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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
624/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(278)~最終章 滅亡戦争(133)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。

一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。

その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。


翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。


戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。

その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。


翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。


リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に

、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。


リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。

その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。


ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。

その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。

一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。

その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。

一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。

その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。

それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。

その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。


ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。

そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。


一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。その兵たちはアンバイドの実力の前に戦わず降参するのだった。

それが重要な問題となる。

ファルケンシュタイロはファロネンズをクローデル領に派遣し、マーゼルの真意を確かめ、ファロネンズの独断でマーゼルを始末するのだった。

そして、マーゼルが殺されたことを、マーゼルの重臣たちに見せしめ、完全服従を勝ち取る。

一方―…、ファウンデーション領(旧アルデルダ領)では―…、領都のミグリアドが包囲されるのだった。それを打開しようとして―…、シエルマスを投入し、リース王国軍の中央軍のトップを始末するのだった。

その後、クローデル領でも動きがあり、ミラング共和国軍とリース王国軍右軍の対決となるが、アンバイドの活躍により天成獣部隊のトップを始末し、かつ、撤退させることに成功して、クローデル領での勝利を得るのだった。

 そして、オットルー領の方に向かって勝利したリース王国軍の左軍は交渉の場にいた。そこでは話し合いがおこなわれていたが、衝撃の事実が突きつけられるのだった。それは、ファウンデーション領を攻めていたファルアールト元帥が暗殺されるというものであったが、オットルー領の領主との話を終え、ミラング共和国の首都ラルネへと向かうのだった。

 一方で、ファウンデーション領を攻めていたリース王国軍の中央軍は―…、ラウナンの策によりミグリアドから撤退しないといけなくなったが、その後、ミラング共和国が攻めてきたが、リーンウルネの影ながらの支えにより、勝利するのであった。

 そして、舞台は最終決戦となろう場所、ミラング共和国の首都ラルネへと―…。

 少しだけ時間が経過する。

 リース王国軍は、ミラング共和国軍を壊滅に近い状態に追い込むことができたが、リース王国軍側にも多大な被害を出すのだった。

 リース王国軍の中央軍の独断的な行動が、カバーをする側の死傷者を出すには十分であったが、結果として、中央軍の兵士の方が多くの死者を出すという結果になっていた。

 何という皮肉であろうか。

 そうこうしているうちに、ミラング共和国軍の本部施設の陥落および、ファルケンシュタイロが戦死がリース王国軍に伝えられ、ミラング共和国軍はすでに、士気を喪失してしまっていた。

 それでも、リース王国軍の中央軍やその一部は、ラルネの人々に対して、強姦や虐待などの行為をおこない、ラルネの人々の一部を虐殺していた。

 リース王国軍の大将であるオバーラ=ラガナーネは、勿論、許可を出してはいないが、これは仕方のないことだという判断を下すであろう。

 なぜなら、リース王国に戦争を仕掛けてきたのがミラング共和国である以上、そこに暮らす国民は戦争を仕掛けてきた奴らの仲間であり、その責任があるのだから、しっかりとそれを果たさないといけない。

 たとえ、現政権に対して、反対票を投じることができたもしくはできないが、批判的に見ていた者達であろうが―…、関係はない。

 現政権に政権を許してしまっている以上、同罪だという考えがあるのだから―…。

 これは、すべての国の考えは、一枚岩であるというあまりにも人それぞれに感情があるということを無視し、かつ、自らも同時に一つの考えが正しく、それ以外の考えを許さないという考えが現れているからであろう。

 ある物事に対する賛否があるのは、避けて通ることもできないし、この二元論的なことにもならない。人、それぞれが完全に同じであるわけではないので、意見の相違はどうしても発生する。

 そうである以上、賛否で簡単に判断できるようなことは、現実上、ないと言ってもおかしくはない。

 それを無視するのは、無限に近いほどもしくは無限にある方法を考えないといけないし、それに配慮することもしないといけなくなるし、いくら時間があったとしても、それを思考し続けることは絶対にできないことだし、時間という区切りが存在している以上、範囲を有限のものにしないといけないし、限りというものが存在することになる。

 それを極端に狭める行為は、結局、配慮を度返しにしているような感じになるのだ。

 自らが考慮すべき以外のことが、本当の意味でしないといけなかった選択だったということは十分にあり得るので、自らの考えた通りにならないという可能性は避けることはできない。

 そして、残虐な行為が最後には、自らの首をどこかで絞めることになることも十分にあり得ることだ。そうだと考えると、他人に優しくしながらも、それが返ってこないどころかマイナスの場合もあるぐらいの認識はしておいた方が良いし、だからこそ、思い残しをしないために、身勝手なふるまいをして良いということにはならない。相手の気持ちになって考えることを怠るな、ということであり、完璧ではなくても、しっかりと相手の気持ちを考え、かつ、それが自分にされたら自分はどう思うかをしっかりと考えないといけない。決して、野蛮だとなどの人を蔑むことが前提となる考えを最初から抱いているような状態での思考にも陥ってはいけない。目を曇らせる結果になるだけだから―…。

 さて、話を戻し、このように、リース王国軍の一部は、ラルネの住民に危害を加え、自らの優越に浸る。だけど、戦闘が終わっていない以上、どうしても、そちらの方に集中しないといけないので、そういう行為が持続的に続くことはあるが、一回の時間が長くなることはなかった。散発的というべきであろう。

 そして、リース王国軍の半分近くが、ミラング共和国のほとんどの機能が集約しているラルネの城の方に集まっていた。というか、包囲していたという表現が正しいであろう。

 そんな包囲の中で―…。

 オバーラは、大声を出すのだった。

 「ミラング共和国の総統エルゲルダよ!!! すでに、お前らは包囲されている!!! この数の人間に勝てるわけがないだろ!!! さっさと降伏しろ!!!」

と。

 オバーラからしてみれば、ミラング共和国はすでに、リース王国に対抗する力もないし、すでに、中枢機能を有する場所は包囲されているし、ミラング共和国軍は壊滅状態なのだ。

 そうである以上、リース王国軍に勝てる方法ないし、降伏しか選べる手段がないのだ。

 それは、オバーラ以外の者であったとしても、そう思うだろうし、勝負は決まりきっていることだという雰囲気を理解することは難しくはない。

 そういう状態であるが、この場面を見たとしても、負けているわけではないと思う人物もいたりする。

 それはラウナンであろうが、ラウナンはこの場面を見ることができない。

 (反応がない。どういうことだ。)

と、オバーラも心の中で思う。

 オバーラからしてみれば、このような言葉を言えば、何かしらの反応があるだろうに―…。

 だけど、その反応もない。

 (逃げ出したのか。そんなことは十分にあり得るかもしれないが、兎に角―…。)

 ここにいる者達の行動は決まった。

 「突入!!!」

 オバーラの大声に、リース王国軍がラルネの城の中へと侵入していくのだった。

 その中には、ハミルニアやその重臣も混じっていた。

 (……………反応がないということは、城の中で何かがあったか、オバーラが思っているように、逃げ出した可能性は十分に考慮できる。中を確かめないとどうにもならないですね。)

と、ハミルニアは心の中で思うのだった。

 ハミルニアからしてみれば、このラルネの城の中で何かしらのことが起こるということは、内乱かクーデターの類が発生した可能性を頭の中で思い浮かべながら、すでに、重要なミラング共和国の人間はラルネを脱出したのではないか、と思いながら―…。

 結局は、確かめないとどうしようもないので、オバーラの突入に関しては賛成できるのであった。


 それよりも一時間半ほどの時間を遡る。

 リース王国軍がラルネの城を包囲する前―…。

 リーンウルネがアマティック教教団の教団本部に侵入した頃。

 アンバイドがミラング共和国軍の本部施設に到達した頃。

 場所は、ラルネの城の中にあるエルゲルダの寝室の中。

 そこでは、エルゲルダが女たちに囲まれていた。

 (ガハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、今頃、ファルケンシュタイロがリース王国軍の包囲を破ってくれているだろう。それに、ラウナンがいる以上、俺の命は安全なはずだ。)

と、心の中で思っていると―…。

 ふいに、扉が開かれるのだった。

 ラウナンも警戒していた。エルゲルダに見えないようにしながら―…。

 そして、扉からは一人の人物が入ってくる。

 ランシュである。

 ランシュは、一切、警戒していなかったわけではないが、部屋への入り方があまりにも誰かの部屋に堂々と正面から侵入するような感じであり、礼儀もへったくれもない。

 そして、エルゲルダへの復讐を考えている人間の類の侵入の仕方ではないし、シエルマスからしてみれば、こんな馬鹿な侵入方法があるかと思えるほどだ。

 ゆえに、ラウナンは行動することが遅れそうになるが、それと同時に、侵入してきた人物からはただものではないオーラとかを感じるのだった。

 まるで、過去に、自らが敗北するようなことがあったのではないか、と思わせるほどに―…。

 ラウナンからしてみれば、それは有り得ないことであったが、現実には一回だけある。前回のミラング共和国とリース王国の戦争の中で、戦後に軍を辞めようとしたグルゼンを始末しようとして、逆に、反撃に遭い負けた、あの出来事を―…。

 だけど、シエルマスである以上、そのような敗北はあってはならないし、その敗北は決してなかったのだと、自分に無理矢理そのように思わせていたことを思い出されそうになり、無理矢理に引っ込めようとするのに必死で、動きがさらに遅れそうになる。

 そして、ランシュの佇まいから察するにここがチャンスのように見えるかもしれないが、攻撃してくれば、すぐにでも、反撃をする準備はできている。長剣も持っているし、自身の天成獣であるトビマルの力も借りられる状態にしている。上限はきていない。

 ランシュの侵入に対し、驚きはするが、見たこともない人物なので、しっかりと警戒しながらも、無礼にもほどがあると思い―…。

 「何だ!!! 貴様は!!!!」

と、エルゲルダは言う。

 エルゲルダからしてみれば、今はお楽しみであったのに、それを邪魔されたのだから、気分が良いわけがない。

 だからこそ、

 (さっさと、ラウナン、始末してしまえ!!! この無礼者を!!!)

と、心の中でエルゲルダは思うのだった。

 エルゲルダはさっさと、この侵入者を片付けて、お楽しみを再開しようと考えるが、武器を持った人間に対抗できるほどの実力をエルゲルダは持ち合わせていない。

 エルゲルダは、このミラング共和国での生活で、肥え太り、動くことが困難なほどになっており、ランシュもそのように分析するが、正しい判断だとしか言いようがない。

 だけど、ランシュは、エルゲルダの方に集中しており、ラウナンの存在には気づいていないようだが―…。

 エルゲルダや周りにいる女性は全員、服を纏ってはいないので、ランシュとしての普段なら目のやり場に困る状態なのであるが、エルゲルダへの復讐の目的が目の前で達成できそうな状態なので、そのようなことに気づいていたとしても、すぐに、頭の中の湧きに置くことはできるし、そういう指摘をしないぐらいの精神力はあったりする。

 ランシュは、

 (もしも、ハーレムの主であるのならば、何て良い場所だろうと思うが―…、今の俺にとっては意味のないことだ。俺も男だから、こういう場が嫌いではないし、むしろ好きな方だ。だが、そのようなことよりも、目の前にいるのがエルゲルダかどうかを確認しないといけない。)

と、理性をはたらかせて、ランシュは、この部屋にいるランシュ以外の男がエルゲルダかどうかを確認しようとする。

 「太りきったお前がエルゲルダか。」

と。

 そうは思いながら、女性の方へと自然に視線を向けてしまうのは、ランシュも一人の男であることを物語っている。

 ゆえに、さっさと何かを覆う物で隠して欲しいと思うのであるが、それを口にする気はない。

 今は、そのようなことをする気もないし、警戒しないという理由はならないし、自分には一番にしなければならないことがあるのだから、そっちに集中した方が良いと、認識しているのだ。

 そっち優先であることに間違いない。

 一方で、エルゲルダは、ランシュの言葉を聞いて、自分が狙いなのかを理解しつつも、ここでビビッてしまえば、相手に隙を見せてしまうことになるし、侵入者なんてラウナンが隙を突いて始末するだろうと思い、強気になる。

 「ああ、だがな、小僧。お前がどのように侵入したかわからないが、俺に対しては、エルゲルダ様と言え――――――――――――――――――――――――――――――――。」

と、エルゲルダは吠えるように言う。

 エルゲルダにしてみれば、自分はミラング共和国の総統であり、ミラング共和国の中で一番偉い地位にあるのだ。

 その人間に対して、エルゲルダ、と呼び捨てにされるのは気分の良いものではないし、不快にさせられる。

 だからこそ、そういう不届き者には知らしめないといけない。自分がいかに偉い人間であるのかを―…。

 だけど、それですべてのことが解決されるわけでもないことは確かだ。

 そして、ランシュからしてみれば、エルゲルダは復讐の対象でしかなく、地位というものは関係ない。そういう意味では、エルゲルダの威光などは一切、通じない相手だと言っても良い。

 人という生き物は、相手のことを完璧に理解できる生き物ではないということをちゃんと理解しておかないといけないし、相手を理解するようなことをしっかりとしないと自分を苦しめることだってある。矛盾しているかもしれないが、その矛盾をこなさないと生きることが難しくなるのも事実である。

 そして、ランシュは、

 (五月蠅いな、話ができていないような―…。会話はできているか。)

と、心の中で思いながら、まだ、隙を作り出すチャンスはあるんじゃないかと思い―…。

 「申し訳ございません、エルゲルダ様。私としてもどうしてもエルゲルダ様に御用があったので、ここに来た次第でございます。」

と、言う。

 ランシュは、自らが失礼な下っ端役人であるように振舞い始める。

 というか、そのようにしておけば、すぐに隙を突けただろうとランシュは、心の中で一瞬、後悔をするが、そのようなことをした場合でも、ラウナンがこの部屋の中にいる以上、狙ってくるので、意味はない可能性が高いだろうし、今もそうだ。

 そして、エルゲルダは、ランシュの言葉を聞いて、

 「俺に用事~? それなら、秘書を通してもらうことだな。俺も暇ではないのだよ。ここにいる女たちとともに、ミラング共和国の将来の希望をたくさん作らないといけないのだが―…、わかるか。」

と。

 エルゲルダからしてみれば、こんな失礼な奴の顔など二度と見たくもない。

 だからこそ、ランシュを追い出すようなことをするし、それに武器を持っている人間を信用することはできないだろうし、馬鹿な暗殺者なのではないかと、エルゲルダは思ってしまうのだった。

 (武器を丸出しで来る暗殺者とか、どこの国が派遣したのか分からんが、アホすぎだろ。)

と。

 エルゲルダのそのような判断を下すであろうが、そういう判断を下しても仕方はない。

 だけど、こういう馬鹿なことをしたとしても、暗殺が上手くいくことがあったりするのだ。

 人というものが、相手を完全に理解できないことと、人が完全にすべての物事と状況、選択した行動の結果、どうなるのか、相手の反応とかを完全に理解することができない以上―…。

 ランシュは、

 (執務室が後宮って―…。そんなものはお前の寝室とかでやってくれ。その間に女性たちは、何かで全身を覆って、生まれたままの姿を隠したようだな。)

と、周囲を警戒するようなことは忘れない。

 そう、ここはエルゲルダの執務室であるが、エルゲルダが女遊びをしたいがために、寝室のような扱いとなり、ここで働く役人たちからは、「エルゲルダの寝室」と呼ばれていたりするのだ。悲しいことに―…。知らぬのはエルゲルダ本人だけ。

 そして、ランシュの方は、暗殺者であることをまだ隠そうとして、

 「いえ、秘書を通すよりも、エルゲルダ様に直接お伝えした方がわかってもらえると思いまして―…。」

と、装う。

 だけど、自分でもしっかりと分かっている。

 暗殺者ではないけど、それに似たような感じ、だと―…。

  一方で、エルゲルダは、

 (………こんなアホな暗殺者なら、言葉で説得ができよう。)

と、思ったのか、ランシュに、どうしてこの部屋に来たのかという理由を聞こうとする。

 「何だ。礼儀のなっていない野郎だが、聞いてやろうじゃないか。」

と、エルゲルダが言う。

 その態度は、エルゲルダ自身は寛大なものだと思っているようだが、第三者から見れば、傲慢なものでしかない。

 そのようなエルゲルダの態度だとしても、ランシュは気にしなかった。

 ランシュには言わないといけないことがあるからだ。

 そう、

 「クルバト町。」

と、言うのだった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(279)~最終章 滅亡戦争(134)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正および加筆していくと思います。


次回の投稿日は、2024年9月17日頃を予定しています。

では―…。

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