番外編 ミラング共和国滅亡物語(251)~最終章 滅亡戦争(106)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。
リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に
、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。
リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。
その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。
ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。
その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。
一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。
その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。
一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。
その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。
それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。
その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。
ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。
そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。
一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。その兵たちはアンバイドの実力の前に戦わず降参するのだった。
それが重要な問題となる。
ファルケンシュタイロはファロネンズをクローデル領に派遣し、マーゼルの真意を確かめ、ファロネンズの独断でマーゼルを始末するのだった。
そして、マーゼルが殺されたことを、マーゼルの重臣たちに見せしめ、完全服従を勝ち取る。
一方―…、ファウンデーション領(旧アルデルダ領)では―…、領都のミグリアドが包囲されるのだった。それを打開しようとして―…、シエルマスを投入し、リース王国軍の中央軍のトップを始末するのだった。
その後、クローデル領でも動きがあり、ミラング共和国軍とリース王国軍右軍の対決となるが、アンバイドの活躍により天成獣部隊のトップを始末し、かつ、撤退させることに成功して、クローデル領での勝利を得るのだった。
そして、オットルー領の方に向かって勝利したリース王国軍の左軍は交渉の場にいた。そこでは話し合いがおこなわれていたが、衝撃の事実が突きつけられるのだった。それは、ファウンデーション領を攻めていたファルアールト元帥が暗殺されるというものであったが、オットルー領の領主との話を終え、ミラング共和国の首都ラルネへと向かうのだった。
一方で、ファウンデーション領を攻めていたリース王国軍の中央軍は―…、ラウナンの策によりミグリアドから撤退しないといけなくなったが、その後、ミラング共和国が攻めてきたが、リーンウルネの影ながらの支えにより、勝利するのであった。
そして、舞台は最終決戦となろう場所、ミラング共和国の首都ラルネへと―…。
一方、ラルネ。
その中にある軍事基地では―…。
「さっさと運べ――――――――――――――――――――――。」
と、一人の軍人の声が響く。
工兵の中の一人であり、現場指揮官と同等の地位にある者だ。
この人物にとっては、今、途轍もなく忙しい。
というか、大変なことになっているのだ。
(………軍兵の野郎ども、しくじりやがって―…。おかげで、俺らの仕事が増えてしまったではないか。)
と、この現場指揮官は怒りを心の中で露わにする。
その原因は、ミラング共和国軍がリース王国軍に破れ、首都であるラルネを包囲されてしまっているのだ。
そんな状態であるからこそ、工兵は少しでもリース王国からの攻撃に耐えられるように、城壁をより固くしないといけないのだ。
普段から敵が侵入しないように固くはしているが、それでも、ここ数十年、ラルネまで攻められることなんてなかったので、予算が削減されてしまっていたのだ。城壁改修のための費用が―…。
そうである以上、緊急に予算承認をもらって、大急ぎでやっている最中なのだ。
工兵と言っても人数に限りがあるので、どうしても作業の進捗速度には限界というものが存在する。人が行動するのに時間を消費し、かつ、物理的に動くという動作が最初の地点から出発し、ある時間の経過によって特定の場所へと移動しているという空間を動いている以上、どうしてもできることに対する限界というものが発生してしまうし、それを限らなく減らすことは技術を発展させることで可能になるかもしれないが、完全になくなるわけではない。
そうであるからこそ、リース王国軍が攻めてくる前に、完成させないといけない。締め切りの時間が分からないけど、締め切りまでに仕上げないといけない緊張した恐怖感に包まれ、工兵は必死であり、追い込まれているのだ。他を見ている暇など、油を売っている暇などない。あるのは、ここまで追い詰められるような戦いをしているミラング共和国軍の兵士に対してであるし、かつ、リース王国軍に対してである。
だからこそ、この人物は、工兵としての滅茶苦茶な仕事を急にさせるなということと、同時に、普段から工兵に渡される予算を増やしておけ、ということだ。それを申請しようとしても、文句を言ったとしても、ミラング共和国軍の上の方が動いてくれるわけでもない。
なぜなら、ミラング共和国軍の上は工兵出身ではなく、戦闘に前線で戦うかもしくは作戦を計画する側の人間が大きく、工兵などの軍人としての戦闘能力がない者達が辿り着く、出来損ないの部署だと思っている。
だけど、強い軍隊や侵略で拡大できる国家というのは、何気に工兵が重要であったりする。それを、今のミラング共和国軍の軍幹部の側は理解していないのだ。
そのために、どうしても工兵への予算はあまりしか渡されないのだ。
シエルマスにとっても工兵という存在の重要性を理解できていないし、議員なんてもっと酷いものだ。
つまり、工兵の重要性は、ミラング共和国軍の中でも工兵にしか分かっていないし、その重要性も世間には知られていないということだ。残念ながら―…。
そして、ここで文句に言ったとしても変わらないし、文句を言っても変わらない以上、結局、どこかしらのところで、ミラング共和国軍を辞めるしか、この状態から救われる方法はない。要は、工兵は万年、人員不足に悩まされているということになる。
救われないことは、どうしても世の中に存在する以上、上手くやっていくしかない。この不満が後々、最悪の結果へと波紋が広がるようになっていくのだから、見下したり、無視したりすることはできないであろう。無視すれば、その波紋であり、溝は拡大していくだけなのだから―…。無理矢理よりも、不満のある側の意見を聞いて、その解決のための方策を不満がある側が納得する形で実現させないといけない。そういうことだ。
「クソ―――――――――――――――――――――――――――!!!」
と、この現場指揮官は感情を抑えきらず叫ぶのだった。
その現状を結局、ミラング共和国軍の幹部や政府で実権を掌握している者達は、一切、理解することができなかった。
他者をちゃんと理解することは、時に、自分に良い恩恵をもたらすことがあるだろうに―…。その逆も十分にあるのだが―…。
そして、その叫び声はあくまでも周囲の中で、おさまるのだった。
一方、ミラング共和国の議会が開かれる建物の中。
その一つの部屋。
対外強硬派が会議に使う場所。
ここには、ラウナン=アウディエーレ、ヌマディア=ファルケンシュタイロ、ファウンダ=クロニードル、ディマンド=ファウンデーションがいた。
エルゲルダはここにはいない。
四人で会議となった。
「ファルケンシュタイロが敗れるとは―…、それでもミラング共和国の英雄かぁ?」
と、ディマンドが圧をかけるように言う。
こんな圧、ファルケンシュタイロからしてしまえば、大したことではないし、いくら政治的権力があったとしても、物理的な力の前では意味なさない。だけど、ファルケンシュタイロはリース王国軍の右軍に負けているので、ディマンドに文句を言うことができなくなっていた。
それぐらいに、物理的な力だけではない、別の力、人脈、政治的権力がこの場では見事に加算されているし、軍事力がなくても、それを補って余りあるものとなっている。
結局、一番上に立つためには、軍事力だけ持っているだけでは駄目で、交渉能力や自分を周囲に上手くアピールする力、同時に、政策をおこなっていくために周囲に優秀な人材を集め、上手く活用し、かつ、彼らの信頼を獲得することができるかによるのだ。
そういう意味では、ファルケンシュタイロには軍事以外での政治面での信頼できる人材がいない以上、政治の中でトップに立つことはできないし、軍の中では大きな顔ができても、ラウナンのような暗躍したりすることができる実行部隊も持っていない以上、軍の中で納まる器であるのがちょうど良いということになる。
それだけ、政治的権力というのは一つの物差しで測ることは不可能であるし、その実権を握るには一つの物差しだけ優れても意味はないのだ。
それを理解して、初めて、権力への道が開かれると言っても良いし、同時に、それを自分の権力を得たいということだけで、使ってしまうのは危険であり、必ず支配される側に対する心の奥底への善意というものがいるのだ。冷静な判断力とともに―…。たとえ、悪魔にその魂を売ったとしても―…。
「五月蠅いなぁ~。アンバイドに戦って勝てる人間なんてこの世にいると思っているのか。伝説の傭兵と言われる―…。」
と、ファルケンシュタイロは反論する。
アンバイドの実力を知らないからこそ、そのようなことをディマンドが言えるのだと思っているのだ。
知っていると言っても、経験が伴うか伴わないかにより理解度は遥かに違う。
なぜなら、目で見る印象はかなり強いものであり、聞いたりするだけでは分からないものまで情報として提供されるのだから―…。
そういう意味で、アンバイドに関する情報の差が如実に現れているといえる。
「フン、軍事のことはファルケンシュタイロに任せている。お前ほどの人物が、アンバイド相手には簡単に逃げ帰ってくるとは―…。情けない―…。だが、アンバイドがいて、さらにはリース王国軍の中には二人ほど、こちらの兵力を圧倒するだけの騎士の恰好をした実力者がいると聞いた。そちらへの対策も考えないといけないんじゃないか。それに加えて、あの穏健派の娘があっさりと裏切りやがった。それも我々が手出しできないようにして―…。どうしてくれるんだ!!! このアホども!!! 儂の商売邪魔しやがって!!!」
と、クロニードルはブチギレる。
彼にとって、議員としての権力は好きだが、同時に、一族の商売を儲けさせないといけないのだ。クロニードルにとって、ファブラでの鉱山での利益があるといっても、まだまだ足りないのだ。利益、利益、利益、増え続ける限り、さらに増やそうとする。人間の欲望にはキリがない。
そうである以上、さらなる利益を求めて、いろんなビジネスを展開するようになるのだ。そこに、自分達の従業員への還元というか、給料の増額という考えは一切存在しない。一族が儲かれば、それで良いのだ。
クロニードルはそういう意味で、一族とそれ以外の扱いに関して、分け切ってしまっているのだ。同時に、自分も商売からの利益をしっかりと受けていたりする。抜け目はない。
だが、今のミラング共和国の状況を考えれば、クロニードルにとっては商売を邪魔されているとしか言いようがない。自身の一族の商会がラルネから外に出ることができなくなっているのだ。商売あがったりだ。どう責任を取ってくれるのか。
ファルケンシュタイロとラウナンに対して、怒りの感情を露わにする。だが、この老人であるクロニードルとて、ラウナンやファルケンシュタイロを完全に敵に回したいとは思っていない。なぜなら、ファルケンシュタイロには物理的暴力が可能である軍があり、ラウナンには諜報および謀略機関であるシエルマスがある以上、完全に彼らを怒らせてしまえば、殺されても可笑しくはないのだから―…。そのようなヘマだけはしないように気を付ける。
(………最悪の場合は、逃げ出すだけじゃしの~う。それに、リース王国に上手く降伏するか、周辺諸国に逃げ込むだけじゃ。)
と、クロニードルは心の中で思う。
商売人である以上、政治家としての権力に最後まで、しがみつこうとはしない。どこか別の国で、再度、商会を大きくすることに専念すれば良いのだし―…。
そういう意味では、クロニードルはそこそこ視界を広くすることができているが、結局、商売のことが完全な基準となっている。
そんなことを理解できないのは、ファルケンシュタイロとディマンドぐらいで、ラウナンは十分に分かっている。
(クロニードルの爺さんは、商売と一族の繁栄が一番のようですねぇ~。だけど―…、逃がしてあげるほど私は優しくない。それに、ラルネの攻防では、我々、ミラング共和国が勝つに決まっています。城壁を強化するように指示しています。商売のことだけしか考えられないクロニードルのような馬鹿にはなりません。さらに、ディマンドなんて、ここで始末しても良いぐらいなのですよ。自分の真の立場ぐらい理解して欲しいものですね。)
と、ラウナンは心の中で思う。
ラウナンにとって、クロニードルもディマンドも、いつでも始末することが可能な存在である。
それでも、ここで殺してもあまり意味はないし、もしも何かあった場合の傀儡として、持っておいても損はないと思い、殺していないだけであり、新たな傀儡人形を用意すれば、すぐにでも始末して良いと思っている。難易度から言うと、ディマンドは簡単であり、クロニードルが少しだけ難しくなる。
その理由は、一族が金銭的なものと人脈、他国への顔の広さなどの差である。
クロニードルは商売をやっている関係上、どうしてもいろんな国の商売関係者や有力者との知り合いが多くなるし、取引先にもなる。
そうである以上、ミラング共和国内でもそれなりの権力にもなるし、外交をしていく上ではクロニードルの一族の商会は重要なパイプとしてかなり役に立つのだ。
ファウンデーション家のように、政治家だけで続いている一族ではどうしても、周辺諸国との関係は強くなるものもあるが、どうしても商売人や職人との関係は強くなかったりする。
ミラング共和国が他国を侵略していく上で重要になるのは、その支配者関係一族と同時に、商売人であったり、裏組織であったりするのだ。
そうである以上、クロニードルの一族は人脈が太くもなるし、有効な関係も築いていたりする。
さて、話の内容を戻すと、ラウナンは、クロニードルがミラング共和国が完全に不利なものとなれば、裏切る可能性と、どこかへと逃げる可能性があることは十分に分かっている。商人の性というものを知っているのだ。
だからこそ、どこで始末すべきかを考えるし、ディマンドはいつでも始末することができるので、放置する。
「落ち着いてください。私にも落ち度はありますが、ここで責任のなすりつけ合いをしても、リース王国軍に利するだけです。今、ラルネの守りながら、リース王国軍を始末する方法を探しましょう。」
と、ラウナンは言う。
ラウナンとしては、ここで、馬鹿な責任のなすりつけ合いをするよりも、自分達の今の危機を切り抜けた方が、相手に利することはないし、自分達に利する。
そのように判断している。
今のラウナンの言葉で、ファルケンシュタイロはクロニードルの発言に怒りの感情を小さくではあるが、爆発させようとしたが、少しだけ落ち着くことができた。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(252)~最終章 滅亡戦争(107)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
では―…。