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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第36話-1 もう一人の自分

前回までのあらすじは、李章は心の中で消したはずのもう一人の人物に会う。心の中で―…。

第36話は分割していきます。内容が多いからです。

 「どうして、ここにいるのです。私は―…。」

と、李章は言う。

 李章はどうしてこの城の中、つまり、リースの城の自分の部屋にいる理由を考える。そう、昨日の第二回戦を思い出しながら―…。

 (私は―…、二回戦の最後の五試合目に参加して、戦いました。その時、何もできずに―…。)

と、李章が心の中で呟いた時に、気づく、

 (負けたんだ。相手のチームの人に蹴りを入れられて―…。)

と。

 そして、トントンと扉をノックする音がなる。それに、李章が気づく。

 (誰か来たのか。)

と、李章は自らの部屋の扉の外側いると思われる人物に対して、

 「あっ、はい。部屋に鍵はかかっていないので、ご自由にお入りください。」

と、言う。

 その言葉を聞いた李章の部屋の扉の外側にいると思われる人物は、何も言わずに李章の部屋に扉を開けて入ってきた。

 そして、

 「李章君、目、覚めたの?」

と、驚きながら言う。そう、これは瑠璃が言ったのである。

 李章は、部屋に入ってきた人物が瑠璃であることがわかった。そう、扉を開けて入ってきたときに―…。


 【第36話 もう一人の自分】


 「はい、目はさっき覚めました。」

と、李章は瑠璃の「目、覚めたの?」の質問に答える。

 そして、李章の方も瑠璃に質問する。

 「どうして瑠璃さんがここにくるのですか? 瑠璃さんは、まだ、一回戦の時の傷は完治していないのではないですか?」

と。

 「大丈夫だよ。私、昨日の朝にお医者さんが完治を言ってくれたよ。その時、まあ~、李章君はその場にいなかったし、知らなくても無理ないよ。だから、私の心配はしなくてもいいよ。それよりも今、李章君のほうが心配だよ。あんなひどい怪我をして試合に負けたんだから―…。」

と、瑠璃は言う。最後のほうは、より不安になってか、声にならない感じであった。ゆえに、最後のほうが李章にほとんど薄らにしか聞こえなかった。

 そして、瑠璃は思い出す。昨日のことを―…。


 ここで時は、昨日の午後から夕方の間の時間に遡る。

 瑠璃の部屋にノックの音がなる。

 「あっ、はい。どうぞお入りください。」

と、瑠璃が言う。

 そうすると、

 「はい、失礼いたします。」

と、言って、その言葉を言った人物が瑠璃の部屋の扉を開けて入ってきた。

 瑠璃もその声を聞いてわかっていた。セルティーのメイドであるニーグであることを―…。

 そして、瑠璃の部屋に入ってきたのは、ニーグだけでなく、ロメもそこにはいた。

 「瑠璃様。ご加減はどうでしょうか。体に痛みや気分が悪いなどの症状はありませんか。」

と、今度はロメが言う。

 それに対して瑠璃は、

 「はい!! 大丈夫です。」

と、素直に答える。

 それを聞いて安心したのかロメは、

 「では、私から瑠璃様にお付き合いしていただきたいことがあります。」

と、言う。

 それに瑠璃が、

 「それは何ですか?」

と、言う。

 「ええ、それは―…、瑠璃様、そろそろ皆さまが御戻りになる頃でしょう。私たちと一緒に城の門でお迎えにいきませんか。瑠璃様も、ここお怪我のせいでしばらくずっと部屋にいることしかできなかったですし、それに、気分転換も兼ねまして―…。」

と、ロメが言う。

 「うん、いいですね。行きましょう。」

と、瑠璃は元気に言う。

 瑠璃は、ここ一週間ずっと、自分の部屋を出ることができなかった。それは、一週間前の第一回戦の戦いで大量出血にともなって倒れたためであった。そのときは、礼奈の持っている青の水晶で何とか傷を塞ぎ、回復させることに成功した。しかし、すべてを回復したわけではない。ダメージはすべて回復したとはいっても、体調が完全ではなく、痛みはないが、体を動かすのもここ数日は大変でぐらつくことが多く、支えてもらってやっとであった。そして、一昨日あたりにやっと、自分である程度歩けるようになったのである。ゆえに、同じに部屋に何日間もいたため、外が恋しくなってしまっていたのだ。変わらない景色のせいで、気持ち的には少し沈んでいたのだ。だから、ロメの提案は瑠璃にとっては、一週間ぶりの外に出ることが、気持ちにとっても晴れやかにさせていたのだ。今日のゲームも一緒にやったが、やっぱり外に出るということよりも気持ち的に沈みを完全に解消できるものではなかった。

 そして、瑠璃、ニーグ、ロメは、瑠璃の部屋から出て、リースの城の門へと向かって行った。このとき、ニーグとロメは、瑠璃が歩く途中でふらついたとしても瑠璃を支えられるように、瑠璃の左右両側にそれぞれ立って歩いていた。


 瑠璃、ニーグ、ロメがリースの城の門の前へと着いた。

 ここは、リースの城の正門である。リースの城の門は、四つあるが、一番大きな門はここで、今日、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドはここから出て、競技場へと向かったのである。

 ゆえに、このリースの城の正門で待っていれば、李章、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドがこの門からリースの城の中へと帰ってくるのである。

 そして、城の門が開く。

 瑠璃は、

 (みんな、今日も勝利したかなぁ~。みんなが試合に勝っているといいが…。)

と、心の中で呟く。瑠璃は第二回戦に勝っているかという期待と負けてしまったのではないかという不安の双方の気持ちが均衡していて、ドキドキしていた。

 そして、リースの城の正門がすべて開かれた。

 瑠璃は驚く。いや、驚かずにはいられなかったのだ。

 アンバイドに抱えられている李章を見て―…。

 (李章君!!!)

と、瑠璃は心の中で声を荒げる。

 瑠璃にとっては、想定外であった。李章が負けるとは思えなかったのだ。瑠璃自身もアンバイドが李章に指摘したように、天成獣の力を半分しか発揮させていないことと、天成獣の力の宿った武器を使用していないことを―…。それでも、瑠璃にとって李章は、蹴りだけでも強く、相手を圧倒するのだと思っていた。

 そんな瑠璃の抱いていた理想は、打ち砕かれたのだ。

 そんな現実は有り得ないという、今存在しない希望が存在することを信じて、

 「李章君!! どうして、李章君が―…。」

と、瑠璃は動揺しながら言う。

 その動揺ぶりは、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドやメイドの二人から見てもわかることであった。

 「落ち着け瑠璃!!」

と、少し強めの声でアンバイドが言う。

 アンバイドもあまり瑠璃にかまっている余裕はなく、一刻も早く李章をリースの城の中にいる医者のところへと運ばなければならなかった。

 「話しなら李章を医者のところへ運んだ後でゆっくりとしてやる。だから、今は落ち着かなくても、落ち着け。そして、今、李章を助けたいと思うのならば―…。」

と、アンバイドは、意思の強さを感じさせるように言う。最後には、アンバイドは言葉しなかったが、瑠璃に向けて、今の現状で大事なことは何かわかっているよな、という意図を、雰囲気で伝えようとしたのだ。

 それがわかったのか、瑠璃は、

 「はい。ただし、李章君を運び終えたら、李章君に何が起こったのかすべて話してください。」

と、返事をし、言葉を進めるとともに、強い覚悟をもった人のような強い口調のように言う。

 「そうか。」

と、アンバイドは言って、李章を抱えながら、医者のいる所へと向かった。

 そう、瑠璃もアンバイドの後をついていった。


 リースの城の中の医務室にちょうど医者がいたので、アンバイドは、そこに李章を預けることができたのである。

 そして、医務室の近くで、瑠璃、礼奈、クローナ、セルティー、アンバイドがいる。

 一方で、ニーグとロメの二人は、食事を食堂に運ぶための要員として、李章が医務室へと入れられた後すぐに、そこへ向かって行った。

 「李章君は、どうしてあんな状態になったのですか?」

と、瑠璃はアンバイドに対して尋ねる。李章がどうして気絶するような怪我を負ったのか、についてである。

 「それは―…。」

と、アンバイドは少しの間考える。どう説明すればいいのかを探りながら―…。アンバイドにはわかっていた。一歩間違えれば、瑠璃も李章のように暴走してしまうのではないかとアンバイドの勘ではあるが、そう思われたのだ。

 決心したアンバイドは、

 「李章は―…、五試合目に出て、動揺していたのか―…、相手の攻撃を二回受けて、負けた。それも相手の蹴り二発で―…。」

と、ありのままの事実を言った。言わざるをえなかった。瑠璃に嘘をついたとしても、いつか必ず瑠璃に李章の負けた真実がバレてしまう可能性が高いので、そのときのことを考えたら、今のほうが瑠璃の暴走の可能性を低くすることができるのではないかと思ったからだ。

 瑠璃は、アンバイドの言葉を聞いて考える。どうして、李章が動揺したのか―…。そのことに関しては、結論には至らないが、あることには気づいた。

 (たぶん―…、私が一回戦で、大量の血が出て倒れたことを心配したのかもしれない。)

と。

 瑠璃が今、心の中で呟いたことは事実である。そして、

 (たぶん、誰かを守れなかったことに対して―…、かもしれない。)

と、答えに至る。

 そのため、

 「たぶん、李章君は誰かを守れなかったことに対して、後悔しているのかもしれない。それは、今回は私だったのかも―…。」

と、瑠璃は少し気を落としながら言った。

 しかし、李章が瑠璃を守れなかったことに対する動揺の気持ちと、瑠璃の李章が倒されたことに対する動揺は違っていた。

 李章は、守れなかったことに対する自らの無力さであるが、瑠璃は、李章の守ろうとして勝手に傷ついていることに対して、頭にしかこなかった。

 そう、瑠璃は李章に守られるための保護対象でしかないという気持ちを李章が抱いていることに対して、瑠璃は怒っていたのだ。ふざけるな、という気持ちを大きくして―…。

 「もしも、李章君が目を覚ましたら私を呼んでくれるかな。私、李章君に一番言ってやりたい言葉あるんだ。」

と、瑠璃は言う。その表情は、とてつもない怒りを感じさせるものであった。その表情に、アンバイドは、瑠璃が暴走しないことを祈るしかなかったという―…。


 そして、時は李章の部屋に李章と瑠璃がいる時に戻る。

 瑠璃は、今日、李章に対して怒ろうとした。

 しかし、

 「ごめんなさい。」

と、李章が瑠璃に向けて謝ったのだ。頭を瑠璃に向けて下げながら―…。

 その李章の行動のために、瑠璃は、昨日から抱いて怒りがどこかへと消えてしまったかのように怒れなくなってしまったし、そのタイミングを逃してしまったのだ。この場のこの時では―…。

 そのためか、瑠璃は、

 「李章君だって調子が良くない時だってあるよ。しかし、それでも仲間が真剣に戦っているのに、李章君だけが動揺したり、試合とは関係のないことを考えるのはダメだよ。」

と、優しい口調に近い感じで、瑠璃は説教のようなことを言った。それは、李章が試合に集中できるようにすることと、仲間に頼ってもいいし、李章自身が守られてもいいということを気持ちの中に含めて―…。さらに、李章君に守られるだけではないという気持ちも込めて―…。

 李章は、下げている頭を少し上げて、さらに下げ、

 「すみません。」

と、申し訳なさそうにし、

 「しかし、私は―……。」

と、言った。

 少し間を李章は、あける。そのとき、瑠璃は何を李章が言うのかを待っていた。

 そして、李章は、

 「もう負けることはできません。私は皆さんを守ります。」

と、言う。

 「李章君?」

と、首をかしげるように瑠璃はそれに疑問を思うように言うが、李章が言おうとしていることを理解した。

 瑠璃が感じていた李章は、瑠璃もしくは礼奈のことを保護対象としか見ていないことを―…。ともに戦う仲間としては、今現在において見ていないということを―…。

 ゆえに、瑠璃は再度怒りの感情が沸々と湧き上がってくるのである。瑠璃はおでこに、怒りのマークを浮かべながら―…。

 そして、瑠璃は、李章に向かってきて、李章に対して頭突きを一発喰らわせた。

 瑠璃による頭突きは、李章の頭にもろに喰らったのである。

 「痛ぁ!!」

と、李章はその頭突き攻撃による頭部のダメージの衝撃に対して、声をあげてしまう。

 そして、頭突きの衝撃による痛みが残りながらも李章は、

 「頭をぶつけてこないでください。瑠璃さん。」

と、頭突きをしてきた瑠璃に向かって注意する。

 しかし、その言葉は瑠璃に届くはずもなかった。

 瑠璃は、すでに、李章に対して最大の怒りしか感じていなかった。そして、李章が瑠璃の頭突き攻撃を受けるのは、当たり前のことであり、それを受けたとしてもその怒りは治まるものではなかった。

 瑠璃は、李章に向けたい自身の感情を爆発させて、

 「ふざけんな!! 自分のことぐらい自分で守れる!!! だから、二度とこんなことを言うな!!!! それに、一回や二回守れないぐらいで、そのことを引きずって試合に負ける人なんかに守られたくない!!!!!」

と、言う。その瑠璃の大声は、隣の部屋にでも聞えるのではないかぐらいのものであった。それほど、瑠璃の感情を大きくなっていて、体や心から決壊してしまうのではないかと思われるほどであったのだ。

 「瑠璃さん。」

と、李章はただそのことを言うことしかできなかった。

 そして、感情を爆発させて、冷静になったのか瑠璃は、

 「李章君。少し感情的になってしまってごめん。」

と、申し訳なさように言う。

 申し訳なさそうにしていた瑠璃に対して、李章は、

 「悪いのは私です。瑠璃さんの言っていることはわかります。今、こんなこと言うのはおこがましいですが―…。今は、私を一人してくれませんか。少し考えたいことがありますので―…。」

と、申し訳なさそうに言いながら、瑠璃に今、自らの部屋を出ていってほしいということを告げた。

 このことを理解した瑠璃は、その瞬間において怒りを心の中で見せていたが、冷静になったのか、

 「うん、わかった。とにかく無理だけはしないでほしい。体調が悪くなったりしたら、呼んで。」

と、瑠璃は心配しながら言うのであった。李章が怪我人であり、たとえ頭にくることを言ったとしても、もう攻撃的なことはするべきではないと思ったからだ。

 「はい。」

と、李章は冷静に答えた。

 そして、瑠璃は李章の部屋から出ていった。

 その扉の音が閉まるのを聞いて、李章は心の中で本当の自分の気持ちを呟く、

 (すみません、瑠璃さん。私はあなたのその言葉は無視させていただきます。決して、瑠璃さんが嫌いというわけではなく、…その…まあ、そういうことだから、私は瑠璃さんやみんなを守らないといけません。あいつが心の中で追い払うことができていないとわかった以上―…。あいつは自分以外のものに対し、まるで過去を思い出としか思っていない。それも今ここに存在しない過去の思い出として、ですが―…。そのために、大切な人を殺しかねません。だから、あいつを出さないためにも、もう、みんなが傷付くことがないようにするしかないのです。


            ()()()()()()()()()()()()()()()()


。)

と。


第36話-2 もう一人の自分 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。

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