番外編 ミラング共和国滅亡物語(252)~最終章 滅亡戦争(107)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。
リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に
、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。
リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。
その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。
ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。
その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。
一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。
その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。
一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。
その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。
それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。
その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。
ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。
そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。
一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。その兵たちはアンバイドの実力の前に戦わず降参するのだった。
それが重要な問題となる。
ファルケンシュタイロはファロネンズをクローデル領に派遣し、マーゼルの真意を確かめ、ファロネンズの独断でマーゼルを始末するのだった。
そして、マーゼルが殺されたことを、マーゼルの重臣たちに見せしめ、完全服従を勝ち取る。
一方―…、ファウンデーション領(旧アルデルダ領)では―…、領都のミグリアドが包囲されるのだった。それを打開しようとして―…、シエルマスを投入し、リース王国軍の中央軍のトップを始末するのだった。
その後、クローデル領でも動きがあり、ミラング共和国軍とリース王国軍右軍の対決となるが、アンバイドの活躍により天成獣部隊のトップを始末し、かつ、撤退させることに成功して、クローデル領での勝利を得るのだった。
そして、オットルー領の方に向かって勝利したリース王国軍の左軍は交渉の場にいた。そこでは話し合いがおこなわれていたが、衝撃の事実が突きつけられるのだった。それは、ファウンデーション領を攻めていたファルアールト元帥が暗殺されるというものであったが、オットルー領の領主との話を終え、ミラング共和国の首都ラルネへと向かうのだった。
一方で、ファウンデーション領を攻めていたリース王国軍の中央軍は―…、ラウナンの策によりミグリアドから撤退しないといけなくなったが、その後、ミラング共和国が攻めてきたが、リーンウルネの影ながらの支えにより、勝利するのであった。
そして、舞台は最終決戦となろう場所、ミラング共和国の首都ラルネへと―…。
「ラウナンの言う通りだ。」
と、ファルケンシュタイロは言う。
ファルケンシュタイロとしては、ラウナンを怒らせても得はないと考えているからだ。
それに、この場で、誰かに責任を押し付けても、リース王国軍に勝てる方策が出てくるわけではない。
リース王国軍は、すでに、ミラング共和国を征服すると王国側が宣言している以上、ミラング共和国の領土を完全に征服することは確実であろうし、ミラング共和国で政権を握っている者達を捕まえて、処分を下す可能性は高い。
さらに、この場にいる対外強硬派の主要なメンバーは、殺される可能性が高い。
そうである以上、ここで、お互いに言い争っても自らの好機を見出すことはできない。
協力しかないし、運命共同体のようなもの近い。
そして、ファルケンシュタイロの今の言葉で、クロニードルもディマンドもこれ以上、責任追及を止めるのだった。
(ファルケンシュタイロの野郎~。圧をかけやがって―…。)
と、ディマンドは心の中で思う。
ディマンドもラウナンの言っている意味が分からないわけではないが、どうしても自分は何も悪くないということを示さないといけない。
それに支持者には、アマティック教の信者や、ミラング共和国はこの地域で素晴らしい国家であり、高圧的な態度を周辺諸国に見せる者達がいる。
彼らは、虎の威を借りる狐のような存在であり、自分の存在だけでは、誰も従えさせることのできない人間である。後ろ盾を使うことは重要なことであるが、その使い方というのがあまり周囲にとって良いものでもないし、さらに、誰かを助けるのではなく、自分の栄華のために使おうとするのだ。
結局、後ろ盾になっている者が真面な人間であれば、こういう輩は嫌いになってしまう。だが、彼らが重要な基盤となっているディマンドにとっては、彼らの存在なしでは、自分自身も価値がない存在なのだ。
そうである以上、持ちつ持たれつの関係になり、お互いの自制が効かなくなるのだ。ブレーキのない列車に乗せられたのと同じであり、関係が破壊されるまで暴走をし続ける危険な状態であることに間違いない。
恐怖でしかない。暴走するのを抑えるのには、壊すのには、時として、かなりの大きなきっかけを要するし、犠牲を伴うことがある。その犠牲になった人からしてみれば、罪なんて一切ないのに、巻き込まれるという望んでいない不幸に出会ったのも同じである。その不幸にあった人々の関係者は、怒りを感じるであろうし、悲しみに暮れるだろう。
そこにあるのは、何かしらを失うという結果でしかない。
行動をしているもしくは空間を移動している以上、何かしらのことが起き、行動によって発生する出来事によって受ける影響は、受ける側の者にたいする視点で不幸にも幸運にも繋がる。
要は、行動している以上、不幸になる可能性は避けられないということだ。
同時に、幸運にも巡り合うことができるということでもある。
(………………若造が―…。儂の商売を邪魔する輩を儂が許すと思うな。リース王国を征服した暁には、儂が今度は、事実上のトップになった方が良いな。敗れるような可能性があるなら、裏切る。リース王国のラーンドル一派に当たりをつけておる。恥ではあるが、再度、力を回復すれば、ラーンドル一派なんて一捻りしてやるわ。)
と、クロニードルは心の中で思う。
商人の血かどうかは分からないが、いろんな可能性を考慮して動こうとしている感じではあるが、ここで、口にするほど愚かではない。酒に酔ってしまっている時は、そのようにできない可能性は十分にあるだろうが―…。
老練にはなっているが、決して完璧ということではないのだろう。
「フン!!!」
と、クロニードルはイラつきもありながらも、納得したようにみせた。
いや、納得していないことは周囲にもバレバレであるが―…。
「さて、ここからはちゃんとラルネがリース王国軍によって、完全制圧されずに引き上げるようにしていないといけません。すでに、城壁の強化はおこなっていますが、住民から苦情が上がってきたりしています。」
と、ラウナンは言う。
ラウナンは、シエルマスの国内担当をラルネに多く集結させ、いろいろと市井の内情を探らせている。そこから分かるのは、ラルネの人々はかなりの不安を感じているということだ。
リース王国軍によって包囲されてしまっているので、ミラング共和国の首都であるラルネは陥落するのではないか…と。
だからこそ、逃げ出す準備をしながらも、ラルネの外に出ることはできなかった。商売人以外は外に出すようなことをミラング共和国の政府がさせていなかったからだ。
それは、商売人だって逃げる可能性はあるが、ラルネの外に出れないようにすると、商人が何かしらの反乱を起こすかもしれないし、その対策のためにシエルマスを回せる余裕はなかったからだ。だけど、一般のラルネの住民は違う。
なぜなら、彼らはシエルマスという存在を公にしなくても、噂で広めれば、勝手に動かなくなるとシエルマス側と対外強硬派の側で、そう勝手に判断しているからだ。
「そんな苦情ごときで―…、一々、庶民からの意見を上げてくるな!!! そんなのは、下の者に好き勝手にやらせろ!!!」
と、ディマンドは言う。
だけど、この言葉をそのままの意味で受け取ってはいけない。
大事なのは、ミラング共和国の政権を掌握している対外強硬派にとって、都合が悪いようなことをしなければ、下の奴らの権限で、自由にして良いということだ。
それはつまり、下への丸投げであり、もし、何かしらの問題が発生したのならば、対外強硬派の主要な人物である彼らは、責任を取る気はない、という意味でもある。
彼らにとって、何かしらの政策の失敗で、その失敗の責任を取る気は一切ない。
なぜなら、責任を取れば、自らの過ちを認めることになるし、それを認めれば、汚点となり、二度と表舞台に登場したり、出世したりすることができなくなるのだ。さらに、失脚という結果も伴う場合がある。そんなことは嫌だし、汚点を一生、政敵から言われるのは耐えがたい。隙の無い、自分は完璧な人物であることを演じるというか、そのように周囲に見せようとするのだ。
そうすることで、誰もついてくるのだから―…。
結局、良い恰好をして、ミスのある敵を陥れたいだけなのだ。
そうする方が、自分を悪く言われることもないし、相手のミスを一生指摘できるというマウントを取り放題となり、自分が優れているという気持ちでいられるのだから―…。
その快感は素晴らしいものであり、麻薬のように依存性をもっていたりする。
そして、今回のディマンドの言葉で、本当の意味で得をするのは、この場にいる対外強硬派の中で一人しかいない。
「分かりました。私の方で対処しておきましょう。」
と、ラウナンは言う。
そう、このような対外強硬派の主要な者達から言わせれば、しょうもない庶民の意見をこの場の議題で取り上げるのは相応しいことではないし、上げたくもない。自分達がいなければ、生きていくことすらできない存在が、ミラング共和国の国民なのであるから―…。
だけど、ここで敢えて上げることによってラウナンは、ラルネの治安維持に自分の意見を自由に反映させることのできる機会を手に入れることができるので、ラウナンにしてみれば、有難いことでしかなく、ディマンドやクロニードルの生殺与奪権を実質上握ることに成功したのだから―…。
そう思えば、ディマンドとクロニードルは愚かな選択をしたことになる。
ラウナンは、ラルネの治安を落ち着かせながら、クロニードルとディマンドの行動を自由に監視することができるのだから―…。クロニードルもディマンドもシエルマスに対抗できる実力もなければ、そのような実力を持った護衛もいないのだから、監視し放題である。
そして、クロニードルもしくはディマンド、もしくは双方において、何かしらの怪しい動きがあるようであれば、すぐにでも、シエルマスを使って、二人の命を奪うことができる。
まあ、傀儡の人形としてなので、よっぽどのことがなければ、ということになるが―…。
一方で、ファルケンシュタイロへの監視を怠るつもりはないが、ここで、ファルケンシュタイロがミラング共和国を裏切るような真似をする可能性は低い。
なぜなら、ミラング共和国軍の実質上のトップであり、かつ、ミラング共和国軍の全指揮を担っている以上、リース王国軍に捕まれば、責任を取らされることになるだろうし、そのことをファルケンシュタイロが理解していないわけがない。だからこそ、こういう状況では、ディマンドやクロニードルよりもファルケンシュタイロの方がラウナンにとって、信頼できる。
そういう意味で、ファルケンシュタイロは運が良いのだろうか。それはまだ、分からない。
そして、ラルネの住民からの苦情の話はこのまま、ラウナンが管轄することになった。
(監視する気だな。)
と、ファルケンシュタイロはラウナンの意図を心の中で思うが、口にはしない。
ファルケンシュタイロにとって、ラウナンは戦えば敵うような相手ではないことはちゃんと分かっているし、クロニードルにしても、ディマンドにしてもラウナンに関してはそのように思っていたりする。
だけど、そう思っていることに関しては、かなりの差があると断定することができる。
それは、ファルケンシュタイロはラウナンに勝てることはないと思っているし、裏切るようなことをすれば、すぐにでも自分の命がないと戦闘経験からの勘で分かるが、そのような戦闘経験がないクロニードルやディマンドはラウナンの真の恐ろしさを理解することはできなかった。
危険な人物であり、逆らうのは危険だということは分かったとしても、政治的権力が落ちれば、簡単に倒すことがそれなりの可能性でできるだろうと思っているのだ。
ゆえに、ラウナンの恐ろしさというものに対する差というのが戦闘経験の有無から発生しているのだ。ラウナンが天成獣の宿っている武器を扱うことができると知っているファルケンシュタイロなら、それを良く理解することが、さらにできるのだ。
「後は、兎に角、ラルネを包囲しているリース王国軍を撤退させることが第一目的になる。そのためには、リース王国軍の核となる場所を討つしかないな。その場所は―…。」
と、ファルケンシュタイロが言いかけたところで―…。
「分かっています。その場所は、リース王国の騎士団が集まっている場所、あそこをシエルマスの私の部下を使い、混乱させ、壊滅させる。そうすれば、リース王国軍は崩壊する。」
と、ラウナンは言う。
ファルケンシュタイロは、ラウナンの言っていることを理解できないわけではない。
リース王国には、「騎士試し」という天成獣の宿っている武器に選ばれるための儀式があり、その儀式をクリアして天成獣の宿っている武器を扱う者がいる、と―…。
だからこそ、彼らを潰すことができれば、リース王国軍の戦力はかなり減ることになると、ラウナンは推測する。
そして、現実にはそれに近いことであるが、リース王国の騎士団で天成獣の宿っている武器を扱うことができる者はかなり少なく、その少数でも騎士としての矜持により、天成獣の宿っている武器での戦い方は騎士らしくないとして、拒否する者もいる。
そうであるからこそ、実際よりも数は多くない。
だけど、そのラウナンの狙いは決して間違ったものではない以上、仮定や予測は違えど、狙った通りの結果になる可能性はしっかりと存在することの例証になる。
なぜこのようなことが起こるのか?
それは、あまりにも簡単に説明することができる。人は完全にも完璧にもなれない存在であり、かつ、すべての物事を把握することができないからだ。人は物事をそれなり理解するのに時間という曖昧なものを消費するし、その消費の程度はケースバイケースであり、個々人によって異なる。そして、人は生死がある以上、始点と終点が存在するので、そこに物事を理解するための時間を消費した分を引くことができるという観点が成り立つために、物事が無限に近い有限か無限であるならば、一人の個人もしくは人類全体ですべての物事は把握することは無理なことである。そうなってくると、どうしても把握できない場所が出てくることになり、それが間違っている推測であったりするのに、結果は狙った通りになることは十分にあり得るのだ。
このことを知っていれば、予想外なことが起きたとしても、無理矢理ではあるが納得することはできる。
そして、ラウナンの今の言葉に、ファルケンシュタイロは言う。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(253)~最終章 滅亡戦争(108)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
では―…。