第137話-4 多すぎる敵の数
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
そんななか―…。
(………………………………………。)
と、李章は蹴り飛ばした相手を見ることなく、周囲への警戒をしようとする。
だが―…。
「ガァッ!!!」
李章からこのような声が漏れる。
李章からしてみれば―…。
(隙を突かれた!!!)
油断でしかなかった。
それは、李章の隙というものになり、今度は李章の方が蹴り飛ばされる結果となる。
そして、李章を蹴ることに成功したアルぺエスの組織の一員は―…。
(五対一の五の側が一のお前ごときに負けるかよ!!! こっちは隠密部隊だぞ!!!)
と、心の中で思うのだった。
そう、ラッキーでしかなかったが、それでも、そのラッキーをしっかりと利用したのだ。
李章にしても、予想外でしかなかったけど―…。
(隙を突かれた!!!)
と、飛ばされながらも、李章は心の中で思うのだった。
そして、空中にある以上、自らの動きをどうにかすることはかなり難しく、抵抗も無意味という感じになっている。
それは明らかな隙であり、敵の落ち度がない限り、李章がこの地獄のような感じから抜け出すのは難しいとしか言えない。
そして、すぐに次の攻撃を準備は相手側においても終えているわけで―…。
再度―…。
「ガハァ!!!」
李章は蹴られる。
背中の方を―…。
反対側には、自らの腹部があり、そこから水平線の延長上の李章の体の背中部分を―…。
そして、李章は反対側に返され、サッカーボールのように蹴られ、今度は地面の方へと次第に落下していきながら―…。
バタァ!!!
ゴロロロロロロロロロロロ!!!
李章は自らの体を地面にぶつけながらわずかに転がされながら、地面とぶつけるごとに体に痛みが走る。
天成獣の宿っている武器を扱うことがなければ、確実に気絶していたどころか、自らの命を落としていたとしてもおかしくはない。
(狙われた!!! だけど、ここで負けるわけにはいきません!!!)
李章の息は遠のくということにはならず、とにかく大勢を整える必要があると判断しながら、抵抗する。
(これでも駄目なのかよ。)
李章が気絶どころか命を落としたような感じがしなかった。
敵側からしてみれば、こんなしつこい相手を見たことはない。
絶対にいないわけではないだろうが、そのような人物に出会ったことがない。
経験ということがここで重要なのは事実だ。
それと同時に、敵を素早く殺すこと、相手の隙を突くということに長けた戦闘の経験を、アルぺエス側はしっかりと積んできている以上、李章に攻撃をするチャンスを与えるようなことはしない。
ちゃんと、天成獣の宿っている武器を李章が扱っていることを知っているからだ。
確実、というわけではないが、李章やミランの強さのことを考えれば、天成獣の宿っている武器を扱うことができると思った方が、納得がいくだろうし、そのことによって、しっかりと油断するということもなくなるだろう。
ゆえに、徹底的にやることができる。
そして、李章の方に向かってくる、敵が一人いる。
その動きは、まさに、サッカーをしている人が李章という名のボールを追いかけているようだ。
李章は、転がされながらも気づく―…。
「!!!」
そして、素早く回転を終わらせ、攻撃の態勢に移行しようとしたが、そのような時間を待ってもらえるはずもなく―…。
「ガァ!!!」
李章は腹部を蹴られ、空中に舞い上げられるのだった。
李章からしてみれば、自らの攻撃の態勢への移行を難しくさせられてしまったのだ。
(また、攻撃しずらい態勢にされた。だけど、とにかく、攻撃へと―…。)
李章は必死だ。
自分が殺されれば、瑠璃や他の仲間も殺されてしまうからだ。
そうだと思うと、必死になるのは当然のことであり、自分の勝利こそが大事だと思える段階だった。
その必死さは同時に、相手の動きを見逃す要因となってしまう。
自分のことに集中するあまり、相手の動きを見逃し、相手の意図というものを見ることによって、得られる対処ができなくなるということだ。
今、相手の動きを冷静に読むことができているのは、李章と戦っている側の方だ。
ゆえに―…。
(これで終わりだ!!!)
李章と対峙している敵は、すでに李章の命を奪えるぐらいの状況にもっていくことができたと判断する。
そして、李章を囲んでいた一人がジャンプする。
李章よりも高く、天井に自身の体をぶつけないようにしながら―…。
そして、左足を上に上げ―…。
李章のいる方へと振り下ろす。
強く、強く!!!
ドォーン!!!
「ガハァッ!!!」
李章は真面に相手の攻撃を受ける。
回避することができなかった以上、それは避けられない。
緑の水晶がいくら警告を発そうとも、肝心の李章が対処できなければ、警告は何の意味も持たない。
そして、李章は何も対処することができずに、床へと叩きつけられるのだった。
ドォーン!!!
「ガハァ!!!」
その衝撃は、人の命が奪われていてもおかしくないほどであり、李章はその衝撃を受けるのだった。
その状況にミランは―…。
「李章!!!」
動揺するのだった。
ミランからしても、李章ほどの実力があれば、これぐらいの状況はあっさりと対処できるだろうと思ったのだ。
それは刀を使ってのことであろうが―…。
だけど、現実はそうなっていなかった。
そうである以上、ミランは李章が相手していた敵をも相手にしないといけない。
そして、李章と叫ぶ時間は、敵によって十分な隙を与えることになる。
(このチャンスを逃すか!!!)
と、アルぺエスのミランを囲っている一人が素早くミランの方に向かって移動し、ミランに蹴りの攻撃を決めようとする。
ミランもそのことに気づくが―…。
一方、李章の方は―…。
命を落としてもおかしくないほどの衝撃を受けていて、倒れていた。
(これほどのダメージを与えることができれば、もう動けるわけがないな。)
と、李章を囲んでいた一人が心の中で思う。
隠密部隊アルぺエスの一員として、油断するようなことは一切していないが、自らが油断だと思っていないことが、時に油断という括りのものになることは十分にあり得る。
そして、何かしらの罠を李章が仕掛けている可能性もあるので、暫くの間、李章に近づくことのないようにしている。
(負けるわけにはいきません!!!)
李章は心の中で思いながら、相手が近づいてこないことを確かめてから、素早く立ち上がるのだった。
「はあ……はあ………はあ。」
と、息を切らしながら―…。
李章としては、かなりのダメージを負っているだろうということは分かっているだろうし、天成獣の宿っている武器を扱っていなかったら、あの攻撃によって自らの命がなくなっていたことは分かっている。
だけど、ここで負けるわけにはいかないという気持ちが、李章からさっきの攻撃による痛みの感覚を消す。いや、正確に言えば、痛みの感覚がまるでなかったことにし、体のダメージを無視したというのが正しい。
結局、無理矢理に動いているだけに過ぎない。
それでも、負けられるような戦いでないことは理解しているので、そんな無理もしないといけなくなる。
逆に、この攻撃によって、自分が何をしなければならないことにより集中することができるようになったとも言える。
そうであるからこそ、李章が立ち上がったことに驚きを見せながら、焦りもでながらも、決して、ここから退こうとはせずに、自分なら李章を倒せるという自信を抱きながら―…。
(これで、駄目かよ。なら―…。)
と、アルぺエスの一員が思いながら、李章へ向かって攻撃を仕掛けようとする。
ミランの方は―…。
ミランを包囲しているアルぺエスの一員が李章が倒されそうになっているのを見て、ミランが油断したと判断して、蹴りの攻撃で倒そうとする。
その判断自体は間違っていない。
ミランが天成獣の宿っている武器を扱っていないことと、非力な人間であるという条件を満たすのであれば―…。
それ以外の条件も重要な要件となることはあり得るだろう。
だけど―…。
「!!!」
(どういうことだ!!!)
ミランへ蹴りの攻撃をしたアルぺエスの一員が驚くのだった。
まるで、自らの攻撃が通じなかったことに驚かないといけないのだ。
ミランの姿が見えるから、ミランの間に透明な何かがあるのではないかと思ってしまうのであるが、そんなものを仕掛けられたという感じはしなかったからだ。
正しくは、ミランの方が、透明にした感じで自らの周囲にオーラのように覆っていただけに過ぎないのだ。
それが見えなかったからこそ、攻撃をしてしまったのだろうか?
そのように考えるかもしれないが、違う。
実際、ミランは油断していた。
だけど、そのようなことぐらいはいつでもあるし、その時の対策を打っていないわけではない、ということだ。
その対策は決まっている。
そう、オーラのように覆っていた、それを正しく言うのであれば、自らの天成獣から借りた力を使って闇を展開し、自身を覆っていたに過ぎない。
その理由はさっきも言ったように、油断する場合がどこかしらで発生することを避けることができないなら、ちゃんとした対策をしておくことは過去の経験から分かっているのだ。
何も反省することなく、無対策にしておく理由はない。
そして、それが今、この形になって現れているのだ。
そう―…。
「闇の防壁領域。」
と、ミランが言うと、ミランの周りには薄黒いオーラが目で見える感じで発生する。
ミランの対策は成功したようだ。
(………天成獣の宿っている武器を扱うという情報はあったが―…。このような使い方もできるのか!!!)
ミランに攻撃をしたアルぺエスの一員のこの人物からしたら、李章のような戦い方だと考えていたし、遠方から魔法陣のようなものを展開して、攻撃してくる遠距離型だと思っていたのだが、自身を守ることができるなんて思わなかったのだ。
実際に、これはミランを攻撃したアルぺエスの一員の方の見落としてであり、決めつけによる油断であった。
見てきたものの中にない手段をとられるという方法を完全に無視していたことと、まだ、心の奥底で納得することができていないのだ。
そうであると、この人物は戦いに関して、どこかしらの舐め腐っていた一面があるのか、自分の実力はそれなりにあり、相手の油断を突けば簡単に勝てると判断するほどの経験不足と同時に傲慢な態度と思い込みがあるなどと考えられる。
実際に、あったであろうが、ここから、自らの中に敵が何も対策をしないわけがないと思えることができれば良いのだが、完全にそのような感じではなく、自分ならここから逆転できるという淡い希望にまだ縋っているからこそ、少しの間、相手から少しだけ距離をとるという戦術を使うことができなかったのだ。
いや、それに気づかない場合もあるが、それが致命的な結果になることは十分にあり得る。
そして、ミランは自身を守るだけにこの技を使ったわけではない。
(甘いわね。)
そう、ミランに攻撃して防御されたアルぺエスの一員のこの人物は、戦いの中で致命的なミスをしたために、甘いのだ。
防御だけで終わらせるようなことはしない、ということに気づかないことが致命的なのだ。
「反射。」
と、ミランが言う。
そうすると、闇のオーラの部分とミランに蹴りの攻撃をしてきたアルぺエスの一員のこの人物の足の接する部分から次第に、この人物を飲み込むような感じに、接する面が上下左右に拡大していき―…。
この人物の身長よりも少しだけ大きくなると―…。
この人物に向かって砲撃が放たれるのだった。
そして、その砲撃は、この人物を飲み込んだ時点の長さで止まるのだ。
そう、この闇の中で、この人物に対する攻撃がミランが攻撃を止めるまで続くことになる。
その光景を見ていた人物の一人は、
(闇…………。長短に扱えるのか!!!)
と、心の中で驚くのだった。
ミランは、実際に、長短中距離の全部に適応した闇の使い方をすることができる。
ゆえに、こういう数が多い場合でも対処することが可能なのである。
ミランは気づく。
(まず一人。)
アルぺエスの一員の一人を倒すことに成功したことを―…。
闇の攻撃がやむと、闇に飲み込まれていたアルぺエスの一員の一人は倒れるのだった。
ガタン、という音をさせながら―…。
【第137話 Fin】
次回、まだ戦いは続く。そろそろ動く頃合いなのかなぁ~。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆をしていくと思います。
暫くの間、戦いが続くと思いますが、そんな状況をお楽しみください。
執筆の方に関しては、新キャラ出しまくりな感じなところです。
では―…。