番外編 ミラング共和国滅亡物語(275)~最終章 滅亡戦争(130)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。
リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に
、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。
リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。
その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。
ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。
その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。
一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。
その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。
一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。
その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。
それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。
その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。
ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。
そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。
一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。その兵たちはアンバイドの実力の前に戦わず降参するのだった。
それが重要な問題となる。
ファルケンシュタイロはファロネンズをクローデル領に派遣し、マーゼルの真意を確かめ、ファロネンズの独断でマーゼルを始末するのだった。
そして、マーゼルが殺されたことを、マーゼルの重臣たちに見せしめ、完全服従を勝ち取る。
一方―…、ファウンデーション領(旧アルデルダ領)では―…、領都のミグリアドが包囲されるのだった。それを打開しようとして―…、シエルマスを投入し、リース王国軍の中央軍のトップを始末するのだった。
その後、クローデル領でも動きがあり、ミラング共和国軍とリース王国軍右軍の対決となるが、アンバイドの活躍により天成獣部隊のトップを始末し、かつ、撤退させることに成功して、クローデル領での勝利を得るのだった。
そして、オットルー領の方に向かって勝利したリース王国軍の左軍は交渉の場にいた。そこでは話し合いがおこなわれていたが、衝撃の事実が突きつけられるのだった。それは、ファウンデーション領を攻めていたファルアールト元帥が暗殺されるというものであったが、オットルー領の領主との話を終え、ミラング共和国の首都ラルネへと向かうのだった。
一方で、ファウンデーション領を攻めていたリース王国軍の中央軍は―…、ラウナンの策によりミグリアドから撤退しないといけなくなったが、その後、ミラング共和国が攻めてきたが、リーンウルネの影ながらの支えにより、勝利するのであった。
そして、舞台は最終決戦となろう場所、ミラング共和国の首都ラルネへと―…。
場所は変わって―…。
ミラング共和国軍の軍本部施設。
そこでは―…。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。」
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。」
など、叫び声が木霊し、その声を発しているのはミラング共和国軍の側であった。
そのような光景はすでに、数十分に渡って続いている。
そんななか―…。
「すでに、全滅の被害かよ。」
と、一人の軍人が現れるのだった。
勿論、ミラング共和国軍の兵士である。
その人物をアンバイドは見ながらも、自らよりも弱いということはすぐにでも理解することができた。
すでに三割以上のミラング共和国軍兵士に損害を与え、戦死者になっていてもおかしくはないので、全滅と判断したとしても、間違いではないだろうが―…。厳密には、間違いの可能性の方が高いであろうが―…。
アンバイドは歩くのを止め、警戒の度合いを高めるが、相手が自分より強いとは思っていない。
思えるはずもなかった。
「………………無言かよ。まあ、良い。お前らは天成獣部隊によって―…ッ!!!」
アンバイドに話しかけていた人物はすでに、アンバイドの高速移動によって、長剣で斬られ、首から下と頭部が真っ二つになってしまっており、会話することもできなかった。
それと同時に―…、アンバイドは天成獣部隊がやっとお出ましになったことに気づきつつ、全員がアンバイドよりも弱いことを理解するのだった。
そう、剣を交えなくても、相手の力量をある程度判断することができるぐらいには実力を有しているし、かつ、それほどに戦闘を経験したりしているのだ。そういう直感がはたらきやすかったりする。
アンバイドは、静かにしていた口を開き、言葉を発する。
「一~二~三~。………………面倒くさいけど十、二十、三十、……五十ぐらいか。はあ~、大量でやってくるのか。」
と。
アンバイドは、敵の数を数えていることが分かっているだろう。
だけど、途中から、面倒くさくなって十単位で数え始めるという適当なことをし始める。
正確に数えた方が良いのではあろうが、そんなことをしている暇はないだろうと判断しているだろうし、これほどの数になった場合、数を数えるよりも向かって来る敵を倒しながら、次の行動に移って、直感的に、自らの安全だと判断することができるまで戦い続けるしかないのだ。
そうだと考えれば、自らの体力が持つ限りは、安全が確保されるまで動き続けることを強いられるという選択になるというのは避けて通ることができない。
(ペース配分は十分だ。)
と、アンバイドは心の中で思いながら、タイミングを窺う。
そうこうしている間に―…。
「一人を殺したところで無駄だ。アンバイド。同胞を良くもやってくれた恨みを晴らせてくれよう。」
と、一人が声を出しながら、アンバイドの背後から殺そうと近づく。
が。
「意味なし。」
と、アンバイドは言いながら、すぐに、前に一歩踏み出し、そこから回転し、反対方向に向け―…。
斬撃を放ち、かつ、すでに、三つのヒトデ型のような武器を戻し、周囲にいると思われる天成獣部隊の兵士を狙い、その武器を回転させ、攻撃する。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。」
「どこから――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ッ!!!」
その声もすぐに、止む。
なぜなら、アンバイドのヒトデのような形の方が近い表現となる武器によって、ミラング共和国軍の天成獣部隊の兵士らを回転攻撃で切り裂くのであった。
ゆえに、苦しみながら、攻撃を受けた兵士は自らの命を失っていくほどの怪我を負う。
アンバイドからしてみれば、アンバイドを包囲したとしても意味はないのだ。
アンバイドは三つのヒトデ型の武器を操って、奇襲を仕掛ければ良いのだから―…。
そうだと考えると、アンバイドを包囲したことは、天成獣部隊の評価を考えれば愚策としか言いようがなかった。
それが自らの部隊を破滅に追いやっているのだから―…。
これを見て、自分ならそのようなミスをしないと思ったのなら、そのような思いは天成獣部隊が陥ったことに自らが陥る可能性を肯定してことにしかならない。なぜなら、アンバイドの三つのヒトデ型の武器はアンバイドの側にいつもいるわけではないし、離れた場所で機械的に相手を砲撃によって倒していたりすることもあり、そこからすぐにアンバイドが手元に戻せたりすることができるし、奇襲に気づかれないように扱うこともできるので、結局、自分ならミスらないという考えによって、天成獣部隊が陥ったことと同様の顚末を迎えることになるからだ。
気を付けることも大事だが、相手の戦い方をしっかりと観察した上で、自分も同様のミスをするかもしれないと思っておく方が、意外にも、同様のミスに陥る可能性を減らせたりする。それを完全に保証することはできないが―…。
そして、天成獣部隊の悲鳴が聞こえ終えた後、アンバイドはまた、ゆっくりと辺りを探りながら進みだす。
(ふう~、前に戦った天成獣部隊のトップかナンバーツーか知らないけど、奴ほどの実力は全然ないな。それに、長剣の戦いだけで、それなりに手を抜いた上で苦戦をしたんだから、五十以上の数に包囲されたら、そうならないようにしっかりと対策をうっているのは当たり前のことだろ。そういうことを考えろよ。もう忠告の意味はないけどな。)
と、アンバイドは心の中で思う。
アンバイドからしたら天成獣部隊のファロネンズのような実力者ほどの実力のない者との戦いであり、数が多いだけであり、動きが制約される可能性があるからこそ、その可能性をしっかりと考慮して、経験や知識から導き出すことができれば、天成獣を扱った戦闘ということを結び付ければ、簡単に質が数をひっくり返すことがある。
そういう異世界である以上、この戦い方は妥当な面もある。だけど、いくら質が数を上回ることが可能であったとしても、限度というものはしっかりと存在するので、どこまでできるかは人によって、状況によって、相手によって、異なることは事実であろう。
アンバイドは歩きながら、一部屋、一部屋、探りながら、ミラング共和国軍のトップを探すのだった。
リースの城の中。
そこでは、脅されて案内されるハウルラがいた。
脅しているのは、ランシュであり、ランシュはエルゲルダへの復讐を目的に動いている。
そして、ハウルラと偶然出会い、エルゲルダのいる場所へと案内してもらった方が、早く辿り着けるだろうと判断したのだ。
ハウルラからランシュのことは、ハウルラの友人ということにして、衛兵を誤魔化すように指示していたのだ。
そのおかげで、衛兵に追われるということはなくなった。
そして、ランシュは、目的地であるエルゲルダがいる部屋に辿り着くのであった。
「ここがエルゲルダ様がいる部屋です。今日は、リース王国との戦争ですが、指揮に関しては、武官に完全に任せていますので―…。」
と、ハウルラは言う。
ハウルラも、総統秘書の関係の仕事をしている以上、今日、どのような作戦になり、配置がどうなっているのかという報告は、共有されていたりする。そうしないと、伝えられる人や詳細を知る人がいなくなれば、情報伝達の上で齟齬が発生し、必要な運用ができなくなるからだ。
そういう意味では、ミラング共和国の組織運用はしっかりしていると判断しても良い。
ミラング共和国は民主主義国家でもあるが、同時に、総統を中心とする官僚組織に近いものをしっかりと持っており、その運用がしっかりとできるように組織編成と同時に、制度をしっかりと組みたてているようだ。それは過去のミラング共和国の政権が上手く政治ができるようにした結果であろう。
そして、エルゲルダがいると思われる部屋に到着すると、ランシュはエルゲルダの部屋を見ながら、一気に戦いを進めていかないといけないという覚悟を決めるのだった。
それと同時に―…、
「ああ、案内ありがとう。これは、案内代だ、迷惑料でもあるから、受け取って欲しい。」
と、ランシュは言うと、すぐにポケットからリース王国で使える紙幣を十数枚か取り出し、ハウルラに渡しのだった。
「はあ―…。」
と、ハウルラはその行動に驚くのだった。
ランシュからしてみれば、エルゲルダの部屋へと案内してもらったのだから、報酬としてしっかりと今、この場で金銭を渡すのは大事なことであるし、後からだと渡す時間もないかもしれないからだ。
そうだと考えると、ランシュの判断は間違っていないだろうし、脅してハウルラにここまで連れてきてもらったけど、殺すことが目的でない以上、口封じの報酬渡しも重要であろう。
それに、ランシュからしてみれば、ハウルラはいつでも殺すことができるので、そこまで警戒するような相手ではないことは事実であるが―…。
そして、ランシュはハウルラを見ることもなく、エルゲルダがいると思われる部屋へと向かって行く。
「このお金、どうすれば―…、というか私の安全の保障は―…。」
と、ハウルラは自らの状況に気づき言うが、すでに、ランシュはハウルラの言葉を聞くことはなかった。
それと同時に、ランシュは、ハウルラの安全を保障するために、すぐに、ハウルラの周囲に土の壁を展開し、その中に閉じ込めるのだった。
その理由は、ランシュがハウルラと約束したこともあるし、それ以上に、約束を守ってこその信頼が生まれるということの重要性を理解しているからというのもある。
そして、ハウルラの安全を確保した上で、今度こそ、エルゲルダがいると思われる部屋の中へ入るのだった。
場所は戻る。
ミラング共和国軍の本部施設の中。
そこの大元帥室の中で、ファルケンシュタイロがおり、今、逃げ出そうとしていた。
「ファルケンシュタイロ様!!! ここは危険です!!!」
と、ミラング共和国軍の兵士の一人は言う。
分かっているのだ!!!
すでに、アンバイドがミラング共和国軍の本部施設の中に入ってきたことを―…。
だからこそ、ファルケンシュタイロの側近たちは、ファルケンシュタイロを逃がし、ラルネからの逃走の避けることができなくなる以上、再起を図るために周辺諸国の力を借りないといけなくなる。
だけど、そう簡単に、ミラング共和国に力を貸すような諸国や勢力があるとは限らない。というか少ないのが現状であろう。
そのような中にあったとしても、僅かばかりの希望でもあるのなら、その可能性に賭けない理由はない。なぜなら、すでに、ミラング共和国はリース王国との戦争によって、ラルネに侵攻されるという状態になっており、明らかに追い詰められているのだからこそ、縋りつきたくもなる。
逆転のチャンスがあるなら―…。
「ああ、分かっている!!!」
と、ファルケンシュタイロは返事をする。
ファルケンシュタイロにとって、アンバイドに勝てるほどの実力を有していないことぐらい分かっている。
前の戦いで直接アンバイドと対峙したのだから、分かってしまったのだ。
伝説の傭兵と呼ばれるのは嘘や出まかせでもなく、事実なのだと―…。
そして、ファルケンシュタイロはラウナンよりも実力としては弱いし、ラウナン以上の実力者と対峙したのだから、自分が勝てないと思ってしまうのは当たり前のことであり、そんな勝負は避けないといけない。
再起ができる可能性が残っているのだから―…。
(あんな強い奴と戦っていられるか!!! ファロネンズは確実にやられてしまってるだろう。あいつでも駄目な奴に俺が勝てるわけがない。逃げの一手だ。再起こそが重要。)
と、ファルケンシュタイロは心の中で思う。
そうだと決まれば、行動するに決まっている。
アンバイドはファルケンシュタイロのいる場所へと向かっていることが、軍事的な直感や情報で分かってしまっている以上、逃げるという選択肢は当たり前で、行動は早めにした方が良い。気づいたらすぐに、という感じで―…。
だけど―…。
「見つけたぜ、ミラング共和国軍の元帥さんよぉ~。」
その声を聞いた時点で、ファルケンシュタイロはこの世の絶望が自身に訪れたかのように、震え上がらせるのだった。
これは、ファルケンシュタイロにとっての絶望と言ってもおかしくはない。
その声を一回だけど聞いたことがあるし、対峙したことがあるのだ。
恐怖。
そして、自らの命を奪おうとする死神。
終末への足音。
いくら言葉があったとしても、そこには共通の意味がある。
それは、ファルケンシュタイロという人の人生の終わりが目の前にやってきている、ということだ。
そう、アンバイドがファルケンシュタイロのいる部屋の入り口に立っているのだ。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(276)~最終章 滅亡戦争(131)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正および加筆していくと思います。
では―…。
PV数とかもろもろがいっぱい増えますように―…。