番外編 ミラング共和国滅亡物語(277)~最終章 滅亡戦争(132)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。
リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に
、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。
リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。
その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。
ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。
その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。
一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。
その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。
一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。
その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。
それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。
その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。
ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。
そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。
一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。その兵たちはアンバイドの実力の前に戦わず降参するのだった。
それが重要な問題となる。
ファルケンシュタイロはファロネンズをクローデル領に派遣し、マーゼルの真意を確かめ、ファロネンズの独断でマーゼルを始末するのだった。
そして、マーゼルが殺されたことを、マーゼルの重臣たちに見せしめ、完全服従を勝ち取る。
一方―…、ファウンデーション領(旧アルデルダ領)では―…、領都のミグリアドが包囲されるのだった。それを打開しようとして―…、シエルマスを投入し、リース王国軍の中央軍のトップを始末するのだった。
その後、クローデル領でも動きがあり、ミラング共和国軍とリース王国軍右軍の対決となるが、アンバイドの活躍により天成獣部隊のトップを始末し、かつ、撤退させることに成功して、クローデル領での勝利を得るのだった。
そして、オットルー領の方に向かって勝利したリース王国軍の左軍は交渉の場にいた。そこでは話し合いがおこなわれていたが、衝撃の事実が突きつけられるのだった。それは、ファウンデーション領を攻めていたファルアールト元帥が暗殺されるというものであったが、オットルー領の領主との話を終え、ミラング共和国の首都ラルネへと向かうのだった。
一方で、ファウンデーション領を攻めていたリース王国軍の中央軍は―…、ラウナンの策によりミグリアドから撤退しないといけなくなったが、その後、ミラング共和国が攻めてきたが、リーンウルネの影ながらの支えにより、勝利するのであった。
そして、舞台は最終決戦となろう場所、ミラング共和国の首都ラルネへと―…。
アンバイドは無数の敵の遺体を見ながら、この部屋から出ようとする。
そこに―…。
「アンバイドさん、もう、敵の大将をやったのですか?」
と、一人の兵士が声をかけてくる。
この兵士は、恰好から見て、ミラング共和国軍のものではなく、リース王国軍のものであることが分かる。
リース王国軍の軍服を着ているのだから、当然のことであろう。
アンバイドはその兵士の名前を忘れてはいるが、リース王国軍の右軍に属していることだけは分かっている。顔を実際に見ているからだ。
だからこそ、警戒こそはすれども、完全に敵ではないと認識しているので、武器で構えるようなことはしない。いざって時は、ちゃんと動けるようにはしておくが―…。
「ああ、敵の軍事的な大将ではあるが、今回のリース王国への侵攻を計画した奴らの一人に過ぎん。実質上の大将ではない感じだな。ファルケンシュタイロは―…。」
と、アンバイドは言う。
アンバイドとしては、この場にはもう用はないし、さっさと、ファルケンシュタイロが吐いたラウナン=アルディエーレというシエルマスのトップ、統領を探し出して、そいつを捕まえるか、始末しないといけない。
ラウナンを始末することができれば、今回の戦勝功績で一位になることは間違いない。アンバイドがラウナンが今回のリース王国への侵攻を促した主犯だと言えば―…。
だけど、それを実際におこなった証拠を発見できなければ、そのように判定するのは難しいことだし、判定されない可能性の方が高い場合もある。
その理由は、エルゲルダがリース王国への恨みを持っていることと、ミラング共和国の表向きのトップは総統であるエルゲルダということに公式的にはなっているからだ。
そうだと考えると、ラーンドル一派から考えれば、エルゲルダというレグニエドにかつて、親しい間柄にあった人物がレグニエドを裏切り、レグニエドを殺そうとしたというシナリオが納得されやすい状況にした方が都合が良い。
そうすれば、ラーンドル一派のリース王国での権力基盤をより強固にすることが可能であるからだ。
自らがリース王国の一番の権力者であり、その権力が永遠に保障されることを望んでいるのだから―…。
そして、アンバイドは、そう言いながらも、警戒を緩めることはなく、ファルケンシュタイロが殺された部屋にやってきたリース王国軍の兵士が、何かしらの言葉を言うのを待つ。
その兵士は言葉を放つ。
「ファルケンシュタイロって言えば、ミラング共和国の軍人でありながら、議員で、対外強硬派の中の主力幹部の一人で、英雄とも呼ばれ、元帥の中でもトップとされている人じゃないですかぁ~。そんな人は、捕まえた方がうちの軍だといろいろと尋問で聞き出すことができたのにぃ~。アンバイドさぁ~ん。」
と、この兵士は少しだけ軽く発言する。
戦争というものは、人の命が簡単に奪われることが発生するので、どうしてもその場面に出くわす機会は普段の平和時よりも多くなってしまう。そのため、精神が人の死を見ることによって心のバランスが崩壊しないように、無感情に近い状態に近づくもしくは、味方を殺した敵に対して、自らの危機を乗り越えようとするような感じの気持ちを増幅させて、敵への復讐を果たそうとする気持ちになったりするのだ。
後者の方に関しては、無感情になるのとは違い、自らの属している側の正義、身近な者だった者のために、敵を殺すことを正当化し、そのためなら何でもして良いという感情になり、敵を憎むべき、滅ぼすべき存在だとみなしてしまう可能性があるし、自らの正義の絶対化という危険な考えに手を出す可能性もある。その危険性は、物事を見る上での視野というものを狭め、真実から目を逸らす結果となる。
必要なことさえ、敵を葬るためならやって良いという野蛮と言われるであろう感情をも、まるで、素晴らしい考えの装いになり、その危険な行動に対する理性がはたらかなくなり、危険行動に出た結果、本来、自らが果たそうとした目的とは相反する結果になることだってある。平和が訪れるどころか、逆に、さらなる危険性に満ちた自体になるような、そんな感じに―…。
それは歴史の中にも存在している。それは人間の完全性や合理性はないのであろうということの証明でしかないし、成長できる可能性をも示す残酷な出来事における証明でしかない。
これ以上、戦争における感情の選択肢に関して、述べてもこの物語からはズレることでしかない。
この兵士は、無感情に近い状態になりながらも、敵を殺すことに対して、完全な喜びを感じられるほどの殺人鬼のような性格にはなれない。だが、このような人が殺される場面を何度も見てきた。裏切り、裏切られ………、そのような場面を―…。
そうであるからこそ、ある程度無感情に近い状態になることによって、自分の精神的なダメージをなるべく避けながら、冷静さを確保しようとしているのだ。冷静を欠いた者ほど、このような戦場では命を失う可能性が高くなったりするし、他の者達に迷惑をかける場合がある。
「仕方ないだろ。ファルケンシュタイロの味方がいっぱいいたんだからなぁ~。それにしても、一人で良く来られたよな。敵もいただろうに―…。」
と、アンバイドは言う。
アンバイドは、ここまで軽口のようなことを言える兵士はなかなかいない。
それと同時に、敵対しようとしているわけではないが、何かしらの違いというものを感じているのだった。その兵士から―…。
警戒度を少しだけ上げる。
「何とか、隠れながらやってきたという感じですよぉ~。私、大した実力はありませんが、少しぐらい隠れるのは得意ですからぁ~。ちなみに、シエルマスの関係者じゃないですよ。彼らのようなことはできませんからぁ~。それと、ファルケンシュタイロが事実上の大将じゃないと、一体、誰がその事実上の大将なんですか、アンバイドさん。」
と、この兵士は言う。
このような異様な光景であるが、それでも、ミラング共和国のトップの首を抑えておく必要がある。そうである以上、確認しておかないといけないことだ。
アンバイドも、言っても良いだろうと思い―…。
「ラウナン=アルディエーレ。シエルマスのトップだと言っていた奴が、今回のリース王国への侵攻の主犯。エルゲルダはそいつの傀儡に過ぎない感じなんだろう。」
と。
アンバイドは、ファルケンシュタイロの言葉を思い出しながら、言っていて、正確なものであるかはファルケンシュタイロから聞き出すことができない以上、確かめようはないのだが―…。アンバイドが嘘を吐いているわけではないが―…。
そして、この兵士はアンバイドの言葉を聞いて、
「そうなんですか。それで、アンバイドさんはどうされるのですか?」
と、尋ねる。
アンバイドは、その質問に対して、やることは決まっていた。
「俺は、ラウナン=アルディエーレを探すことにする。ここと、ラウナン=アルディエーレが主犯であることを軍に伝えることは任せた。」
と、アンバイドは言う。
アンバイドは、すぐに、ラウナンを探し始めるのであった。
だが、ラウナンがどこにいるのかが分からない以上、移動しながら、ミラング共和国軍の兵に聞くしかないだろうが―…。運頼みである。
そんなアンバイドが、ファルケンシュタイロが殺された部屋から出て行った後、この兵士はアンバイドが見えなくなるのを確認しながら、息を一つ吐く。
「ふう~。」
(さすが、伝説の傭兵と言われるだけのことはありますねぇ~。私の幻が破られそうになるなんて―…。まあ、生の属性の中で幻が通じないという能力を持っている天成獣であることは分かりますが、私には私よりも実力がある程度離した上でないと、意味をなしませんからねぇ~。そういうことを知らない人は多いですし、仕方のないことです。……………………さて、アンバイドに言われた仕事を果たすしかありませんかぁ~。それぐらいの整合性をとっておかないと、後々、変に勘繰られることになってしまうでしょうから~。)
と、この兵士は心の中で思いながら、ゆっくりと歩きながら、ミラング共和国軍の本部施設を移動しながら、リース王国軍の兵士を探すのであった。
この人物がどれだけの実力を持ち合わせているかに関しては、今の心の中で思っていることを見ていただければ分かることであろう。
その実力を兼ね備えているのは、世間で知っている者はほんの僅かでしかないし、潜入したりする任務が多いからに過ぎない。それに、ある人物の本来の右腕的な人物である。その人物に関しては、今は表立って動いているわけではない以上、その存在がどこにいるか分かっている者もほんの僅かしかいない。
その一人である、この兵士は―…。
この兵士は歩きながら、リース王国軍の兵士を探しながら―…。
(この戦争、ベルグ様のおっしゃっていた通り、リース王国の勝利になる。ランシュとその部下、アンバイド、この二つを味方につけたリース王国軍が苦戦はあるかもしれないが、ほぼ圧倒的な結果になることは予想できる。ラウナンは、グルゼンが戦っている時に実際に見たことはあるが、あいつは自らの天成獣の力を上手く発揮させていない。暗部だけのことばかりか、自らの目的のために不必要なものは一切、学ぼうとしない。それが、本当の意味で役立つ場面もあるだろうに―…。まあ、思ったとしても意味はないだろうが、ランシュによってエルゲルダとともに始末されて終わるだろうな―…。)
と。
この人物はベルグの右腕なる人物である。
フードを被って、自らの本当の姿を見せようとはしないから、ベルグ以外の人物ではこの人物の素顔を知る者はいない。この人物は、この兵士のことである。
ゆえに、変装をしたとしても、この人物の本来の姿がほとんど知られていないので、気づかれることもないし、潜入なんて、簡単なことでしかない。
アババのように暗殺も得意であるが、最も得意なのは潜入であり、相手の情報をしっかりと探ることだ。ベルグ自身は表立って動くことは実験などをおこなっている以上できないので、この人物がその代わりに動いているのだ。
今回のミラング共和国とリース王国の戦争に関する情報も、裏側もしっかりとおさえることができた。
そうである以上、怪しまれない行動をとって、離脱するのが一番であろう。
そして、この人物は、リース王国軍の兵士を見つけるのであった。
「カルナーデさん。」
と、この人物が言う。
そう言うと、カルナーデと呼ばれた兵士は、
「ママットじゃないか。どうしたんだ。こんなところにいたら危険だぞ。お前、良く生きのびられたな。」
と、驚きの表情で言う。
今、この場には、どこかにミラング共和国軍の兵士が隠れていて、一人でうろつけば、返って、見つかれば、簡単に殺されるだろうし、人質交渉の餌食にされるだけだからだ。
そういう意味で、ママットと偽名を名乗っているこの人物は、非常に運が良い存在だと、カルナーデは認識するのだった。
そのようなことを思っているだろうと、理解したこの人物は、
「いやぁ~、昔から運だけは良いと近所の人達から言われるんですよ。リース王国軍に入る時も武器による実践もからっきしなのに、なぜか受かっちゃたりするんですよぉ~。マジで―…。アハハハハハハハハハハハハハハハ。」
と、この人物は苦笑いしながら言う。
カルナーデは複数の兵士とともに、ミラング共和国軍の本部施設の鎮圧にあたっていた。
カルナーデ以外の兵士もこの人物の運の良さには驚愕しないといけなかった。
そして、この人物は、あっと思い出したような表情をする。
「あっ、そうだ。ミラング共和国軍の元帥ヌマディア=ファルケンシュタイロがアンバイドさんが、側近諸共討ち取りました。アンバイドさんからその報告をすることと、今回のリース王国に戦争を仕掛けた主犯は、シエルマスのラウナン=アルディエーレと言っていました。ラウナンはシエルマスのトップの地位にあるようです。で、アンバイドさんは、ラウナンを捕まえるためにどこかに行かれました。ということで、これを上司に伝えた方が良いですか?」
と、この人物は報告する。
このような軽口を好む軍人はいない。
だけど、この人物は軽口を言いながらも、油断というものを出さないようにしているのだった。
そこに、底知れぬ恐怖をカルナーデらは感じるのだが、その正体がこの人物からは分からなかったが、この人物にその注意をしてはいけないと本能的に理解するのだった。
だからこそ、
「ママット。お前が外にいるファグラーバ大佐へと報告しろ。分かったな。」
と、カルナーデは言う。
その言葉に、
「分かりました。」
と、この人物は返事して、本部施設の外に向かうのだった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(278)~最終章 滅亡戦争(133)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正および加筆していくと思います。
では―…。