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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
657/746

第141話-2 船は沈めさせない

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 (間に合ったぁ~。)

と、瑠璃は心の中で思う。

 迷ったわけではないが、礼奈がピンチだったので、さすがに助けた方が良いのではないかと思い、助太刀したというわけだ。

 瑠璃からしてみれば、大切な親友をこの場面で失いたいという気持ちはない。

 ゆえに、助太刀をしないという選択肢はない。

 そして、それが間に合って良かったのだ。

 自身の持っている武器である仕込み杖から天成獣のグリエルから力を借りて、雷の一撃を放ったのだ。

 アガに向けて―…。

 礼奈を殺そうとした。

 だけど、そうだとしても礼奈をピンチから脱することに成功させたわけではないし、そのことをしっかりと理解している。

 そして、礼奈はラーグラの矢の攻撃を防ぎつつも、完全に防いだ状態ではなく、まだ、ラーグラが自身の天成獣から借りた力量を完全に分散させて、消滅させるようなことができていない以上、礼奈がナガレダもしくはアガとの戦いに復帰することはできない。

 そうだとすると、瑠璃の攻撃は、あくまでも最悪の事態を一時的に先延ばししただけに過ぎない。

 そんなことを理解しているかどうかは分からないが、瑠璃は過酷な戦いも経験しているので、すぐに、周囲を警戒しながら、礼奈の状況に気づきながらも、ラーグラの矢の方へと攻撃することはしない。

 すでに、そこには―…。

 「白の水晶(すいしょう)。」

と、クローナが言うと、ラーグラの矢は、「白の水晶」によって、球形の中に閉じ込められる。

 そして、クローナとしてはあまりこんな戦い方はしないが、今はしないといけないと思い―…。

 「全方位風連撃。」

と。

 そうクローナが言うと、「白の水晶」の中で展開された風の攻撃が、ラーグラの矢へと何度も何度も攻撃するのだった。

 そうすることで、ラーグラの放った矢の威力を落としつつ、かつ、天成獣から借りたと思われる力を弱らせて、矢自体をただの矢に変えることができると、クローナはそう踏んでいる。

 そのことに対しては、ナガレダにとっても予想外であるが船自体が破壊されなければ良いと判断しているから、クローナの攻撃を邪魔するようなことはしない。

 船が沈没してしまえば、こんな大海をボートで漕ぎ、どこかの大陸に向かうことなど至難の業でしかない。可能性がかなり低いものであり、そんな可能性は実際に起こってみないと、その可能性に賭けることなどできやしないし、したくもない。

 そうである以上、クローナの攻撃を邪魔する意味がない。

 そして、その間にも、アガは意識を取り戻したのか―…。

 「痺れるなぁ~。凍らされた次は、痺れさせられるとはなぁ~。どっちも俺が始末してやろうか!!!」

と、アガが激昂する。

 アガからしたら、今日という日は、凍らされるし、電撃を受けるという散々な目に遭っているのか、頭に血が上ってしまい、冷静さを欠いてしまっている。

 それだけ運のないことに遭ったのだ。そうである以上、今度は、自分の思い通りになることがあってもおかしくないと思うのだ。

 そうでないと、不公平だとしか思えないのだ。

 アガは激昂しながら、周囲を窺おうとするが―…。

 「手もしっかりと縄で縛ったのに、簡単に脱出してくるなんて、流石、隠密組織と言ったところ。だけど、今度はしっかりと捕まえるから、氷の塔(アイス・タワー)。」

と、礼奈が言うと、アガは簡単に凍らされるのだった。

 その光景はあまりにも早いものであり、「青の水晶」を使ったものと思われる。

 そんななか、礼奈はナガレダの方へと視線を向けながら―…。

 「さすがに私も力を使いすぎたから、瑠璃に任せるよ。瑠璃、お願い。」

と、礼奈は言う。

 礼奈としても、ナガレダと戦えるだけの力は残っているが、それでも、後で何かが起きたら危険だし、矢で狙撃してきた人物がまだ、どこかにいるかもしれないので、迂闊に戦えない状態になるのは危険でしかない。

 それに、瑠璃とクローナがやってきた以上、自分達の宿泊している部屋の敵が意識を取り戻せば、縄を破ってやってくるかもしれない。そうなった時に、余力を残して戦えるようにしておかないといけない。

 だからこそ、ナガレダとの戦いは瑠璃に任せることにした。

 瑠璃なら、天成獣から借りられる力量はかなり多いし、これぐらいの相手なら少し油断したとしても勝利することは造作もない。

 天成獣の宿っている武器を扱う戦いでの勝負は、圧倒的にこちらの方が上なのだから―…。

 「うん。」

と、瑠璃は返事をする。

 (瑠璃、さっさと片付けて頂戴。)

と、礼奈は心の中で思いながら―…。


 一方、李章のいる場所。

 そこでは、李章は立ち上がり―…。

 「はあ……はあ……………はあ…………………………はあ……………………………。」

と、息をする。

 戦える力があるかどうか怪しいという感じだ。

 だけど、蹴りだけでの応戦は不可能と判断していることであろう。

 (……刀を再度展開して一気に倒さないといけません。)

と、李章は心の中で言いながら、展開する。

 その様子を見ながらも、李章の方が明らかに倒されそうな雰囲気になっていることに気づき、ベグは―…。

 「すでに肩から息をしているようだ。私の次の一撃で終わりですよ。」

と、ベグが言うと、李章に向かって攻撃を開始しようとする。

 だけど、ベグは李章に関して、重要な情報を見落としている。

 それは、李章がベグとの戦いで、まだ、自身の武器を使っていないということを―…。

 本来、李章は刀や剣の類ではなく、蹴りでの戦いの方が得意なのであり、刀の中に宿る天成獣に選ばれたのであり、戦い方に対して、自分の矜持というものを貫けないということで、刀を使うことを忌避してきたのだ。

 だけど、そんなことが許されるはずもなく、ランシュが仕掛けたゲームの中で使うことにしたのだ。あくまでも、ピンチの時だけど―…。

 それでも、前よりは頑固さは和らいだものだ。

 だけど、まだ、刀をメインにして戦うことは拒んでいるが、刀を使っての修行はするようになった。

 そういう面では成長がみられるようになったのかもしれない。

 そして、刀を展開した後、右手で握り、フィルネから力を借り、すぐに、攻撃態勢に移行する。

 そのスピードの速さに対して、ベグは―…。

 (刀を出したようだが、何をしているのかまったくわからないな。刀を出しただけで、何かが変わるわけがないだろうに―…。)

と、心の中で思う。

 ベグはここでも大きなミスを犯すことになる。

 それは、李章は刀を抜刀したのではなく、展開したのだ。

 その展開とは、普段はフィルネが預かっており、必要な時に李章の目の前に展開できるようにしているのだ。

 そのことをベグは知らないし、その点で大きなミスを犯したとしても文句を言われる筋合いというものはない。

 李章がどういう戦い方をするのか知っている者達なら、大きなミスをして周囲から攻められたとしても文句は言えない。

 そして、李章はすでに攻撃態勢に移行した後から、ベグが考えている間に移動を開始しており、それは、ベグが心の中で今の言葉を言い終えた後には、完了していた。

 「生刀(せいとう) 瞬撃一刀(しゅんげきいっとう)。」

 李章の今の技名を言い終えると同時に、ベグは―…。

 (ガァッ…………………。)

 右脇腹の方に大きな衝撃を受け、左脇腹の方が地面に最初に接するように倒れていくのだった。

 左脇腹のある面だけで、倒れる体に受ける衝撃を地面に流すことができなかったのか、ベグは、クルっと四分の一回転し、うつ伏せに倒れるのであった。

 「はあ……はあ……………………はあ……………………………………………。」

と、息を荒くする。

 かなり疲れてしまっていることが分かる。

 そんななかで、李章は何とかベグに勝利することができたのだ。

 喜ぶ気持ちにはなれなかった。

 (何とか倒せましたけど、もっと圧倒的な実力でなさなければ、意味がありません。もっと……もっと………強くならなければ―……、いけません。)

と、李章は悔しそうにする。

 李章からしてみれば、このような相手に対して、刀を展開しないと倒せないというのは自身にとっての恥でしかない。

 蹴りだけであったとしても、倒せるようになるのは当たり前だと思えるぐらいに―…。

 いや、今、この場で実行し、成功させていないといけないぐらいに―…。

 それができなかったのだから、李章は自分の実力不足を嫌でも理解させられるのだ。

 戦い方の配分とか、考え方とか―…。

 そんなことを思いながらも、仲間に対して助太刀ができるかと言われれば、できないであろうし、今の状態だと足手纏いになることが分かっているので、ここでは暫くの間、休憩をすることにするし、邪魔にならないように移動するのだった。

 〈強くなりたいのなら、刀を扱い、いっぱいの技を覚えなさい。〉

と、フィルネに念話で注意されるのだった。

 それでも、蹴りでの戦いに固執したい気持ちが李章から抜けることはないであろう。


 少し時間を戻し―…。

 ナローとミランの戦い。

 ナローは自らが勝利したと思っていた。

 ミランの後頭部に銃口を突きつけ、そこから銃弾を一発放ったのだ。

 だけど―…。

 「ナッ!!!」

と、ナローは驚くのだった。

 驚くしかなかった。

 それは、ミランの後頭部から頭部を貫通するはずだったが、ミランが急に黒くなり、銃弾が突きぬけるのではなく、黒の中に飲み込まれていったのだ。

 ナローはそれが黒いものであるかは分からなかったが、濃い色ではないかということを推測することは容易にできた。

 なぜなら、その一撃は人を殺せるほどの威力があったのは事実であり、感触は分からなくても、ナローの視覚にはちゃんとミランだと分かるほどの輪郭と同時に、姿がはっきりと見えていたのだから―…。

 そうだとすると、これはミランが何かしらのことをしているのは、はっきりと分かる。

 ナローは驚きながらも、すぐに冷静さを取り戻すことに成功する。

 そのような冷静さを取り戻すことができた背景には、これまでの任務での経験というものがあるからだ。

 そうである以上、ナローはすぐにいろんな可能性を考えるのだった。

 (このような変化で消えることができるのは、天成獣の属性が幻と火……、水も可能だな。だけど、火という可能性は排除することができる。なら、ここら一体は燃えていないとおかしい。それに周囲が水っぽいのはないから、水の可能性は低いな。ということは幻か。)

と。

 ナローからしたら、ミランの攻撃が天成獣のものであるのかを断定できたのは、今の攻撃が失敗したからに他ならないわけだし、その時の黒い物体になるを見たからに過ぎない。

 そうである以上、ナローはこれからミランがどんな属性の天成獣の宿っている武器を使っているのか予想しないといけない。

 その予想に取り掛かった段階でしかない。

 そして、ナローの予測はミランの持っている武器に宿っている天成獣の属性について知っている者からしてみれば、外れであることは確かだ。

 ミランの持っている武器に宿っている天成獣の属性は、闇なのだから―…。

 「闇拘束。」

と、ミランがどこかから言うと、ナローはその言葉に気づく。

 (闇か!!!)

 その失念にナローは驚くしかないが、すでに時遅し。

 「ナッ!!!」

と、ナローはつい口にしてしまうのだった。

 ナローはすでに、今いる場所の足元に闇が侵食しており、そこからナローの両足が拘束されてしまうのだった。

 (拘束されてしまった。このままじゃ―…。)

と、ナローは心の中で焦る。

 その焦りが冷静に判断させることを失い、闇から抜け出そうとするが―…。

 「闇飲中連(あんいんちゅうれん)。」

と、ミランが言うと、ナローは闇の中に飲み込まれるのだった。

 (この闇飲中連の技によって飲み込まれた対象は、その闇の中で意識が飛ぶまでダメージを受け続けることになる。断末魔を外に出すこともなく―…。)

と、ミランは心の中で言う。

 そう、この技によって今、ナローは闇の中で気絶するまで攻撃を連続で受け続けるのだ。

 それが起こっている。

 そして、この技はミランが最近、憶えたものであり、使えるようになったのだ。

 そうして、ナローは気絶し、倒されるのだった。


第141話-3 船は沈めさせない に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正および加筆していくと思います。


では―…。

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