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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
636/746

第136話-2 三人組を狙う者たち

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 一方、リース郊外の森の中。

 瑠璃たちも出発したので、森を経由しながら、進んでいく。

 目指す場所は勿論、決まっている。

 「ふむ、儂らはいったん、ギーランとイルーナの家のある場所に向かって、そこから、ゆっくりとサンバリアの方面へと向かうことにしようかの~う。そうすれば、砂漠の中にいるあの一族も我々の側になってくれることじゃろう。二百年ぶりかの~う。共闘に近い戦いは―…。」

と、ローは言う。

 二百年前、あの一族の者たちと誰かはともに戦ったとされる。

 その誰かに関して言及する気はないが、分かっている人は分かっていることであろう。

 その伏線が回収されたとしても、驚きはないどころか、「あ~」というぐらいに納得することはできる。

 さて、ローはそうは言いながらも、過去のことに思いを馳せる気もなく、目指すべき場所へと向かい、回収しておく必要があるのだ。

 そして、一緒についてきていたギーランは、

 「だけど、瑠璃たちをサンバリアに行かせたことは分かるが、だが―…、ミラン以外に大人が一人はいるだろうに―…。ミランには砂漠の知識は与えているが、彼らだけで砂漠を越えるなんて―…。」

と、心配そうにする。

 だけど、賛成してしまった以上、その選択に対して批判することはしないが、心配でたまらないのだ。

 ギーランも一人の親である以上、そのような気持ちを抱くことは多くの親にとって当たり前のことだろう。

 一方で、自らの子に対して、何の愛情を抱かないどころか、自らの飾り物のようなことでしかなかったり、虐待を加えるような人だっている。要は、親は自らの子どもに対して、善意で接するとは限らないということだ。それを完全に当たり前だと思い、周囲に押し付けるのは危険なことでしかないし、虐待を見逃すことになるだろう。それが不幸な結果を呼ぶ可能性があるし、連鎖してしまえば、社会的にも人類的にも最悪の出来事になったりする可能性は十分にある。そのような結果を誰も望みはしないだろうということは当たり前に思っている。

 ゆえに、押し付けることではなく、柔軟に幅広く考えることが必要になるのであり、背景を知り、ある程度の理解をしているのか、自分自身に常に問いかけることが大事なのである。誰も望まない結果にならないようにするためには―…。

 「ふむ、ギーランの心配は分かるじゃろうが、あやつらが砂漠を乗り越えられないということは一切、ないの~う。李章に渡した「緑の水晶」は、危機察知の能力を有しており、その能力によって「砂漠を越えるな」と知らせれば、別の方法でサンバリアに向かうであろうし、そうでなければ、砂漠の中で迷子にでもならない限り、何とかなるもんじゃ。それに、ラナトールからサンバリアに向かっては、砂漠を越えるキャラバンが出ており、彼らとともに動けば砂漠を越えるのは簡単じゃろう。途中、イスドラークという都市もあるじゃろうし、何とかなるもんじゃ。むしろ、あの一族とどう関わるかまでは、分からぬがの~う。」

と、ローは言う。

 ローとしては、あの一族がどういう存在かは知っている。

 知っていないとおかしいぐらいには―…。

 掟に厳しい一族であることは分かっている。

 砂漠という集団として結束して、馬鹿なことをしないようにして生きないと簡単に人なんて存在は命を奪われるという結果に簡単に繋がってしまうかのような場所に暮らしている。暮らさないといけないのだ。

 そうである以上、ルールに関してはどうしても厳しいものになってしまう。経験則から―…。

 そして、ローはそういう一族であることを知っているからこそ、瑠璃たちが接した場合、どのように瑠璃たちを扱うのかが読み通すことはできない。

 だけど、協力を得ることができれば、どれだけ心強いか、ということも知っている。

 (まあ、あの一族は儂の言うことには従ってはくれるじゃろう。)

と、ローは、そのようなことを心の中で思うのだった。

 ローとしては、あの一族がローに逆らうようなことはしないだろう。内心までは完全には分からないことであるが―…。

 そして、ローは、言葉にする。

 「じゃけど、大丈夫じゃろう。」

と、ローは言う。

 「そうねぇ~、あの一族と瑠璃の相性は分からないけど、ミランは明らかに悪いわね。特に、あの子と―…。まあ、それでも、大丈夫でしょう。あの一族は裏切った同族以外に対して、悪いような扱いをしないのだから―…。」

と、イルーナは言う。

 ある一族は砂漠の中だけでなく、世界中にいると思われる。

 ある一族に属していた者達は、二百年前にサンバリアのある大陸の到着して以後、裏切り者達をも含めて、いろんな場所に広がっている。

 それに子孫もたくさんいるだろうから、そこまで気にするようなことではないと、イルーナは考えるのだった。

 自身らがあの一族を裏切るようなことはしていないのだから―…。

 裏切るようなことをしていたら、ここでローとともに行動を一緒にすることなんてないのだから―…。

 「まあ、なるようになるもんじゃ。」

と、ローが会話をしめ、三人は家へと向かうのだった。


 場所は戻って船上。

 すでに、日が沈み切り、船上の大ホールでは歌や踊りなどの見世物がおこなわれていた。

 華やかな衣装、魅惑的な女性たち、綺麗な声を出す体形がしっかりとした男女。

 まるで、一つの演劇を見せられているのだが、それを見ている人々に不快な表情は一切ない。

 そりゃそうだろ。彼女たちの踊りや歌は素晴らしいものであり、現実世界の上手いプロの人々と遜色はないのだし、現実世界から異世界に来た瑠璃、李章、礼奈を満足させられるものであったのだ。

 そして、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、ミランは夕食をとっているのであった。

 「まさか、あんな豪華なスウィートルームに宿泊できるなんて―…。」

と、瑠璃は言う。

 瑠璃からしてみれば、船旅ではあるけど、豪華な大きな部屋ではなく、一般客と同じ部屋なのだと思っていたのだが、まさか、案内されたのがそのような場所だったので、驚いているのだ。

 警備もしっかりとしていると感じたので、完全に安心しきっているという感じだ。

 「驚き。実際に、こっちはお金を払っていないから、ローさんがしっかりと手続きをしてくれたのだろうか。」

と、礼奈は言う。

 礼奈としては、こういう豪華なスウィートルームはかなりの金額がかかるはずだ。

 この客船のすべての部屋を見たわけではないので断定することはできないが、一番の豪華な部屋なのではないかと思ってしまうのだ。

 そんななか―…。

 「あ~、その部屋、リース側の助けてくれたせめてものお礼ということで、予約してくれたみたいよ。リースの実質上トップのリーンウルネ様が―…。」

と、ミランは言う。

 ミランはしっかりと、瑠璃たちが豪華なスウィートルームになっている理由を聞いていたからだ。

 それはリースでの件でランシュに勝利してリース王族の地位を回復させたことと、それと同時に、リース王国の中央で権力を掌握し、腐敗させていたラーンドル一派の復活の阻止に協力したことになっているからだ。

 実際、瑠璃たちはそんなことを知らないし、協力した覚えもない。たまたま、セルティーと組んでランシュを倒しただけなのだから―…。それ以上でもそれ以下でもない。

 リースの王族、特に、リーンウルネ側は、瑠璃たちを協力したということと、ランシュ側も協力したということにして、催しでもあったことから、それを利用して、ラーンドル一派の完全一掃とそれと同時に、リースがラーンドル一派からの解放ということを宣伝することで、王族の権威の復活に役立てようとしたのだ。

 さらに、ランシュがリース王国の創設者の武器を扱うことができるということもあり、ランシュを殺すよりも生かした方が、リース側としても得であり、国の再建にはかなり長い道のりが必要であるし、交易による利益を人々にしっかりと分配できるようにしておかないといけない。

 統治をしていくためには、人々の不満を蓄積させていくのは決して、良い結果にならない。どうしても溜まるものであるが、それでも、少しでも少なくしておくに越したことはない。

 そういうことを理解しているから、リーンウルネは敵であったとしても、利用できる人間や、私欲に走ることのない人間はしっかりと自分側にして、ある程度の自由と裁量を与えながら物事を進めていく方が自分で考えたことをすべて実行するよりも良い結果になることはある。ただし、方針はしっかりと示しておく必要はあるが―…。

 それに自由や裁量を与えるとしても、監視をしないといけないことに変わりはないから、そういう監査や監督である機関は慣れあいが発生しないようにして、設けておく必要はある。

 そういう慎重さは必要である。

 大胆さが必要な場合もあるが、それらの判断はかなり難しいものであったり、簡単なものであったりする。時によりけり。

 そして、リースの王族側としても、瑠璃たちに貸しを今回の件で作ったことになる。豪華なスウィートルームだけで貸しを返すことができるとは思っていない。

 そうなると、ベルグとの戦いでの共闘の可能性もあるが、そこに多くの兵力を割くということはできない。ラーンドル一派の根本を完全に破壊したとしても、その生き残りはおり、リーンウルネやランシュの方を恨んでいて、何かしらの支援を周辺諸国や組織から得て、自らの手にリースの権力を掌握しようと考えているかもしれない。それを阻止するためには、密偵やら、兵士をしっかりと派遣しておくことも必要だし、政治においても、しっかりとリースの領域の中で暮らしている人々のための政治をおこなっていかないといけない。失敗すること、これイコール、敵側に塩を送るようなことにしかならないし、その塩を使って自分の私欲を満たそうとするのだから―…。権力奪取と同時に、自分の私欲のためにリースから搾取しようとするのだ。

 そんなことを許したくはないのだからこそ、今は、そちらの方にリソースを多く割かないといけない。

 だけど、すべてを割く必要はなく、一部の精鋭を派遣することによる共闘は可能であったりする。

 そして、それができない場合の事態に備えて、豪華なスウィートルームを報酬にすることにした。報酬への備えも重要なのだ。

 そのことを、ローやギーランからミランは聞いているということである。

 ゆえに―…。

 (いろんな意味で、あの女王は敵に回したくないわね。)

と、リーンウルネと敵対したくないと思うのだった。

 ミランからしてみれば、リーンウルネの行動はリース王族へと嫁入りしたけど、よっぽど優秀な人物であり、能力の使い方、状況での判断の仕方というか、慎重さもあるから油断することができないと思った。

 それでも、リーンウルネが失敗することもあるので、決して、完璧超人のような存在ではないことは確かだが―…。

 「へえ~。」

と、礼奈は言う。

 その中で、リーンウルネという存在が賢い人だと判断するのであるが、ミランには礼奈がそのように思っていることは伝わらなかったようだ。

 (へぇ~、って。)

と、ミランは礼奈に対して、呆れるのだった。

 そのことからもわかることであろう。

 そして、瑠璃とクローナは、舞台に立って踊っている人々を見ながら―…。

 「さあ、さあ。今回のショーに満足していただけたら、おいらのシルエットの中に自分が出せるだけの金額のお捻りを入れてくれるかなぁ~。」

と、ピエロの恰好をした人物がいきなり登場してきて言う。

 彼らは船員であり、パフォーマンス集団の一人であり、道化を演じる役割を担っている。

 このように、人から調子に乗っているのではないかもしくは図々しいことを言ったりすることもあるが、彼自身は誰よりも芸に関する才能を有し、それを発揮するのは、仲間のピンチの時さ。機転が利く。そういう人物である。

 そして、ここで食事をしている人々の多くは、ピエロがやってくるとお金を入れていく。

 だけど、決して自分達が支払うことができないお金を支払うことはないし、ピエロの方も大量に出せ、と強要することはない。

 そんなことをしてしまえば、ショーが台無しになるし、船舶に雇われているので、そこからの給料も得られているから、強要する必要はなく、しっかりとした給料を受け取りながら、このショーでボーナスというかチップという感じで臨時収入を得るし、これがダンサーや音楽を演奏する人たちのモチベーションに繋がっている。

 そういう意味でもこのピエロは機転が利く。

 そして、瑠璃たちもいる場所に来て―…。

 「さあ。」

と、シルクハットを出す。

 「おいら達のショーを楽しんでいただけたかなぁ~。」

と、ピエロは言う。

 そこからどのような表情をしているか分からないが、ミランがチップを少しだけ出して―…。

 「今日は、これぐらいしか出せないわ。だけど、良いショーを明日も見せてくれたら、その時は弾むわ。」

と、ミランは言う。

 ミランとしては、いくら豪華なスウィートルームで泊まるにしても、予算が多くあるわけではないから、多くの金を出すことはできない。

 そうである以上、このような言葉を言って、相手側のショーのモチベーションを上げて、出しやすいようにするのだった。

 「お姉ちゃん、何で!!!」

と、瑠璃は不満を言う。

 瑠璃としては、素晴らしいショーだったのだから、もう少しチップを出せば、という思いがあったのだろう。

 だが、ミランは、

 「これからサンバリアに向かうのに、無駄遣いはできないの。理解しなさい!!!」

と、言って、瑠璃を黙らせるのだった。

 そう、今、ミランが預かっているお金はサンバリアへと向かう時に、特に、砂漠越えをする時に必要だったりするのだから―…。余計な事に使うわけにはいかなかった。

 それに、お捻りなので、いくら出しても良いのだから、あまり出さないというのも立派な選択肢としてあり得るのだ。

 「こりゃ、厳しい。明日も良いショーができるようにしないとなぁ~。でーは~。」

と、言いながらピエロは去るのだった。

 そして、他の席へとお捻りを手に入れるために向かって行くのだった。

 瑠璃とクローナはミランに対する不満を抱きながらも、ミランは一向に瑠璃とクローナに妥協することはなく、礼奈が宥めるのであった。


第136話-3 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


では―…。

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