番外編 ミラング共和国滅亡物語(239)~最終章 滅亡戦争(94)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。
リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に
、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。
リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。
その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。
ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。
その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。
一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。
その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。
一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。
その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。
それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。
その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。
ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。
そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。
一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。その兵たちはアンバイドの実力の前に戦わず降参するのだった。
それが重要な問題となる。
ファルケンシュタイロはファロネンズをクローデル領に派遣し、マーゼルの真意を確かめ、ファロネンズの独断でマーゼルを始末するのだった。
そして、マーゼルが殺されたことを、マーゼルの重臣たちに見せしめ、完全服従を勝ち取る。
一方―…、ファウンデーション領(旧アルデルダ領)では―…、領都のミグリアドが包囲されるのだった。それを打開しようとして―…、シエルマスを投入し、リース王国軍の中央軍のトップを始末するのだった。
その後、クローデル領でも動きがあり、ミラング共和国軍とリース王国軍右軍の対決となるが、アンバイドの活躍により天成獣部隊のトップを始末し、かつ、撤退させることに成功して、クローデル領での勝利を得るのだった。
そして、オットルー領の方に向かって勝利したリース王国軍の左軍は交渉の場にいた。
書類を確認している間、ハミルニアは考える。
(………向こうの方が念をおして確認している間に、今後は一気に我が軍はミラング共和国の首都ラルネへと向かう。だけど、中央軍と右軍が首都のラルネにいる可能性は分からない。右軍に関しては、クローデル領での勝敗を決しているようだから、こっちが先に向かったとしても、二、三日前後で合流することは可能であろうが―…。中央軍に関しては、アルデルダ領(現ファウンデーション領)を陥落させているのか、それとも、ミラング共和国軍によって返り討ちにあっているのかさえ分からない。連絡をこっちに寄越さないからなぁ~。本当に、私を煙ったく思っているのでしょう。そういう場合じゃないのに―…。)
と。
ハミルニアとしては、ファウンデーション領にいるリース王国軍の中央軍の動向を把握することが難しかった。向こうに派遣できる兵力に対する余力はあるが、それでも、ラルネに向かうとなると、どうしても、その余力の兵力もラルネの包囲に時間を使わないといけなくなる。
包囲には、ミラング共和国軍の兵士よりも多くの兵士を必要とするのだから―…。
そういうことを理解しているからこそハミルニアは、余力というものを余力だとみなせなくなっている。
それと同時に、情報交換が相互にできているリース王国軍の右軍とは、お互いに派遣されたミラング共和国の領土で、ミラング共和国軍を打ち破っているので、ラルネ近郊で合流するにはそう日数はかからないだろうということは予想できる。推測に近い具合に―…。
だからこそ、リース王国軍の中央軍のファウンデーション領での動向を把握することは、これからのラルネの包囲を展開していくために重要なことなのだ。戦える兵士の数を知るだけでも話は変わってくるのだから、変にハミルニアのことを恨まないで欲しいと思っているのだ。
この時、リース王国軍の中央軍のトップであったファルアールトがすでに、ミラング共和国の謀略および諜報組織であるシエルマスのトップの統領であるラウナンによって暗殺されてしまっているのだ。その事実は、リース王国軍には知られていないし、暗殺したのは味方だと思っているのだ。
そういう意味からすれば、ラウナンとしては、してやったりという感じであろう。
一方で、ヒルバスは、
(………かなりこちらに対して警戒しているのですね。だけど、一支配者としては当たり前のことです。そういう意味では、誠実な人なのでしょう。オットルー領の領主は―…。)
と、心の中で思う。
ヒルバスは、クローゼルの言葉からは、自らの統治している領地の領民のことを本当の意味で大事にしていることが伝わり、その垢を少しでもリース王国の中央で権力を握っているラーンドル一派に飲んで欲しいと思ってしまう。
それだけ、ラーンドル一派が自分達のためにしか政治をしていないことに不満を持っているのだ、ヒルバスは―…。
だからこそ、今のオットルー領に支配者である領主をみると、嫌でも比べてしまうのだ。
リース王国も彼のような支配者に統治されたいと、いや、そのような統治をしてみせると、ランシュとともに―…。
その間にも、クローゼルは二通の書類を見終えるのだった。
それを―…。
「秘書官、この二通をハミルニアの元へ渡し、確認させるように―…。」
と、クローゼルは指示する。
「畏まりました。」
と、秘書官は返事をすると、ハミルニアの元へと向かう。
そして、ハミルニアの元へやってくると、秘書官は、
「ご確認ください。二通のうち一通は我々が所持するものとなりますので、こちらへと返却してくださいませ。」
と、言う。
ハミルニアは、二通の紙を受け取り、間違いがないかを探す。
(リース王国軍に対するオットルー領への通行を一度だけ許可することと、同時に、オットルー領内でのリース王国軍が犯した犯罪行為に関する処罰を厳守すること、それがおこなわれているのを確かめるための監視人員をオットルー領から十名を派遣し、かつ、彼らがミラング共和国とリース王国の戦争に参加せず、かつ、彼らがその戦いで戦死しないようにすること。それらの誓約をリース王国軍の側が違反した場合、オットルー領の領兵はミラング共和国の側で行動することと同時に、監視人員がミラング共和国軍の総大将の命を奪うことにする。………かなりえげつない内容だが、署名しないわけにはいかないか。)
ハミルニアは心の中で言葉にしながら、間違いないかを探しながら、約束を反故にした場合の処罰があまりに厳しいと思いながらも、この誓約にサインするしかないと理解することができた。
ハミルニアの側としても、オットルー領の領民に危害を加えることはしない方針であり、その約束はしっかりと守るつもりでいる。
そして、このサインで処罰されるのは、リース王国軍の総大将である以上、ハミルニアが責任を免れる可能性もあるのだ。それでも、ハミルニアが責任を感じないわけではないが―…。
ハミルニアはすでに二通の書類には、オットルー領の領主クローゼル=オットルーの署名がなされていた。
あの確認時、しっかりとサインをしたのであろう。
そう、ハミルニアは思っている。
そして、ハミルニアは間違いがないことを確認して、すぐにサインするのだった。二通の書類の両方に―…。
「内容に間違いはございません。こちらも確認させていただきました。誓約書の一枚をそちら側に返すということですね。」
と、ハミルニアは言う。
言い終えると、誓約書の二枚の紙を渡してきた秘書官の方へと、一枚を返すのであった。
これで誓約および契約は完了した。
双方にとって、守らなければどういうことになるのか、ということを示すことにして、正当性を与えるための―…。
秘書官は、クローゼルの方へと戻って行く。
戻ったら、返却された誓約書の一枚を受け取り、名前を確認する。
そして、名前が合っているのを確認した後―…。
「こちらとしても、領民の安全を保障しなければならない以上、こういう形式ばった契約をしないといけなかった。そこのところは理解していただける助かる。それと―…、そちのリース王国も大変なのだな。政権を握っている輩は、ミラング共和国を征服仕返す気でいるみたいだな。」
と、クローゼルは話題を変える。
これからは、状況確認というか、情報収集も兼ねたものだ。
私的な話も含まれていたりする。
ランシュは完全に話を聞く気はないので、完全に耳から入ってくる会話はどっかへと消えて、消滅していっている。
(契約に関しては、終わったのに、まだ話が続くのですか。こちらとしてはやることが多いのですが、ここでオットルー領の領主の機嫌を損ねるのは良くない。面倒ですが、会話をする方向にいくしかない。)
と、ハミルニアは心の中で思う。
ハミルニアは、クローゼルの意図というものを理解することはできていなかったが、ここで、クローゼルからの話を断る理由はなかった。
オットルー領の領主の機嫌を損ねても上手くいくとは限らないと思っているからだ。
なぜなら、機嫌を損ねられてしまうと、約束を反故されるもしくは約束違反にならない程度で妨害される可能性だって十分にあり得るのだ。
そのようなことが起きないのであれば、クローゼルの話に乗ること自体、大した問題ではない。
そして、クローゼルの会話からオットルー領の現状をしっかりと把握し、彼らの気持ちを理解しようとしているのだ。オットルー領の領主とその周辺からだけで、オットルー領の全部を知った気持ちになるのは危険なことでしかないが、知らないよりかはマシの方だ。そういう意味で、それをすべてだと思わずに気を付けていれば、予想外のことがあったとしても、少しぐらいは気持ちを落ち着けることができるであろう。
「ええ、戦争を仕掛けてきたのはミラング共和国の側で、ミラング共和国のトップがリース王国の統治している領土を征服すると言ってきたので、逆に征服するということになったようです。防衛だけでも良いですが、そのトップはリース王国に恨みがあるので、それをさせないために仕返すことだと思います。まあ、完全に反対することはできませんが、あまり良い選択だとは言えません。私個人としては―…。」
と、ハミルニアは言う。
ハミルニアの言葉には、どこか、この戦争ほど愚かなものはないと思えてしまうのだ。
軍人なんて職業は、何であるの? ぐらいに思われているのがちょうど良い、と思っている。軍人らしからぬ思考であるが、それは国が平和だという証拠でもある。
軍隊が必要かどうかに関しては、その土地を守る上では重要なのかもしれないが、侵略していくことに関しては、あまり同調することはできない。仕事であるからやっているだけに過ぎないが―…。
それでも、自身に侵略をおこなった責任がないかと問われれば、責任はあるという返事はできるし、そのことによって、自分を不利な状況へと追い込んでしまうことも分かっている。
この世は、正直者にとって辛く、自身の野望のためなら他人を平然と傷つけることができる者にとっては一時的な繁栄をもたらしたりする。そう、自身の野望のためなら他人を平然と傷つけることができる者には幸せな結末を自分もしくは周囲に与えない未来が約束されるだけなのだ。
後世において、そのような人物が過剰に尊敬されるのは、本当の意味では一部しかいない。その一部が過剰に妄信するのであるが―…。
そして、ハミルニアは、今回のミラング共和国が仕掛けた戦争で、仕掛けられた側のリース王国が征服仕返すことに、すべてに同意して賛成することはできない。この世は白黒で決められることなんてほとんどないし、強要して、それだけしか見ないようにさせたとしても、その白黒以外の領域がずっと無視し続けても良いという状況が保証されることはない。あるのは、人が完全ではないし、完璧にもなることができない存在がそこに残るし、教えられるだけだ。それすらも無視することができ、喚くこともできようが―…。
ハミルニアからしてみれば、このような征服をしてくる輩は、何度も何度も自身の権力や命が続く限り継続してくるだろう。そう思うと、権力を奪うために征服することは避けられない可能性もあるが、同時に、ミラング共和国のリース王国への征服を失敗に終わらせることで、ミラング共和国の国内における世論というものを権力者から離反させることもできるだろうし、溝を作って、ミラング共和国の国力を弱らせることもできるだろう。
いろんな可能性があり、どれが大きな効果を発揮させることができるのかは比較になろうが、すべてにおいて、完全に同じ、一致した条件になることがない以上、どれが完全に正しいかという証明は不可能である。だが、それにかこつけて、自分のおこなっていることの全てが正しいと思うのは、かなり危険なことであるし、自分ができなかった面に関して、向き合うことを怠ることになり、侮蔑、偏見などのようなものを自身の中に、物事を考える上で生み出すし、重要な影響力を行使する可能性がある。その危険性は、失敗に導く可能性を高める。
自分は失敗しないと思っていたとしても、人が行動し、完璧でも完全にもなれないから、おのずとして失敗という可能性から完全に逃れることはできない。そのことはしっかりと理解しておかないといけない。
そして、この意見をハミルニアが私個人としたのは、リース王国の中央で政権を握っているラーンドル一派の意見ではないということを、理解しているからだ。
ラーンドル一派にとって、利益を得られる機会で利益を得るような行動をしないのは、あり得ないことであり、人は全員、そのために動くものだと思っているのだ。利益を得ることがどんな場面においても、正しいとは限らないのに―…。損を最初はするかもしれないが、後々、得をすることは歴史の中においても、例はあるのだから―…。
そんなことにラーンドル一派は気づかずに、目先の利益に囚われ続けるのだ。自身で檻の中で生活する輩でしかない。
「そうか。それはそうと、リース王国軍の中央軍とやらは、ファウンデーション領のミグリアドを包囲したが、奇襲か何かにあって、包囲を解き、撤退したという。その間に、リース王国軍の総大将は殺されたとか、どうか。そんな話が戦場近くにいた者が、情報屋に情報として提供したようだ。」
と、ハミルニアは言う。
そのことに、ハミルニアは驚くのだった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(240)~最終章 滅亡戦争(95)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
次回の投稿日は、2024年5月30日頃を予定しています。
2024年5月29日は、いつもの投稿する時間は大丈夫なのですが、メンテなんかが昼のある時間に入っているのを思い出したので、その日の投稿は休みます。疲れが酷いのか、やる気がなかなかでないので、気分転換できれば良いな~と思っています。
では―…。