表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
655/748

第140話-6 黒幕は現場にいる

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 「何か御用か。わざわざ私をこの場に呼ぶとは―…。」

と、ラーグラの真後ろから声がする。

 この人物からしたら、この会談に事前にクロニードルによって呼ばれているのであれば、簡単にこのような登場をすることは難しいことではない。

 シエルマスに属したこともあるのだから、簡単にできてもおかしくはない。

 だけど、これだけでサンバリア側の使者であるラーグラの心の中を動揺させるには十分だ。

 (!!! どういうことだ!!! 俺が気配を感じなかったって―…。これが隠密関係の組織の者なのか!!! 確かに、クロニードルの伝手には、ミラング共和国が滅んだ後、散り散りになったとされるシエルマスのメンバーの一部が含まれるが―…。こんな実力を有しているなんて―……、マジかよ!!!)

と。

 ラーグラからしたら、こんな存在のいる場所で会談をおこなっていたのだと思うと、自分がどれだけ危険な場所にいるのかをさっきまで理解できていなかったことに、自分の愚かさを感じながら冷や汗をかくのだった。

 手汗は酷いことになっている。

 すぐに分かる。

 いくら自分が天成獣の宿っている武器を扱うからと言って、こんなどこから襲われるかも分からないような状態でいたことに恐怖を感じ、クロニードルの人脈が恐ろしいものであることが分かるのだった。

 分からされると言った方が良いだろうが―…。

 だけど、自分の後ろにはサンバリアという国で実権を握っている勢力がいて、その勢力の使者であり、自分は有力者からも大切にされているのだと、自分では思っていることができているからこそ、この場でビビったとしても相手の側から手を出されるようなことはない。

 サンバリアの技術力と勢力を知らない要人は、リースとその周辺の国々の中ではいない。サンバリアは技術の一部によって製造された製品を輸出しており、それは高価で売れており、サンバリアがある大陸を征服してしまえば、リースやその周辺の国々がある大陸など簡単に支配することができるのだから―…。

 なので、彼らはサンバリアに従うしかない。

 そうすることで、自分達の権力、国の命を僅かながらに生き残らせることができているだけなのだ。その期間は、人の一生からしてみれば遥かに長いものであろうが、それと同時に、サンバリアに近ければ近いほど、短いものになってしまうという傾向は避けられないであろう。

 要は、サンバリアの気分次第ということになる。

 ゆえに、ラーグラは少しビビったぐらいで、自分の命が奪われるようなことはない。

 そう思っているし、それが世界の一つの理だとも思っているのだ。確信していると言ってよい。

 だけど、それは世界の理の一つではない。背後にある権力の強さについて、それなりに知っているだけでしかなく、自分の命が惜しいと思っているし、そのこと自体は間違ったことではない。間違いになることはあるのだが、そのことに関して、ここで述べても意味はない。

 そして、ラーグラは少しして冷静さを取り戻そうとする。

 その間―…。

 (……わざわざ面白い会談になるから、護衛として来い、と言いやがって―……。まあ、クロニードルの保護下にあるからこそ、我々は何とか食い繋ぐことができているのだから文句は言えんな。だが、この弱そうな子どもがサンバリアの使者か!!! ふざけているのか!!! いや、わざと弱い奴を使者として派遣し、俺らがこの使者を殺すようなことでもすれば、リースにいたから、その使者を殺したのはリースだと判断して、リース侵攻のチャンスを作り出すこともできるし、さらに、我々の情報からだとすると、リースが要人として預かっている例のランシュという奴が仕掛けたゲームに勝ち、ラーンドル一派のクーデタを未然に防ぐことに貢献した者を襲うことで、我々の味方であることをアピールしているのか? いや、それ以外の目的があるのかもしれん。密偵が集めた情報によると、襲われた人間は、サンバリアの方へと向かおうとしているそうだ。おびき寄せているのか、サンバリアの方は―…。なら、自陣地に到着するまで余計なことをしない方が得のはずだが―…。その道中で暗殺を依頼するとは―……、何かしらの裏があるのは避けられないな。そんなことはまあ、どうでも良いがな。ミラング共和国が復活するならば―…。)

と、心の中で思うのだった。

 これだけのことを口にすることなく考えられるのは凄いことだけど、その間、ラーグラが言葉にすることはなかった。

 ゆえに、運良く、自分が何を考えているのか悟られるようなことはなかったのだろう。

 まあ、これが理由として成り立つかは分からないが―…。

 この人物にとって、ミラング共和国が復活することを望むのだ。

 彼が知っているミラング共和国の記憶の中には、対外強硬派によってアルデルダ領を手に入れた時のミラング共和国軍の活躍があり、スラムの中ではそのためにシエルマスが活躍したこと、さらに、その後の戦争のミラング共和国軍の勝利の歴史の中に、シエルマスの活躍があることを知り、シエルマスに入ったのだ。それは自らの境遇の良く無さを理解しているからこそ、シエルマスの強さに憧れたのだ。

 自分もいつかそのようになれるのかと思いながら、シエルマスに入団して、厳しい規律もありながらも、勝ち続けるために裏で暗躍し、活躍するシエルマスという組織の凄さを理解し、自分はその一員であり、自分が強くなり、不遇な人生ではなく、バラ色の人生になったと思ったのだ。

 だけど、ランシュがシエルマスのボスを殺したミラング共和国滅亡戦争の中で、シエルマスは滅び、半分以上のシエルマスの者達がランシュの側へとつき、それが瑠璃チームに敗北したことによって、いつか自分も復讐できるのではないか。

 そう思っていた矢先―…。

 クロニードルが面白い会談になり、自分達の組織の力が必要になると言ってきたのだ。

 それを聞いて、あまり気は進まなかったが、スポンサーということもあり、護衛という形で参加することになったのだ。

 そして、このサンバリアとの話し合いで、ミラング共和国が復活させられる可能性があるのなら、シエルマスという組織が復活し、再度、リースと周辺諸国を征服できるのであれば、以前の自分の栄光を取り戻せるという気持ちになれば、心が躍らないわけがない。

 それを、周囲に見せることはしないが―…。

 それが今、心の中の言葉に現れているのだろう。

 (………サンバリア側からの依頼を受ければ、ナガレダなら喜んで受けてくれるだろう。ランシュを倒した人間を殺せば、ランシュを殺すことは簡単なことでしかないと思えるだろう。そして、それとサンバリアの力を利用すれば、ラーンドル一派のクーデター成功後に、いろいろと謀略を利用して、国を乗っ取る計画を実行して、適当なその辺にいる人気のない活動家を擁立して、国を支配すれば良いの~う。さて、サンバリアに国を渡すことになったとしても、商売利権を最低限確保しておけばよい。)

と、クロニードルは心の中で思う。

 本当に、商売利権だけでも確保しておけば、自分の権力はしっかりと確保されることになり、そこからいろいろと利益を得続けようと考えるのだった。

 そんなことを思いながらも、周囲を観察することを怠ることはない。

 ここでナガレダという人物の名前が出てきたが、それは、ラーグラの真後ろにいる隠密組織アルぺエスのトップの人物の名である。

 「いや、の~う。隠密組織アルぺエスの首領なら確実に喜ぶことだから、儂はこの会談に呼んだというわけじゃ。彼は、かつてリース王国に滅ぼされたミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスに所属していた者で、その中で南方副首席までに出世した実力者。ミラング共和国滅亡後からも成長し続けており、今、属している隠密組織アルぺエスは、確実に、今回の任務を成功させるためには必要な組織であろう。お前さんらの言う三人組と言っても子どもじゃ。なら、寝首をかけば、簡単に殺すことも可能。なので、存分に彼らと協力して、ラーグラ様……サンバリアの目的である三人組を始末してください。きっと、上手くいくでしょう。」

と、クロニードルはゆっくりと言う。

 長い言葉をはっきりと素早く言うことはもうできない。

 だが、それを考えながら言うことはできる。

 ボケが始まろうが、すぐに認知機能が大きく低下することはない。

 大事なのは、権力者としての絶対的地位を獲得し続けておくために必要なことを怠らないこと。

 そういうことは、クロニードルはしっかりと理解できている。

 そのクロニードルの言葉を聞いたラーグラは、

 「そうですか、ありがとうございます。良い交渉になりました。」

と、言う。

 こうして、サンバリアとクロニードルおよびアルぺエス側の話は纏まるのであった。

 三人組の暗殺と、ミラング共和国の再建、リースの滅亡のために―…。


 そして、時は戻る。

 ラーグラは船の一番上から、自らの武器を取り出す。

 ラーグラの武器は弓だ。

 弓を持ち、矢をつがえ、構える。

 その一連の動作は慣れているのか、その動きに無駄なところはなく、綺麗とさえ思えるほどだ。

 (三人組のうち二人しかいないが、それでも実力はかなりやばい方だとここにいても分かるぐらいだ。俺、一人で勝てる相手じゃない。実力が違い過ぎる―…。アルぺエスで駄目だとなれば、この船ごと、奴らを沈めるしかないな。)

と、ラーグラは心の中で思う。

 ラーグラは、船が沈むことになれば、ラナのように特殊な方法で帰還することができるアイテムを渡されていないので、馬鹿な真似でしかないが、運が良いことにこの船はもしもの時に備えた、小舟がいくつもあり、その場所も知っている。

 それに乗るための方法さえ―…。

 ゆえに、この船を沈めることさえ躊躇しない。

 それは自分の姉のためであるし、姉に比べたら、他の人々の命など価値がないようなものでしかない。

 「さて、姉ちゃんに褒めてもらうんだ。」

と、ラーグラは言いながら、弓に目一杯に自身の天成獣から借りた力を籠める。

 そして、弓を引く。

 その放たれた矢は、船をも沈没させる威力となる。

 それが、船の中央に向かって行くのだった。

 (この船も、あいつらも沈んでしまえ!!!)

と、ラーグラは心の中で思いながら―…。


 【第140話 Fin】



次回、船上での戦いは決着の時を迎える に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正および加筆していくと思います。


明日、ついに、『水晶』を「小説家になろう」に投稿を開始して五年となります。

ここまで良く続けられたと思います。

読んでくださった方、評価してくださった方、ブックマークしてくださった皆様のおかげです。

ありがとうございます。

無理しない程度に頑張っていきます。

では―…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ