番外編 ミラング共和国滅亡物語(255)~最終章 滅亡戦争(110)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。
リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に
、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。
リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。
その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。
ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。
その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。
一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。
その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。
一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。
その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。
それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。
その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。
ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。
そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。
一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。その兵たちはアンバイドの実力の前に戦わず降参するのだった。
それが重要な問題となる。
ファルケンシュタイロはファロネンズをクローデル領に派遣し、マーゼルの真意を確かめ、ファロネンズの独断でマーゼルを始末するのだった。
そして、マーゼルが殺されたことを、マーゼルの重臣たちに見せしめ、完全服従を勝ち取る。
一方―…、ファウンデーション領(旧アルデルダ領)では―…、領都のミグリアドが包囲されるのだった。それを打開しようとして―…、シエルマスを投入し、リース王国軍の中央軍のトップを始末するのだった。
その後、クローデル領でも動きがあり、ミラング共和国軍とリース王国軍右軍の対決となるが、アンバイドの活躍により天成獣部隊のトップを始末し、かつ、撤退させることに成功して、クローデル領での勝利を得るのだった。
そして、オットルー領の方に向かって勝利したリース王国軍の左軍は交渉の場にいた。そこでは話し合いがおこなわれていたが、衝撃の事実が突きつけられるのだった。それは、ファウンデーション領を攻めていたファルアールト元帥が暗殺されるというものであったが、オットルー領の領主との話を終え、ミラング共和国の首都ラルネへと向かうのだった。
一方で、ファウンデーション領を攻めていたリース王国軍の中央軍は―…、ラウナンの策によりミグリアドから撤退しないといけなくなったが、その後、ミラング共和国が攻めてきたが、リーンウルネの影ながらの支えにより、勝利するのであった。
そして、舞台は最終決戦となろう場所、ミラング共和国の首都ラルネへと―…。
どこかの部屋。
場所は、シエルマスが拠点としている場所の建物の中のさっきの部屋とは別の部屋。
そこには、ディキッドとフィードがいる。
二人は真剣な面持ちである。
「ディキッド………、今回の作戦は上手くいくか?」
と、フィードは尋ねる。
フィードの今の質問に対して、ディキッドは表情を変えることなく、少しだけ考える。
(フィードは今回の作戦が上手くいくとは限らない……、そうだと思っているようだな。俺もその意見に賛成していたんだけど……………………、この会話を他のシエルマスの人間………加えてラウナン様に聞かれるのはかなり危険なことでしかない。フィードのことだから、そういうのも見越して、聞かれないような部屋を選択しているのだろう。そうだと考えると……ラウナン様がどこにいるかだな。聞かれることだけは不味い。)
と、ディキッドは心の中で思う。
ディキッドは分かっているのだ。
今回のラウナンが出した指令が上手くいく可能性が低いということを―…。
だけど、そのことをシエルマスの拠点としている建物の中で言うことはできないし、そのようなことを言えば、自らの命が危うくなることは分かっている。
だからこそ、考えるし、かなりの警戒感をもってしまうのだ。
そのことにフィードも気づいているが、そうであったとしても、ディキッドが今回のラウナンから指令がどういうことになりやすいかに気づいているであろうから、意見を合わせておく必要がある。お互いが生き残っていくために―…。
「答えようとしないというのは、ラウナン様のことを恐れているから…か。」
と、フィードは続ける。
フィードは、ディキッドが気にしていることが何であるかは、しっかりと分かっている。
というか、予想するのはあまりにも簡単なことだ。
ラウナン、シエルマスのトップの地位に就いている人物のことである。
シエルマスに入った者達は最初に、ラウナンによって分からされるのだ。ラウナンは実力者であり、どんなことをしても、天と地がひっくり返したとしてもラウナンには叶わないことを、恐怖をもって教えられるのだ。いや、植え込まれるという表現の方が正しいか。
要は、ラウナンに対して、逆らってしまえば、どんな結果になるのかを示して、ラウナンの命令に逆らえないようにするのだ。
それと同時に、ラウナンは自分よりも強くならないようにしっかりと育てるのだ。そうすれば、ラウナンに反抗してくるような輩は二度と出てこなくなり、自らの地位が安泰なのだ。それは同時に、ラウナンに対抗できるミラング共和国以外の人物がラウナンの命を狙った場合、ラウナンの命は奪われるということを意味するが、ラウナンがそんなことを考えることはないし、そんな想像はしたくもない。
自分にとってマイナスにしかならないし、一個もプラスにならないことを考えたところで、気持ちがまいってしまうだけだし、自分が最強であり、裏で操って、思い通りにしているのだから、そもそも考える必要がない。
ラウナンにとっての、この思考はすべての場面で適用されるかと言われれば、否、と結論付けないといけないし、適用される場合もあれば、そうでないこともある、そのように結論付けるしかない。自分の都合が良いことばかりみても意味はない。マイナスになってもしょうがないけど、物事は自分にとって、プラスに働くことばかりではないのだから―…。
プラスもマイナスも自分から見た視点であることに、違いというものはないが―…。
さて、話を戻し、ラウナンによって植え込まれてしまった恐怖は、ディキッドにとっては優先順位の中でかなりの上位であり、シエルマスとして活動する時は一番上と言ってもおかしくはない。
そうである以上、フィードの言っている言葉には、否定することが絶対にできない。嘘を吐くことは可能であろうが、フィードは確実に、ディキッドがラウナンを恐れていることを理解した上で言っているのだ。だから、嘘を吐いても最悪の結果にしかならないことを予想できてしまう。
「黙っているということは、俺の言っていることを肯定として受け取っていると判断させてもらう。それで良いか、ディキッド。」
と、フィードは続ける。
フィードは、ディキッドの感情を理解しているからこそ、簡単に、言えないことを理解しながらも、ある言葉を言って欲しいし、そのことに気づいている情報を共有させて欲しい。
フィードもラウナンに気づかれないようにはしているつもりだ。
これは、ラウナンに聞かれるわけにはいかないのだから―…。
どんな人間も、決して完璧にも完全で、間違えのない存在になることは一切、できない。不完全であるからこそ、完全を目指して、修正をし続けていくことができるし、変化し、成長を続けることができるのだから―…。成長が何かしらのできないことをできるということになるということを意味するのなら、それは完全でないし、完璧でもないということの自身の証明であり、それになれないことを意味する。
そう、ラウナンもそのような人間の一人に過ぎない。
それを決して、誰もが忘れてはならないということであるが、忘れているというよりも、気づきもしない。
夢や希望があるが、同時に、それを打ち砕かれるという絶望も存在するということである。その覚悟をもって、突き進んで欲しい。都合の良い言葉ではなく、信念ある人の言葉の重さを―…。
フィードは、焦りという感情はなかったが、ディキッドの煮え切らない態度にはイラつきを見せていた。
一方で、ディキッドは、
(………そんな簡単に言えることか。フィードがここまで言っているのに、ラウナン様が現れないで、始末していないということはここにいない可能性が―…。いや、俺に言わせて、それを理由として、俺を抹殺しようとしているのでは―…。その可能性も考えてしっかりと発言しなければ―…。)
と、心の中で思う。
ディキッドは、南方担当首席の地位にあり、いろんな裏組織に関して詳しいし、その中の人間と親しい関係になっている場合もある。だけど、親しい人がいるからと言っても、裏切り合いなんて、日常茶飯事とは言えないが、普通に起きたりするのだ。
結局、こういう裏組織では義理やら人情というものがないわけではないが、それよりも、利己的な、自身への利益および自身が破滅しない選択が優先される。そうである以上、どんな親しい者であったとしても、自身の破滅の可能性があるのであれば、簡単に裏切る。自分を守れない者が、組織を守れるはずもない、と思いながら―…。
そういう心情を理解できないというわけではないが、そのようなことばかりをしていれば、親しい者はいなくなるだろうと考えがちだが、決して、そうではなく、利己的な思いで、親しい者ができたりするのだ。そうであるからこそ、利己的な親しい仲ばかりになってしまい、本当の意味で、仲の良いという関係はできなくなる。そういうことだ。
そして、ディキッドは、そういう人間との関係があるため、フィードに関しても、そのような概念を適用してしまっているのだ。
それを治せと言っても、今回ばかりは例外だと言っても、真面な根拠がなければ何も意味がないし、通じない。
大事なのは、フィードの意図をディキッドが理解することであろうが、それは少しばかり難しいことであろう。
だけど、ディキッドも黙り込んでいてはいられないので、フィードに意を決して話すのだった。
「ラウナン様に聞かれたら、……というか、俺を殺そうとか、貶めようとか考えていないよな。過去に、組織のトップの命令があまりにも理不尽なものだったから、その命令を止めようぜと言ってきた奴が実はその組織のトップと繋がっていて、組織の命令を理不尽だと思っている輩を炙り出して、それにつられた奴らを殺し、それを見せしめにして、組織のトップの命令に従わせようとした件があった。俺は引っかかることはなかったが、そういうこともあるので、確認しないとな。」
と、ディキッドは言う。
ディキッドは、フィードがラウナンと今、言っていることで繋がって、ディキッドを貶めようとしていないことを確認したかった。嘘を吐けば、それは分かる。
ディキッドは、裏組織の権力闘争と陰謀渦巻く中で生き残ってきたのだから、人を見る目はしっかりと養われているはずだ。そのようにディキッドは思いながら―…。
ディキッドの今の言葉を聞いたフィードは、呆れながらも、納得してしまうのだった。
(南方の方は裏組織同士の熾烈な勢力争いが激しかったな。そんなところを担当しているディキッドならそのようなことがあってもおかしくはないか。)
と、フィードは心の中で思いながら―…。
そうである以上、フィードはちゃんと言わないといけない。
「ラウナン様がディキッドを貶めようなことのために、俺はこのような話をしようとしているわけじゃない。ディキッドは裏組織との関係で、そのようなことを日々、目にしているから、俺のことを疑ってしまうのは仕方ない。だけど、今回、俺はディキッドを貶めるために、このようなことを言っているわけじゃないし、今回、双方とも生き残るために必要なことであり、俺と意見に賛成してくれると思っているからこそ言っている。」
と。
フィードは別に、ディキッドを貶めることには何の興味もないし、ラウナンからそのような命令を一切、受けていない。そこに嘘はないし、嘘の理由を並べる必要はない。信頼を築くために、相手に対して誠意になるのは当然のことだと思っているからだ。
シエルマスも裏組織である以上、裏切り合いがないとは言えない。
だけど、ラウナンという絶対的存在がある以上、裏切りをするのはあまり得策ではないが、今回は生き残りのために、どのように行動をすべきか、ということがメインであり、ラウナンに対する裏切りになるかもしれないが、生き残らなければ挽回のチャンスなんて訪れる可能性すらないのだから―…。
フィードの今の言葉に、ディキッドは嘘はないなと思ったのか話し始める。
「フィードがそこまで言うのなら、私の正直な気持ちを話そう。今回のラウナン様の命令を実行した場合、シエルマスの大半は殺されるだろうし、イルターシャは明らかに、ミラング共和国軍は知らないだろうが、天成獣の宿っている武器を扱うことができるし、属性の可能性として幻が高い。それに、リース王国の騎士団の騎士の中の二人ほどの騎士に対抗できる戦力はない。ラウナン様よりも強い者を育てなかったのが原因だろう。だけど、フィード……お前は何かしらの策でもあるのか?」
と、ディキッドは言う。
ディキッドとしては、自分の命はここまでの可能性も十分に考えた。
そして、フィードの言っていた言葉に嘘がないと確認していたとしても、それが真実だと限らないし、本音というものを隠していたりすることだって十分にあるのだ。
だから、覚悟はしている。しているつもりだ。
「策……か。ないわけではないが、シエルマスを裏切るという可能性も十分に出てくる。」
と、フィードは言う。
フィードの言葉に嘘はない。
そのことは、ディキッドも理解し、それがどんなことを言っているのか理解している以上、ディキッドも覚悟を決めて言う。
「そうか、つまり、ミラング共和国の勝利は―…。」
と、ディキッドの言葉に―…。
「ない。」
と、フィードは重ねるかのように言う。
そう、すでに、ミラング共和国は詰んでしまっているのだ。
ディキッドとフィードの二人の視点からそのようにしか思えなかったのだ。
だからこそ、この後も二人は話し合い、これからどうするかという方針をしっかりと決めるのだった。
そして、少しだけ時が進む―…。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(256)~最終章 滅亡戦争(111)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
では―…。