番外編 ミラング共和国滅亡物語(244)~最終章 滅亡戦争(99)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。
リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に
、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。
リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。
その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。
ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。
その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。
一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。
その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。
一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。
その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。
それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。
その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。
ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。
そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。
一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。その兵たちはアンバイドの実力の前に戦わず降参するのだった。
それが重要な問題となる。
ファルケンシュタイロはファロネンズをクローデル領に派遣し、マーゼルの真意を確かめ、ファロネンズの独断でマーゼルを始末するのだった。
そして、マーゼルが殺されたことを、マーゼルの重臣たちに見せしめ、完全服従を勝ち取る。
一方―…、ファウンデーション領(旧アルデルダ領)では―…、領都のミグリアドが包囲されるのだった。それを打開しようとして―…、シエルマスを投入し、リース王国軍の中央軍のトップを始末するのだった。
その後、クローデル領でも動きがあり、ミラング共和国軍とリース王国軍右軍の対決となるが、アンバイドの活躍により天成獣部隊のトップを始末し、かつ、撤退させることに成功して、クローデル領での勝利を得るのだった。
そして、オットルー領の方に向かって勝利したリース王国軍の左軍は交渉の場にいた。そこでは話し合いがおこなわれていたが、衝撃の事実が突きつけられるのだった。それは、ファウンデーション領を攻めていたファルアールト元帥が暗殺されるというものであったが、オットルー領の領主との話を終え、ミラング共和国の首都ラルネへと向かうのだった。
一方で、ファウンデーション領を攻めていたリース王国軍の中央軍は―…、ラウナンの策によりミグリアドから撤退しないといけなくなったが、その後、ミラング共和国が攻めてきたが、リーンウルネの影ながらの支えにより、勝利するのであった。
場所はミグリアドの領主の館。
敗走してから、その日の夜。
「さて、今後の方針の会議を始めるとしましょうか。」
と、ラウナンは言う。
だけど、この会議に集まっているミラング共和国軍の重臣達は、ラウナンを睨みつけはしないが、すでに、心の奥底で、信頼することはできなくなっていた。
いや、元々から信頼などはしていなかったが、シエルマスの実力によって、自分達が敵うこともないとしっていたので、従うしかない。そう感じていた。
だが、今回の戦いで、ミラング共和国軍の兵士が奇襲によれど敗北してしまったので、ラウナンに指揮権を与えるのはどうか。軍人でもない人間が戦争の中での指揮をするのは、素人が指揮をするものであり、軍人を馬鹿にしているものとしか思えない。
だからこそ、ミラング共和国の兵士の中にもラウナンへの鬱憤がかなり溜まっていることになるのだ。
それを感じないわけではないラウナンであるが―…。
(あれのせいで、こんなクソどもに媚びへつらわないといけなくなるとは―…。こんな屈辱は、シエルマスに入った時から統領になるまでに以来だ!!! 私の掌の上で踊ることしかできないような輩が~、リース王国を征服した暁には、こいつらを纏めて始末し、私の力を証明しないとな。)
と、心の中ではイライラするのであった。
ラウナンとしては、この展開は面白くなく、ラウナンが失敗したのだとミラング共和国軍の重臣達から思われていることに、イラつきしか感じていなかった。
というか、ラウナンのプライドはズタズタだ。
すぐにでも、この会議に参加している輩を始末して、周囲に実力という名の恐怖を示して、支配しようと考えていた。
だが、それをすることはできないことは分かっている。
ここから挽回するためには、どうしてもミラング共和国軍の兵士が必要であり、いくら実力があるからと言っても、一騎当千以上のことができるかと言えば、できるわけじゃない。
数という暴力は実力があったものであったとしても、ある倍の差までくるとひっくり返すことができなくなったりする。その可能性を低くするのだ。
それに、余計な敵をつくるのは得策ではない。
ラウナンとしては、プライドをズタズタにされながらも、苦汁を飲まされることもあろうが、自らの目的のために―…。
「私の指揮で負けてしまった以上、今後の作戦は、素晴らしいミラング共和国軍の将校の皆様から作戦を実行することにしましょう。」
と、ラウナンは言う。
心の中では―…。
(失敗しろ、テメーらの作戦なんか。私は今日の作戦が失敗したわけじゃない。誰からが裏切ったからこそ、私は失敗者としての烙印を押されてしまったのだ。私に間違いはない。間違いがある人間が諜報及び謀略組織であるシエルマスのトップである統領になれるわけがない。そんな地位ではない。統領というのは―…。シエルマスは周辺諸国からも畏れられるほどの実力を持つ組織なのだ。だから、そのトップは完璧でないといけない。暗殺や諜報においては―…。)
と。
ラウナンとしては、自分は失敗したわけではないと思っているし、そのだと信じ込んでいる。
そして、周囲にも今日のリース王国軍の中央軍への攻撃に失敗したということを言わせる気もない。なぜなら、それは相手が卑怯な手を使ったからであり、そんなものはこの戦場では許されないことであり、ラウナンの策に落ち度などなかったのだ。それに対処できない兵士が悪い。
そのようなことを口にして言ってしまうと、ミラング共和国軍の兵士からしたら、ラウナンふざけるな!!! という気持ちになってしまうし、反旗だって翻しかねない。それほどに、リース王国軍が優勢になっているのだから―…。
そうであることをラウナンは知っているが、本当は言いたくて仕方ない。
失敗しない完璧な人間だからこそ、シエルマスのトップの地位である統領になることができており、今の統領の地位にあるラウナンは完璧な人間であり、完璧な何の落ち度もない作戦を実行していると、信じ込んでしまっている。
経験というデメリットがここに現われている。
人はどんな行動をしたとしても、失敗の可能性を完全に拭い去ることはできない。できるはずもない。
人は完全でも、完璧ではないからこそ、修正したり、自らを変化させたりすることができるのだ。
そうである以上、失敗するということは、それに気づかせる契機という機会となり得るのだ。それができるかどうかが、本当の意味で成長できるか人間かそうでないかを判断することのできる一つの基準になるのだ。
これは行動というか、体験という機会を実際に見ることにおいてしか、判断することはできないし、見れるものではない。
要は、失敗から免れない問題と、もう一つ付け加えるなら、体験という機会を実際に見るは時間を消費している以上、人を見て有能かどうかを判断するにはそれなりの時間がかかり、損することもあり得ることだ。そうでもしないと、優秀な人材には会えなかったり、見つけられなかったりするのだ。
結局、人材を見極めるのは時間がかかるし、ろくでもない輩を見落としてしまうことだって、どんな完璧な方法だと思われるものを用いても発生してしまうのだ。他人を完全理解できるわけではないのだから―…。
そして、ラウナンの今の言葉は屈辱だった。
だけど、その屈辱をバネにすることはできていないが、必ず自分の思い通りにしてやるとラウナンは思うのだった。
「そうだよ、ラウナン君。軍事のことは我々、ミラング共和国軍に任せてくれると良い。我々は、ミラング共和国の中でも精鋭であり、ラウナン君は我々の軍事行動に対して、謀略と諜報の方で頑張ってくれたまえ。」
と、一人の軍人が調子に乗ったような一言を言う。
普通なら、裏でこの人物を暗殺していただろうが、今、そういうこともできない歯痒さを感じる。
(クロニール将軍………ファルケンシュタイロの腰巾着の中でも冷遇されている軍事下手が―…。私の失敗ごときで調子に乗りやがって―…。)
と、苦々しく思いながらも、我慢する。
クロニール将軍。
クロニール=ファットン。
彼はミラング共和国軍の中で、運良く、出世しただけで、決して軍人としての能力があるわけではない。
そんな人物であるのか、相手の失敗、特にライバルの失敗に対して、かなりの煽りというか、針小棒大するかように大事にして、噂にし、自分のライバルとなる優秀な存在を蹴落としていく。
ファルケンシュタイロからしてみれば迷惑千万の存在であるが、こいつのトーク力はかなりのものであり、多くの者が騙されている以上、どうしようもできず、こいつを出世させてしまったのだ。天成獣の宿っている武器を扱え、いつでも処分できると言っても、こいつの煽動力は時に使える場合もあるので、始末できずにいるというわけだ。
ラウナンにそんなことは通じないだろうが、今の状況から考えるにファットンを殺すことはできない。こいつの煽動力は重要になるかもしれないと思っているからだ。
そういう意味で、運良く生かされているというか、煽動力に救われているというか―…、それだけの人物である。
そんな人物であったとしても、場の空気を読めないわけではない。
むしろ、場の空気を読む力に長けており、何を自分が言えば良いのかを本能的に理解してしまっているのだ。だからこそ、この人物は生き残れているともいえる。
(ラウナン=アルディエーレ。実力であれば、私などあいつの足許にも及ばないが、場というものをしっかりと感じることができれば、このように殺されずに上手く、自分の望んだ方向にもっていくことができる。私の素晴らしい処世術。感謝、感謝。)
と、クロニールは心の中で思う。
クロニールとしては、場を支配する力は武力だけでなく、こういう場の空気を読み、かつ、その支配のために必要なことができる能力を持っていることも必要だと示そうとしているのだ。武力ではなくということを思っていそうだけど、ここでクロニールは油断する気はない。
なぜなら、ラウナンという人間がどれだけ黒く、恐ろしい人間であるかを自分なりに知っているからだ。シエルマスという組織がミラング共和国の国内外において謀略と諜報をおこなっており、周辺諸国で恐れられており、かつ、そのトップにラウナンがいる以上、迂闊に逆らうのは危険なことでしかなく、無意味なことだ。
ラウナンについて自らの利益を得るのは大事なことだ。
それを引き出すために、敢えて場の支配で自分という存在の重要性を示すことによって、自分の有効性を示して、クロニールを殺すのは良くないと思わせたのだ。
そして、自分の能力に感謝することを忘れない。
だから、ややこしいし、厄介なのだ。
そして、有頂天な気分になることなく、ラウナンの表情を観察しながら、さらに、畳み掛けるべきかそうじゃなく、ラウナンとの間を取り持つべきか。
そう、逡巡する。
「では、クロニール様に何かしらのリース王国軍の中央軍を撃退させるための作戦はあるのでしょうか?」
と、ラウナンは言う。
(ふん、クロニール。お前が軍人として優れていないことぐらいはすでに分かりきってる。お前ごときに今の状況を打開できるような策が閃けるはずがない。お前の学歴と経歴、そして、その中での成績を見させてもらったが、お世辞にもこんな奴を軍人にして良いのかとしか思えなかったのですよ。それに、これは細やかな反撃ですが、大きな反撃にもなり得るのですよ。それに、今、思えば、いつでも殺せますから、放置で構わないか。馬鹿なことをしなければ―…、ですが―…。)
と、ラウナンは心の中で思う。
そう思うのは、ラウナンがクロニールの経歴やらをしっかりと調べているからだ。将校クラスの情報ならシエルマスにしっかりと保存されているし、将校候補生の情報もしっかりと持っている。将校候補生の成績とかは特に重要だと思っている。
優秀な軍人の中にはシエルマスに対して、脅威となり得る存在がいるかもしれないと、思いながら―…。例えば、グルゼンのような存在とか―…。
グルゼン自体は、反乱を起こす気もなかった。しかし、グルゼンの軍人としての、指揮官としての優秀さに加え、天成獣の宿っている武器を扱う者と同等もしくはそれ以上の実力を天成獣もなしに有するという規格外というか、ラウナンから言わせれば化け物でしかなく、その存在を無視することも放置することもできるはずもなかったことにより、グルゼンの気持ちに関係なく警戒されたのだ。シエルマスを含めて―…。
そう思うと、グルゼンという才能は、周囲をどうしても無視させることのできない分かりやすいものであったのだろう。だからこそ、グルゼンは警戒され、そのことによって、よりグルゼンは平和な生活では手に入れることのない才能をより鍛えられてしまったのであろう。
そうだと思うと、結局は、グルゼンを警戒する連中がグルゼンを育ててしまったのだ。何という皮肉であろうか。
さて、話が逸れてきたので戻すと、クロニールの経歴は、決して良いものではなく、運良く出世したという言葉がよく似合うことが分かる。
砲術に関する知識も駄目、矢に関する実践力も駄目、剣術はさらに駄目な成績で、なぜこのような成績の人間が将校になっているのか、ラウナンが初めてクロニールのことを聞いた時は不思議でしかなかった。
そして、クロニールを近くで監視した結果、クロニールの話術というか場を読み、相応しい振る舞いをすることができることによるのだと、ラウナンはそう判断を下している。
だからこそ、素晴らしい作戦があるのではないかということを言えば、馬鹿なことを言うに決まっているのだ。
そういうラウナンの企みをクロニールが察せないわけがない。
(………本当に、さすがはシエルマスのトップの地位にいるだけはある。私の情報をすぐに握っているというか、私のプライベートまで―…。厄介な組織だが、国を運営するためには必要なものだ。そして、私に軍事作戦を言わせて、恥をかかせるようなことを考えている。)
と、クロニールは心の中で思う。
クロニールも場の空気を読むことに長けているので、ラウナンの意図もきっちりと理解し、焦りの表情を心の中で見せるが、それでも、情報がないわけではない以上、言うべきことは決まっている。
ふう~。
一つ息を吐いたクロニールは、これからの方針の案を言い始めるのだった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(245)~最終章 滅亡戦争(100)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
『水晶』、PV数がついに10万を超えましたぁ~。長かったです、正直な感想で言いますと―…。
ここまで、良く続けられたなぁ~、と思います。
続けられているのは、『水晶』を読んでくださっている方々のおかげです。
ありがとうございます。感謝しかありません。
今後に関しては、なるべく番外編「ミラング共和国滅亡物語」を仕上げ、休んでからサンバリアへと向かう道程を描いていきたいと思います。
残酷さが増し増す。本編比では―…。
PV数が100万まで到達するまで続けられるかなぁ~、と不安な思いもありますが、自分なりに無理せずにやっていきたいと思います。
今後とも、『水晶』を読んでいただけると助かります。
では―…。