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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
652/748

第140話-3 黒幕は現場にいる

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 船の一番高い場所。

 煙突のような場所と言っても良いだろう。

 そんな場所に侵入する輩などいるはずはないのだが―…。

 だけど、そんな場所に人がいるのだ。

 こんな夜遅くに―…。

 その人物は男性であるが、李章より少し年齢が上というだけで、子どもとそこまで変わらない。

 だけど、若干ではあるが大人びた感じがあるのは、この人物の経歴というか過去、人生のこれまでの出来事にある。

 そうである以上、今の彼の人物としての地位には隔絶の違いがあるというものだ。

 その感覚には慣れていないというか―…。

 それでも、この人物にとっては、今、任務をしているという感覚だ。

 これは自らの姉のためになる任務なのだから―…。

 (この三人組の抹殺の依頼を受け入れるために、紹介してもらった隠密組織アルぺエス。彼らだけで三人組を抹殺することは不可能そうだな。俺には分かる。)

と、心の中で思いながら、この人物は思い出すのだった。


 時は戻る。

 数日前のことだった。

 サンバリアから遠くリースにやってきた人物は、ラナという人物が何かしらの行動を起こすことは事前に知っていたし、その対象も―…。

 なぜなら、それを命じた人間が誰であるかを知っているし、何百回……いや幾千回もの数、その人を顔を見ているのだから―…。

 そして、ラナが任務を達成できるかは分かっている。

 帰りは命令した人物から渡されたサンバリアの市場に出すことができない製品を使うであろうが―…。

 一方で、この人物は、裏である人物に会うことになっていた。

 このような場所を選ぶとは、灯台下暗しとは言ったが、まさにそのような感じだと思わせるには十分だ。

 で、その会う場所は、リースから少し離れた他国の諜報員が良く使う宿泊所の最上階である。

 (馬鹿なのかこいつは―…。こういう後ろ暗いことに関しては、もっと治安の悪い場所を選択するだろうが―…。明らかに、リースの諜報機関が監視していますと言っているものだろうに―…。こんな場を会見の場に設定するとは、こいつはかなり焼きが回っているとしか思えん。)

と、これから会う人物に対して、低評価を下す。

 そのような判断を下す理由は、今、心の中で思っていることを聞いてもらえば、十分に分かることであろう。

 リースの諜報機関がこのような場を監視の対象にしていないはずがない。

 ラナがリースにある城へと襲撃し、三人組の一人を暗殺対象としていることを知らしめ、その犯人がサンバリアの関係者であることを示し、サンバリアへと誘導しようとしているのだ。

 その誘導自体は、自分に命令を下せる人物に対して、さらに命令を下せる人物であり、その勢力もしくは組織のトップである。

 そいつに会ったことがないわけではないが、何かしらの薄気味悪さというものを感じるし、なぜ、自分の上司は命令に従っているのだろうか、不思議に思うのだ。

 いや、助けてくれたことは確かなのだが、どうも………な、と感じてしまうのだ。

 救われることによって、良い人生を手に入れられるとは限らないし、逆のことだって十分にあったりするのだ。救わない方が良いと思えることだってあるのだから―…。

 だけど、弱い人間にそれを抗うことなどできやしないからこそ、従うしかない。

 気持ちが弱いことを悪く言う人間はいるであろうが、自身が生き残ることを至上命題とすれば、この気持ちが弱い行動というものは当たり前のものではないかと思えてしまうし、弱い者で生き残りたい者にはその選択肢しかないのだ。上から言っていることがバレバレである。

 そして、それらは近い未来を見るのか、遠い未来を見るのか、その違いでしかないのかもしれない。

 だけど、近い未来の安寧がなければ、遠い未来へと自身が生き残り、未来が繋がれることはないのだから―…。

 そうだと思えば、この人物の考えの核の部分が完全に間違っているようなことはない。

 だけど、同時に正しいことではないとも言える。

 人という生き物が決して、世界の全てを完全に解明することができないように、そして、完璧になるようなこともできないように、必ずどこかしらの欠点を残し続け、不完全性を終えるという未来とは相反する結果になることを避けて通ることはできない。

 ゆえに、成長することができ、不完全性を少しずつ埋め続けることもできるし、拡大させることもできるし、それを本当の意味で判断する基準すら持ち合わせることができないのであるが―…。

 そのことを知って絶望したところで意味はない。

 そのことを絶望したのであれば、自身に問いかけると良い。

 終わった後の不完全燃焼となり、何も自身を変えられなくなる恐怖を、それと同時に、成長できなくなる恐怖を考えれば、終わりのない世界を何かしらの方向へと進路を変更することができ続ける方が良い可能性だって存在するだろう。

 だけど、その変更をし続けることによって、自身にとっての安寧と安全を完全に手に入れられることがあることを保障することはできないし、自らが理想として望んだ結果が自分の理想とは違う結果となることも十分にあるのだから―…。

 そうである以上、自らが抱く考えなど、いくらでも柔軟に変更することは可能である。

 そのことを忘れてはいけない。

 忘れずに、考え、悩み、そして、悩みながらも自信を持って進むという矛盾を抱えないといけないし、そのことを悪いと思うのではなく、そういうものであり悩めるからこそ、今、自身が直面している問題に取り組めているということを認識して、それを自身の自信にして、ゆっくりと自分のペースで進めばよい。

 良い未来があるかは、進んでみた先のある場所において判断するしかないし、良い未来を保障することはある意味では詐欺や騙しと紙一重の関係にあるのだから―…。

 まるで、背後の影であるかのように―…。

 だけど、時にはそのような保障が必要な場合があるだろう。今の安心のために―…。

 さて、話がかなり逸れてしまったので、話を戻すことにしよう。

 この人物は、会見の場である宿泊施設に到着し、最上階の最高級リゾートの部屋へと向かう。

 その間、リースの諜報機関の関係者がいないかを確認する。

 (王妃が直接に裏を持っているし、宰相代理にもそのような組織があって、近々統合されるとか。ふざけるなよって。それにランシュの野郎は、三人組の一人に敗北し、かつ、リース王家に嫁ぐとか―…。玉の輿の良い身分だな。それにしても―…。)

と、この人物は心の中で思う。

 最近のリースの動向も知っているし、ランシュがリース王家になぜか婿入りするということになっているのだ。

 というか、リース王国の建国者が扱っていた武器の中にある天成獣に選ばれていたということで―…。

 本人、リース王国の国王の一人を殺しているのだが―…。

 この人物からしたら、このリース王家側の行動には驚きでしかないが、かつてのリース王家とラーンドル一派が繋がっておこなったとされる「クルバト町の虐殺」の生き残りがランシュであり、ランシュとしてもリース王家には恨みがあるだろうに、そして、リース王家の側もレグニエド王の殺害があり、憎んでいてもおかしくはないのに―…、どうして繋がるのだ。

 裏で何かしらの繋がりがあったのだろうかという勘ぐりを入れてしまいたくもなるが、現実には憎んでいたのが、いろんな理由で和解という形になったのだから―…。

 そういう意味では、リース王国の建国者の扱っていた武器の中にいるトビマルは自分の意図とは関係なく、和解の象徴になったものと思ってもおかしくはないであろう。

 そして、最上階に到着すると、部屋が一つしかないのが分かり、そこに向かうのだった。

 (ここにいる馬鹿は、最悪の場合、見捨てた方が得策だな。)

と、この人物は心の中で思いながら―…。

 トントントン。

 ノックする。

 部屋の外に護衛がいないことに最上階に到着した時に気づいていたが、大丈夫なのかと思うのだった。

 「誰だ。」

と、部屋の中から、老人の声がするのだった。

 女性ではなく、男性の方である。

 「ラーグラだ。」

と、言う。

 この人物、ラーグラ=インティエルティは自らの名前を名乗る。

 偽名を名乗っても良かったのだが、この会談で話が纏まると、自身はリースを出て、三人組の方の監視へと向かうことになるのだから―…。

 ラーグラとしては、この国に戻るようなことはもうないだろうという理由があるからだ。

 そのような予想が当たるかどうかは分からないが―…。

 未来を完全に分かっているような人間などこの世に誰もいないのだから―…。

 ゆえに、間違っている可能性は十分にあるだろうし、ここで真剣に考えたとしても今は意味がない。

 そして、ラーグラはこれから会う相手に対して、かなりの礼儀というものがいるということは分かっている。

 そういうことに五月蠅い可能性があるからだ。

 老人ということは分かっているし、その老人が過去の習慣に固執している可能性もあるのだから―…。

 まあ、過去の習慣というもので、今も大切にした方が良いものもあるのは事実なので、過去の習慣のすべてが悪いと考えるのはあまりにも短絡的な思考であり、その習慣が発生した理由について考えるべきであろう。そのために記録を残しておくことは、その理由の説明が議論や判断の土台になることは確かであるし、その土台があることによって、人類の未来がより良きものになる可能性は十分にある。確定的なことを言うのは危険なことでしかないので、曖昧な感じを残す感じになるが、人生とは曖昧を確定的に見せることによって、さも事実のようにしていることが多いのだから―…。

 世界の全てを知ることができないのに、知らない領域を少しずつ知っている領域、それも完全ではないけど、に変えていかないと自らの種族が生き残ることすらできる可能性を奪われていくのだから―…。

 傲慢になっている暇すら、本来はないはずなのだが―…。

 安寧を感じている時間は、ほとんどないのだが―…。

 ふと、話が逸れるのだが、ラーグラ=インティエルティのインティエルティという部分は、元々の名ではなく、後から付けたもしくは付けられた可能性のある名前であることを記しておく。

 それは、この人物の過去に起因することであるが―…。

 そのことについて、今、触れることは少しだけ長くなるかもしれないから、暫くの間、省略させていただく。

 そして、扉の向こうにいる人物は、ラーグラという名に聞き覚えがあったのか。

 「サンバリアの人間か。さっさと入れ。鍵は開いている。」

と、扉の向こうから大きな声が聞こえる。

 老人の声であることは分かるが、それでも、そんなに大きな声を出して大丈夫なのかという気持ちにラーグラはなる。

 この老人が何者であるかは分かっている。

 ゆえに、すでに寿命が尽きたとしてもおかしくないほどなのに、その発している言葉からは、我が儘な性格であり、すでに衰えきり、正常な判断ができるのかさえ分からないほどだ。

 衰えるからと言って完全に正常な判断ができなくなるとは限らない。

 体が衰えたとしても、素晴らしい判断を冷静に、慎重に老練らしく下すことができる素晴らしい老人もいるだろうし、その判断によって社会が良き方向に向かうことがある。

 だけど、その逆の結果を及ぼすような判断を下す老人がいるのも確かであろう。そして、時と場合によって、正しいか間違っているかということもあるので、完全に正しい判断をずっと下し続ける人はいないだろうし、どこかしらでミスすることは十分にある。

 それを決して、忘れてはいけないからこそ、確かめるという行為は決して必要ないということもなく、必ずどこかしらでその出番がやってくるわけであり、確かめるという行為を疎かにするようなことはしてはいけない。疎かにされがちではあるが―…。

 さて、話を戻す。

 老人の声を聞いたラーグラは、

 (………さて、開けて瞬間に銃やら武器を突きつけられるか、罠が発動して俺を陥れようとするようなことだけはあるなよ。いくら天成獣の宿っている武器を扱うことができるからと言っても、姉ちゃんの部下の中で一番弱いことで有名なのだからな、俺は―…。)

と、心の中で思う。

 ラーグラは、天成獣の宿っている武器を扱うことに関して、かなり下手なのである。なぜ、そんなことになっているのかに関しては、今、ここで触れるのは意味のないことである。

 ラーグラの性格のある一面に問題があるということだけは触れておくことにする。

 そして、ラーグラは、ここで、罠の類が仕掛けられていないかを思いながらも、仕事をしっかりと果たさないといけないので、一歩進み、ドアを開け、会談がおこなわれる部屋の中へと入っていくのだった。

 

第140話-4 黒幕は現場にいる に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正および加筆していくと思います。


さあ、船上での出来事の原因が分かってくる頃合いでしょう。次の投稿の話からはそんな感じです。

ラーグラの名前は覚えておいてください。

理由は言わなくても、分かるとは思いますが―…。

次回の投稿日は、2025年2月11日頃を予定しています。

では―…。

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