番外編 ミラング共和国滅亡物語(237)~最終章 滅亡戦争(92)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。
リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に
、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。
リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。
その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。
ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。
その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。
一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。
その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。
一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。
その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。
それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。
その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。
ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。
そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。
一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。その兵たちはアンバイドの実力の前に戦わず降参するのだった。
それが重要な問題となる。
ファルケンシュタイロはファロネンズをクローデル領に派遣し、マーゼルの真意を確かめ、ファロネンズの独断でマーゼルを始末するのだった。
そして、マーゼルが殺されたことを、マーゼルの重臣たちに見せしめ、完全服従を勝ち取る。
一方―…、ファウンデーション領(旧アルデルダ領)では―…、領都のミグリアドが包囲されるのだった。それを打開しようとして―…、シエルマスを投入し、リース王国軍の中央軍のトップを始末するのだった。
その後、クローデル領でも動きがあり、ミラング共和国軍とリース王国軍右軍の対決となるが、アンバイドの活躍により天成獣部隊のトップを始末し、かつ、撤退させることに成功して、クローデル領での勝利を得るのだった。
夕暮れ時。
この場では、リース王国軍の右軍が本拠としており、戦死者の数の確認や、負傷者の治療などがおこなわれている。
そんななか―…。
「裏切り者!!! お前のせいで俺らはこんな目に遭ったんだ!!! 死んで詫びろ!!!」
と、マーゼルの重臣の一人が叫ぶと、マーゼルの重臣らは一緒になって叫び出す。
『死ね!!!』
その言葉を受けて、ナガランドの気持ちが傷つかないということはない。
なぜなら、気持ちは少しだけ動揺する。
今は、心を壊して良い場ではないということを理解しているからこそ、表立って毅然とした態度をとるしかない。
それが、罵声を発している側からは口撃を受けていないということを示す上で―…。
(良く言えるよ、そんなこと。自らが得られている利益を失うことを人々は最も恐れる。だけど、その利益のまま永遠に生きていくことなどできやしないのに―…。)
と、ナガランドは心の中で思う。
彼らに返す言葉はない。
できるはずもない。
動揺がある以上は―…。
そして、同時に、言葉を口で発せば、結果としては、口論になることを避けることができず、かつ、永遠の平行線ということになるのは分かっている。
だからこそ、迂闊に言葉を発することができない。
そう思っているナガランドのところに―…。
「お~、お前は前に会ったことあるなぁ~。確か、俺に依頼して、依頼料が惜しいから、踏み倒そうとかしてたよなぁ~。アーバッド。」
と、アンバイドがやってきて言うのだ。
ちなみに、この話は嘘ではなく、本当の話である。
アーバッドは過去にクローデル領に滞在していたアンバイドに依頼したのだ。アーバッドの一族は美術品などを自らの給料以上に買い込んでしまい、借金をしてしまったのだ。アーバッドは美術品好きであり、贅をこらすことに妥協しなかった。
そのせいであるが、それでも、借金取りからの請求は困ったものだ。この借金取りは、ミラング共和国の中でも有名な闇金であり、貸した金を法外な利子で請求してくることはザラであった。なぜ、そのような場所に借金をしたのか。今までの借金によって、アーバッドは金貸しらの信用を失っていたのだ。そうだと考えると、アーバッドは身の丈にあったということができない人間である。
そして、アーバッドから依頼を受けたアンバイドは、その借金取りを倒して、借金を無効化させ、さらにあくどいことをやっていたので、それをミラング共和国の公安組織に付き出したことがある。
その後、アーバッドから依頼料を受けようとしたが、そんな依頼はしていないと言い、依頼料の支払いを拒否したのだ。アンバイドはそれを許すことができず、アーバッドを締め上げることで、依頼料を無理矢理支払わせたのだ。
そうである以上、アーバッドはアンバイドのことを恨む存在であり、かつ、逆らうことができなくなっているのだ。勝てないと分かっているからだ。
「お……お前は―…………。」
思い出す。
アーバッドはあの時の出来事を思い出す。
―俺に対する依頼料を反故にするとはなぁ~。これらは頼み事じゃない。依頼だ。対価を払え―
その記憶はアーバッドを苦しめるのには十分なものだ。
その苦しさは、アーバッドに反論する気力を奪う。
「お前のことは知ってる。自分の利益を侵されることがあれば、すぐに約束を反故するような姑息な輩だ。それは自分はずっと利益の甘い汁を何もせずに吸い続けたいということだろ。しょうもない奴だ。それなりナガランドの方が人としてマシだ。アーバッド、お前はこれから、代償を支払うんだ。楽をしてきた―…。人々から搾取してきたことに対するなぁ~。」
と、アンバイドは言う。
アンバイドにとって、アーバッドの今までしてきたことはただの搾取であり、そのことにより、周囲に不幸をもたらしてしまった以上、その結果にたいする影響というものを受けないといけない。
そういうことだ。
アーバッドには理解できないことであるが、それも仕方ない。
人はすべてを知ることを結果的にできない生き物であるのだから―…。
何で、俺が、という感情に蝕まれる結果となるだけであろう。
だからこそ―…。
「どいつもこいつも―……、俺を馬鹿にしやがって!!! 俺様のしていることの何が悪い!!! 俺のことを恨むのも筋違いだ!!! 俺のような高貴な家柄に生まれなかったお前らが悪い!!! すぐに裏切ったナガランドが悪い!!! 俺は選ばれた人げ―…。」
と、アーバッドが言いかけたところで、アンバイドによって手とうで気絶させられるのだった。
アーバッドは―…。
その様子を見ていたナガランドは、アーバッドの狂気に呆れるのだったが、同時に、アーバッドとはもう二度と溝が埋められないことを理解させられてしまうのだ。
アーバッドが良く使う言葉である「自分とお前は世界が違う」ということを、アーバッドの使う意味とは違う意味で理解してしまう。
まるで、いるかどうかも分からない宇宙人とでも会話している、そんな感じなのだ。
アンバイドは、
(こいつは何もかも間違えてしまったな。どうして自分がこの地位にあるのか、その責任は何かを履き違えた。その結末がこれだ。これからこいつは、ただ誰かを逆恨みして生きていくのだろうな。この人の社会において、何が今、正しく、間違っているのかを間違え続けながら―…。)
と、心の中で思う。
これはアーバッドが歩むであろう道だ。
それをアンバイドは、見てしまったのだ。
推測の域でしかないし、これがそのままアーバッドに適用されるとは限らない。
そのことを鑑みても、アーバッドはこれからいろんな人物を恨みながら生きる。それはナガランドやファロネンズといった自分を追い落とし、惨めで不憫な人生へとさせられてしまったのだから―…。それを恨まない人間がどこにいるだろうか。
だが、勘違いしてはならない。
自身の行動に恨まれないという要素はどこにあったのだろうか。
自らの行動が人に恨まれないという完全な証拠がどこにあったのだろうか。
アーバッドもそうである。
アーバッドのこれまでの行動が恨まれないという要素がどこにあったのか。
そんなものはなく、これからは自らの行動による責任を取らなければならないのだ。
それに気づけるかどうかが鍵となるし、そこで気持ちを暗くさせたとしても意味はない。明るくなれとも言わないし、あるがままを時には受け入れることが良い場合もある。
そして、そこから自らを変えられるかというのも大事だ。自らのすべてではなく、一部でも十分かもしれない。
この割合に関しては、ケースバイケースによるので、ここで、どのぐらいの割合が大事かを言及しても意味はない。
大事なのは、何を変え、何を変えないかという選択を誤らないようにすることであり、その判断のためにしっかりといろんな人の考えを受け入れられるようにしておくことだ。
それが実際には難しく、どんな地位だろうと、どんな境遇だろうと、どんな年齢の人だろうとも、関係ないぐらいのものであり、できる場合もあれば、できない場合もある。経験していくしかない。
そして、ナガランドは―…、
「ありがとうございます。」
と、アンバイドに向かって言うのだった。
その後、アンバイドは何も返事することなくどこかへと消えるのだった。
この滅亡戦争が終わるまでの間は、リース王国軍の右軍にいたのであるが―…。
場所は変わって、リース王国軍の右軍。
フォルルークは喜んでいた。
「ファルケンシュタイロの軍に勝った!!!」
喜ばずにいられるだろうか。
そう、ヌマディア=ファルケンシュタイロが率いるミラング共和国軍に勝ったのだ。
自身の力だと自惚れるつもりはない。
あくまでも、アンバイドがいたからこそ、このような結果になることができたのだ。
ファルケンシュタイロが、ミラング共和国の英雄であることは周辺諸国にも知れ渡っていることであり、それを否定できる根拠などない。
(クローデル領の領主との対話になるが、それをしっかりとしておかないと、クローデル領の領民から恨まれることになる。)
と、フォルルークは心の中で思うのだった。
自分達がクローデル領への侵入である立場だと十分に理解している。
だからこそ、クローデル領の領主と話をしないといけない。
クローデル領の兵と戦って自軍の兵士の生命を終わらせるという選択を是としてしまえば、それによって都合が良い結果を得られるのは、ミラング共和国軍の方になってしまう。
ミラング共和国軍が敵である以上、彼らの優位になるようなことをする気はない。そう自分達が思い、気づくことができることに対して―…。
そして、フォルルークは自軍の幹部を召集し、今後の方針に関して話し合い、クローデル領の領都へと向けて出発することになった。
一方、オットルー領の領都、時が少し進む。
そこには多くのリース王国軍の左軍が包囲していた。
これは、あくまでも、オットルー領と交渉することによって、自らの用件を反故にすればどうなるのか、もしくは、言うことを聞かせるためのものであり、圧力がある。
そして、その領の屋敷の中。
そこでは、リース王国軍の左軍のトップであり、ハミルニア、ミラング共和国のオットルー領で軍の指揮をしていて、リース王国軍に降伏したイルターシャ、その護衛にランシュとヒルバスがいた。
オットルー領の側は、領主であるオットルー=クローゼルがいる。
ちなみにランシュは、興味がなく、話を聞いていなかったりする。
イルターシャが殺されないようにはしているが―…。
それぐらいの護衛をするぐらいの集中力はしっかりとある。
「包囲とは、あまりこちらの印象が良くないようになってしまうのだが、それで良いのか、リース王国軍の指揮官殿。」
と、クローゼルは言う。
クローゼルも今朝、驚いたのだ。
急に、リース王国軍と思われる軍隊がクローデル領の領都を包囲しているのだから―…。
そうである以上、オットルー領の領兵は、リース王国軍に対する警戒度をマックスにしないといけない。
そして、リース王国軍が何の理由も言わずに、もしくは、何の正当な根拠もなく攻めてきた場合に、自らの統治している領を守るための防衛行動をしないといけない。
それを理解しているからこそ、クローゼルはかなり自らの神経をとがらせていた。
そんななか、リース王国軍の左軍のトップであるハミルニアは城門に自らが赴き、話し合いたいと言い出したのだ。
一応、リース王国軍の左軍から攻撃しようという殺気めいたものを感じなかったので、自らの館へと呼び寄せたのである。その知らせを受けた時は、頭の中にハテナマークを浮かべてしまったし、何かしらの思惑があるのだと疑い、それは今も続いている。
そして、会談ということになっている。
「ええ、ミラング共和国のオットルー領の領主オットルー=クローゼル様のおしゃっている通りです。だが、こちらとしてもリース王国という王国の体裁というものがございますので、このような威嚇めいたことをしてしまいました。申し訳ございません。私たちは、ここを武力で攻めて、略奪をおこないとは思っておりません。こちらの要求を受け入れていただけないでしょうか。」
と、ハミルニアは言う。
オットルー領の領都を囲ってしまったことは申し訳ないと思いながらも、それにはリース王国としての体裁があるのだという言い訳をする。
理由は、オットルー領の領都の中に、ミラング共和国軍の兵士が隠れて何かしようとしていないかという警戒してのものであるし、護衛をともなった上で、話し合いができるようにするためのものであった。圧というのは、時に必要であるのだ。
自らが優位な立場で交渉していく上では―…。
そして、リース王国軍の左軍のトップとしては、オットルー領からの略奪を公式で認可する気はないし、その公式の見解に違反する輩を処罰するつもりでいる。
そこに身分の上下はない。
なぜなら、上の身分の者が公式の見解に違反して、それを処分せずに揉み消せば、オットルー領との関係に溝を作り出すことになり、それが遠因となって、オットルー領がリース王国軍の左軍に反抗してきたら、ミラング共和国軍の都合が良い結果となるし、さらに、征服する以上、お互いに仲良くしておくのが良い。
それは、相手側からの視点も同時で必要になる。相手側からの不満があってはならない。そのことを理解せずに、自分本位ばかりでの征服統治や行動をして、オットルー領側に不快な思いをさせてしまえば、反乱の芽を育てることでしかない。それは周辺諸国に有利な状況を作り出すだけだ。
そのことを理解しているからこそ、その可能性に繋がると気づいていることに対して、しっかりと対処していく。
それに、戦争を望み、戦争することで自らの欲や利益を満たすような輩は結局、自分本位に加えて、他者のことなんてほとんど顧みないような人物でしかないのだ。あくまでも、自分と近くの人々のために……という範囲でしか保護しないし、配慮しないだろう。
「要求とは―…。」
と、クローゼルは言う。
要求が何かを知らなければ、受け入れようもないということである。
そして、ハミルニアは―…。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(238)~最終章 滅亡戦争(93)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
では―…。