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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第36話-2 もう一人の自分

前回までのあらすじは、李章は瑠璃の言っていることよりも、自らの心の中にあるもう一人の自分の危険性のためにみんなに迷惑をかけないように心の中で誓っていた。

 瑠璃が李章の部屋から出た頃のリースの城の中の廊下。

 ここは、食堂へと続く道。

 二人の少女が歩いている。礼奈とクローナだ。

 二人とも横一列になっている。距離は1メートルも横には離れていないだろう。

 「大丈夫かな~。李章君。」

と、心配そうに礼奈は言う。

 あくまでも、()()()()()()()の好きな人が倒されたのを昨日見たその親友がショックを受けて、現実世界の石化を解くことを探すどころではなくならいかと心配してのことである。そう、親友が好きな人によって、その親友が傷付いていないかという心配と、もし傷つけたのなら許さないという気持ちを心の中で抱きながら―…。

 「李章―…、昨日はいつもと違うみたいだったし―…、瑠璃はどうしているのかなぁ~。大丈夫かなぁ~。それに、私の勘なんだけど、あの二人―…、たぶん、お互いのことが好きなのだよ。そう、同じ気持ちなのにどうして近づくことができないのだろうか。相手はすぐ近くにいるのに―…。」

と、クローナは言う。クローナとしても礼奈と同様の心の中の思いではないが、心配という同じ表現をしていいぐらいの気持ちであった。

 二人は進んでいく。その中で、

 「いつの日なったら近づくのかな? あの二人は―…。」

と、礼奈は心配と同時に少しだけ苛立ちのようなものを感じた。

 礼奈は別の今現在において、恋というものをしているわけではないし、したこともないのだ。それに比べると親友は羨ましかった。その人は、常に恋する少女であるかのように感じた。これは礼奈個人によるものでしかないが―…。そして、半年前に二人に知り合った礼奈は、二人の恋が進んでいないことも見てきていたのだ。ゆえに、恋を知らない礼奈は、お互いが好きなのにどうして告白できないのか、ということに対して疑問が浮かぶのである。そのことにおいて、礼奈は好きだからこそ相手に好きだという気持ちを伝えらないという気持ちを理解できないでいたのだ。

 礼奈のさっきの言葉に対して、クローナは、

 「そうね。私にはわからないと思う。今は―…、きっと。恋する二人の気持ちなど―…、私は恋を知らないから。」

と、詩人のような言い方で言う。そこに、自分にないものを持っていることを羨ましく思うように―…。

 クローナが言ったすぐ後に、後ろから、

 「二人とも何をしているのですか?」

と、疑問に思っている人の声がする。

 礼奈とクローナはその声を聞いて、声のする後ろへと体を向けると、そこにはセルティーが歩いてきていた。今日は、戦闘用の衣装ではなく、足近くにまで伸びているドレス衣装を着ていた。露出に関してはかなりといっていいほど控えめのものであった。

 「「セルティーさん。こんにちは。」」

と、礼奈とクローナは言う。

 「こんにちは、クローナさん、礼奈さん。二人とも深刻そうな顔をしているし、それに何か物思いに耽けているようですが―…。何かあったのですか?」

と、セルティーは礼奈とクローナの表情や、何か雰囲気が悩んでいるではないかと思われるように感じたから、礼奈とクローナに質問した。

 「実はですね―…。」

と、礼奈は続けてセルティーに話した。李章と瑠璃の関係のことを―…。


 そして、その話のために数分が流れた。

 「なるほど。二人の関係は―…、だから、昨日あの時に瑠璃がアンバイドさんに―…。まあ、二人の事を考えても仕方ありません。私たちにできることは限られています。」

と、セルティーは言う。その表情は、自身としての結論を知っているようであった。決してその答えは、正解であるとはセルティー自身は完全には思っていないが、今の礼奈とクローナには必要なことであると考えていた。ゆえに、続けて言うのである。

 「私たちが今できることは、普段通りにあの二人に接することだけです。今の二人にとっては、変わらないものがある。それこそが今、二人にとっての安心と、これからに向かっていくためのエネルギーになるのです。だから、他は、変わらないものがあるのだということを自然にやっていくことのなのです。」

と、セルティーは、優しい口調になって言う。

 その言い方が、礼奈とクローナに怪しいな思わせるものを少しではあるが、感じさせたが、それを差し引いてもセルティーが言っていることは、礼奈とクローナにとって理解できることであり、礼奈にとっての親友と親友の好きな人にとっては必要なことであると思った。

 だから、礼奈の方が、

 「ありがとうございます、セルティーさん。おかけですっきりしました。」

と、言う。そのとき、何か悪いものがなくなったかのように、表情がすっきりし、自然な笑みになっていた。もし、その表情を見てしまったら、男性も女性も関係なく、惚れてしまいそうなものであった。

 一方で、クローナも、セルティーの言葉を聞いて、表情がだいぶ柔らかくなっていた。

 「そうですよ。暗い気持ちでいると、良い運気を逃してしまいます。それだと、きっと良い事も起こってくれません。だから、礼奈、あなたは今のような自然の笑みのようにいてください。その可愛らしい、きれいな笑みで。その笑みでいれば、きっと良い事があります。良い事は周囲にもいい結果をおよぼします。」

と、セルティーは言う。

 セルティー自身も、礼奈の自然の笑みを見て、より気持ちが晴れやかになっていったのだ。それに引きつられて―…。

 「では、二人とも昼食を食べに行きましょうか。二人とも昼食、まだですよね?」

と、セルティーは言う。

 「「はい。」」

と、礼奈とクローナはそれに答えるのだった。


 リース近郊。

 ランシュのいる場所。

 ランシュは椅子に座っていた。それも、背よりも大きい後ろ支えるのがあるものである。

 「う~ん、どうしたものか…。」

と、ランシュは悩んでいた。

 ランシュは、第一回戦はチームとして強い者ではなく、個人としてそこそこ強くて危険な人物であるセグライを選んでいた。セグライ自身も一人であり、他の者とは組むことを選ばなかったらしい。ランシュが課した生き残りによるゲームへの参加チームとしての選抜の中でも一人で戦って、その権利を勝ち得たのだ。そして、第二回戦のチームは、ゲームへの参加チームをかけた争いの中で、生き残った最も弱いチームを選んだ。このチームは、数が多いチームであった。ランシュが組んでいるチームの数にはおよばないが―…。それは、第一回戦で瑠璃を負傷させるほどの怪我を負わせたので、今度は、瑠璃を除く五人が最大となると考えたからである。そして、第二回戦までで、瑠璃たちのチームの全員がゲームに参加したことになり、相手の実力をある程度把握できるからである。結果、ランシュにとって、

 (第三回戦以後からは、より強いチームをだしていくことになる。それに―…、ベルグが時間稼ぎだけっていうことを俺に命令するということは、俺が勝てない可能性も考えてのことだろう。だが、そうはならないし、させない。俺は―…、ゲームを盛り上げた上で、瑠璃、李章、礼奈(三人組)を亡き者にしてやるよ。ベルグ、お前はゆっくりと時間をかけて己の計画を焦らずに進めてくれ。)

と、心の中で自らの結論に近いものになっていた。

 そして、このランシュのいる場所には、ヒルバスとアルディ―がいた。

 「ランシュさん。悩むことはないと思うぜ。今回勝ったのは、俺だけだ。それも、ランシュさんの言っていた三人組の一人は倒したのだし。ランシュさんの出番はないって。」

と、アルディ―は言う

 その言葉を聞いたランシュは、

 「倒したといっても、殺したわけではない。まあ、討伐だからといって無理に殺すこともない。俺が作ったルールでは、場外に出した時点での勝敗が確定するのだから―…。アルディ―、お前が三人組の一人を勝利して、殺さなかったことに関しては別にどうでもいい。そして、最後になったが、勝利おめでとう。」

と、言う。それは、アルディ―が李章に勝ったとき、李章を殺すことをしなかったことに関しては、少し不満はあるが、倒してしばらく戦えなくしたのだから良いとランシュは思ったのである。

 しかし、アルディ―は、

 (あの場で勝敗がついたのに殺すことはできなかっただろう。あの場にはアンバイドがいたのだ。アンバイド(あいつ)ファーランス(審判)に気づかれないようにそれを阻止したかもしれない。アンバイドからは、そう感じた。)

と、心の中で呟いた。

 そう、アンバイドは常に、自らのチームの味方に余りにも危険なほどの危機が起こった場合、審判であるファーランスに気づかれないように介入することを常に考えていた。もし、味方が殺されるようなことになった場合、アンバイドは確実に何かある方法で逆に味方を殺した敵を殺す可能性があったのだ。そのような雰囲気を試合中、アルディ―は感じていた。だから、対戦相手であった李章を蹴り飛ばすだけにしたのだ。そうすれば、勝敗がつき、かつ相手がしばらくの間ゲームに参加できなくなるからだ。それをアルディ―は、あの時に天秤にかけて、自らにとってリスクの少ないほうを選択したのである。

 アルディ―は、ランシュが、昨日の李章との戦いに勝利したことに対して、「おめでとう」と言ったので、

 「ありがとうございます。」

と、ランシュに言う。

 そして、ランシュは、

 「次の三回戦は、すでに参加するチームが決まっており、追加するのは良いとは思えない。だから、アルディ―…、お前は第四回戦のチームに入ってもらう。」

と、アルディ―に告げる。

 「わかりました。」

と、アルディ―は答える。

 そして、ランシュは、アルディ―に対して、「以上、退出してかまわない。」と言い、アルディ―は「失礼します。」と言って、ランシュのいる場所から退出していった。

 そして、この場には、ランシュとヒルバスの二人のみとなった。

 「ランシュ様~。三回戦はあの二人で最終的になってしまうのですが、よろしいのですねぇ~。」

と、ヒルバスは半分やる気がなさそうに言う。

 「ああ、構わない。あいつらは、二人のチームだし、急に一人加えたとしても、余計な要因を増やす結果となって、あいつらの気持ちにいい影響がでることはないだろう。そうすれば、力を十分に心の底から発揮することはできないだろう。で、何、やる気をなくしているんだ、ヒルバス。」

と、ランシュは言う。ヒルバスのやる気のなさに少し苛立ちながら―…。

 「それはですねぇ~、ランシュ様がアルディ―様の前で、面白(おもしろ)展開にならず、真面目な会話になっているのがつまらなかったからですよぉ~。本当、ランシュ様は面白展開になってこそ真価を発揮しますのに~、それがないのは私としては、人生の地獄を味わっているのも同然ですよぉ~。」

と、ヒルバスは言う。ヒルバスにとっては、ランシュ=ヒルバスにとって面白くて、笑える展開がある、という図式が成り立っているのだ。ゆえに、面白展開のないランシュなど、ランシュとしての個性を殺しているものではないかと、心の底からつまらなく、ガックリするしかないものであった。

 「そうか。残念だが、ヒルバス、お前にとって面白展開などこれ以後も起きるはずがない。」

と、ランシュが言うと、

 「それはダメです。面白展開をください、ランシュ様~。」

と、ヒルバスは答えるので、ランシュは無視する。

そして、無視して、会話をランシュは続け、

 「そろそろ、()()()()()()()()()()()、ヒルバス。お前も属している俺の最強の部下たちに―。」

と、言う。

 そのランシュの言葉をヒルバスは、面白展開がないというショックを押しのけて、真剣な表情になる。

 ヒルバスは感じたのだ。ランシュが今、重要なことを言ったということを―…。そう、ランシュの直臣で、ヒルバスが筆頭となっている十二の騎士。つまり、その十二の騎士がゲームに参加する可能性が高まったのである(ただし、十二の騎士全員が、騎士のような戦いをするとは限らない)。

 そして、ヒルバスは、

 「ゲーム前までは、十人だったのを、十二人に増やしたましたね。あの二人を―…。どうしてか今さら聞きはしませんが―…、彼らの投入を早めるのですか?」

と、真面目に真剣な声で言う。その声の大きさは低いものであった。

 「ああ~、第四回戦にでも一人投入しようと思う。」

と、ランシュは言う。

 それを聞いたヒルバスは、思うところもあったが、それを抑え、ランシュの忠実な部下の一人として、ただランシュに従うかのように、

 「わかりました。」

と、言った。ただ、ランシュの命を確実に成功させるために―…。


 その後、ヒルバスは、十二の騎士にランシュの伝令を伝えるためにランシュいる部屋からでたところの目の前にある廊下を歩いていた。

 (あの二人―…、一人はリークという闇の属性の天成獣を扱う―…、彼は私の中でも期待できるし、ランシュ様に反抗することはない。しかし、もう一人―…の闇の属性を扱うあいつは―…。あんな―…()()()()()()を―…、なぜ私たちと同じに地位に―…。)

と、心の中でヒルバスは呟く。

 ヒルバスは、一人だけローの関係のある人物が自らと同じ地位にある騎士と同じ地位にあることを恨めしく思っていた。


第36話-3 もう一人の自分 へと続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


第37話あたりから、第三回戦に入っていくと思います。たぶん、ですが―…。

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