第139話-2 こんな数も部屋に入らないんだけど
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
その動きに気づいた李章とミラン。
だけど、二人が焦ることはない。
どんな数で囲まれるようなことになったとしても、冷静に対処すれば、時間は少しだけかかるだろうが敵を倒すことはできるだろう。
問題は、瑠璃、クローナ、礼奈の安否である。
(さっきの時よりも数が多いわねぇ~。途中から、増えた!!?)
と、ミランは心の中で思う。
ミランとしては、このように数が増加されるのは嫌なことでしかない。
追加されるということは、相手にはさらに、多くの数がいるのではないかと考えないといけなくなるからだ。
ミランも実際に、そのように考え始めていた。
(それなら、はあ!!? いつの前に増えてるのよ!!! 十五人以上いるでしょ!!! どうすればよいのよ!!! 部屋の中でもこんな数はいなかったし、その相手を倒した時に消費した力の量があるから―…。)
と、ミランは心の中で焦りの様相を見せる。
ゆえに、いろんなことを考慮しないといけなくなり、頭の中で混乱をきたしているという感じだ。
だけど、そんな焦りの時間も短い。
なぜなら、この場が戦いの場であり、ここで自身が倒されるということは自身の命が奪われるということになるからであり、同時に、味方さえもピンチにしてしまうことになるのだから―…。最悪の場合、味方の敗北だけでなく、味方全員の命が失われる結果となるのだから―…。
ミランはすぐに、戦闘態勢になり、焦りではなく、冷静さを無理矢理引き連れて―…。
(でも、ここはやれるだけのことをしてでも、勝ちにいかないといけない。それに広い場所に出たのだから―…。)
と、ミランは心の中で思う。
それと同時に、ミランがしなければならないことは、はっきりと決まっている。
そうである以上、目的は一つであり、それを現実へともっていくための手段が重要になる。
天成獣から借りられる力の量に関しては、完全に使いきっているわけではないし、十分に余力はある。
大事なのは、変に消費をしていくことであるし、放撃のような選択はなるべく避けるべきだ。
結論は決まっている。
(あれしかないわね。)
と、ミランは心の中で覚悟を決める。
そして、アルぺエスのメンバーが一人を除いて、李章とミランの方へと囲いながら攻撃できる態勢になり、李章やミランの視界に入らない場所から攻撃を開始しようとする。
今回は数が増えているので、囲ったとしても、数の上で李章もミランも対処できないと敵側は踏んでいるようだ。
そんななかで、李章は、
(攻めてきました!!! 十五人以上もいます。後ろを振り向くことは返って、隙を作ることになりますし、全員が円のように囲っていると視界に入らないところが発生します。そこから突かれれば―…。)
と、心の中で思う。
李章であったとしても、相手の数が多ければ、一人の相手に割けるリソースはどうしても減らさないといけなくなるし、その結果、重要な結果に繋がる可能性を見落とすということは十分にあり得る。
そのせいで、良い結果がおとずれないとか、悪い結果になるとか、十分にあり得るのだから―…。
そうだと思うと、余裕がある状態というものは必要であったりする。
さて、話を戻すと、李章の心の中には次第に焦りというものが出てき始めていた。
それでも、冷静さを失うことの危険性も理解しているので、受け身という感じになってしまい良くはないが、相手の動きに対処して、そこから相手を倒す手段を探らないといけなくなる。
李章は、さっきの部屋での戦いで、そこそこ天成獣から借りてきた力量を消費してしまっているのだ。ペース配分が難しいのは事実だが、できませんでしたとか、言えるような状況ではなくなっている。
なので、李章は自らの弱さを出さないようにしながら、とにかく、相手側には自分らが李章を攻撃してきても勝てないと思わせるような素振りをしないといけなくなる。
このように、相手との駆け引きが発生しており、単純に自分の思い通りの主張だけを通せば良いということはできなくなってきているのだ。
そのことに意識的に気づけるか、そうでないかで、他人に押し付けることしかできないか、そうでないかが決まるし、押し付けるだけの人間に、本当の意味での人との良好な関係を築くことはできないし、築いていけていると思っていたとしても、嘘っぱちのものでしかない。
さらに悪いことに、そのような他人に押し付けることしかできない人間を利用する輩はどこかしらにいて、そこから利益を得て、自分の思い通りにコントロールしようとする。その結果、社会全体が本当の意味で良くない方向にいく場合があり、最悪、社会そのもの、国家そのもの、組織そのものなどが破滅するか消滅するかの憂き目に遭うことになる。
ゆえに、他人を慮ることは重要なことであったりするし、他者を虐げるような真似をしたり、暴力的なことを他者に振るえば、どこかで、自分の子孫の時代もしくは本人の時代において、仕返しというものが来るのであるし、そのことに怯え続けるしかなくなるのだ。
そんな人生は、真っ平だと思っているのであれば、普段から他人を慮ったり、他者のことへの配慮をしっかりとしていくべきであろう。自分だけで世界を成り立たせているわけではないのだから―…。
自分と自分以外の要素の行動によって、未来における結果というものを起こしているのだから―…。
さて、話が逸れてしまっているので、話を戻す。
李章は囲まれながらも、焦りの感情はありながら、自らの祖父の教えの通りに冷静に振る舞いながら、自身の気持ちもそのようにしようとする。
それと同時に、相手の動きへの警戒も忘れない。
相手の行動によって、自分の行動が決まる状況になっており、そのような行動を選択しているのだから―…。
一方でミランは、
(とにかく、展開―…。上手くいく!!!)
と、心の中で不安を取り払う。
それが心の中で完全にできるかと言われれば、そのようなことは一切ない。
あるのは不安だと思っている自分を否定することだけだ。
否定している自分の気持ちまで受け入れられるだけの時間がないのだ。
相手への対処が絶対に必要なのだから―…。
ミランがあるものを展開している間―…、李章の側で動きがあった。
李章を囲っているアルぺエスのメンバーの一人、李章の視界の真ん中に映っている人物が李章へと走りながら向かってくる。
そのスピードはかなりのものであるが、李章の目で追えない速さではない。
むしろ、わざと李章の視界に残しているとさえ、見てよかろう。
そして、李章に攻撃することができる範囲まで、到達すると、すぐに右足での回し蹴りへと移行する。
そのことに李章が気づかないわけがない。
「!!!」
驚きながらも李章は、一歩だけ後ろ後ろへと下がりながら、自身へと攻撃してきている人物の回し蹴りの攻撃の範囲から離れる。
それも早いスピードではなく、ギリギリ相手がそれに対処できないような感じのところで―…。
だけど、李章はすぐに理解する。
自分の今の選択が、明らかにミスしてしまったことに―…。
(何か嫌な予感がする……。緑の水晶が警報をならしてきています。)
と、李章は心の中で言う。
ここでいう、緑の水晶の警報は李章のみが分かることであり、敵がその警報を聞いたり、鳴っているのが分かったりするわけではない。
李章はすぐに移動しようと考えるが、ゆっくりとしすぎたために早い移動へと切り替えることができなかった。そんな時間すら敵の方は李章に与えることはない。
そう、李章が回り蹴りの攻撃をかわす段階で李章が後ろへと後退するのではないかという経験の勘がはたらいた李章を囲っている二人が一気に李章の後ろへと回り、下が上へと上げるように蹴る動作をする。
それも李章に攻撃が当たる範囲で―…。
その結果―…。
「ガァッ!!!」
と、李章は声を漏らす。
そう、二人の敵の蹴りの攻撃が李章に当たったのだ。
真面に防御することができなかったことから考えると、李章に相当なダメージがあったとしてもおかしくはない。
現に、李章は痛みのせいで、表情を歪めてしまっている。
その表情は、痛みに兎に角耐えて、囲っている人たちを全員を倒し、瑠璃たちを救いに行かないという気持ちが前面に現れているが、その気持ちに見合った結果とは逆の方向になっていることをも表しているような感じだ。
(うっ!!! 前に出されると―…。)
李章は分かっている。
相手の狙いが―…。
李章にとっては、一撃だけで、蹴りの攻撃が終わることがないことを―…。
そして―…。
(決めてやる!! 決めてやる!!! たとえ、子どもであってもな!!!)
と、回し蹴りをしている人物は心の中で言う。
たとえ、子どもであったとしても、仕事によって対象にされた以上、容赦をするようなことはしない。容赦すれば、そのことが広まり、裏の世界における信頼が失われ、仕事が来なくなるのだ。
ゆえに、どんな立場の相手であったとしても、自分の最大限の力を発揮して、仕事にあたっているのだ。より美味しい仕事を手に入れるために―…。
そして、回し蹴りの攻撃は李章に当たるのだった。
「ガァッ…!!!」
と、李章の言葉が漏れる。
連続で攻撃を受け、李章の体力もダメージの許容範囲を超えようとしていた。
だけど、李章は―…。
一方、ミランの方は―…。
(………何なんだ。あれは―…。)
と、ミランを囲っているアルぺエスの一員が言う。
そう、ミランを始末しようとしているが、ミランの方へと視線を向けているの中で、急に、黒い丸いうにゃうにゃと動きだすようなものが出現したのだ。それも二本の―…。
それは、ミランの後ろ首にある球体から生えているという感じであり、その球体は後ろ首に引っ付いている感じだ。
ミランの首を守る役割があるのだということが分かる。
そして、黒いうにゃうにゃは、動きながら、ミランの命令を待つ。
(ここで決めるしかないわね。李章の方も数が多く、かなりのダメージを受けてる。こいつを鞭のように使って、一人一人を倒していくのが得―…。)
と、ミランは心の中で思う。
ミランからしてみれば、こういう鞭のように使える技の方が天成獣から借りた力量の消費を少なくすることができる。そうすれば、長い間、戦うことができ、相手の方を消耗させることができる。
そして、このままで対峙の状態にしておくわけにはいかなし、動くしかないと判断する。
黒い鞭のようなものをミランの頭の中の命令で動かす。
〈相手に体の部分に強い攻撃を当て続けなさい!!!〉
ミランの念話の命令によって、黒い鞭のようなものが、うにゃうにゃの動きをやめ、ミランが見定めた敵に向かって動きだす。
それはまるで、鞭打つかのようにしながら―…。
その鞭のような動きに対して、その黒い鞭のようなもの狙われた敵の二人は、すぐに、気づき、タイミングを見計らって、ジャンプして避ける。
その避けることは成功し、ミランの攻撃は当たらず―…。
(避けられた!!!)
と、ミランは心の中で悔しそうにする。
それもそのはず。
彼らのスピードで避けられない速度で攻撃したはずなのだが、命令がオート実行されることを選択したために、どうしても動きの中に敵に分かりやすい法則性が発生してしまい、敵側からすれば、その法則を利用すれば良いという状態になってしまったのだ。
これはミランのミスである。
そして、その隙を敵の側が逃すはずもなかった。
そう―…。
(隙あり!!! 勝ち!!!)
と、敵の一人がミランを攻撃しようとする。
それも蹴りの攻撃で―…。
そのことに対して、ミランは気づくことなく―…。
ミランに蹴りで当てられる範囲まで移動をし終えた敵の一人は、右足でミランを蹴る。
「ウッ!!!」
見事に命中してしまうのだった。
ミランに―…。
ミランは真面に防御することもできずに、少しだけよろめきながら、膝を地面につけるのだった。
(……………………………ミスった!!!)
と、心の中で思いながら―…。
ミランにとっての致命的なミスに近いものであった。
第139話-3 こんな数も部屋に入らないんだけど に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正および加筆していくと思います。
ピンチですが―…。
何とかなってくれるかなぁ~。
では―…。