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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
626/746

番外編 ミラング共和国滅亡物語(280)~最終章 滅亡戦争(135)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。

一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。

その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。


翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。


戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。

その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。


翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。


リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に

、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。


リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。

その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。


ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。

その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。

一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。

その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。

一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。

その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。

それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。

その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。


ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。

そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。


一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。その兵たちはアンバイドの実力の前に戦わず降参するのだった。

それが重要な問題となる。

ファルケンシュタイロはファロネンズをクローデル領に派遣し、マーゼルの真意を確かめ、ファロネンズの独断でマーゼルを始末するのだった。

そして、マーゼルが殺されたことを、マーゼルの重臣たちに見せしめ、完全服従を勝ち取る。

一方―…、ファウンデーション領(旧アルデルダ領)では―…、領都のミグリアドが包囲されるのだった。それを打開しようとして―…、シエルマスを投入し、リース王国軍の中央軍のトップを始末するのだった。

その後、クローデル領でも動きがあり、ミラング共和国軍とリース王国軍右軍の対決となるが、アンバイドの活躍により天成獣部隊のトップを始末し、かつ、撤退させることに成功して、クローデル領での勝利を得るのだった。

 そして、オットルー領の方に向かって勝利したリース王国軍の左軍は交渉の場にいた。そこでは話し合いがおこなわれていたが、衝撃の事実が突きつけられるのだった。それは、ファウンデーション領を攻めていたファルアールト元帥が暗殺されるというものであったが、オットルー領の領主との話を終え、ミラング共和国の首都ラルネへと向かうのだった。

 一方で、ファウンデーション領を攻めていたリース王国軍の中央軍は―…、ラウナンの策によりミグリアドから撤退しないといけなくなったが、その後、ミラング共和国が攻めてきたが、リーンウルネの影ながらの支えにより、勝利するのであった。

 そして、舞台は最終決戦となろう場所、ミラング共和国の首都ラルネへと―…。

 (グヘへへへへへへへ、これだけの数があれば―…。)

と、エルゲルダは心の中で思うが―…。

 意味はない。

 ランシュにとっては―…。

 ランシュの方は準備完了だし、最初の狙いは、エルゲルダの護衛だからだ。

 そして、ランシュへと一直線へと向かってきている以上、都合が良かった。

 ランシュは、高速移動を開始する。

 (!!!)

 と、ランシュを始末しようとしたシエルマスの見習いたちは驚く。

 驚かずにはいられなかった。

 侵入者であるランシュがこのような高速移動ができる存在であることに気づかなかったのだ。

 どうして気づかなかったか。

 それは簡単なことであり、ランシュが天成獣の宿っている武器を扱うことを知らないからだ。

 ランシュに初めて会う者ばかりである以上、どうしてもランシュが天成獣の宿っている武器を扱う人間であるという判断を下すことはできないし、そもそも天成獣という概念を知らない以上、どうしようもない。

 未知との出会い、と言った方が良い。

 そのために、驚きによって、自らの動きが鈍ってしまうもしくは動きを一瞬、止めてしまうのだ。

 そうである以上、これは隙にしかならない。

 ランシュがこのような状態を逃すはずもなく―…。

 ランシュは、高速移動で、近くにいたシエルマスの見習いの一人を迷いもなく、斬る。

 このとき、その者に自らが斬られた感覚はなかったが、刹那であるが、自らが望まないような方向に動いているような感覚がした。

 それだけだ。

 その後―…、この者の意識は永遠に戻ることはなかった。

 そう、ランシュによって、真っ二つに両断されたのだ。

 そうしている間に、ランシュは次に近くにいる者を探し出し、終えるとすぐに、そちらへと向かい、同様に、斬っていく。

 一人、また、一人と―…。

 真横に両断、縦の両断、斜め上に、斜め下に―…。

 その数は一分という時間が経過する前に、二十は超えており、自らが斬られたという感覚を相手に与える暇すらないほどの攻撃だ。

 警戒しろという、声すら上げることができなかった。

 そんな感じなので、結局、ランシュの戦闘を観察させることができるという結果にしかならなかった。

 (………天成獣の宿っている武器を扱うのですかぁ~。武器はあの長剣ですね。)

と、ラウナンは心の中で思う。

 ランシュの動きを観察することはできているが、ランシュからしてみれば、本気すら出していない。要は、ランシュにしたらその程度の戦闘のやり方の情報を公開したとしても、痒くもない。

 それにランシュが得意としている戦闘は、長剣を使ったものではないのだから―…。

 

 そして、エルゲルダとエルゲルダの女たち以外と護衛の一人であるラウナン以外の全員を斬り終えるのだった。

 その様子を見たエルゲルダは畏れるしかなかった。

 ランシュの方へと視線を合わせながらも、自らの体の震えは止まることはなかった。

 恐怖しているのだ。

 (こんな奴に敵うわけがない。俺はこんな場所で死んじゃいけない。ラウナンと出会った時でもこんなに怯えなかったのに!!!)

と、エルゲルダは心の中で思う。

 エルゲルダは、すでに自身にできることが一つしかないし、そうしないといけないと思った。

 だからこそ―…、

 「……………俺の護衛を一人だけ残して、あっさりと―…。ありえない。俺は逃げるのみ!!」

と、言いながら、部屋の外へと逃げようとする。

 エルゲルダは必死に走って―…。

 (俺は生きる、俺は生きる、俺は生きる、俺は生きる、俺は生きる、俺は―…。)

と、恐怖に苛まれながらも、逃げることはしっかりとする。

 だけど、そのスピードはかなりの遅さであった。

 そして、同時に、女達の方も自分が殺されるのではないかと思い、逃げようとする。

 部屋の入り口ではなく、エルゲルダとともテラスの方へと―…。

 そっちの方から逃げ出せる構造になっているのだ。

 入り口が一つでは、いざ、暗殺者にミラング共和国の総統の命が狙われた時に、暗殺者側はそこを死守しながら、ターゲットである総統の命を奪うようにするし、総統を守る側も出入口が一つだとそこを正面突破しないといけなくなるし、そこでの犠牲がでることになる。

 さらに、いざって時に出入り口を塞がれたら、どうしようもできなくなるので、総統や一部の人間しか知らない秘密の通路があってもおかしくはない。

 そのような情報は、極秘中の極秘扱いになるのであるが―…。

 それと同時に―…。

 (女達を殺そうとしていない以上、女たちを盾にしていれば、命を奪われることもないだろ。)

と、エルゲルダはそんなことを心の中で思うのだった。

 口にすれば、侵入者であるランシュに聞かれることになるので、そうだと考えると、女達の中に紛れ込むようにすれば、何とかなると判断しているのだ。

 だけど、それに気づかないランシュではなかった。

 (自分の命は大切だもんなぁ~。権力者にそんなことを言われたら、これまで従わざるをえないか従っている女たちにとって、今までの恐怖によって、エルゲルダの言う通りにしないといけないという感覚がしみ込んでいるせいか体が勝手に反応するよなぁ~。だけど、お前の肥え太った体形と日頃の運動不足のせいで、動きが鈍いし、走るよりも歩いた方が速いのではないかと思えるほどだ。そして、俺がエルゲルダに復讐を果たすためには、護衛の中で一番強い奴を戦闘不能もしくはそれ以上の状態にしないといけない。エルゲルダを襲えば、確実に俺へと攻撃してくるのははっきりとわかっている。エルゲルダへの復讐を果たすことが確実になりかける辺りが、俺を殺すのに最高なタイミングだもんな。なら―…。)

と、ランシュは心の中で思いながら、自らがすべきを実行に移す。

 「出て来いよ。俺は最初から気づいているんだよ。もう一人護衛がいるということを―…。」

と、言う。

 ランシュもエルゲルダの言葉から確信を抱いているし、それに、最初から一人だけ強い人間の気配を発していたのも分かる。

 だけど、ランシュよりは、はるかに劣るものであることに、間違いはないが―…。

 そして、そいつのいる場所も何となくであるが分かっているのだ。

 気配が駄々洩れというのがあまりにも―…。

 ゆえに、ランシュはエルゲルダがいたであろうベットの方へと視線を向ける。

 そこには誰もいないような感じであったが、次第に、そこから全身を黒装束で覆った人物が一人現れるのだった。

 ランシュはそれを見ながらも、エルゲルダが逃げ出さないように圧をかけながら同時に、エルゲルダが外に出ようとする段階で高速移動して始末することができるようにしている。

 そして、ラウナンは、

 (私のいる位置を正確に目で追っているのですか……。いや、気配を察しているのか。分かりませんが、侵入者ごときで私の動きについていけるとは思わないことだな。)

と、心の中で思いながら消えるようにして、高速移動を開始するのだった。

 ラウナンも天成獣の宿っている武器を扱う以上、このような高速移動はできる。

 これは、暗殺によっても、偵察にも使いやすいということがすぐに分かったので、使わないという手はない。

 ゆえに、ランシュの後ろを狙うのだった。

 ラウナンが消えるのを見て―…、ランシュは、

 (こいつ、天成獣に選ばれた奴なのか!!)

と、心の中で驚きながらも、すぐに、警戒を引き締め直す。

 天成獣の宿っている武器を扱うどうかはまだ判断できなかったが、消えるようになったことから自身と同じように高速移動が使えるのだと判断する。

 そして、同時に、ランシュは思考を巡らせながら、ラウナンが自身の背後を狙ってくると考える。

 さらに、シエルマスなのではないかという可能性も考慮に入れ、ランシュは、ラウナンがランシュの背後もしくは隙となっている部分から狙ってくるのだと推測する。確信に近いものであるが―…。

 そう思っている最中に―…。

 「ジ・エンド。」

と、ラウナンは声を出す。

 ラウナンからしてみれば、油断というよりも、殺気を消すようなことができることを示すためであり、この一撃は一般人、天成獣の宿っている武器を扱う者の多くを始末することができるのだと思わせるため―…。

 いや、言葉を発しても、始末できたということだ。

 だからこそ、ランシュ相手に対しても、このようないつも通りの行動に出るのだった。

 そうしても、ランシュを始末できると思いながら―…。

 ランシュは、ラウナンの声と同時に殺気を感じ、今の自身のいる位置から素早く距離を取るのだった。

 その理由は、ラウナンがすぐに隙を突いて攻撃してくるのではないか、という直感に従ったまで、だ。

 ゆえに、スン!!!

 ラウナンの短剣による攻撃は、空を切る。

 (!!!)

 ラウナンは、ランシュがどこにいるのか、一瞬、探す。

 そうしながら―…。

 (これで、多くの奴らは始末できたのに!!!)

 心の中で悔しい気持ちになりながらも、ラウナンはそれを感情に出すようなこともしない。

 始末できなくても、隙のない人間はいない以上、その僅かな隙を発見して、しっかりとそこを相手に気づかれないスピードで攻めるだけ。

 そのように、思いながら、ランシュを見つける。

 そして、ランシュの方も、ラウナンへと視線を向ける。

 ランシュは、エルゲルダがいたベットの近くであったが、それでも、そのことを気にせずに―…。

 ランシュとラウナン、双方の視線が合う。

 双方にとって、これが死闘であることは分かっている。

 それでも、静寂のままでいられることはない。

 静寂はやぶられる。

 「私の攻撃を避けるとは―…。まあ、ここで死ぬのは、あなたですよ、ランシュ。私は、ミラング共和国特殊諜報及び謀略部隊シエルマスの統領ラウナン=アルディエーレでございます。まあ、ランシュには、私と同じかそれ以上の実力があるのではないかと思い、名乗った次第ですよ。」

と、ラウナンは言う。

 ラウナンから言わせてみれば、ランシュに関する情報はそれなりにあるが、その情報は決して、ランシュの全ての情報ではなく、世間の人々が調べればわかることであろう。

 それだけ厳重に情報が管理され、漏れないようにされていることの証左であるが、シエルマスがそこまでしか情報を集められていないのは、リース王国におけるメタグニキアの私設部隊の一部の人間の成果によるものであろう。

 そして、同時に、なぜ、ランシュだとラウナンが判断できたかと言えば、今回の戦争と前回の戦争のリース王国との戦争において、天成獣の宿っている武器を扱っているかもしれない人間に関する情報はしっかりと集めていたし、その中に名前があり、かつ、長剣を扱う人物を探したからだ。

 それに、ここまで衛兵を掻い潜って来るとなると、それなりの実力が必要であり、一般的な兵士に擬態している可能性は低い、というラウナンの勘によるものであったからだ。

 そして、同時に、ラウナンはわざと自らの名前を名乗る。

 シエルマスは、正しくはミラング共和国の表にある部隊ではなく、裏組織であり、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスとされるのが厳密な意味では正しい。さらに、ラウナンだと名乗ったのは、ランシュがリース王国の騎士団に属していた過去があり、騎士団に今回の戦争で一時的に復帰している情報を掴んでいるからだ。

 だけど、すぐに、ランシュと騎士団の人間だと情報で照合することができなかったので、結局、シエルマスの幹部や一般工作員を含めて、すぐに判断することができなかった。

 ラウナンは、そういうのを簡単におこなえるあたり、シエルマスの中で一番の優秀さがあるのは分かるだろう。

 そして、ラウナンがわざと自分の名前を紹介したことに、ランシュは勘付く。

 (いや、諜報や謀略部隊の隊長がここで名前を名乗るのはおかしい。何となく想像がつくがな。)

と、ランシュは心の中で思う。

 シエルマスに関して、その組織構成に関して、詳しくは知らないランシュにとって、考えの根底にあるのは、騎士団の時に手に入れた情報の一部と、今、ラウナンが自己紹介した時の言葉ぐらいしかないのだ。嘘だということを簡単に見破るのは難しい。

 だけど、ラウナンが何を言おうとしているのかは分かる。

 それは―…。

 「そうか、俺はお前に名前を教えたわけではないが、シエルマスとやらには独自の情報網があるということだな。ということは、リース王国とミラング共和国の境での戦いで、俺の知り合いに殺されることを逃れた奴でもいたのか。後で、そいつに言っておかないとな。」

と、ランシュは頭の中にある可能性を言う。

 そう、リース王国とミラング共和国の国境でおこなわれた最初の戦いで、数十人のシエルマスの工作員がランシュとヒルバスのもとへと送ったが、全員、ヒルバスによって始末されたのだ。

 そのことをランシュは頭の中で思い浮かべ、ヒルバスが逃したのではないか、と―…。

 (ヒルバス、何をしくじってやがるんだよ。)

と、心の中で思いながらも、表情には出さないようにする。

 実際は、ランシュとヒルバスに近づいていった存在は完全に始末し終えたのだが、一部からランシュとヒルバスの名前と特徴に関する情報が洩れていたのだ。

 ランシュがそのことに気づくことはないだろうし、ヒルバスもそこまで警戒はしていなかった。

 まあ、このような状況になったとしても、ヒルバスは面白いという感じな反応をこの場にいたらしそうであるが―…。

 それでも、ランシュを完全にピンチさせるようなことはしないであろうが―…。

 そして、ランシュは、情報を漏らした人間を本気で探すかと問われれば、探す気はないだろう。シエルマスのトップを始末してしまえば、エルゲルダを始末してしまえば、関係はないのだから―…。

 一方のラウナンは、ランシュの動揺をしていない表情を見て、冷静な人物であると評価しながらも、隠密には向かない人間であることは侵入の仕方を見れば、分かったので、自らが言いたいことを続ける。

 「まあ、そういうことにしておきましょう。それに―…、イルターシャがランシュ側に降伏して、ついてしまうとは―…。まあ、それは、今、暗殺部隊を仕向けているので、成功することでしょう。彼女は天成獣の宿っている武器を扱うことができないのですから―…。私と違って―…。」

と、ラウナンはいう。

 ラウナンは、イルターシャが天成獣の宿っている武器を扱うことができないと思っている。なぜか、不思議なことは起こっているだろうが、それはたまたま運が良いということなのだと―…。

 それこそ、イルターシャの罠にかかっており、そのように思えるようにシエルマスの人を介し、思わされてしまっているのだ。

 そういう意味で、イルターシャは恐ろしい存在である。

 そして、ランシュは理解する。

 (あ~、なるほど。この護衛の中で一番強い奴は、暗殺の実力はあるようだが、天成獣の属性に関しては知らないというか、イルターシャのことを完全に理解していないどころか、幻を見せられている状態なのか。イルターシャは、このラウナン何たらよりかなり優秀な部類に入るということになるか。まあ、部下にしておくのもいいな。)

と、ランシュは心の中で思う。

 ラウナンの言葉を聞いたからこそ、そのように思うことができた。

 なぜなら、イルターシャが幻の属性の天成獣を扱っていることを知っているし、かなりの頭がきれるタイプの人間であり、敵に回すと厄介であり、始末するのが難しいということは、嫌という理解できているのだから―…。

 そうだとわかると、ラウナンに比べて、イルターシャの方がはるかに優秀な存在であるということがわかる。

 なので、イルターシャを部下にしておく必要はあるだろうと判断する。始末することが難しい以上、その選択が有効であり、それ以外しか選択肢がないといえる。

 そして、ランシュは、今、ラウナンが言った言葉の中で、ラウナンの望みが実現できないものを知っている。

 それは―…。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(281)~最終章 滅亡戦争(136)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正および加筆していると思います。


では―…。

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