番外編 ミラング共和国滅亡物語(253)~最終章 滅亡戦争(108)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。
リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に
、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。
リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。
その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。
ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。
その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。
一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。
その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。
一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。
その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。
それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。
その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。
ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。
そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。
一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。その兵たちはアンバイドの実力の前に戦わず降参するのだった。
それが重要な問題となる。
ファルケンシュタイロはファロネンズをクローデル領に派遣し、マーゼルの真意を確かめ、ファロネンズの独断でマーゼルを始末するのだった。
そして、マーゼルが殺されたことを、マーゼルの重臣たちに見せしめ、完全服従を勝ち取る。
一方―…、ファウンデーション領(旧アルデルダ領)では―…、領都のミグリアドが包囲されるのだった。それを打開しようとして―…、シエルマスを投入し、リース王国軍の中央軍のトップを始末するのだった。
その後、クローデル領でも動きがあり、ミラング共和国軍とリース王国軍右軍の対決となるが、アンバイドの活躍により天成獣部隊のトップを始末し、かつ、撤退させることに成功して、クローデル領での勝利を得るのだった。
そして、オットルー領の方に向かって勝利したリース王国軍の左軍は交渉の場にいた。そこでは話し合いがおこなわれていたが、衝撃の事実が突きつけられるのだった。それは、ファウンデーション領を攻めていたファルアールト元帥が暗殺されるというものであったが、オットルー領の領主との話を終え、ミラング共和国の首都ラルネへと向かうのだった。
一方で、ファウンデーション領を攻めていたリース王国軍の中央軍は―…、ラウナンの策によりミグリアドから撤退しないといけなくなったが、その後、ミラング共和国が攻めてきたが、リーンウルネの影ながらの支えにより、勝利するのであった。
そして、舞台は最終決戦となろう場所、ミラング共和国の首都ラルネへと―…。
「ラウナン、貴様の言っていることは分からないでもないが、騎士団の方には、うちの兵士を千人以上をあっさりと殺すほどの実力がいるという報告があるぞ。シエルマスだけで大丈夫か。」
と。
ファルケンシュタイロからしてみれば、シエルマスをそこに集中させたとしても、その騎士団のいる場所には、ミラング共和国軍を緒戦で、千人以上を一気に始末した騎士が二人いたりする。
その二人の実力から考えて、天成獣の宿っている武器を扱っているのは間違いないことだし、さらに、その実力はアンバイドにも劣らないのではないか。
そして、それだけの実力があるということは、シエルマスが束になったとしても、シエルマスにかなり損害が出て、後々、大変なことになるのではないか。
そう考えると、ファルケンシュタイロは、ミラング共和国軍の兵士も派遣した方が良いのではないか、と思えてしまうのだ。
ファルケンシュタイロの考えは、かなり用心深く、慎重なものであるが、それをやりすぎてやり過ぎないということはない。騎士団のいる場所には、ランシュとヒルバスがいるのだから―…。
だけど、ここで重要なのは、ランシュはラルネの攻防戦の時は自由行動をしているということだ。その自由行動は、一人で復讐対象のエルゲルダのもとへと向かい、エルゲルダに対して復讐を完遂することだ。そうである以上、ランシュは騎士団のいる場所にはいないことになる。それを知っているのは、一部の人間であり、本当の目的を知っているのはヒルバスだけだ。
つまり、ミラング共和国軍の千人以上の兵士を一気に始末することができる騎士の一人が、騎士団のいる場所にいないということになる。そのことに、この部屋にいる者たちは知らないし、知ることがあったとしても、その情報に信憑性はかなり低いものである。
要は、人の予測している範囲というのは確実に有限であり、どこかしら抜けている予想が存在するということである。そうである以上、完璧な作戦はこの世に、人という生物がすることはできやしないということだ。それを避けることはできない。
そして、ファルケンシュタイロの言葉を聞いたラウナンは、
(………つまらないことを―…。)
と、心の中で思い、すぐに、ファルケンシュタイロのいる場所へと向かう。
ファルケンシュタイロは椅子に座っており、その椅子の後ろへと周り、ファルケンシュタイロの首筋に短剣をつける。
僅かにでもファルケンシュタイロが動けば、短剣がファルケンシュタイロの首に刺さる具合にして―…。
「!!!」
ファルケンシュタイロはそのことに気づくが、対処する暇はなかった。
隙を見せないようにしていたが、それでも、ラウナンの動きには対処できなかった。そういう意味で、ラウナンとファルケンシュタイロの間には、明確な実力差があり、天成獣の宿っている武器での戦いの中で、ファルケンシュタイロがラウナンよりも強くならないようにしていたことが活きたのだ。
ラウナンは自分よりも強い存在をミラング共和国内につくらないようにしてきた。
それは、ラウナンよりも上の実力の者がいれば、返って、ラウナンの思い通りに掌の上で踊らせるということができなくなるし、かつ、そいつがラウナンに反抗してこないようにするために、媚びないといけなくなるからだ。そんな存在をラウナンが心の底から許せるわけがない。
ラウナンは、自分が裏でいながら、表立っているトップに人物を操り、自らの掌の上で踊らせ、問題が起きれば、その表立っている奴に責任を負わせ、自分は新たな傀儡を利用して、永遠に自分が権力者であり、一番でいたいと思っているのだから―…。自らの失敗に対する責任を一切、とる気はない。
なぜなら、シエルマスという組織は、失敗すれば、自らの命を奪われるように危機になる可能性があり、どんな優秀な人物でも一つの任務の失敗のせいで粛清された場面は何度も見てきたのだから、そうならないようにすることがベストだと判断するし、そのことによって出世したのだから、その成功体験は何においても、成功するための秘訣であり、絶対だと思ってしまうからだ。
この世に人が完璧だと思っている方法は、完全に完璧なことなどないのだから―…。
ラウナンは、ファルケンシュタイロに対して、いつでもお前を殺すことが可能だぞということを見せる。それはファルケンシュタイロだけではなく、クロニードルにもディマンドにも……である。
ファルケンシュタイロは焦りながらも、心持ちは、少しでも冷静であるように装おうとした。
だが、表情からすれば、完全に焦っているようにしか見えない。
(ラウナン―…。ここで俺を始末しても意味がないだろうに―…。)
と、ファルケンシュタイロは心の中で思う。
ファルケンシュタイロからしてみれば、今のミラング共和国の状況から考えて、ファルケンシュタイロを抹殺することは、ミラング共和国軍の要を失うに等しい。ミラング共和国軍の総指揮をとっているのは、ファルケンシュタイロであり、ミラング共和国軍の中にはファルケンシュタイロを敬愛するものだって多くいるし、そういう人物が腹心となっていたりするのだ。
そうだと考えると、ラウナンの今の選択は間違いとなるが、ラウナンに今のところ、ファルケンシュタイロを殺す気持ちは一切ない。
「私を反抗的な態度を見せない方が良い。」
と、ラウナンは言う。
お前らは、所詮、いつだって殺すことができるから、殺していないだけで、その気になればいつでも殺せるぞという、意味を含ませている。
それを特に示したいのは、クロニードルとディマンドに対して、である。
この二人は、天成獣の宿っている武器を扱えるわけでもなく、戦闘経験もあるわけでもなく、シエルマスに在籍した経験もない。政治屋であり、政治に必要なこと以外の経験はかなり不足しているだろ、ということだ。
実際、ディマンドは完全にそうであり、決して、政治に関しても優秀な人材ではないし、なのに、自分が優れた存在だと思っているし、絶望を叩きつけられても、自分は何も悪いことがないと思っているのだ。ただし、ディマンドは政治に関することに関しては、そのセンスが皆無であることに間違いないし、能力自体も高くはない。
だけど、それを認めてしまえば、兄との間の差を認めることになってしまい、自分の心が壊れてしまうので、そのようなことはしないし、できないのだ。
そして、自身が成長することを一切しないので、結局、止まったきりになっている。それと同時に、自身が成長したとしても、自分以外の人間が決して真面な評価をしてくれるとは限らない。ゆえに、人生というものは難しく、簡単に割り切って一つの事が原因だと判断することはできない。
だからこそ、人は悩み、考えるのであり、自らを見つめ直し、向き合うことができる。
ディマンドとクロニードルは、ラウナンの圧を感じながらも、それでも、ラウナンの恐ろしさの本体を理解することができなかった。
(……シエルマスは、何でも暴力に訴えるのか。呆れたものじゃ。だけど、あのラウナンに逆らったとしても得ではないな。)
と、クロニードルは心の中で思う。
今のラウナンに逆らったとしても意味がないことを理解することはできた。
戦闘的な勘はないであろうが、商人としての勘は少しだけではあるがあるようだ。
その商人としての勘を動員して、ここでラウナンに逆らっても、得はないだけでなく、損しかなく、未来がないと理解してしまうのだった。
そうであるからこそ、次の自分が言うべき言葉の重要性を理解する。
一方で、ディマンドは、
(チッ!!! シエルマスのくせしやがって!!! 裏でコソコソすることしか能のない奴が、馬鹿なことしてんじゃねぇ~ぞ!!! だけど、ラウナンの奴は、裏でかなりの政敵を殺しているという話だし―……………、クソッ、クソッ!!!)
と、心の中で悔しそうにする。
ディマンドは、ここで自分の権力を振りかざして、ラウナンに何、馬鹿なことをしようとしているんだ、という脅しをかけて、自分が上であることを示そうと考えたが、そうが通じないだろうということを今になって、理解してしまう。
ディマンドは、ラウナンのことを下に見ているが、実際は、ラウナンの方もディマンドのことを下に見ている。それは、能力がないのに、自分は優れていると思い、自慢しているのだ。
そう思うと、こんな馬鹿が身近にいるのだから、エルゲルダの後任にすることもできるだろうが、ディマンドはラウナンのことを甘く見ており、ミラング共和国のトップの地位である総統にすれば、暴走して、ラウナンの手を煩わせることになると分かっている。
そうであるからこそ、ディマンドを傀儡にすることをラウナンは考えていない。
いつでも始末できるし、してもおかしくないのだ。
そう思われていることをディマンドは理解していないし、気づきもしない。
要は、自分の力量というものを正確に把握できていないということなのだ、ディマンドは―…。
そして、クロニードルはディマンドがそのような能力が低いことを僅かにではあるが気づいているので、ディマンドに余計なことを言わせないようにするために、自分から言うのであった。
「ラウナン、分かった。お主の意見に裏切られてしまえば、儂らは簡単に負けてしまう。もしも、ミラング共和国を救うことができれば、シエルマスに関する予算をさらに増やすことと、リース王国を征服した暁には、そこをラウナンが好き勝手にできるようにしよう。」
と、クロニードルは言う。
クロニードルは、ラウナンがシエルマスの統領の地位には拘りがあるのは分かっているが、それ以外の表立っての権力や地位に就きたいとは思っていないことは分かっている。
そのような地位を与えるという報酬を言うべきではないこと、そして、ラウナンが裏で自由に何でもやれるようにする方が、ラウナンは喜ぶであろうと理解しているのだ。
ただ、金や報酬を渡せば良いというわけではない。大事なのは、相手が求めるものをしっかりと把握し、それを渡せるようにすることだ。
商人の家系であり、そういうことは分かっているのだろうか。商人の家系であっても、それが分からない人はいるので、商人としての才能がないわけではないと、クロニードルに関する人物評を判断することはできるであろう。
ラウナンの方は、ファルケンシュタイロから離れ、自分がいる場所へと素早く戻るのであった。
クロニードルやディマンドの目で追えないほどのスピードを見せることによって、二人がラウナンに逆らうことの無意味さを示すことができる。そうすれば、ラウナンの思い通りに動くしかないと思うはずだ。
「素晴らしい判断です、ディマンド様、クロニードル様。」
と、ラウナンは言う。
その言葉は、あくまでも、お前らが私に対してどういう立場にあるのか、理解しろよ。そうでなければ、お前らの命はない。そういうことを行動で教えるものだ。
それを理解できてしまうからこそ、これ以上、ラウナンに逆らうのが良くないと判断し、この場は膠着した状態となり、お開きすることになり、ラルネの攻防はラウナンとファルケンシュタイロの二人が主導になって進められることが確定したのだ。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(253)~最終章 滅亡戦争(108)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
では―…。