第136話-3 三人組を狙う者たち
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
瑠璃たちが船に乗ってから初日の夜。
豪華スウィートルームは完全に寝静まった感じになっている。
護衛の人はいるけど、彼らも船である以上、そこまで敵が現れるとは思っていなかった。
油断と言っても良いかもしれないが、そうではない。
(……………やっと寝静まったか。)
と、豪華なスウィートルームに関係者以外が入らないようにしている衛兵の一人が心の中で思うのだった。
この人物にとっては、待ち遠しいほどに待った、お楽しみの時間だ。
それは決して、自分にとっての休憩時間や仕事が終わったということではない。
これから、自らがしないといけない任務に取り掛かるのだ。
衛兵の仕事?
そんなことではない。
もう一人の衛兵の方に視線を向けると、その衛兵も気づいたのだろうか。
二人は話し合うのだった。
「完全に寝静まっているな。」
「ああ、声が聞こえない。」
寝静まっていることを確認し、頷き合って―…。
「任務を開始しても問題はないな。」
「ああ、三人組の始末。」
そう、彼らは、瑠璃たちがプールに入っていた時に、監視していた人物たちの仲間である。
そして、任務に取り掛かるのだった。
ゆえに、周囲に人が来る気配を感じることがないことを確認して、豪華なスウィートルームの中に入っていくのだった。
その中に入ると、衛兵の二人は、大きな広間と同時に三つある部屋から開いている部屋の一つを選択する。
(罠という可能性はないだろう。子どもにそんなことができるとは思えない。)
と、心の中での先入観があったので、罠の可能性のある部屋へと入るのだった。
そこでは、一人の少女が寝ており、顔は見えなかった。
暗いということもあるが、それと同時にドアとは反対方向に少女の顔は向いているので、確認のしようがなかった。
(………まあ、五人はいたけど、三人組の仲間なら始末しても構わない。我が祖国が復活するのなら―…。)
と、心の中で思いながら、短剣を一つ取り出す。
そして、短剣で、少女の首筋を刺そうとする。
だけど―…。
首筋をさす前に、少女はいなくなり、それに気づく前に―…。
(グッ!!!)
と、刺そうとした衛兵の横腹に衝撃が走る。
意識を保たせることを許さないかのような―…。
それと同時に、少女はすぐに、もう一人の衛兵の方を手とうで気絶させるのだった。
「ガァッ!!!」
と、声を出しながら―…。
一人の少女……、いや、ミランは二人を見ながら―…。
(わかっていたわよ。プールにいる時から視線を感じていたのを―…。)
そう、ミランは分かっていた。
誰かの嫌な視線を感じる感覚というものを―…。
ゆえに、何かしらあるのではないかと感じ、敢えて罠を張ったのだ。
だけど、その罠の類に上手く引っかかってくれるとは思ってもいなかった。
引っかからない場合の保険もしっかりとしていた。
あの二人は確実にこういう寝込みを襲ってくる刺客に気づかないぐらいの性格なのだから、敢えて、相手を油断するための要員として、寝込みを襲われる可能性を言っていない。
「ふう~。」
と、脇腹を攻撃された衛兵が意識を無理矢理保たせて、呼吸を整える。
この人物にとっては、想定外でしかなかった。
衛兵となれるぐらいには、体を鍛えていたし、武術に関してもそれなりやってきた。
そのおかげで体格は良かったし、裏の人間としての任務は護衛での潜入が多かった。
だけど、こんな少女に簡単に脇腹にこんなダメージをなんも反応することができずに受けるのは初めてだ。
それは、この衛兵が運が良かっただけに過ぎないことであるが―…。
そして、ミランは一歩、呼吸を整えている兵士のもとへと進む。
それに気づき、脇腹を攻撃された衛兵は警戒する。
(……………………………………………………。)
衛兵からしたら何も反応できずに攻撃されることを警戒し、ミランの方へと視線を向け続ける。
言葉にすることもできず―…。
そうしなければならない状況であると理解しているから―…。
「あなたたちは何者? 私たちがプールに入っている時からその視線を感じていたけど―…。もしかして、誘拐犯? それとも、暗殺犯?」
と、ミランは言う。
ミランからしたら疑問でしかない。
まだ、彼らの目的が確定させるだけの証拠はないし、何者であるのかが分かっていない以上、警戒しないということはできないだろうし、警戒を怠るようなことをすべきことではない。
そして、ミランの後ろで気絶している人物が起きてきている気配を感じなかったので、まずは意識のある衛兵の方から目的を聞き出すというわけだ。
やましいことをやっているのは相手側において、確かなことなのだから―…。
(…………………………。襲ってしまったことは事実だ。……いや、ここは二対一……、私たちの方が有利に決まっている。消えるように移動して攻撃してくる可能性を考えると、相方の方が目覚めて攻撃してくるまで、こちらへと視線を注視させておくことにするか。子どもを騙すぐらいわけがない。)
と、この衛兵は心の中で思う。
そう思っている間も、ミランから視線を外すようなことは一切しない。
してしまえば、どうなってしまうか分からないからだ。
そして、ミランの方は何かしらをしようとしているのではないかと思いながらも、相手の目的を聞き出すことに焦点を当てており、その他のことの優先順位はかなり低めなものになっていた。
「そんなことを言われても私たちは誘拐犯でもなければ、暗殺犯でもありません。この部屋の中から騒がしい音がいたしましたので、それを確認しに来ただけです。怪しいと思われてしまったのであれば、申し訳ございません。だけど、決して、愚かな真似をしようとしたわけではございません。神に誓っても―…。」
と、衛兵は言う。
神に誓う気はないだろうが、怪しまれないようにするためには、それなりに真剣である言葉を言っておいた方が良いと思ったからであろう。
現に、この異世界の多くの地域において、何かしらの神への信仰というものは存在しており、神に誓うという言葉を言っておけば、ある程度のことはどうにかなるという経験則から分かっている。
相手が何の神を信仰しているかは分からないが、ここまで上手く生き残ることができている以上、命をもって償うタイプのものには、引っかかっていないことがわかる。
そうであったとしても、この衛兵の実力からいえば、何人かを始末して逃げ延びることも造作でもないだろうが、それも完全にすべての場合で成功するかと言われれば、そうではないということもできる。
天成獣の宿っている武器を扱う者達に全くもって歯が立たないということがあり得るからだ。
そして、この人物がこれで、子ども程度ならかなり誤魔化せるという確信を抱くのだった。
だけど―…。
(………………気配からして、確実に私たちを殺しに来ているのは確か。殺気は消えていない。警戒が必要ね。これも私を注視させて仲間に隙を突かせようという魂胆。)
と、ミランは心の中で思う。
だけど、この衛兵の言っている言葉にも、道理というものがないと言えば嘘になるだろうが、それでも、迂闊にこの衛兵の言っていることを否定することもできない。
そうなると、返事というものを考えないといけないし、慎重にならないといけない。
なぜなら、返答一つで、自身をピンチに貶めるような結果になってもおかしくはないのだから―…。
そういう意味では、厄介な場面であることに間違いない。
だけど、ここを乗り越えられないというわけではない。
やるべきことは分かっている。
「怪しい音―…。そんな音は聞いた覚えがないわ。それに私たちは明日に向けて、眠っていたのですから―…。聞こえない可能性はあったとしても、気づかないわけがない。」
と、ミランは言う。
ミランからしても、怪しい音というか、いろんな意味で警戒をしていることは確かだ。
瑠璃、李章、礼奈の三人の命が狙われていることは知っており、ベルグ側からの刺客がやってくるのは避けられないということを―…。
ゆえに、常時、警戒を怠らないようにしているのだから―…。
気を抜いているように見せたとしても―…。
李章の持っている「緑の水晶」の能力である危機察知によって、危険を察知することは可能であるが、万が一というのもあるので、警戒しないようにするという選択肢はない。
そして、ミランの今の警戒度はかなりのものであった。
一方で、脇腹に攻撃を受けた衛兵の方は、ミランから視線を外すことなく、会話を続けないと不自然に感じられ、怪しまれている状況をより悪化させる可能性があるので、嫌でも会話をしようとする。
「それはたまたま聞こえない可能性があったからでしょう。それにあなたも今、言っているように聞こえない可能性があったということからも、私の言っていることに嘘はないのですよ。」
と、衛兵の一人は言う。
衛兵からしたら、ミランは墓穴を掘ったという認識になっている。
なぜなら、わざわざ敵の目の前で「聞こえない可能性があった」という確実に「聞こえた」ということの反証材料を敵に与えるようなことを言ってしまっているのだから―…。
そういう意味では、ミランの方にミスがなかったと言えば、嘘となる。
現にミスをしているのだから―…。
それでも、ミスを取り戻すことはできる。
なぜなら、人という生き物は完璧にも完全にもなることができないし、すべての物事を把握することができない以上、何かしらのチャンスが残されている可能性は十分にあるからだ。後はそれをしっかりと探し出し、ある時間内に見つけることだ。
それが簡単に見つかる場合もあれば、見つからない場合もある。
そういうことを忘れてはならない。
(………ここで相手の方に隙を与えてしまうとは―…。だけど、音がしなかったことは確か。それなり、私へ向けてくる殺気は消えていない。)
と、ミランは心の中で思うのだった。
ミランの側からしても、自分がしてしまったミスに気づいてはいるものも、それをあっさりと認めるわけにはいかない。
認めてしまった方が良い場合もあるが、今回は敵と思われる衛兵達と対峙している以上、どうしても負けを認めるようなことをしてはならない。
実力差がはっきりとしていたとしても、ミランの方が圧倒的に上であることが分かっているのだ。
ならば、相手に勝ちを譲るようなことをわざわざ、理由もないのにする必要はない。
その間、衛兵の一人は短剣を隠そうとするが―…。
その動きにミランは、気づき―…。
「その短剣、一体何のために使うの?」
と、ミランは言う。
ミランからしてもかなり怪しいし、衛兵に短剣のようなリーチの短い物は必要ないはずだ。
そう思えば、かなり怪しいし、そこから、私たちの命を狙っていたことを口にさせることができれば十分であろう。
そんなことをミランは思いながらも、一方で、対峙している衛兵の方は―…。
(チッ、バレたか。だけど、俺が殺そうとしていることに関して、気づいているわけではないな。なら、さっさとやってしまった方が今となって良いかもしれんが、消えるような動きをするのが厄介だ。だけど、私はシエルマスに属したこともある人間。それぐらい―…。)
と、衛兵は心の中で思いながら、消えるような移動を実践する。
ミランは、衛兵が消えたような移動をした。
それは、ミランの視線から衛兵が消えたように感じさせ、ミランの視界に入らないようにすることであり、この人物の実力なら簡単にすることはできるが、そのきっかけというか、そのタイミングを図っていた面もあり、遅くなった。
そして、今がまさに、これをするときだと思ったのだ。
ミランは、衛兵の一人が消えたことに驚きながら、すぐに何をしようとするのか理解する。
(もらったぁ!!!)
と、消えるような移動した衛兵は心の中で思いながら、ミランの真後ろに到達する。
そこから、ミランの命を奪うために短剣で攻撃しようとする。
だが―…。
「ガァ!!!」
(なぜ、どうして、俺が―…。)
衛兵はそのように思いながら、どうして衝撃を受けたのか理解できない。
視線が一瞬、その痛みのせいではっきりとさせることができなかったが、視線が戻ると、そこにはミランの顔があり、正面から腹部にパンチの攻撃をしていたのだ。痛みは腹部からしたので、そうだろうと、この衛兵は判断する。
衛兵からしたら、いつの間に、と思っても仕方ないだろうが、それでも、そのような状況であっても冷静さを失ってはならない。
そのように言い聞かせながらも、足をベットの上に付けるのだった。
「ふう、油断も隙もないわね。」
と、ミランは言うのだった。
第136話-4 に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
では―…。