第137話-2 多すぎる敵の数
新年明けましておめでとうございます。本年度も『水晶』および『この異世界に救済を』をよろしくお願いいたします。
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
一方、礼奈が就寝している部屋。
礼奈は疲れたのか、ぐっすりと睡眠に入っていた。
寝息を立てながらも、音を出すことなく―…。
その表情は美少女そのものであり、可愛さの中に美しさというものが存在し、ずっと見ていられるし、その場だけ、神聖な空間を入っているのではないかと思わされる。
そして、礼奈の寝姿を見てしまった者は、まるで、魔法使いによって動きを止められる魔法にでもかかったかのように動かなくなり、魅了にかけられた状態になる。
これが恋なのか、それとも、緊張なのか、いや、両方ともが混じっているのではないかと思わせられるかもしれない。
もしくは、別のやましい感情を抱く者がいてもおかしくはない。
だが―…、ここには礼奈しかいないはずなのだが―…。
音をたてることなく、礼奈に近づく者がいる。
その人物は、礼奈に許可をされて部屋に入ったわけではない。
要は侵入者だ。不法の―…。
そうである以上、礼奈に気づかれるのは良くないであろうし、誤魔化すような場面になるのは、あまりにも危険だと判断して、ゆっくりと気づかれないようにしながら、音をさせずに、厳しい訓練で培った方法を用いながら、礼奈の寝ているベッドまで移動する。
そこまでに、何かしらのアクションがあるかもしれないが、それはなかった。
その人物から判断すれば、完全に寝入っていると思わせるには十分である。
(クッ!!! 別の部屋に入って行った奴らはやられたのか? まあ、気にしても意味なし。良く寝入りやがって―…。これで、俺の実力で暗殺しやすくなって得だがな。今回の依頼で、一番先に手柄を挙げるのは俺だということだ。そして、この女を始末してしまえば、後の二人を丁寧に気づかれないようにして抹殺すれば良い。何、簡単な仕事だ。暗殺部隊の底力をみてやるよ。)
と、その人物は心の中で思う。
そして、礼奈を暗殺するために、短刀を出す。
これで、一発で首を一筋に切り裂くことができれば、依頼は完了となるだろう。
いくら短剣で殺したとしても、監視カメラもない、足跡を調べる方法もない状況であれば、いくら暗殺をしたとしても、暗殺犯であることに気づかれることはない。
異世界のこの地域の船のシステムなど、そのようなものなのだ。
だが、未来においては、このようなシステムが持続するか分からないことであるが、それでも、現実世界と比べれば、犯人を捜す操作方法に関するレベルは低い。
決して、この異世界が頭が悪いとか、考える才能も、創造する才能も力もないというわけではない。いろんな要素が絡まり合って、現在の結果になっているだけに過ぎず、成長の度合いはいくらでもあるし、現実世界とは違う方向で、現実世界よりも良い犯人捜しのための技術が発展する可能性は十分にある。それは内からやってくるのか、外からやってくるのかは分からないが―…。
見下したとしても結局、今の自らの不甲斐無さを一時的に忘れているだけに過ぎず、今、自分の問題に対して、逃げているだけであり、逃げることも重要な時もあるが、立ち向かい、向かい合うことも重要なことがある。自らよりも劣っているような感じて、見下している人にとっては―…。
さて、話が逸れたので、もとに戻すことにする。
そして、礼奈を殺そうとしている人物は、短刀を礼奈の首筋に当てようとする。
その動作は綺麗な動きであり、一切の無駄が存在しない。
首筋に当たり、切れそうな状態になる。
(依頼完りょ…………………。)
と、礼奈を殺そうとしている人物は心の中で思う。
だが―…。
一方、李章とミランがいる部屋。
そこでは、暗殺部隊アルぺエスの人間と対峙していた。
お互いに動くことはなく、相手の隙を窺っていた。
アルぺエスと言った人物が警戒して動かないのだから、どうしようもない。
だけど、李章もミランも何もしていないわけではない。
この自分たちの命を狙ってきた人物を如何にして捕まえるか、ということと、それと同時に、依頼してきた人物が何者であるかを探らないといけない。
これ以上、命を狙われないようにするために―…。
(名乗ったのは良いが、こいつらを簡単に倒してしまうとは―…。元部下であったとしても情けないが、向こうの二人の実力を考えれば、納得の結果だろうな。今回の依頼主は確実に俺らに先行させて、三人組と言われる者達の実力をしっかりと把握しようとしている感じだ。どこかで監視していたとしてもおかしくはない。裏にはたぶんだが、あの国がある以上、どうしようもないな。侵略戦争国家が関わっている以上―…。さて、ここでしないといけないのは、気絶させられた連中を回収して、一度、隠れることなのだが―…。それは無理な話だろうな。と、なると数による戦いになるな。)
と、この人物は覚悟を決める。
自分達にこのような依頼をしてきた者の背後の勢力は何となく予想することはできる。
大きな権力を持ち、影響力を持つ組織および国においては、自らの存在を表立って明かすことなく、何人もの人を仲介させて、自らの裏のことに対する依頼をしたりするし、依頼人に辿り着かれないようにする。
そうすることで、自分達の安全を守るというわけだ。
まあ、そんなことをしたとしても、裏組織の情報ネットワークを舐めてもらっては困る。
そういうネットワークはしっかりとしており、協力関係になかったとしても、情報共有する会合ぐらいは存在しており、噂を交換し合ったりしているのだ。そのことによって、お互いが変な理由で敵対し、自らの勢力を弱らせないようにするために―…。
生き残ることができれば、挽回するチャンスはいくらでもあるのだから―…。
命を落としてしまえば、挽回するチャンスもないのだから―…。
そして、今回の依頼は受けざるを得なかったのは確かだ。断れるような感じがしなかったからだ。
アルぺエスと自らの組織を名乗った者は、冷静に考えながらも、同時に、一気に数を使うしかない状況であることを理解している。
「あの二人を殺し、海に捨てろ!!!」
と、少し叫ぶように言う。
はっきりとした声であるが、隣の部屋に聞こえないように配慮しながら―…。
隠密という生業をしている以上、自分達の存在が世に知られることは必要最小限にしないといけないし、彼らに組織名を名乗ったのは人物にとって、敢えて李章とミランに組織名を名乗っているが、それを周囲に広める気はない。
要は、ここで数の力を使ってごり押しで倒す方針に変えたというだけだ。
そして、この人物の近くにいた何人も李章とミランのいる部屋に入ってきて、李章とミランに向かって攻撃をしようとするが―…。
二人の人物が何かおかしいことに気づく。
「!!!」
「!!!」
それは感覚的なものにすぎなかったが、だけど、その感覚が自らの命を落とすという運命から逃れさせることもあるので、その予感に従う。
そうこうする前に、二人を一か所の範囲とするかのように、魔法陣のようなものが出現し―…。
「闇の領域攻撃。」
と、ミランが言う。
そうすると、魔法陣のようなものから黒い光線のようなものが発生する。
いや、正確に言えば、闇であり、魔法陣のようなものにいる者達を巻き込んで上へと放たれるかのように突き上げる。
まるで、間欠泉のような感じだ。
だけど、水ではなく、闇である。
ゆえに、この攻撃は闇属性の攻撃となり、魔法陣のような中にいる者達を飲み込むのだった。
ドン!!!
そういう音をさせながら―…。
だけど、その闇の噴水のような噴き上がりは、決して、天井に到達することはなかった。
その点に関しては、ミランもしっかりとコントロールしている。
あくまでも、船を傷つけることが目的ではなく、自分達の命を狙ってきた暗殺者がどこから依頼を受けたのかを知ることが目的なのだから―…。
そして、ミランの攻撃によって、飲み込まれていくのを見たアルぺエスと自らの組織名を言った者は、心の中で思う。
(天成獣の宿っている武器を扱うという報告は本当のようだな。)
と。
この人物も過去に別の暗殺組織に属していたことがあるので、天成獣に関する情報は伝聞ではあるが、しっかりと聞いていたりする。
過去に所属した組織が、その国の天成獣の宿っている武器を管理していたり、収集していたりするのだ。自らの組織が国を裏から支配し、自分達の思い通りにしようとしているトップがいて、それを実行することができた人材であったのだから―…。
そのトップに、この人物は逆らうことなんてできないし、入った最初の時に、コテンパンにやられ、そのトップに対しての恐怖を嫌というほど植え付けられた。
その恐怖を消し去ることはできないが、そのトップが何者かによって殺されたということは知っている。
嘘情報という類ではないだろうし、そんなトップであったとしても、あっさりと殺されることがあるなんて、それをしたのが誰かは最近、知ることになったが、騎士団に所属する人間によって、始末されたとは―…。
その情報を知った時、恐怖が消えることはなかったが、この世にはそのトップよりも強い人間がいることを知り、少しだけ気持ちが晴れたというものだ。
それでも、自分達が裏の世界から抜け出すことはできないと分かっていた。
なぜなら、すでに、裏の世界での仕事が自分の日常生活の一部となってしまっており、そこから抜け出すことができないほどに、恨みを抱えることになっているし、それほどの情報を手にしてしまっているのだ。
裏の世界で生きる人間に幸福はない。降伏すらない。
あるのは自分達が命を落とす時になって、自由になれることぐらいだ。
この世界における自由はないということであるし、他の可能性を探ることすら許されないということだ。
そうであるからこそ、裏の世界に入った時点で、自分の命を落とすことになるのは、他人の誰かによって自らの命が奪われることによってのみ成り立つ。いや、病によっても可能であろう。寿命が尽きるというのは、ほとんどないことであり、奇跡の類でしかない。
ミランの「闇の領域攻撃」を見ているうちに、ある人物への視線を見落としてしまうことになるのだった。
だけど―…。
「!!!」
後ろの方から嫌な感覚がした。
その感覚に逆らうべきではない、ということを自身の直感が告げる。
無視することはできない。
そして、反射的に後ろへと向く。
そこには、すでに、右足で蹴りをこの人物に蹴りを入れようとしている李章が目の前に迫っており、攻撃態勢に移行していたのだ。
そのことを知り、左足で、反射するかのようにして、李章からの攻撃を防ごうとする。
パン!!!
李章の右足での攻撃は、アルぺエスと名乗った人物に左足の防御によって防がれる。
李章としては、悔しい気持ちがないわけではないが、これが一対一による戦いでない以上、悔しがったとしても意味はない。
すでに、次の攻撃が準備されていることは分かっている。
「……………………………………………………………………。」
言葉にせずとも―…。
そして、自分が次にすべき行動さえも―…。
ギリギリまで、相手を自分の方へと集中させる。
そして―…。
「!!!」
(離れた!!!)
アルぺエスと組織名を名乗った人物は、李章の動きに疑問を抱く。
ここで離れるということは、一対一でない以上何かしらの攻撃があるのではないかと理解する。
それと同時に、自身の周囲を見渡すと―…。
そこには、部下の二人を飲み込んだ魔法陣のようなものが展開されていた。
そして、時すでに遅しという感じで―…。
「闇の領域攻撃。」
と、ミランが言う。
そうすると、アルぺエスと自らの組織名を言った人物は、闇の噴き上げに飲み込まれてしまうのだった。
そう、これは、李章がその人物を引き付けている間に、発動させようとしたのだ。
李章の方もすぐに気づいており、一回その前に見たことがあるので、この攻撃でアルぺエスと自らの組織名を名乗った人物をミランが倒そうとしているのを理解したので、ギリギリまで自分の方に集中させ、相手が回避できず、自分が回避できる丁度良いタイミングまで待って、素早く回避したのだ。
上手く連携ができているものだ。
そして、闇の噴き上げに飲み込まれたのをアルぺエスと自らの組織名を名乗った人物の李章とミランの部屋の中にいると思われる部下はそれを見守ることしかできなかった。
というか、手を出しようなら、自分達もただただ巻き込まれるだけで、犠牲を増やすだけでなく、相手へのダメージを与えることなど一切できなかったであろう。
そういう面で、彼らの選択は間違ったものではなかったと言えるだろう。
第137話-3 多すぎる敵の数 に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正および加筆していきたいと思います。
今年は、『水晶』は、イスドラークという都市か街に入るところまで進めていきたいです。
すでに執筆している場所は、この船上の事件におけるクライマックスというか、エピローグの方です。
ここから、サンバリアの動きも触れていかないといけないし、新キャラの方も少し動かさないといけないという感じです。
現時点で投稿している部分は、暫くの間、戦いが続きます。
ということで、2025年度も無理しない程度で執筆していきます。
では―…。