番外編 ミラング共和国滅亡物語(243)~最終章 滅亡戦争(98)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。
リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に
、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。
リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。
その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。
ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。
その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。
一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。
その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。
一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。
その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。
それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。
その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。
ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。
そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。
一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。その兵たちはアンバイドの実力の前に戦わず降参するのだった。
それが重要な問題となる。
ファルケンシュタイロはファロネンズをクローデル領に派遣し、マーゼルの真意を確かめ、ファロネンズの独断でマーゼルを始末するのだった。
そして、マーゼルが殺されたことを、マーゼルの重臣たちに見せしめ、完全服従を勝ち取る。
一方―…、ファウンデーション領(旧アルデルダ領)では―…、領都のミグリアドが包囲されるのだった。それを打開しようとして―…、シエルマスを投入し、リース王国軍の中央軍のトップを始末するのだった。
その後、クローデル領でも動きがあり、ミラング共和国軍とリース王国軍右軍の対決となるが、アンバイドの活躍により天成獣部隊のトップを始末し、かつ、撤退させることに成功して、クローデル領での勝利を得るのだった。
そして、オットルー領の方に向かって勝利したリース王国軍の左軍は交渉の場にいた。そこでは話し合いがおこなわれていたが、衝撃の事実が突きつけられるのだった。それは、ファウンデーション領を攻めていたファルアールト元帥が暗殺されるというものであったが、オットルー領の領主との話を終え、ミラング共和国の首都ラルネへと向かうのだった。
一方で、ファウンデーション領を攻めていたリース王国軍の中央軍は―…。
数時間後。
一人の人物が逃げ去るようにしながら、自身に言い聞かせる。
(私は負けたわけじゃない。そう、私は負けたわけじゃない。)
と。
この人物の心は完全に歪んでおり、自らは失敗してなどいないと思っているのだ。
人が失敗から逃れられることはできない。
失敗しないように細心の注意を払うことはできるが、それでも、逃れることができないほどに、人という存在は不完全から脱することはできない。完全に近づくことは可能であるが―…。
ゆえに、成長ができるのであり、新たな選択を選び、思考をし続けるということが可能であり、それを宿命づけられているのだ。
そして、それから逃れることを理解することも、そこへの思考へと到ることもできずに、一人の人物は逃げるかのように走る。
今回のリース王国軍の中央軍への攻撃に関しては、シエルマスを活用せずに、ミラング共和国軍を中心にしておこない、彼らに手柄を立てさせるつもりだったが、失敗に終わってしまったのだ。
あのニ、三時間の間に、多くのミラング共和国軍の兵士がリース王国軍の中央軍によって、殺されていくのであった。それをただ眺めさせられるという苦難を味わった。
それをした人物がリーンウルネであることに気づかない。
そのことに関しては、致し方ないであろう。
リーンウルネの持っている武器に宿っている天成獣の能力を知っているわけではないのだから―…。
噂ぐらいは聞いているかもしれないが、まさか、この戦場に来るとは思わないし、そのような固定概念を抱いていたとしてもおかしくない。
だが、リース王国の人間であれば、リーンウルネ王妃という存在は王城に籠る傾向のある王族とは違い、いろんなところへと向かい、問題を解決するという変わり者として知られる。シエルマスの人間でも知っている情報だ。
同時に、その能力がしっかりとあることが分かっている以上、恐ろしい存在であることは分かっている。
この人物は、シエルマスのトップの人物でもあるので、分かっていてもおかしくはないが、人は完全になれない以上、どこかしら見落としというものがどうしても存在してしまうものだ。
そう、シエルマスのトップの統領の地位にあるラウナン=アルディエーレだとしても―…。
(俺は誰かが仕掛けた罠だ。その罠には、ミラング共和国軍の中にリース王国軍への内通者がいたからに違いない。許さない。この私を貶めようとするとは―…。探って、ぶっ潰してやる!!!)
と、ラウナンは心の中で思う。
怒り心頭である。
ラウナンは失敗したのではない。
誰かによって嵌められたのだ。
そうした方が納得することができるし、ラウナンの中で説明して、矛盾が生じないのだ。
あくまでもラウナンの主観であることに関して、それを免れることができるわけではないが―…。
それでも、人という生き物が自分という存在を時に押し殺すことで生きることができるように、自分の納得しないことを徹底的に排除することによって生きること、自らが最大の良き環境になることを望む輩がいるのだ。それは個性なのだろう。
個性と言われるものは、結局は、組み合わせの相違と他の人の特性と比較しての相違のどっちか一方の条件を満たすことによって成り立つのだから―…。
共通性が多いからこそ、少ない相違性が目立つのであろう。
そして、ラウナンは逃げながらも、自分を貶めた輩を探り出して、始末してやろうと思っているのだ。
ラウナンは、再度も言うが、ミラング共和国の諜報および謀略組織であるシエルマスのトップの地位である統領であり、ミラング共和国の実質上の支配なのだ。
ラウナンに逆らえるようなものは誰一人としていない。
さらに、ラウナンは、自分以外の人は自身の掌の上で人形のようにラウナンの意図通りに踊っていさえすれば良いと思っているのだ。そこから外れるようなおこないは、許してはいけないし、始末して、それが如何に危険であるかを示さないといけない。
ラウナンが所属している組織であるシエルマスは任務の失敗イコール自らの命で償うことがあり得る組織なのだ。どんな優秀な組織の者であったとしても、失敗して、そのような悲惨な結末を迎えた者はいくらでもいる。だからこそ、これまで失敗をせずに生き残って、シエルマスのトップになったラウナンはかなりの実力があるのは分かるが、それは同時に、失敗をしない自分は完璧な存在だという誤解というものを生みだしかねない。
そう、成功も続けば、次も成功するのだという可能性としてあり得るが確実ではないものを、絶対に起こると思うようなものだ。
それは驕りとなり、傲慢となり、自身以外の存在を見下す要因にしかならない。
要は、危険な要素をはらんでいるということになる。
同時に成功は、その成功要因ばかりに目を向けることになり、その成功要因が崩壊することへと目を向けさせることを疎かにさせたり、視界から映さないようにするのだ。
それは危険なことであり、確実に保証されることもない成功要因というものに、良くない意味で支配されかねない。
そうである以上、成功という経験も考えものであるし、同時に、失敗ということも重要な場合だってあるのだ。
ラウナンは、失敗という恐怖の経験を知っているせいで、失敗しないことを大事にし、自分の存在を完璧だとみなすし、自分がしようとしていることは確実に成功すると思い、結果、デメリットや成功以外の要因を考えないという罠に陥ってしまっているのだ。
これは、人が成長していくために必要なことを否定していることになる。
ラウナンは、これからミグリアドに戻り、リース王国軍に内通していた者を探し出し、始末して、自分は失敗していないと周囲に喧伝するだろう。
そして、それに口を挟もうとする輩は、ラウナンの武力によって、実力によって黙らせるし、始末して、晒すだろう。周囲にラウナンの悪口やら、陰口、ラウナンを潰そうとしている勢力を出させないようにするのだ。
ラウナンは駆ける。
自らの威信と、欲望を満足させるために―…。
リース王国軍の中央軍の側。
すでに、リーンウルネはこの場から離れ、ミラング共和国の首都であるラルネの方へと向かって行った。
決して、リース王国軍の中央軍の兵士に気づかれないようにしながら―…。
そして、本陣の方では―…。
「ガハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、天は我が軍を見放していなかったというわけか!!!」
と、オバーラは笑いながら言う。
快勝というのはかなり嬉しいことである。
そして、ミラング共和国軍がリース王国軍の中央軍の築いた簡易な策であったとしても、何かしらの要因で越えることができない。
それは、神からの奇跡に他ならない。
そう思える方が、オバーラやリース王国軍の中央軍の兵士達にとっては納得のいくことであり、それ以外に説明できる要因や知識、経験を持ち合わせていない。
そして、リース王国軍の中央軍の兵士達にも明るい表情が戻り、今夜あたりは宴会でもしてそうな雰囲気だ。
「そうです。オバーラ様。」
リース王国軍の中央軍の重要な役職に就いている兵士は、完全に、今回の戦いでオバーラの側になっているのだ。
そうならざるをえない。
そのための大事な活躍をしたのはオバーラではなく、リーンウルネなのであるが、それには気づきもしないようだ。
そうであるならば、リーンウルネの意図通りということだ。
ミラング共和国軍は、ミグリアドからラルネの方へと撤退する可能性があると、リーンウルネは踏んでいるのだから―…。
シエルマスのトップである人物がどんなに強硬姿勢を持っていたとしても、軍というか多勢が不利な場合、もしくは、自らの国の首都が攻められようとしている場合、そんな場合に、外で活躍するよりも、首都から攻めてきている軍を追いだして欲しいと思うの権力の側の人間の発想だ。
結局、自分の命が一番に大切なのだから―…。
誰かのために戦うには、自分の安全が保障されていないと難しいことなのだ。誰かのために犠牲になるというのは、あくまでも最後の選択に近いものである。無駄死にだって可能性も十分にあるのだから―…。
そして、オバーラは―…、
「まだ、ミラング共和国軍に完全に勝ったわけじゃない。情報によると、左軍と右軍はすでに、それぞれが向かったミラング共和国内の領を支配し、すでにミラング共和国の首都ラルネへと向かった。俺らが遅れれば、奴らに手柄を独り占めされちまうぞ。じゃあ、やることは決まってるな。明日、アルデルダ領を占領するぞ!!!」
と、宣言する。
オバーラは焦っている。
情報はすでにもたらされており、リース王国軍の左軍はオットルー領を、リース王国軍の右軍はクローデル領を占領することに成功しており、すでに、ミラング共和国の首都であるラルネの方へと向かっている、と―…。
そうだとすると、リース王国軍の中央軍が遅れるわけにはいかないと思ったのだ。
オバーラもまた、今回のミラング共和国との戦争で、手柄を欲しているのだ。
ただの手柄ではない。ミラング共和国との戦争における一番の手柄であるエルゲルダを捕まえることと、ラルネ陥落に一番の功績を挙げることなのだ。自らの策をもって―…。
だけど、それは簡単なことではないということを理解している。
ファルアールトのせいで、リース王国軍の左軍と右軍に後れを取るという失態を犯しているのだから―…。
それは許されないことであるが、その現状になった過去を変えられるわけではない以上、現状をどうにかするしかない。
それを理解しているけど、この焦りという気持ちが自らの心を歪ませる可能性となる要因をはらんでいる。だからこそ、焦る気持ちを上手く付き合いながら、抑えないといけない。
これがかなり難しいことなのであるが―…。
実際に挑戦してみると良い。難しいことをどこかで気づかずにはいられなくなるから―…。
『おお!!!』
と、ミラング共和国軍の兵士達は叫ぶのだった。
そして、彼らは進軍の準備を始め、翌日に、ファウンデーション領の領都であるミグリアドへと向かうのだった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(244)~最終章 滅亡戦争(99)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
次回の投稿日は、2024年6月11日頃の予定です。
では―…。