第136話-5 三人組を狙う者たち
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
一方、この部屋にはもう一人の刺客がいた。
そう、李章とミランのいる部屋の中に―…。
襲撃がしっかりとおこなわれているかを監視する者が―…。
(………こうもあっさりと捕まってしまうとはな。私一人で、対処することは不可能だ。仲間に知らせる必要があるな。シエルマスの生き残りを何人かを雇い入れることができたが、結局、駄目だな。国を滅亡させたような裏の輩では―…。)
と、心の中で思いながら、仲間がいる部屋へと向かうのだった。
この人物は知っている。
瑠璃や礼奈、クローナのいる部屋にも侵入した人間が、李章に捕まって、蹴られ、気絶させられ、そして、手足を縛られるのを―…。
実際に見ているのだから、仕方ない。
殺気を消す方法に関しては、シエルマスだった者達によって教えてもらっていたが、こういう時に役立つとは、皮肉さえ感じてしまう。シエルマスの人間は簡単に捕まってしまったのだから―…。
向かいながらも、周囲を警戒し、怪しまれないようにしながら、思考を続ける。
(あの戦いぶりを見て分かったが、確実に天成獣の宿っている武器を扱っている。噂でしか聞いたことないが、人の動きでは絶対にできないほどに、早く移動して攻撃するとか―…。まあ、それでもそのことを含めてしっかりと報告することができれば、対策の打ちようはいくらでもある。私のことは一切、バレていないのだから―…。)
と、心の中で続ける。
この人物にとって、李章とミランは、天成獣の宿っている武器を扱っているのではないかと思わせるには十分な根拠があった。
証拠というものが必要なのは分かっているが、それでも、実際に目で見たという光景から考えて、自分の思っていることが間違っているとは思えなかった。
というか、そうだと思わないとやっていくことはできないし、自分の頭の中にある経験や知識を総動員して導き出される答えはそうだとしか思えないのだ。
そうだと結論付けるのは危険なことでしかないが、時間という制限が加わっている以上、どうしても危険を冒さないということは難しいことになる。
そして―…。
一方、李章と礼奈のいる部屋。
そこでは、ミランによって抑えつけられている人物が一人、意識がある状態で仲間が倒されたのを知る。
そして、会話に入りづらい雰囲気であったが、それでも、話さないといけないことがあるからだ。
「ふざけるな!!!」
膝をつけられた状態から抑えつけられ、もう身動きするのも無理だった。
こうやって、強い言葉で言うことしかできなかった。
汚い言葉も今なら、すんなりと吐き出すことができるであろう。
「ふざけるな、って言いたいのはこちら。話してもらうわよ。誰からの命令で襲ってきたのか?」
と、ミランは言う。
ミランからしてみれば、今しなければならないことは相手の正体を知ることであるのだから―…。
正体を把握することによって、自分達との関係を知る可能性ができるのであり、そこからどれだけ自分達を襲ってきた人々のことを知っているのかが分かるのだから―…。
そういうことをしない選択肢はない。
二度と同じ勢力から襲撃を受けないために―…。
そういうところはしっかりしておかないといけない。
「話していただきたいです。こちらとしても教えていただけなければ、酷いことをしないといけなくなるのです。分かっていただけますか。」
と、李章は言う。
李章からしてみれば、たとえ敵であったとしても酷い事をしたいわけではない。
だけど、瑠璃を襲ってきたりするようなことがあったので、容赦できるかと言えば、できないであろう。なぜなら、李章は瑠璃のことを大切に思っているからこそ、傷一つでもつけようものなら、李章は自身の不甲斐無さで、暴走してしまってもおかしくはないのだから―…。
瑠璃が傷一つつかなかったということが過去に完全に達成されたかというと、その逆であり、この異世界に来てから、瑠璃が死にかけたことはある。
ゆえに、李章はもう二度と、瑠璃がそのような面に遭わないようにするために、自身が強くならないといけないと思っているし、刀ではなく、蹴りで強くなることを優先している。最悪の場合は、刀も使うということだけは頭の中に、最近、入れるようになってはいるが―…。人に対して、優しいのであるが、決して、頑固な面がなくなったわけではない。そういうことが示されているような感じがする。
ミランは、そんな今の李章の言葉に呆れるのであったが、しっかりと油断するわけにはいかないので、李章に対して、注意することができない状況となっている。
李章が今の言葉を言っている間にも、敵の方は思考を続ける。
(………ここから脱出するのは実際には難しい。仲間があっさりとやられ、隙を突こうとしても失敗している以上、こちらに勝算があるとは思えない。だが、ここで捕まってしまい、情報を吐き出されるぐらいなら―…。)
と、この兵士は自決を考えようとするが―…。
李章がすぐに危機を察知したのか、捕まっている敵の顎を強く蹴る。
そして、その衝撃により兵士は気絶するのだった。
「李章!!!」
と、ミランは驚く。
相手に甘かった李章のさっきまでの発言とは、逆のことしているのだから―…。
李章からしてみれば、甘いと言われるかもしれないが、そういう意味では否定することはできないが、それでも、味方を不利にしたいとか、危機に陥らせたいということにはならない。
それが今、この場で実行されたということである。
「緑の水晶が反応したので―…。」
と、李章は言う。
李章は、緑の水晶の知らせというものを聞いて、損したことはなかったので、その知らせに従った。
ゆえに、この今、気絶した敵の人間が、自決するようなことをするのを阻止することに成功した。
このデメリットも十分あるわけだが、命を奪われないというメリットに比べれば、気にならない。命を失えば、メリットもデメリットもあったものではない。
そう思えば、李章は緑の水晶の能力によって、デメリットとメリットの双方を一瞬で、感覚的に比較したということになる。
そうである以上、緑の水晶の有用性を証明した結果となった。
「分かったわ。だけど、これで、聞き出すことはできなくなったわよ。」
と、ミランは言う。
言葉以上の結果にはならない。
聞き出すためには、相手から口で話してもらわないといけないのだから―…。
相手の記憶を見たりすることができるのは、それができる能力者か天成獣にそのような能力あるものか、ローぐらいであろう。
そのような者がいないことはわかっているので、結局、相手の情報を得られることはない。
(気絶から回復してからになるわね。)
と、ミランは心の中で思うのだった。
その後、李章によって気絶させられた人物も縄で縛られるのだった。
李章は、それだけで終わることなく、男の口の中を見る。
決して、李章に男の口の中を見て、興奮するような趣味はないが、緑の水晶の危機察知がまだ反応している以上、そこから何かを探し出すのだった。
そこには―…。
(何、これ―…。)
と、李章は心の中で思いながら、銀色の歯を一つ取り出す。
相手はその時に神経から痛みで目を覚ましてもおかしくはないのだが、それは、本来、この人物の歯であったわけではないので、神経と繋がっていないことは確かであろうが、それでも、神経に触れないというわけではないから、痛みは十分にあるだろう。
だけど、そうしても、痛みで目を覚まさないということから、神経には触れていないか、もしくは弱かったのか。いや、弱いということはない可能性の方が高いと考えられる。まあ、それは神経に関する専門家の人の見解が必要であり、今、述べていることが間違っている可能性は十分にある。
そして、李章は、その銀色の歯を掴みながら見る。
李章はすぐに、窓を開け、外に向かって投げる。
「えっ、何してる……………。」
と、ミランは怒る。
ミランとしては、李章が投げたものは、重要な証拠となる場合があり、そのようなことをして欲しくはなかったが―…。
ミランが怒る途中で、李章が投げたと思われるものの方向で、爆発が起こったのだ。
そこで、ミランは理解してしまう。
心の中の言葉にする必要もなく―…。
そう―…。
「爆弾だったのですか?」
と、李章は言う。
李章にとっては、疑問でしかなかった。
李章が生まれ育った現実世界では、火薬というものは存在していたし、それを用いる爆弾という武器もしっかりと存在しており、それが戦争の主流にもなるぐらいであったし、現在もそのような感じであろうが、別の物質による殺傷能力の兵器もある以上、主流と表現するのは難しいものである。
そんななかにおいても、この異世界において、今まで李章が見てきた場所では、火薬が使われるようなことがあったわけではないので、爆薬は存在しないのではないか、という疑問は間違った方向になる。
だけど、火薬や爆発物の類は、この異世界においても存在するのではないか。
そう抱くことには、十分な爆発を見せられたのだから―…。
ただし、音がそこまでするものではなかったので、気づかれる可能性は低いであろうが―…。
そして、この爆発物に関しては、火薬という技術が用いられていることは確かだが、天成獣の類ではないことは確かで、現実に火薬を運用でき、爆発物に応用できている場所はかなり少ないのであるが、現実世界以上に上手く運用することができる場所が異世界に存在している。
そして、この李章によって顎を蹴られた人物は、シエルマスに在籍している時に、自害用のために作られたものであり、これはミラング共和国では生産できず、別の大陸にあるサンバリアという国によって安価に生産された物を、輸入しているだけに過ぎない。
船や陸からの輸送になっているので、ミラング共和国に到達する頃には、かなりの値段になっていたりする。裏の組織の人間は、有名な国どころであれば、仕込んでいたりする場合がある。
リースでは珍しく、そのような自害用の小型の爆発物を自身の体に仕込むという風習は存在しない。ラーンドル一派も採用しようとしたが、自分達の命が狙われる可能性を考慮して、そうしなかったのだ。
ラーンドル一派は、自分の命が一番に大事なのだから―…。
そして、ミランもさっきの爆発で、爆弾というだけでなく、自害用のものであったことを見抜く。
どこからのものかは分からないが、裏の組織や勢力によるものであるという見当がつくのだった。
ゆえに―…。
(厄介なのに命を狙われたわね。)
と、心の中で思うのだった。
一方、李章とミランのことを知らせようとした者が本拠地としている部屋に入る。
そこでは、すでに何人もの仲間が集まっており、状況を聞きたそうにしていた。
ここで、嘘を吐くことはできない。
そして、言うのだった。
事実を―…。
その結果―…。
そして、話を戻す。
爆発を見た後からほんの十数秒後、そこに一人の人物が現れるのだった。
ミランと李章は誰かが入ってきたことに気づく。
その人物は、ミランと李章が自分の存在にすぐに気づかれたことに驚きつつも、ここで暗殺をするのは不可能だと悟り、姿を現わすのだった。
何のために?
と、思ってしまう人もいるだろうが、敢えて、姿を現わすことによって、獲物に対して、恐怖を植え付けるためである。
「私の可愛い部下たちをここまでやってくれるとはねぇ~。すでに滅んでしまったミラング共和国で最強と言われた諜報および謀略組織であるシエルマスの残党を加えて、私の生まれ、育った祖国を復活させようとしたのに―…。シエルマスで役に立たないとなると、シエルマスを越えた我々が直接に対処しないといけなくなるなぁ~。特殊隠密部隊アルぺエスが―…。」
と、言い出すのだった。
【第136話 Fin】
次回、ピンチ、ピンチ、ピンチ(?)に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆すると思います。
2024年12月22日の投稿分に関しては、当日のどこかの時間で投稿すると思います。いつもの時間に投稿できないので―…。
では―…。