番外編 ミラング共和国滅亡物語(254)~最終章 滅亡戦争(109)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。
リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に
、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。
リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。
その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。
ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。
その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。
一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。
その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。
一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。
その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。
それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。
その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。
ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。
そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。
一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。その兵たちはアンバイドの実力の前に戦わず降参するのだった。
それが重要な問題となる。
ファルケンシュタイロはファロネンズをクローデル領に派遣し、マーゼルの真意を確かめ、ファロネンズの独断でマーゼルを始末するのだった。
そして、マーゼルが殺されたことを、マーゼルの重臣たちに見せしめ、完全服従を勝ち取る。
一方―…、ファウンデーション領(旧アルデルダ領)では―…、領都のミグリアドが包囲されるのだった。それを打開しようとして―…、シエルマスを投入し、リース王国軍の中央軍のトップを始末するのだった。
その後、クローデル領でも動きがあり、ミラング共和国軍とリース王国軍右軍の対決となるが、アンバイドの活躍により天成獣部隊のトップを始末し、かつ、撤退させることに成功して、クローデル領での勝利を得るのだった。
そして、オットルー領の方に向かって勝利したリース王国軍の左軍は交渉の場にいた。そこでは話し合いがおこなわれていたが、衝撃の事実が突きつけられるのだった。それは、ファウンデーション領を攻めていたファルアールト元帥が暗殺されるというものであったが、オットルー領の領主との話を終え、ミラング共和国の首都ラルネへと向かうのだった。
一方で、ファウンデーション領を攻めていたリース王国軍の中央軍は―…、ラウナンの策によりミグリアドから撤退しないといけなくなったが、その後、ミラング共和国が攻めてきたが、リーンウルネの影ながらの支えにより、勝利するのであった。
そして、舞台は最終決戦となろう場所、ミラング共和国の首都ラルネへと―…。
お開きの後。
ラウナンは、シエルマスの本部がある場所へと向かって行く。
その間に、ラウナンはエルゲルダをこの城から出さないようにしていた。
アマティック教の教主フォンミラ=デ=ファンタレーシア=イルカル=フォンドが囲っている女たちをエルゲルダに差し出すことで―…。
その命令を発したシエルマスの構成員はすでに、ラウナンからの命令を終え、シエルマスの本部に戻っていた。
ラウナンはそのことを知らないわけがないし、構成員が任務をちゃんと遂行したことの報告を受けている。
だけど、ラウナンは考える。
(エルゲルダをこの城から出さないようにすることはイルカルの女たちを使えればできる。だが―…、リース王国の騎士団を攻めるためにシエルマスの数をかなり回すと、どうしてもエルゲルダへの守りが疎かになる。一番の成果は、私がエルゲルダを直接守るのがベストだが―…。リース王国の騎士団を葬るには、私自身の出動も重要だが―…。……………………………私が一人で、エルゲルダを守るしかないな。新たな駒がいないとなると―…。)
と、結論を出す。
ラウナンにとっては苦渋の決断であった。
ラウナンとしては、エルゲルダを守りつつ、自身の力と率いているシエルマスのすべてを動員して、リース王国の騎士団を全滅させて、リース王国軍の兵力をかなりダウンさせ、リース王国軍をラルネから撤退させ、今度はミラング共和国側がリース王国を征服しに向かうのだ。
そのような実現するか分からないことを夢見ながら、現実の不利な状況を覆せると思いながら、自らの気持ちを無理矢理にでも振るい立たせる。
ラウナンの目的を達成するために―…。
そして、この苦汁の決断となったのは、ラウナンが離れている間に、エルゲルダの命を奪われる最悪の事態の回避と、同時に、駒として使える人間がラウナンの側にはいないとラウナン自身が思っているからだ。
ラウナンにとって操りやすい存在でないといけない。
一方で、イルカルは天成獣の宿っている武器で他人を洗脳することができるので、ラウナンが守る必要はないし、仮にイルカルが命を落としたとしても、それを利用して、アマティック教をより繁栄させられることができる。シエルマスの良い方向として―…。イルカルの権威は、イルカル自身が命を落とすことで上がることもあるのだから―…。
さて、ラウナンは方針を決めることに成功したが、それでも、懸念がないわけではない以上、自分に自信を持つことができなかった。
これは、ラウナンにとっては許されざることだ。
(私は正しい。何も間違ったことはしていない。間違っていない、失敗していないからこそ、私は今の地位がある。シエルマスで出世するためには、失敗は許されない。失敗しない完璧な人間がシエルマスのトップになれる。私は完璧だ。こんなことはない。誰かが仕組んだに違いない。邪な方法で―…。)
と、ラウナンは心の中で思う。
狂っているとしか言いようがない。
失敗しなかったことによる弊害を受けている。
失敗を受け入れない社会もあろうが、そんな社会であったとしても失敗するということから逃れることは、どんな方法を用いてもできない。
なぜなら、人という存在が完璧になることができないがゆえのことであり、それとは永遠に付き合っていかないといけない自らの影の存在と変わらないのだから―…。
そして、ラウナンはそのことに気づくことも、その機会もなく、ただただ、自分は完璧で、失敗する人間ではないと思いながら、シエルマスの本部へ向かい、王城を出るのだった。
シエルマスの本部が入っている建物の中。
ラウナンが到着し、作戦の説明がなされる。
この場所は、シエルマスでも首席クラスしか入ることができない会議室である。
その場で―…。
「集まっていただいた。今回、我々、シエルマスは、私がエルゲルダの護衛に付き、私以外のすべての工作員は、リース王国軍の騎士団がいる陣地へと向かい、彼らを全員皆殺しにしろ!!! そうすれば、リース王国軍の戦力はかなり減らすことができる。そうすれば、我々はこの苦難から解放される。君達がこの私の作戦が上手くいくことを祈ってるよ。」
と、ラウナンは指令を出す。
ラウナンにとっては、これは成功する作戦であり、失敗すれば、部下がその能力がないということを証明するものであり、自身には何の責任もないのだから―…。
実際は、ラウナンも完璧な人間ではないはずなのに、自身が完璧だと思い込んでいるからこそ、このようなことを平然と思うことができるのだ。
そうだと考えると、ラウナンという存在は、ある概念に捕らわれてしまった人間であることに間違いはない。
国内担当首席のフィードは、
(ラウナン様の命令に逆らう気はないが、明らかに今のラウナン様はおかしな状態だ。今回の作戦で、リース王国軍の中にいる騎士を潰すのは合理的な作戦であるが、彼らは天成獣の宿っている武器を扱っている可能性も十分に考えられるから、シエルマスでもそれなりの数がいる。さらに、騎士の中に二人、ミラング共和国軍の兵士を千人以上殺している輩がいるだろうし、そいつを相手にするのは一般のシエルマスの工作員だと、何の意味もなさない。さらに、オットルー領でイルターシャ率いるミラング共和国軍が降参して、ラルネにも同行している。そんな奴らを相手にシエルマスのラウナン様以外のすべてを持ち込んで勝てる可能性はかなり低い。それに―…、イルターシャはかなり不気味。不測の事態が起きるのは避けられないか。)
と、心の中で懸念する。
フィードは、ラウナンより情報を持っているわけではないが、冷静に考えれば、ミラング共和国軍の今の不利な状況が簡単に解消されるかと問われれば、それはかなり難しいとしか言えない。
なぜなら、ミラング共和国軍を千人以上殺しており、さらに、シエルマスの工作員の中でもその騎士にいる場所へと派遣した者達はなぜか帰ってこないことが何度もあったのだ。ラウナンにはそのことは報告されているだろうし、そのことを知っているのならば、何もしないというのも一つの手だが、二人の騎士、アンバイドをどうにかしなければ、今回のリース王国との戦争で、ミラング共和国軍が勝つ可能性はかなり低い。今の現状から考えると、可能性はゼロに近いし、ゼロだと言ってもおかしくはない。限りなくゼロ。そんな感じだ。
ゆえに、フィードは、今回のラウナンの命令が成功する確率はかなり低いものであるし、運良く成功してもシエルマスの受ける被害は甚大なものであることに間違いない、と予測することができる。
だからこそ、本当はその作戦を採用すべきではないが、上の命令にはどんなものであったとしても絶対服従が決まり事としてなっている以上、馬鹿な命令であっても、不可能な命令であったとしても言われた通りに実行しないといけない。
それをしなかったことにより処分されることだって十分にあるのだから―…。自らの命すら失われていることすらあっても驚くべきことではないだろう。
そして、フィードがかなり懸念していることは、イルターシャの存在である。彼女のもとへと派遣されたシエルマスは帰ってくる者もいるが、どこかしらのタイミングで行方不明になったりすることがある。そこから推測できることは、イルターシャにシエルマスが見張っていることがバレて、殺されているのではないか。もしくは、イルターシャがシエルマスに見られたくないものが知られたので、それを見たシエルマスの工作員はイルターシャによって始末されている。
そう考えると、フィードの心の中で納得することもできるが、同時に、確実な証拠がない以上、ここでその可能性を話しても意味はない。
フィードが思っていることは、ラウナンもすでに考慮済みなのではないか、という考えがあるからだ。
「ああ、ラウナン様のために、リース王国の騎士など、捻りつぶしてやるわ!!!」
と、ドグラードが言う。
あまりにも短絡な言葉で、フィードは心の中で呆れるのだった。
それでも、感情を露わにするようなことをする気はなかった。
シエルマスに属する以上、感情をむき出しにすることはあまり宜しいとは言えないことであり、かつ、相手の隙を突いて暗殺行為をする以上、冷静沈着さが求められる。
そして、キールバは、大人しくしているが、完全にウキウキしており、フィードの気持ちなどに気づきそうもない感じだ。
ラウナンは、
「ドグラード…、冷静さを失わないことだ。リース王国の騎士はかなり強いことで有名で、少数精鋭の実力集団。油断すると足許を救われるぞ。」
と、言う。
ラウナンもリース王国の騎士団の実力が分かっていないわけではない。
リース王国の騎士団は、リース王国の中でも精鋭の方に部類されるほどの実力を有し、その騎士の中には天成獣の宿っている武器を扱える者たちがいたりして、彼らの実力はこういう戦闘で大いに発揮されることがあるし、そういうなりやすい。
そして、今回のミラング共和国とリース王国の戦争では、すでに二人の騎士が、ミラング共和国軍の兵士を千人以上、殺しているほどの戦果を出しているのだから―…。
その二人であるランシュとヒルバスに関しては、正確に言えば、元騎士団の騎士であり、今回の戦争において一時的に騎士団の騎士として復帰しているだけに過ぎない。ランシュは、王女の護衛騎士であるし、ヒルバスは宰相であるメタグニキアの私設部隊の所属する人間である。
そういう意味では、ランシュとヒルバスは、リース王国の騎士団の騎士よりも天成獣の宿っている武器を扱っての戦闘ではかなりの実力者ということになる。
「ああ、分かっています、ラウナン様。私もシエルマスの一員なのですから―…。」
と、ドグラードは返答する。
その返答を聞いて、ラウナンは安心して―…。
「指令を全うするように!!!」
と、ラウナンは言うと、どこかへと姿を消すのだった。
ラウナンが目指す場所は、エルゲルダのいる場所である。
そこ以外にはないのだから―…。
そんななか、ディキッドは、
「フィード、少し話したいことがある。一緒に来てくれるか。」
と、フィードを誘う。
「ああ。」
と、フィードは頷く。
ディキッドとフィードはどこかへと消えてしまうのだった。
「この二人が―…、珍しいな。」
と、ドグラードが言うと、キールバが、
「まあ、二人になるのは珍しいけど、僕としては楽しみなんだよねぇ~。リース王国の騎士団の騎士が僕たちの前で、成す術もなく殺されていくのを想像すると―…。」
と、言う。
その時の、キールバの表情は、まるで、獲物を見つけた猛禽類のような雰囲気をさせており、ドグラードからしてみれば、こいつはこういうやつだった、という感じで呆れながらも、少しだけ安心するのだった。
そのキールバの表情を見ながら、
(さて、リース王国の騎士団の騎士………どうやって捻りつぶしてやるか―………………。まあ、隙さえつけば、一瞬、我々、シエルマスの勝利で終わるだろうけど―…。)
と、心の中で思うのだった。
キールバからしてみれば、リース王国の騎士団の騎士がいくら強い存在であったとしても、真正面から戦う必要はないし、シエルマスはそんな真面目な戦い方をせず、相手の隙を突いて、相手側に何をさせているのかを理解させずに、混乱させている中で、壊滅させれば良いのだから―…。
いくら騎士であったとしても、隠密や暗殺系の訓練を日頃から積んでいるわけじゃないのだから―…。
そういう意味では、シエルマスの方が有利であると感じるのであった。
ドグラードとキールバもどこかへと向かうのであった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(255)~最終章 滅亡戦争(110)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
次回の投稿日は、2024年7月9日頃を予定しています。
では―…。