第138話-2 10人以上も敵はいるんだよ
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
触れる。
触れるのだ。
「!!!」
李章へと蹴り攻撃をしようとした三人。
驚きでしかない。
李章に蹴り攻撃を当てたと思っていた。
躱せないラインまで李章はその場にいたのだから―…。
そう、李章を攻撃しようとした者達は、その三人はお互いの足が触れるのだった。
(何!!! どうやって避けやがった!!!)
一人は心の中で驚く。
だけど、それを説明できるだけの根拠や証拠に近いものは持っていない。
あるのは、現実における今、起きていることだけだ。
そこから推測するしかない。
(一瞬にして消えて―………………………。)
もう一人は、頭の中で混乱する。
一体、どうやって、李章は避けることに成功したのか?
飛んだのか、いや、躱したのか。
二つ以上の考えがあり、自分の頭の中で予想することができなくなっている。
常識を疑うようなこと、当たり前だと思うことがそうでないということ、そのような場面に遭遇してしまうと、返って、人は何が起きているのかという目の前の出来事にショックを受け、思考を停止する。
一体、何が起きているのか、ということに囚われ、別の可能性を冷静に考慮できなくなってしまう。
だけど、こういう戦場を経験している人間にとっては、そのようなことが当たり前に発生する以上、似たような事例から似たような結果が起きるのではないかと推測する。
そう―…。
李章は―…。
「おい、相手は上だ。」
と、李章に攻撃した以外の囲んでいる人物が言う。
それは、李章の動きを目で追ったから分かることである。
つまり、李章はギリギリのタイミングでジャンプし、天井の接しないような高さと同時に、李章に攻撃してきた三人を同時に攻撃できるような場所に、ジャンプと同時に移動したのだ。
そのことを理解すれば、李章がしたいことは予想がつくであろう。
李章は、自らの右足にフィルネから借りた力を蓄え、蹴りの動作をおこなう。
李章を攻撃してきた三人とは位置からして、攻撃を当てられない場所にいるが、そのことは李章も勿論、理解している。
だからこそ、これは―…。
右足からフィルネから力を生の属性に転換したものを飛ぶ斬撃のように放つ。
本当なら、相手側に気づかれる前に放つ予定であったが、それでも、相手が避けられないほどのスピードで放っている。
(……早く避けなければ。)
(密集した地帯で足をどけるのが難しくなってる!!!)
(当たっちまう!!!)
そう、李章の隙を攻撃しようとした三人は、すでに、李章の攻撃が放たれた時点、回避を考えていたが、三人の足が接しており、それを離すのに僅かばかりの時間がかかり、結果として、李章の今の攻撃を避けることができなくなってしまったのだ。
まるで、行動に時間を消費するという定めにある生物において、その行動に対する時間の消費が未来に対してほぼ未知数であり、過去では過去のある地点での結果でしかないということが結果として、発生してしまったのが今の事態だ。
そうである以上、時間を使う行動に対して、物理的制約と時間的制約を受ける人間にとっては、できないということが存在する時が存在する。
よって、李章の攻撃を受けるしかなくなってしまったのだ。この三人は―…。
何かしらの対処の方法を持っていれば、それを使うだろうが、それもないので、結局は―…。相手の行動と他の要因に自らの身を委ねないといけなくなるのだ。
ドオン!!!
その音が似合うぐらいのものであるし、そのように聞こえる。
そして、李章の攻撃を喰らった三人は、真面に受けてしまったので、李章の計算からしたら、彼らは戦闘不能の状態になることは避けられない。
一方、アルぺエスと名乗った者は、
(……有利に戦いを進められていたのだが、天成獣の宿っている武器を扱う者はこんな状況下からでも逆転できるのか―…。クソッ!!! 二人敗れ、これで三人が倒されたということになると、かなり危険だが、まだ数がいないわけじゃない。そいつらを使って―…。)
と、心の中で思う。
苦戦しているのは確かだし、アルぺエスとしては大きな痛手になっているのは確かだ。
それでも、ミランと李章のいる部屋の中にいる数以外にもアルぺエスはおり、すでに、突撃したり、奇襲できるように配置は済んでいる。
そうであるとすると、その兵力を投入して、それも奇襲的に攻めて、ミランと李章の隙を突くしかない。
そう考えながらも、状況の判断を見極めることに費やす。
組織の上に立つ人間が焦ったような表情を見せるわけにはいかないし、不安を一切与えてはならない。その苦労を理解できる人間が、組織のトップとして相応しい条件の一つになるであろう。
なってから気づくのか、なる前に気づくのか。その差はあろうが、理解できなければ、結局、組織を破滅させる可能性を高めるだけでしかないが―…。理解しても破滅しないという未来を手に入れることはできないが―…。
そして、アルぺエスの一員の中でも上の人間であるとして、戦局の判断を間違わないように気をつける。
一方、李章は着地し、周囲を警戒しながら確認し、
(これで三人か―…。)
と、心の中で思いながら、まだ、倒していない相手がいるので、そこへの視線を外さないようにする。
そして、李章の攻撃を受けた三人は倒され、気絶するのだった。
一方、ミランの方は―…。
ミランは、闇を自身の体を覆わせながらも次の攻撃を考えていた。
そう、闇へと攻撃すると、逆に倒されることを相手側は知っているので、迂闊に攻撃ができない状態になっているのだ。
(あの暗い色したのに触れて、二人が倒された。攻撃することすらできない。一体、どうすれば―…。)
と、ミランと対峙している一人がそのように考える。
この人物からしてみれば、全方位を守られるようなことをされてしまえば、蹴りの攻撃もパンチによる殴る攻撃も、短剣などによる攻撃も意味をなさない。
要は、この人物から見れば、完全に守られていることになっているミランを倒すのは不可能であり、可能性があるとすれば、時間切れを狙って攻撃をするしかない。
そういうことになるのだ。
だけど、気づいているわけではないことは確かだ。
(近づけない―……。どうする?)
結局、もう一人の方も悩むしかない。
そして、時間切れの可能性を考えるためには、天成獣の宿っている武器を扱う者のことの情報をしっかりと知らないといけない。
そんな情報はほとんど市中に出回っていることもないし、戦闘になるケースはよっぽどのことであるし、情報屋からしても売れる情報としては限られることから、天成獣に関する情報は集められていないということの方が多い。
ゆえに、天成獣の宿っている武器での戦い方は、その者達同士の中での仲間内で情報交換するのが当たり前に近いことになっている。
情報が漏れにくいというわけだし、瑠璃たちが知っているのは、天成獣の宿っている武器で扱う者の中での実力者であるアンバイドがいたからこそ、多くの情報を手に入れられているわけであり、運が良い方なのである。
そのことに気づくのは、情報が手に入りにくいということを知ってからであろう。
人は絶対的基準で物事判断しているのではなく、ある情報を収集して、今まで集めた情報とを、ある絶対的なものだと勝手に思い込んでいる基準で比較して、優劣を判断しているだけに過ぎない。
結局、相対的基準でしか判断しておらず、それは結局、何かしらの要因で基準が意味をなくすのであるし、そのようにして、自分の経験というものが完全でないことを理解するのだった。要は、何でも当てはまるというわけではない。
さて、話を戻す。
(近づけば……、また一人と倒されるだけ………。どうすりゃ良いんだよ。これ!!!)
と、最後の一人も心の中で思う。
ミランの今の状態で攻撃を仕掛けようとすれば、自分が巻き込まれる結果になり、ミランに倒されるだけの結果にしかならない。
そうだとすると、どうすることもできず、動くことができない。
そんな状態の中で、ミランの方は、
(近づいてこなくなったわね。………五人とも苛立って攻めると思ったけど―…。この技もそう長くは使えないから、そろそろ解除しないといけなくなる。さて―…、これなら―…。)
と、ミランは心の中で思いつく。
ミランとしては、この状態をいつまでも続けられるわけがないだろうと考えている。
技を解除してしまえば、相手がその隙を突いて攻撃してくれるのは確かだ。
そのことは少し頭を動かせば簡単に分かることだ。
経験も伴う必要はあるかもしれないが、そうでなくても理解できる人はいる。
まあ、人それぞれなので、できないからと言って劣っているとは限らない。劣るというものはある一面の比較での判断でしかないし、それ以外の一面では同様の基準は適当にしていても意味がない場合があるので、気にしてもしょうがない。
そして、ミランは、賭けに出ないといけないということは分かっている。
だけど、時間制限がありながらも、焦って、重要な情報を見落としてしまっては失敗した時における相手の反撃に対応できなかったりする。
むしろ、時間に追い詰めるべきはミランではなく、敵の側でないといけない。
そのことを理解しているからこそ、自分が焦るようなことになってはいけない。
そして、そのための選択肢を用意してある。
そう、普段から、どのような戦い方をすべきかを想定しているのだから―…。
ミランは、自身の覆っていた闇を一瞬にして消す。
それは、敵に隙を与えることになる。
そう―…。
「!!!」
と、一瞬、敵側の三人はひるむ。
なぜなら、ミランの側から隙というものを作ってくれたのだから―…。
だけど、この怯む時間があれば、攻めるべきであるだろうと思う人はいるかもしれないが、その判断は難しいものだ。
罠の可能性もあったり、攻めた方が良い選択であったり、離れた方が得であったりすることがケースバイケースで存在していたりする。
さらに、付け加えるなら、その判断は相手のことを理解していないと正解する確率を上昇させることはできないし、どんなことであったとしても半々から逃れることはできない。
それと同時に、ここでは行動を起こしたミランの方が優位に立っているのである。
それは、経験からというものと対策することによる状況対処の手札を増やしたことにもよる。
ミランを囲んでいた相手側の三人は、一気にミランの方へと詰め寄ろうと動きだす。
だけど、敵側が怯んだ僅かな時間は、ミランにとって最適な時間となった。
ミランは、すぐに、両手を胸部あたりに近づけ、双方の手のひらが延長上にぶつかるような感じにする。実際には少しだけ離すような感じにしている。
そこには、空洞のようなものがある。
そこに、小さな黒い球のようなものが発生する。
シュルルルルルルルルルル。
という小さな音をさせながら―…。
その大きさは小さいためミランの隙を突こうとしている相手側からしてみたら、音はしなかった。
ゆえに、少しだけ気づくのに遅れる。
そして、ミランは攻撃の準備を終えるのだった。
(これで決める!!!)
と、心の中で思いながら―…。
「闇の追跡撃。」
と、ミランが言う。
そうすると、展開された球から、三つの伸びるような攻撃が放たれる。
その三つは、ミランを襲おうとした敵側の人間に向かって、追いかける。
(罠!!!)
罠だと気づき、避けようとするが、すでに、近づいていたために、意味のないことであった。
だけど、対処しようとして、横に避けようとするが―…。
「!!!」
それは意味のないことでしかなかった。
なぜなら、今、ミランが放った「闇の追跡撃」には、狙った相手を追跡する機能を備えているのだから―…。
ゆえに、対処の時間もなく、彼ら三人は、ミランの攻撃を腹部に受け、その衝撃で気絶するのであった。
第138話-3 10人以上も敵はいるんだよ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆していくと思います。
今日は『この異世界に救済を』の投稿日で、すでに投稿しています。
そちらの方も堪能してみてください。
では―…。