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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
608/746

番外編 ミラング共和国滅亡物語(262)~最終章 滅亡戦争(117)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。

一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。

その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。


翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。


戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。

その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。


翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。


リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に

、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。


リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。

その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。


ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。

その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。

一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。

その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。

一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。

その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。

それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。

その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。


ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。

そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。


一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。その兵たちはアンバイドの実力の前に戦わず降参するのだった。

それが重要な問題となる。

ファルケンシュタイロはファロネンズをクローデル領に派遣し、マーゼルの真意を確かめ、ファロネンズの独断でマーゼルを始末するのだった。

そして、マーゼルが殺されたことを、マーゼルの重臣たちに見せしめ、完全服従を勝ち取る。

一方―…、ファウンデーション領(旧アルデルダ領)では―…、領都のミグリアドが包囲されるのだった。それを打開しようとして―…、シエルマスを投入し、リース王国軍の中央軍のトップを始末するのだった。

その後、クローデル領でも動きがあり、ミラング共和国軍とリース王国軍右軍の対決となるが、アンバイドの活躍により天成獣部隊のトップを始末し、かつ、撤退させることに成功して、クローデル領での勝利を得るのだった。

 そして、オットルー領の方に向かって勝利したリース王国軍の左軍は交渉の場にいた。そこでは話し合いがおこなわれていたが、衝撃の事実が突きつけられるのだった。それは、ファウンデーション領を攻めていたファルアールト元帥が暗殺されるというものであったが、オットルー領の領主との話を終え、ミラング共和国の首都ラルネへと向かうのだった。

 一方で、ファウンデーション領を攻めていたリース王国軍の中央軍は―…、ラウナンの策によりミグリアドから撤退しないといけなくなったが、その後、ミラング共和国が攻めてきたが、リーンウルネの影ながらの支えにより、勝利するのであった。

 そして、舞台は最終決戦となろう場所、ミラング共和国の首都ラルネへと―…。

 ヒルバスとしては、焦っているという気持ちはある。

 早めに、リース王国の騎士団の本部に向かい、知らせる必要があるのだ。

 それは、なるべく早い方が対策をとりやすいものである。

 だが、それを敵であるキールバが許してくれることはない。

 ということで、キールバと戦うしかないという選択となるわけだ。

 「僕の強運が今日で終わりぃ~。どういう意味かなぁ~。」

と、キールバは言う。

 キールバとしては、許せないことではあるが、強い実力を持つヒルバス相手に対する対決したいという好奇心というものが強くなってしまっており、臆するということがなくなっている。

 「そのままの意味ですよ。」

と、ヒルバスは言っている間に、キールバのいる場所を向けて銃撃を一つ加える。

 その動きを見たキールバはすぐに―…。

 (!!!)

と、驚きながらもすぐに避ける。

 (僕の位置をすぐに把握―…。いや、すぐに把握しているということは、索敵能力が高いようだ。裏の組織に属したことのある人間。騎士が?)

と、キールバは心の中で疑問に感じる。

 その疑問を表情に出さないようにしないといけない。

 キールバは分かっている。

 表情に出してしまえば、簡単にヒルバスはキールバの表情からキールバの状態がどうであるのかをしっかりとすぐにでも察するだろう。

 ヒルバスの感覚というか、戦い方というか、その中にシエルマスの工作員が教えられるものに通じる裏の組織そのものやり方が見えたからだ。

 ゆえに、裏の組織特有の考え方も簡単に見破ってくるだろうし、その戦い方を知っているからこそ、何かしらの対処法をもっていてもおかしくはないと、瞬時に判断したのだ。

 短い期間で、キールバがシエルマスの中で出世して、北方担当首席になるだけの実力はある。

 なぜなら、相手の僅かな動きから、相手の考えというか、戦い方、経験の一部を正確に理解しようとするのだから―…。経験則の類であろうが、そういうことをしっかりと無意識のうちに理解できるのは、大したものであるし、ヒルバスにもそのことを認識させるには十分であろう。

 ただし、キールバには疑問に感じられることがあった。

 それは、騎士団に属する騎士が裏の組織のような動きをする、ということだ。リース王国の騎士団の騎士の中で裏の組織のような行動ができるのは、いないと思っていたからだ。

 その理由は、騎士団をクビになった者が、裏の組織に流れることはあるだろうが、裏の組織から騎士団に流れるということは難しいはずだ。というのも、騎士団は騎士として、精錬であることが求められることが多く、騎士は精鋭であり、かつ、戦闘力がしっかりとしていないといけないし、裏から暗殺するような手段はあまり騎士の戦いとして好ましくないということが騎士団の慣習として存在するからだ。

 そうだと考えると、キールバから判断すると、ヒルバスは騎士の恰好をしているが、リース王国の騎士団の騎士ではないのではないか、ということが導かれ、何かしらの別の目的があるのではないか、対シエルマスのために、リース王国の裏の組織が騎士の恰好をさせて、潜入させているのか。

 色々と考えることも可能であろうが、それを特定している暇は、キールバには残されていない。

 それは、そんな時間をヒルバスが与える気もないだろうし―…。

 実際、ヒルバスは一年前ほどから、騎士団の騎士からリース王国の宰相であるメタグニキアの私設部隊へと移籍し、裏の組織のような仕事をするようになっている。

 ヒルバスは物事を憶えるのが早いのか、簡単にやり方を憶え、成果を出し、メタグニキアからの信頼を得るようになってきているのだった。

 ゆえに、裏の組織の戦い方をヒルバスは知っているし、やり方というのも、考え方というのも理解している。

 今回のリース王国とミラング共和国の戦争では、一時的に騎士団の騎士という扱いになっているのだ。そういう答えにキールバは至るほどの情報量はないし、確実性のあるものを持ってはいない。

 ゆえに、そのような答えを出すよりも、自分が分かることからちゃんと敵を倒すための策を考えた方が効率的であり、そのような判断が重要であると、キールバは認識している。

 キールバは着地すると―…。

 (僕の属性の幻に対して、対処してくるとは―…。さて、どうするか。敵がシエルマスのような戦い方ができるとなると、こっちの攻撃や考え方は当然に予想されているだろうなぁ~。だけど、僕の戦い方の師匠はラウナン様だから、ラウナン様の戦い方の真似をして、それを応用して、シエルマスの工作員の戦いをとり入れているだけだから―…。)

と、キールバが心の中で思っていると―…。

 「考える暇なんて、与えないよ。」

と、ヒルバスは言うと、銃弾を一発放つ。

 パァン!!!

 これが当たるとはヒルバスも思ってはいない。

 なぜなら、相手にわざと避けさせるような感じでわざと声を出させたのだから―…。

 キールバが考えている間にも、ヒルバスの方も考えているのだ。

 (…………敵の方も何かしらの能力者。いや、一向に騎士団の本拠地に到着しないところから考えると天成獣の属性は幻と考えるのが良さそうですねぇ~。そして、それを見破っているのかどうかが分からないと、敵を倒したと思わない方が良いですねぇ~。)

と。

 ヒルバスは分かっている。

 幻の属性の天成獣の宿っている武器を扱う者達は、相手に勝利したような幻想や、相手が有利になっていることを示す証拠っぽい現象を相手に見せることによって、相手の油断を誘うのだ。

 そうであるからこそ、勝ったとしても一向に、そうだと判断することはできない。

 ゆえに、こういうトリッキーなタイプと戦う場合は、自らが常識としていることの一部を確実に疑わないといけないのだ。そういうことを忘れてはいけないし、そういう気持ちを倒したと確実に分かるまでは、しっかりと体の中に染み込ませておかないといけない。

 本当に、ややこしい相手なのだ。

 ヒルバスはそのことが分かっているからこそ、より慎重な態度になるし、戦い方もそうなってしまうのだ。

 そして、ヒルバス自身は考えながらも、周囲への警戒を怠ることはなく―…。

 (隙あり!!!)

と、キールバが心の中で思いながら、攻撃すると、消えるようにかわす。

 すぐに、キールバが空中に浮いていることを確認するために、向きを変え、素早く―…。

 (隙あり!!!)

と、一撃の銃撃を放つと、キールバの眉間を貫通する。

 「あっ…………………。」

と、キールバは声を発する。

 発してしまったというのが表現として正しいであろう。

 だけど、ヒルバスは警戒を解くことはしない。

 解けるはずもない。

 分かっている。

 キールバは、天成獣の宿っている武器を扱うことができる者であり、その扱っている天成獣の属性は幻であり、勝ったと思わせて、その隙を狙ってくることを―…。

 だからこそ、ヒルバスは周囲を警戒するかのように見渡す。

 言葉を発する必要もない。

 今は、敵であるキールバを始末することの方が一番に重要なことなのだから―…。

 一方で、キールバは―…。

 (僕の幻を一発で眉間に当てるとか~、ヤバァ!!! というか、倒した後でも油断しないなんて―…。完全に僕の天成獣の属性を幻だと見破っているってこと―…。厄介だな。)

と、キールバは心の中で思う。

 キールバとしては、見破られてしまったことに対して、かなりの焦りがある。

 だけど、焦りが油断を生むことは分かっている。

 だからこそ、無理矢理にでも落ち着かせようとする。

 そうしなければ、些細なところでミスをしてしまい、結果として、キールバにとっての望まない最悪の未来のある地点を迎えることになるのだから―…。

 そういうことがわかっているからこそ、冷静さを必死にキールバは求めるのである。

 好奇心をなくすことなく―…。

 一方で、ヒルバスの方はキールバの幻にかかっており、本人もそのことに気づいているが、それでも、本体がどれかは完全に分かっているわけではない。というか、それを見分けるのは難しい。

 ランシュや、アンバイドのように幻が通じない類の天成獣の特殊能力を持っているタイプの天成獣ではないのだから―…。

 幻が通じない天成獣は、かなり珍しくそれを持っているのは属性が生のものもしくは含んでいる複数属性の中に生の属性が含まれているものだけである。

 そして、ヒルバスの方は、警戒を緩めることなく、相手の出方を窺う。

 後手になるのは避けたいのであるが、敵の天成獣の属性が幻である以上、どうしても後手にならざるをえないのだ。悲しいことに―…。

 幻は仕掛けてくる側になることが多いし、相手を騙してくるのだから―…。

 (…………………………………………。)

 ヒルバスは沈黙しながらも、相手が仕掛けてくるのを待つのだった。

 仕掛けてこない時間がしばらくの間、続くのだった。


 場所は、議会堂。

 そこでは一部の議員が紛糾していた。

 「どういうことだ!!! ディマンド!!! なぜ、リース王国軍がラルネを包囲し、攻めてきておるではないか!!!」

と、一人の議員が言う。

 それは怒りの感情の現われである。

 この人物は、対外強硬派の力が強いので、彼らについてきたのであるが、今回のミラング共和国とリース王国の戦争で、ミラング共和国の首都であるラルネまでリース王国軍が攻めてきている以上、どうして、このようになったのかディマンドを問い詰めているのだ。

 ディマンドからしてみれば、今、総統であるエルゲルダはラウナンとともにいて、部屋の中へと入ることができない状態なのだ。

 それでも、シエルマスを無視した判断を下すことはできない。

 だから―…。

 「私に問い詰められても困るのだよ、ラッパーラード議員。私はねぇ~、普段からミラング共和国のために活動しており、ミラング共和国が周辺諸国における勝利を貢献しているのに、ラッパーラード議員はいつもいつも批判ばかりしている。少しは建設的な意見でも言ったらどうだい?」

と、ディマンドは煽るように言う。

 このような言い方によって、周囲からラッパーラード議員の名誉を傷つけることができ、その効果でディマンドの方が良いと多くの議員が判断するのである。

 だが、勘違いである。

 なぜなら、この場にいる議員の多くは、対外強硬派についていくことによって、そこから出るお零れを受けて、自らの権威を拡大したいだけである。

 そのことから考えると、ディマンドのようなやり方は権力の基盤がしっかりしていたり、ある程度の被害を誤魔化せるような状況であれば、通じることかもしれないが、通じない段階というのも存在する。

 生活に関する被害が酷くなる、例えば、政権を握っている支配層が物価高によってその支配層がいる国および地域の人々の生活が悪化し続ける状態が続くことが該当する。

 その結果、生活を良くしないどころか放置して、悪化させていることに人々が気づき、今までついてきていた人々が離反するようになり、批判者へと変貌する。

 そのことを恣意的だとか、利己的だと思う人はいるかもしれないが、結局、他者への配慮をしっかりとし、他者に上手く利益を与え続けない限り、権力の基盤を維持することも盤石にすることもできないし、人々の支持も得られ続けるわけではない。

 結局、どんなことがあったとしても、善人のように振舞う必要があるし、それを疎かにしてはいけない。さらに、獰猛で人の利益を奪い続ける者よりも、人々に配慮しつつ、上手く自らの利益を得続ける人間の方が後々まで、良悪の半々のイメージを残すだろうし、ちゃんと善政をおこなう者の方が良い評価を受け続けるだろう。ただし、これは人々や世間や社会からの見える政策によるものの判断であり、決して、すべての面において成り立つわけではなく、このような結果にならないことだって多分にある。良い面しか見せず、悪い面を見せないようにしていた場合などとかが、当て嵌まったりする。

 人は決して、他人の全てを理解できるわけではないのだから―…。

 そして、ラッパーラード議員と呼ばれている人物は、対外強硬派を憎んでいる。今は―…。これまで得てきていた利益がなくなるかもしれないと主観的に判断しているからだ。それに加えて、対外強硬派の政策にはほとんど反対していないのだ。

 そういう意味では、ディマンドの思い込みと同時に、こいつを排除したいという思いが入り混じっているのかもしれない。ラッパーラード議員は、ミラング共和国におけるエリートコースを歩んでいる人物であり、頭の狡賢い人物であることに間違いない。

 そして、ディマンドはラッパーラード議員の名誉を貶めることによって、自分に従わない人間にはどうなるかを教えようとしているが―…、それも無理であろう。

 「いつもいつも、反対と言っただけで、対案を用意しろとか!!! 反対も立派な意見だろ!!!」

と、一人の議員がヤジを飛ばず。

 相当の怒りがあるのだろう。

 どうしてそうなのか分かっている。

 反対意見をする者の名誉を悉く、貶めてきたからだ。

 ディマンドのさっきの「建設的な意見」という言葉からも分かるであろう。

 建設的な意見と言う時、言っている人からしてみれば、反対意見を述べずに、その出ている意見を実行するので、それをより良くしろ、という意味で言っていたりする。

 それは残念ながら、この建設的な意見という時、同時にこの意味も含まれている。俺の意見に反対するな、お前には賛成の意見で追加する意見のみしか許されず、反対するような輩は人としておかしく、聞く必要もないものである、と。

 要は、俺の考えは正しいということであり、俺の判断で決めるのが正しいということなのである。

 それは結局、自らという方針は正しく、間違いなどないというその面での完全性と完璧性を認め、それを貫き通そうとしているという傲慢さを見ることができる。

 人は完璧にも、完全な存在にもなれないのだから、自らの意見が正しいとは限らない。それに、間違った方向は多数や少数の勢力の数には、そもそも関係ない。

 そうである以上、何が正しいのかは、数や勢力の勢いには関係なく、さらに追加すれば、偉い人だろうが権力者だろうが貧民であろうが、商人であろうが、身分や地位にも関係なく、ケースバイケースで正しいかどうかは異なるであろうし、それが完全に正しいのかどうかを判断する方法を人はどのようにしたって持ち合わせることはできない。

 だから、人は何が正しいのかをずう~と考えることができるし、どんな政権であったとしても、失敗するし、それから逃れる方法はない。

 よって、「建設的な意見」で一方的に意見の方向を完全に絞り込んだりするのは危険なことであるし、そのことによって反対意見を封じて、反対意見を言った人の名誉を貶めたとしても、意味がないことであるし、相手の意見を聞きながらも、相手に誠意ある説明をした上で、自らの判断の理由を丁寧に説明すべきであるし、それを判断するのは自分ではなく、第三者から判断して、どうかということに重点を置かないといけない。

 そうしないと、自分基準での判断ばかりとなり、間違いあっても気づかなくなってしまい、そのことによって、最悪の事態、自らの破滅を招くことだって十分にあり得るからである。

 そうである以上、ディマンドのやり方は権力基盤がなくなれば、同じ手は使えず、批判勢力を増大させるしかなく、悪手としか言いようがない。

 結局、自らの破滅に手を貸しているだけであろうが、当の本人と、支持者には分からなかったりすることがある。

 そういう状態が、今、まさに起こっているといえる。

番外編 ミラング共和国滅亡物語(263)~最終章 滅亡戦争(118)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正および加筆していくと思います。


では―…。

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