 そして、瑠璃は安心したのか。

 (完全に倒せてる。)

と、心の中で言い、すぐに縄を出して―…。

 「じゃあ、瑠璃さん。私がしておきます。慣れていないと思いますので―…。」

と、李章がやってきて、自分が代わりにナガレダを縄に縛ると言う。

 「任せた。」

と、瑠璃は言うが、かなり心の中で緊張するのだった。

 (李章く~ん。)

 とろんとした感じの表情に一瞬なるが、すぐに元に戻すのだった。

 ここはさっきまで戦闘がおこなわれていた場であり、まだ、終わっていないのだから―…。

 後は―…、クローナがラーグラの放った矢の攻撃を完全に威力を消すだけなのだから―…。

 そっちの方を心配しないといけないのだから、本来は―…。


 クローナの方は―…。

 (なかなか威力が落ちない―…。しつこい!!! 黒い家の中にいる嫌われものの存在を感じる!!!)

と、クローナは心の中で思うのだった。

 ラーグラが放った矢は、なかなか「白の水晶」を用いたとしても、威力が落ちない。

 だけど、徐々ではあるが、ラーグラの放った矢の威力も落ちつつある。

 その理由は、「白の水晶」がその威力を相殺させようとしており、かつ、ラーグラの矢がなかなか威力が落ちないのは、ラーグラの持っている矢の中に宿っている天成獣の力であるが、ラーグラ自身は気づいていない。

 天成獣の宿っている武器を扱うことができる者であったとしても、ちゃんとその武器を扱えるとは限らない。

 なぜなら、天成獣の性質をしっかりと引き出すためには、それなりの理解と同時に、自身の武器の中に宿っている天成獣のことに関して、しっかりと知る必要があり、そのことを日々怠ってはいけない。天成獣によっては、能力を最大限発揮させようとしたり、その逆に使用者のことを考えて、その実力に合わせようとしたりする。

 そう、様々なのである。

 そのことを理解した上で、天成獣と日々会話を繰り広げないといけない。

 会話しなくても、念話をすることはできるので、そのことは欠かさずした方が良い。

 それができるかどうかで、どこまでも成長してゆける可能性は十分にあるのだから―…。

 (厄介だけど、「白の水晶(すいしょう)」を発動させながら、球体の中でダメージを受けた箇所を修復しながら、威力が完全に衰えるのを待つのは辛い!!!)

と、クローナは心の中で思う。

 このように思っているのには訳がある。

 クローナは、「白の水晶」を扱っているが、この水晶で防御壁を展開させることは簡単にできるのだが、それを持続させていくためには、かなりの天成獣から借りられている力量だけでなく、自身の体力も消費するし、精神力も同様であり、かなり負担があるものだ。

 そもそも、「白の水晶」は長時間展開する向けというよりも、短時間で相手の攻撃をしのぎ、そこから次の攻撃で、相手を仕留めることができるようにすることを前提としている。

 なぜなら、相手の側でも大きな攻撃をするとしても、長時間、その攻撃ができることは少ないので、水晶の中に込める能力として、長時間展開が可能にするためのものを頭の中から製作者が外してしまったのだ。

 それでも、長時間展開は可能であったりするのだが、消耗を軽減する方法がないと言いたいわけである。

 (一気に決着を着ける!!!)

 「相殺風絶(そうさいふうぜつ)!!!」

と、クローナが言うと、球体内の中の風がさらに強くなるのだった。

 「相殺風絶」は、風の力を使って、相手の技を相殺し、相手の攻撃を無意味にする技。

 その技を使ったのは、これ以上、自身の力を消費したくないという判断を下したことと、すでに、瑠璃たちが襲ってきた敵を無力化しており、捕まえているのだから―…。

 じっくりすることもできるが、まだ、どこに伏兵がいるのか分からないので、早めに片付けようとしているというわけだ。

 「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。」

と、クローナは気合を入れながら、力を振り絞るのだった。

 そして―…。

 パリン!!!

 失敗はしなかった。

 そう、ラーグラの放った矢の威力を相殺することに成功し、船が沈むことを阻止したのだ。

 (ふう、しつこい矢だった。これを放った人の性格が表れているみたい―…。)

と、クローナは心の中で思うのだった。

 ラーグラの性格が表れているのかは今のところ分からないが、クローナの感想を完全に正解だとは言えない。

 クローナは安心したのか、膝をつくのだった。

 そして、礼奈は―…。

 (これで、一つは片付いたけど―…、油断はできないね。)

と、心の中で思うのだった。

 それが意味することは、まだ、自分達を殺そうとした人達が潜んでいるかもしれないと思ったからだ。

 間違ってはいないが、すでに、今回、瑠璃たちを暗殺しようとしていた組織は一番強い人物がやられており、ミランの方もある程度回復している状態なので、襲おうという考えにいたることはないだろう。

 そう、どこかで、この様子を見ているのだから―…。

 そのことに気づいていたとしても、今のところ追う気持ちにはなれなかった。


 一方、少しだけ時間が経過する。

 ミランと李章のことを報告した人物ともう一人の人物のいる部屋。

 そこでは―…。

 「報告によると、ボスでも失敗だ。負け。任務は失敗。」

と、もう一人の人物が言う。

 この人物は、逃げ延びたアルぺエスの組織の下っ端からそのような報告を受ける。

 そして、もう一人の人物はそのことで、今回の任務が自分達にとってどんな結果になったのかを理解する。

 だからこそ、悔しさという気持ちはありながらも、冷静に言うことができる。

 「ボスが負けるなんて!!!」

と、ミランと李章が天成獣の宿っている武器を扱うことを報告した人物は驚きながら言う。

 ボスと呼ばれるナガレダは、かなりの実力者であることは分かっているし、天成獣の宿っている武器を扱うことは知っている。

 それゆえに、同じものであったとしても、実力を発揮したナガレダが勝利するのかと思っていた。

 だけど、そうではなかった。

 その結果を突きつけられて、自分の心の中の動揺というものを感じるのだった。

 今まで強いと思っていた人物が、敗れることのなかった人物が、まさか、予想外にも子どもに敗北したのだから―…。

 それを受け止めるにはそれなりの時間がかかる。

 「負けであることが分かった以上、我々は身を隠さないといけないからな。これでアルぺエスの地位は陥落。回復させるのには、かなり時間がかかるだろう。」

と、もう一人の人物は言う。

 ショックを受けている人物を慰めてあげるほどの余裕はない。

 ナガレダがここの情報を出すとは思えないが、完全に出さないという可能性を確信として抱くほど、蒙昧な人間になっているわけではない。過信しているわけでもない。

 ゆえに―…。

 「ショックを受けている暇はないだろ。大事なのは、今は身を潜め、好機を見て、ボスらを奪回し、かつ―…、組織を再建すること。分かったな。今は潜め。」

と、もう一人の人物は付け加えるように言う。

 この人物はすでに、次の行動へと移ろうとしているのだ。

 どういうメンタルであれば、このような判断ができるのか疑問に思う人達はいるかもしれないが、この人物にとって生き残るために必死にやった結果でしかないことは事実で、それ以上のことを考える暇などないから、それ以上のことは分からないということになる。

 そして、ショックを受けている人物を見捨てるかのようにしながら、部屋から去るのであった。


 一方、リース。

 その中でもスラム近くにある最高級宿泊所。

 そこの最上階の特別スウィートルームに泊まっているが人物一人。

 その人物は、国の要人でも首席でもないが、商売でかなりの稼ぎを得ている人物であり、名はクロニードルという。

 かつては、ミラング共和国の国会議員で、対外強硬派の主要メンバーの一人であった。

 ミラング共和国がリース王国との戦争によって滅んでしまい、何とか逃げ出して、命からがらという感じになるほどであった。

 ここで悲惨という言葉を使わなかったのは、ミラング共和国の対外強硬派が主導しておこなった征服によって、征服された側はさらに悲惨な目に遭っているので、クロニードルを可哀想だと表現するのはおかしなことでしかないからだ。

 そして、クロニードルは少しだけリースの夜空を見ながら、

 (後少し、ランシュに勝ったとされる人物を殺せば、サンバリアの協力を得て、リース王国の領土をすべて支配し―…。)

と、クロニードルは心の中で思っていると、何かしらの気配を感じるのだった。

 分かりやすいほどの気配を―…。

 (何じゃ!!! この殺気は!!!)

 クロニードルからしてみれば、あり得ないほどのものであり、まるで自分が一人では敵うはずもない敵がいるのだと理解してしまう。

 だが、クロニードルがいる部屋には、一人ではないのだ。

 自分の護衛がいるのだ。

 なら―…。

 「護衛ども、仕事―…。」

と、クロニードルが叫んでいる時、護衛だった人間が完全に気絶させられていると思われる姿を見てしまうのだった。

 どうしてこんなことになっているのか分からない。

 まるであっさりと―…。

 「どうして護衛が簡単に殺されずに、静かに気絶させられているのか気づいていないようだな。今回、ミラング共和国の対外強硬派の一人で最後の生き残りの幹部であるファウンダ=クロニードルが何かしらのことを企んでいるのは前々から把握していた。そして、それを利用させてもらった。会談の情報もすべて筒抜け。それにお前の野望も終わりだなぁ~。」

と、男の声がする。

 クロニードルもそのように判断する。

 だけど、姿を現さないのだから、恐怖でしかない。

 そんな恐怖の中にあったとしても、自分なら何とかできると思うのだった。

 思わないとこの場で、堂々とした態度などすることはできない。

 それだけに自分に自信があるのか、それとも別の要因があるのだろうか。反対の―…。

 「野望が終わり? 儂に向かって言う言葉ではないの~う。儂はクロニードル商会の筆頭で、この地域で一番大きな商会のトップを務める人間じゃ。リースの上の人間とも親しい関係じゃ。逮捕や始末などできやしない。できたとしても簡単にそれを無意味にしてやるからの~う。」

と、クロニードルは言う。

 クロニードルからしてみれば、自身が逮捕されたり、拘束されたり、殺されたりすることはあり得ない。

 なぜなら、クロニードル商会は、リース王国にも食い込んでいるほどの商会であるし、ラーンドル商会が弱まっている状態である以上、国際交易はクロニードル商会を介す方が得である。いや、ラーンドル商会も最近、トップが変わったので、再建することによって、国際貿易でもまた勢力を拡大させることはできるであろうが、それにはそれなりの時間がかかることは避けられないであろう。

 そうだとすると、クロニードル商会の必要性はどこであったとしても十分にある。

 それに、捕まるようなことがあったとしても、リースの下っ端および商会と関係のある人間に賄賂を渡せば、簡単に釈放されることは可能であろうし、リーンウルネであろうともそれを阻止することはできないはずだ。

 そのことが分かっているからこそ、この場所で、呑気なことができるのだ。

 そういう意味で、老獪と言えるかもしれない。

 が―…。

 「言おうとしていることは十分に分かる。だから―…。」

と、男は言って、自らの姿を現わすのだった。

 その姿は―…。

 「貴様は!!! ランシュ!!!」

 そう、男とはランシュのことである。



第141話-5 船は沈めさせない に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正および加筆していきたいと思います。


さて、首謀者への「ざまぁ」の時間が始まります。

これが終わると、サンバリアの内情が描かれていくと思います。

グロイよ、政治家は―…。

では―…。

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