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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
653/746

第140話-4 黒幕は現場にいる

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 部屋の中に入ると―…。

 (罠はなしか―…。良かったぁ~。)

と、ラーグラは心の中で安心するのだった。

 ラーグラとしても、罠に対処できないわけではないけど、天成獣の宿っている武器を扱うことができるからといっても、そんなことばかりに付き合わされるのは心労祟るものでしかない。

 そんなことは嫌なことでしかないし、相手が不利で、自分が有利な状況が好きなのだから―…。

 そして、ドアを閉めると―…。

 「安心しろ。鍵はこちらでかける。」

と、老人の部下、いや、護衛と思われる屈強な体形をした男性がラーグラの近くにおり、そのようなことを言う。

 この男性からしてみれば、会談の相手がこちらにとっての裏切り行為を働いた時に、逃げられるのを防ぐためである。

 この男性も、このような護衛の仕事をして五年以上を経過している以上、こういう場で、どういうことが最悪なのかはしっかりと知っている。

 そして、このリースのある地域においては、護衛の職歴が長い人ほど優秀である傾向があり、それは、命を狙われている要人を守ることが仕事の内容である以上、どうしても、暗殺者とかによって事件に巻き込まれることがあるのだ。暗殺者以外とも、同様のことがある場合もあるが―…。

 そうである以上、職歴が長い人はそれだけ運が良いか、実力があるということの証明になるのだ。それだけで―…。運だけで生き残ったような人物は結局、同じ職場で働けばすぐに分かるというものであるし、実力者に関してはすぐに分かる場合もあれば、そうでない場合もあるから厄介であることに間違いないが―…。

 そして、ラーグラはこの護衛の人物がそれなりの実力であることは、すぐに分かる。

 それと同時に―…。

 「ああ。」

 (天成獣の力を使えば、楽勝だな。遠距離がメインの武器であったとしても―…。)

 護衛の人物の言葉に対して、返事をし、彼に従っているように見せながらも、内心では簡単に倒せるもしくは殺せると判断するのだった。

 それには明確な理由がある。

 この護衛の人物が、天成獣の宿っている武器を扱うことができないということを、すぐに勘付いたからである。

 なぜ、そのようなことが分かったかというと、ラーグラという人物はこれまで、自分が弱いことを自覚させられるような経験をしているので、自然と強い相手と弱い相手、それも自分と比較した場合ということがすぐにできるほどに他者の実力の分析力が高くなってしまったのだ。

 その分析力を上手く扱うことができれば、実力を発揮させることができるだろうに、本来の―…。

 まあ、そのせいで、自分の実力を悟ってしまったということもあり得るかもしれないが、そのことに関して、述べたところで意味はない。

 ラーグラは、そのように思いながらも、表面の表情を崩すことなく、自然な表情で、会談相手のいると思われるところへと歩き出すのだった。

 ドアに鍵をかけ終わった老人の護衛もラーグラの後ろから会談場所へと向かうのだった。


 会談の場所。

 そこには、大きく縦長なテーブルが一台あり、ラーグラがその部屋に入ってから、その右奥に老人が一人いた。

 それと同時に、ラーグラはその老人に関しては、若干ではあるが、嫌悪感というものを抱くのであった。

 どうして、そのようなものを抱いたのかは、ラーグラはすぐに気づくことができる。

 心の中で言葉にするまでもなく、その老人から自らが優れていて、他者を見下す感じを感じてしまったからだ。

 傲慢さ、というものを―…。

 だけど、このような場で不機嫌な顔をするわけにはいかないので、表情はしっかりと取り繕う。

 こんな老人、場合によってはいつでも殺せると思いながら―…。

 そうすることで、老人の態度を自身にとって他愛無い可愛いものだと思うことができ、気持ちとしても落ち着くことができるのだから―…。

 そう、お互いがお互いを見下すことによって、成り立つ不思議な関係というか状況というものが―…。

 「良くぞ、来てくれたの。サンバリアの使者よ。」

と、老人は言う。

 老人であるからか、どうかは分からないが、非常にゆっくりとした口調で言っている。

 その言い方は、傲慢そのものをしっかりと表している感じである。

 だけど、その地位に見合ったものであれば、誰もがひれ伏したであろうが、今のこの老人の地位を知っているものであれば、誰もこの老人のことを恐れることはない。いや、恐れる者はいるだろうが、結局、権力がなければただの老人でしかなく、物理的な力を持って支配することは可能である。

 だけど、ここで忘れてはならないことがある。

 それは、群れの中でリーダーになるものは決して物理的な力が強い者であるとは限らないことであり、交渉や他者との関係を上手くコントロールし、自分の利益へと持っていくことができる者なのだ。その可能性が高いということである。

 結局、物理的な力がいくら強くても、結局、暴力だけで他者を支配し続けることなどできやしないということであるし、言葉だけで、実行できない者もまた同様である。

 大事なのは、自分の利益を得ながらも他者の利益もしっかりと得させることができる者が長く権力という力を握り続けることができるということだ。それができなくなれば、次第に自らの力は衰えていくことは避けられないし、力の減少は少しずつではあるが進行し、一気に止められなくなるということになるであろう。

 その後に何が生まれるのかは分からないが、良くないことが多いのは確かかもしれない。人が知れることには限度があるが、その限度を少しずつ広げていくことはできる。このことも忘れてはいけない。

 さて、話を戻し、老人は傲慢な口調もありながらも、サンバリアからの使者であるラーグラという存在を舐めるようなことはしなかったようだ。心の中では若干ではあるだろうが―…。

 (若造か。まあ、いくらでも転がしようはあるが、サンバリアの使者。油断できぬの~う。)

と、心の中で思う。

 すでに、判断力に衰えはあるとは言うが、それでも、完全にできないという状態にはなっていなかった。

 そして、まだ、自らの権力欲というものを無くしてはいないようだ。

 そうである以上、自身の権力が再度、手に入ることを望むのである。

 あの日々を―…。

 「ええ、お初にお目にかかります。元ミラング共和国の対外強硬派議員の一人で、クロニードル商会の総会長であるファウンダ=クロニードル様。私はラーグラ=インティエルティと申します。」

と、ラーグラは言う。

 社交辞令である。

 ラーグラとしては、必要最小限の礼儀はしっかりと習っている。

 生まれがどういう境遇であろうとも、サンバリアと関わりを持ったことにより、その関係で、自分に必要なものはかなり学ばされてしまったのだ。

 天成獣の宿っている武器の扱い方に関しては、下手のままだったのだが、他のことに関しては、愚かな面もあるが、真面な面もあると言った感じだ。

 善悪が主観的なものであり、立場が変われば大小はあるが変化するものであるのと同じなものであり、ラーグラに対する他者の認識もそのようなものである。

 ゆえに、絶対正義を掲げることによって、自らの正義を疑うようなことを止めてしまえば、それは返って、自分という存在を窮地に陥れることになるであろうし、良き可能性自体を見逃すことになりかねない。

 そして、大きな過ちを犯すことにもなり、それに気づかないことによって、最悪の結果を導くことになるであろう。それが、自分にとっては良く見えるものであったとしても、他者およびそれ以外の要素においては最悪の結果でしかないことがあるのだから―…。そのことを無視すれば、最後は自身にとって望まない結果をもたらすこととなる。その原因に気づけずに、自分の命を失うことだってあるのだから―…。

 そのことを理解できるようになれば、自分の行動に対する疑問を抱くことが悪いことではなく、そこから、いろんな可能性を考慮することができるようになり、そこから下された判断は良い結果をもたらすことは十分にあり得ることであろう。

 まあ、悪い結果になることもあるが、その時は、原因をしっかりと考えたり、他人からのアドバイスを貰う事も大切なことであろう。ここで無視してはいけないのは、自分で考えることであることと、いろんな視点を取り入れる姿勢を崩さないことである。そうすることで、自分の新たな可能性を導き出すことができ、判断を下さないといけない事態において、最良の判断をもたらしてくれる可能性は大いにある。

 人生の中で、これだけをしとけば大丈夫という方法は、本当の意味でこの世には存在しないし、考えさせられることばかりである。それが人生なのかもしれない。

 ラーグラは、社交辞令を言いながらも、クロニードルを観察することを忘れない。

 クロニードルは四年前のリース王国とミラング共和国の戦争で、リース王国によって滅ぼされたミラング共和国側の人間であり、ミラング共和国の議員の一人で、商家の家の出であり、滅亡時でも老人であったが、何とか、商人のネットワークを通じて、そして、自身の感覚に従って、ラルネから逃げ出すことに成功し、何とか命からがら生き残ることができた。

 処刑されたディマンドとは、対照的な結果となったのであるが―…。

 そういう意味で、商人としての勘というものは備わっていたかもしれないが、この場合だけの可能性も十分にあろう。

 そして、逃げ出しながらもしっかりと財産や重要書類はしっかりと運び出すことができた。

 従者が何人かいたのが幸いしたということであろう。

 その後、リース王国と離れた東側のラフェラル王国の田舎に身を暫くの間潜め、そこからラフェラル王国の隣国に移り、そこで、クロニードル商会を自らの伝手を使いながら再建するのだった。

 その商売は上手くいっていたのであるが、クロニードルからしたらミラング共和国の復興という気持ちはなかったが、だが、リース王国に対して、何もしないなんてことは気持ちとして許せなかった。

 ゆえに、クロニードルはリース王国や後のリースにおいて商人たちに聞きながら、情報を集め、リースに不穏な情勢があるのを知った。

 それは、クロニードルを喜ばせることになったものだ。

 そう、リース王国は二年前にレグニエド王が暗殺され、暗殺犯が国家のトップとなったということ。そこで失脚したはずのラーンドル一派がゆっくりとであるが、その暗殺犯の政府を倒そうとしたのだ。

 その理由は、暗殺犯が自身の勢力を政治から排除したことによる恨みであった。

 クロニードルからしたら大変な好機を得たのだ。

 そして、クロニードルは使者を派遣して、不遇となっているラーンドル一派が再度、リースの実権を掌握できるようにいろいろと援助したのだ。

 だけど、結局、ラーンドル一派は失敗してしまったのである。

 (ふん、ラーンドル一派ども駄目だったな。)

と、クロニードルは心の中でそのように思いながらも、表情を変えることなく―…。

 「ラーグラ殿か。」

と、クロニードルは言う。

 社交辞令である。

 こっちも―…。

 クロニードルはすでにミラング共和国の要人ではなく、商会の総会長でしかなく、公式の場で無礼を働けば、首など簡単に飛ぶことなど分かっている。

 ラーグラは、あくまでもサンバリアからの使者であり、サンバリア側からしてもこの話は重要なことであるのだから―…。

 そうだと思うと、サンバリア側もクロニードルに対して、無礼をする気にはなれない。まあ、クロニードルの出方次第ではあるが―…。

 「ラーンドル一派に資金援助したけど、リーンウルネら王家らによってランシュから実権を奪うことに失敗した。で、今度はこちらへと話を持ってきたというわけですか。」

と、ラーグラは言う。

 サンバリアに話を持ってきたのは、クロニードル側であるし、そうでなくても、クロニードルやそれ以外の今のリースの体制に恨みを持っているであろうラーンドル一派の残党を利用する予定であった。

 サンバリア側からしてみれば、あくまでも三人組をサンバリアへと最低でも誘導することができれば良いという感じだと判断している。ラーグラはそれ以上のことも望むのであるが―…。そのようなことを悟られるわけにはいかない。

 「そちらさんもリースの城で派手なことをしてくれたようだの~う。儂の耳さえ入るほどに……の~う。」

と、クロニードルは言う。

 その言葉を聞いたラーグラは、

 (まあ、分かりやすいようにしていたから、情報として漏れたとしてもおかしくはない…か。ラナの奴の作戦は上手くいったようだ。陽動は可能だろうな。だが―…、姉ちゃんのためにも、陽動だけで終わらせる気にはならない。俺は―…。)

と、心の中で強く思うのだった。

 表情に出すようなことをせずに―…。



第140話-5 黒幕は現場にいる に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正および加筆していくと思います。


では―…。

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