第3話 襲撃
前回までのあらすじ、襲撃したゴーレを倒し、天成獣の意思を宿した武器を瑠璃、李章、礼奈は選んだのであった。
ランシュは通信機をポケットから取り出した。
それを起動させベルグへと連絡をとる。
「あの魔女がすでに瑠璃、李章、礼奈と接触していた」
と、ランシュが言うと、
「ふん。そうか。魔術師ローがもう接触に成功していたとは―…。あの不死の魔女が―…」
と、ベルグは答える。
そして、ベルグはランシュに対して、
「君の好きなようにやりなさい。ただし、基本は現実世界からやってきた三人を追うこと。それを基本路線にしてほしい」
と。
ランシュは、
「はい、わかった」
と、言った。
そして、通信機はその機能を停止し、ランシュはそれをポケット中へとしまった。
【第3話 襲撃】
一週間に及ぶ魔術師ローによる修行を終えた後のことであった。
「ふむ、だいぶ天成獣の力をうまく借りて戦えるようになったのう。これだけできれば、後は実際に相手と戦っていけば、うまくベルグを倒せるまでには成長できるじゃろう」
と、ローが瑠璃、李章、礼奈に対して、さも納得といった雰囲気で言った。
瑠璃は、一週間の修行がかなりハードに近かったことを思うと、やっと終わったと思っていた。
李章は、何とか戦い方を覚えることと、武器を携帯しても普段の体術をおこなっているときの動きができるようになった。それは李章にとって、自らの体術のみで戦うことがこの異世界でもできるという強い思いを確認させた。
(今は、瑠璃さんや山梨さんを守るために、彼女たちがなるべく戦うということがないように―…)
という気持ちを李章は抱いていた。
だが、同時に李章は瑠璃、礼奈が戦いたいと思えば、自分が邪魔をしないということを付け加えて―…。
礼奈は、天成獣の力を借りた戦い方と、今、自分がすべきことを理解し、どうすればいいのかを改めて心の中で確認をした。
ローはさらに言う。
「それじゃ、瑠璃、李章、礼奈に渡しておこう。それぞれ水晶を一つずつの~う」
と。
ローは、瑠璃には赤の、李章には緑の、礼奈には青の水晶を渡した。
「水晶の能力に関しては、ある程度説明したし、後は実戦で使っていくのが最も水晶の能力を使いこなすのには良い実践方法じゃ。人によってどう使っていくかは異なってしまうものじゃからの~う」
と、ローは言った。
「では、瑠璃、李章、礼奈にはこの領地、いやこの国の首都であるリースに向かってもらう。そこに行けば、何か重要な情報が入るかもしれない」
と、ローの言葉に対して、
「ローさん、リースに行くにはどっちの方向に行けばいいの?」
と、瑠璃が尋ねる。
ローは考えながら、
「リースへの行き方の~う……………。う~~~ん。う~~~~~~~~ん。う~~~~~~~~~~~~~~ん」
と。
ローは唸る。
それは、どうやってリースへ行けばいいか忘れてしまったのだ。実際に、行き方について本当は知っているだけど、思い出せないのだ。
ローは心の中で、
(あれ、リースへの行き方…行き方……。あれ、思い出せぬぞ。あれ、行ったことあるのに? あれ? あれれ? …………どうしよう。リースの行き方を忘れてもうた。ここは致し方ない)
と、覚悟決め、
「リースへの行き方を忘れてしまったようじゃ。すまぬ」
と、正直にリースに行き方を忘れしまったことを瑠璃、李章、礼奈に自白した。
瑠璃、李章、礼奈はただ呆れるしかなかった。
((どうやって行けばいいの――――。))(どうやって行けばいいのですか―。)
と、今の心の中の言葉のように、瑠璃、李章、礼奈の心の中の気持ちが表れていた。
「まあ~、一応は湖の周囲の森さえ抜ければ、何とか村には着くことじゃろう。では、儂は別の方向からベルグについて情報収集するので、後は―…」
と、ローは言った。
そして、一瞬のうちにどこかへと消えていった。
まさに、瞬間移動したと瑠璃、李章、礼奈に思わせたことであろう。
◆◆◆
それから、しばらく経った。
瑠璃、李章、礼奈は湖の周囲の近くにあった、ある程度舗装された道を進んでいくことにした。
◆◆◆
瑠璃、李章、礼奈は舗装された道を進んでいく。
その道の周囲は森で覆われていた。
彼ら三人の姿をこっそりと眺める者たちがいた。
「なあ~。グィーク。ランシュ様が言っていた瑠璃、李章、礼奈はあいつらのことだろうぜ。映し出されたものから見た感じだと―…」
と、ある人物が言う。
グィークは、
「ああ~、いるぜソルボ。あいつらの近くにはゴーレを倒した老婆の魔術師はいないみたいだ」
と言う。
ある人物、ソルボは、
「ランシュ様、そしてうちのボスのために――…」
と、言った。
グィークとソルボは、ランシュに下されたベルグからの命を果たし、手柄を自慢するがために瑠璃、李章、礼奈を後ろから奇襲する。それも素早い動きで―…。
◆◆◆
それを水晶の反応で気づいたのは李章だった。
李章は、素早く相手がどこから攻めてくるのかを察知し、左足を軸として右足をあげる回し蹴りで対応する。
ソルボは、左足をあげ、攻撃態勢をとり、李章からの回し蹴りに対応する。
ソルボと李章のそれぞれの蹴りは、衝突する。
李章は、奇襲したことを瑠璃、礼奈に対して声を大きくて、切迫したような感じで伝える。
だが、
「遅いぜ、ガキ」
と、ソルボが言った。
李章はその一瞬の隙によって、グィークによって李章の顔面に蹴りを入れられる。李章の左頬にグィークの右足の蹴りが決まる。
「ぐっ!!!」
と、李章は声をだす。
その間に瑠璃は、仕込み杖の水晶玉をグィークとソルボに向けて、
「征け」
と、水晶玉から雷を出す。
その雷はグィークとソルボの方へと向かっていく。李章はグィークとソルボが瑠璃の雷の攻撃に気づいたそっちを向くというわずかの隙にそこを抜けだした。
そして、李章は瑠璃と礼奈のいる方へと向かっていった。
グィークとソルボも瑠璃の雷に気づき、回避行動をとった。そして、瑠璃の雷攻撃は誰にあたることもなかった。
◆◆◆
そして、グィーク、ソルボと、瑠璃、李章、礼奈が対面する位置となる。
グィークが最初に動く。
瑠璃、李章、礼奈がいる位置に向かって―…。
それに対して、李章は構える。
瑠璃、李章、礼奈はグィークの動きを注意を払った。
だが、それが一人の動きを見逃すこととなった。
李章は水晶の能力で気づく。
ソルボが李章より後ろにいる瑠璃に対して攻撃を仕掛けようとして向かっていくということに―…。
「!!!」
と、李章は一瞬、動揺に近い感情抱くが、すぐに冷静さを取り戻し、瑠璃の方へと向かおうと決意しかける。
しかし、李章は今、向かってくるグィークから注視することから離れることはできない。
瑠璃の方へと向かえば、李章がたどり着く前に瑠璃も李章も相手の攻撃を受けてしまう。
もし、李章がグィークの攻撃を止めて、彼を倒すことに成功しても、瑠璃がソルボの攻撃にさらされる可能性が高い。故に、李章はどうしようもできない状況だった。
だが、その懸念はしても意味がなかった。
ソルボは瑠璃目掛けて攻撃しようとしたが、瑠璃はそれに気づいており、水晶玉から球体を放った。
その球体は、ソルボに向かっていった。そして、ソルボの目の前で止まった。
「?」
と、ソルボは疑問に思った。
(何だ。この球体は?)
と、思っている間に、球体は雷を放った。
ソルボ目掛けて―…。
球体から放たれた雷は、ソルボにあたった。
ソルボは、
「がああああああああああああああああああああ―――――――――――――――――」
と言いながら、感電した。
そして、叫んでしまった。
球体による雷の攻撃が止むと、体が焦げた状態になり、ソルボは地面に倒れた。
ソルボは感電死しない程度にされた瑠璃の雷の攻撃によって敗北したのである。
◆◆◆
一方、ソルボが倒されたのを見たグィークは、李章への攻撃をおこなう直前、それを止めた。
そして、素早く方向を変えた。今度は李章よりも弱そうな礼奈を狙いを定めた。
グィークやソルボは戦いの中で、瑠璃や礼奈という弱そうに見えるほうを狙うのが効率的であることを戦闘経験によって知っていた。
そして、ソルボは瑠璃に倒された。
そのことから、グィークは瑠璃に今すぐ攻撃しにいくのは愚策と考えた。雷で攻撃された場合、ソルボの二の舞になると判断してのことだった。
グィークから見れば、今何もしていない礼奈は、戦うことができない弱者であり、三人の中で最も弱いと結論を下した。故に、礼奈をターゲットにした。
そして、グィークは礼奈の方へと向かって行こうとした。そこで、グィークの右足がツルッと滑ったのである。
グィークの体は後ろへと、背中が地面につくように滑り、転んでいく。
(氷!! なんでこんなところに!!!)
と、グィークが思っていると、李章がすでに攻撃態勢に入っていた。
李章の右回し蹴りがグィークにきまる。そして、グィークの体は、飛ばされていき、木のところに衝突するところまで―…。
「ガッァ!!!」
と、木の衝突のせいで、グィークは口から息を無理に吐き出され、地面へと体がなだれおちていった。
グィークは気絶した。
こうして、瑠璃、李章、礼奈は、グィークとソルボを倒すことに成功した。ちなみ、なぜ氷がグィークの滑る位置にあったのか。それは、礼奈が天成獣の力を借りて、作っていたものである。
礼奈は、ソルボとグィークが奇襲してきたときに自分が真っ先に狙われるのはすでにわかっていた。
だから、どこかで、相手の動きを止める必要性があり、李章と瑠璃が戦っている最中に、仕掛けておいたのだ。礼奈に向かってきたときに確実に自分でも倒すことが可能になる状態にするために―…。
ソルボは瑠璃によって礼奈が何もすることなく倒され、グィークは李章と交戦していたので、礼奈に矛先を向かうときの最初から数歩まで位置を予測してそこに氷を仕掛けていた。味方が滑りにくい状態にして。相手踏み込んできたら氷が厚くなるように―…。
◆◆◆
倒れたソルボとグィークを縄で縛って、しばらくすれば解除可能な状態にして―…。
そして、ソルボの方は、礼奈が一日かけて回復するように設定した青の水晶から作った回復サークルの中に入れるのだった。
そして、それは、水晶の支配からソルボたちが離れたとしても、自動的回復するようにして―…。
「一体、彼らは何者なのでしょうか? 気絶されては聞きようがないです。もし、目を覚まされたらまた襲撃されかねません。だから、ここはこれぐらいにしてここから離れましょう」
と、李章が言うと、瑠璃と礼奈はうんと頷き、そこから離れて村を目指した。
◆◆◆
とある場所。
瑠璃、李章、礼奈がいた場所から近くの村。
時は夕刻。領主の館。館にして防御壁がしっかりしており、ブロックを積み上げて高くしていた。その館の中のある部屋に二人の人物がいた。
一人は、ソルボとグィークが瑠璃、李章、礼奈たちによってやられた場面を影からこっそりと見ていたのである。瑠璃、李章、礼奈に気づかれることなく―…。
もう一人は、玉座のようなものに腰を下ろして座り、悠然と構えていた。
「ソルボとグィークが瑠璃、李章、礼奈にやられました」
と、玉座のようなものに座っている人物へ自らが見た状況を報告する。
「そうか、レクンド。で、俺の部下を倒したそいつらは今どこへ向かっているのだ」
と、玉座のようなものに座っている人物が問いかける。
それに二人の人物の一人で、玉座のようなものに座っていないレクンドは、
「今、こちらに向かっています」
と、答える。
玉座のようなもの座っている人物は、ふ~んと考えて、結論出して、
「そうか、なら―…、ここで迎え討とう。ランシュ様の命を果たすために―…」
と言い、レクンドにそのための準備を促した。
◆◆◆
以後、レクンドはすぐに瑠璃、李章、礼奈を倒すための準備を館の中で進めていった。
そして、彼は同じ仲間であるシークドという人物にこう指示した。
「シークド。しばらく外を監視してくれないか。そして、シークドもみた瑠璃、李章、礼奈の姿を見つけ次第、この村へ入れ、この館へと招いてくれ」
「そうか。わかった」
と、シークドがレクンドの頼みに頷いた。
◆◆◆
一方、玉座に座っていた人物は、自らの心が喜びとチャンスの到来という期待に胸を膨らませていた。
「瑠璃、李章、礼奈が私が領主する村に入ってくる。これは千載一遇の機会だ。これは私の手柄にしてやる。この私の手で―――――……」
と、玉座に座っていた人物は言った。
高笑いを含めながら―…。
◆◆◆
時は夕刻を過ぎ、夜となってほんの少しの時が経った頃。
瑠璃、李章、礼奈は歩き続けていた。相手の襲撃が今日の日が昇っている時間にあったので、なるべく彼らから離れるために―…。
そして、瑠璃、李章、礼奈は、森を抜けて見た。彼女ら三人の目の前には集落があった。それは、村といわれる規模ほどのものであった。
「村」
と、瑠璃が言う。
李章も礼奈も目の前に村があるというのを見て、安堵した。
それは、今日はもうどこかで野宿しなくてもいい、という気持ちが出ていた。瑠璃、李章、礼奈は、野宿するのに必要な道具を持っていなかった。ローがそれを渡すことなく情報収集としてどっかへ行ってしまったためだ。そして、瑠璃、李章、礼奈も野宿するということまで頭が回っていなかったのである。
ちなみに、ローがテントと生活必要な物を別の空間から出してきて、そこに一週間、修行の間は泊まっていたのだ。
李章はある懸念を抱く、
(仮に泊まることができたとしても、お金に関してはどうなんだろう。この世界の通貨がどうなっているのかはわかっていない)
と、思っていた。
実際、瑠璃、李章、礼奈は、ローから当面の行動のために必要なお金を貰ってはいたが、この世界における物の値段が一般的にどれくらいなのか、宿泊費が一泊どれくらいなのか、宿泊施設の質はどのようになっているのかは一切、教えてもらえなかった。
修行の方がかなり厳しいものであったから、余計にそのことに関して聞くということができなかったし、頭の片隅からも出てこなかった。
ゆえに、聞いておけば良かったと李章は後悔する。
そのなか、瑠璃が見つけて言う。
「村の中央に城がある」
と。
礼奈と李章は瑠璃は見つけた城を見る。
このとき、瑠璃は仕込み杖にある水晶玉を光らせながら中央に見える城を映している。
そして、瑠璃、李章、礼奈は村へと夜なので、安全を確認しながら向かって行った。
◆◆◆
瑠璃が仕込み杖の水晶玉を光らせた時、領主の館から双眼鏡を使って、シークドが見つけた。
瑠璃、李章、礼奈の三人が玉座に座っている人物が領主をつとめている村へ、と。
「来たな。では始めるとするか」
と、レクンドの頼みを実行に移すのであった。
【第3話 Fin】
次回、村の領主の館へと入って、対決!?
誤字および脱字に関しては、気づく範囲内で修正していくと思います。
2022年10月16日 以下などを修正および加筆します。
①「それは李章にとって、強い思いを確認させた」を「それは李章にとって、自らの体術のみで戦うことがこの異世界でもできるという強い思いを確認させた」に修正。
②「彼女たちをなるべく戦わせないために」を「彼女たちがなるべく戦うということがないように―…」に修正。
③「今が自分がすべきことを理解し」を「今、自分がすべきことを理解し」に修正。
④「後は実戦でしようしていくのが最も水晶の能力を使いこなすのにはよい。人によってどう使っていくか異なるものでのう~」を「後は実戦で使っていくのが最も水晶の能力を使いこなすのには良い実践方法じゃ。人によってどう使っていくかは異なってしまうものじゃからの~う」に修正。
⑤「この領地の首都であるリースに向かってもらう」を「この領地、いやこの国の首都であるリースに向かってもらう」に修正。
⑥「ここはいたしかたない」を「ここは致し方ない」に修正。
⑦「瑠璃、李章、礼奈の心の中の気持ちが表れていた」を「今の心の中の言葉のように、瑠璃、李章、礼奈の心の中の気持ちが表れていた」に修正。
⑧「李章は、奇襲したことを瑠璃、礼奈に声を大きくした、切迫したような感じで伝える」を「李章は、奇襲したことを瑠璃、礼奈に対して声を大きくて、切迫したような感じで伝える」に修正。
⑨「李章は思う」を「李章は一瞬、動揺に近い感情抱くが、すぐに冷静さを取り戻し、瑠璃の方へと向かおうと決意しかける」に修正。
⑩「そして、今度は李章よりも弱そうな礼奈を狙いにしたのだ」を「今度は李章よりも弱そうな礼奈を狙いを定めた」に修正。
⑪「グィークは口から息を無理だされ、地面へと体がなだれおちていった」を「グィークは口から息を無理に吐き出され、地面へと体がなだれおちていった」に修正。
⑫「礼奈が一日かけて設定した回復するように設定した青の水晶から作った回復サークルをあてていた」を「礼奈が一日かけて回復するように設定した青の水晶から作った回復サークルの中に入れるのだった」に修正。
⑬「水晶の支配から離れて、自動的回復するようにして―」を「水晶の支配からソルボたちが離れたとしても、自動的回復するようにして―…」に修正。
⑭「気絶されて聞きようにないです」を「気絶されては聞きようがないです」に修正。
⑮「俺の部下を倒したそいつら今どこへ向かっているのだ」を「俺の部下を倒したそいつらは今どこへ向かっているのだ」に修正。
⑯「ローが家を別の空間から出してきて、そこに一週間、修行の間は止まっていたという」を「ちなみに、ローがテントと生活必要な物を別の空間から出してきて、そこに一週間、修行の間は泊まっていたのだ」に修正。
⑰「そのなか、瑠璃が見つけて言う」の前に、
「実際、瑠璃、李章、礼奈は、ローから当面の行動のために必要なお金を貰ってはいたが、この世界における物の値段が一般的にどれくらいなのか、宿泊費が一泊どれくらいなのか、宿泊施設の質はどのようになっているのかは一切、教えてもらえなかった。
修行の方がかなり厳しいものであったから、余計にそのことに関して聞くということができなかったし、頭の片隅からも出てこなかった。
ゆえに、聞いておけば良かったと李章は後悔する」を加筆。