番外編 ミラング共和国滅亡物語(235)~最終章 滅亡戦争(90)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。
リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に
、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。
リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。
その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。
ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。
その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。
一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。
その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。
一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。
その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。
それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。
その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。
ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。
そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。
一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。その兵たちはアンバイドの実力の前に戦わず降参するのだった。
それが重要な問題となる。
ファルケンシュタイロはファロネンズをクローデル領に派遣し、マーゼルの真意を確かめ、ファロネンズの独断でマーゼルを始末するのだった。
そして、マーゼルが殺されたことを、マーゼルの重臣たちに見せしめ、完全服従を勝ち取る。
一方―…、ファウンデーション領(旧アルデルダ領)では―…、領都のミグリアドが包囲されるのだった。それを打開しようとして―…、シエルマスを投入し、リース王国軍の中央軍のトップを始末するのだった。
その後、クローデル領でも動きが―…。
ミラング共和国軍の本陣。
クローデル領で守っている方の―…。
そこでは―…。
アンバイドの叫び声が聞こえるのだった。
「!!!」
ファルケンシュタイロは一瞬たじろぐ。
その声の圧というものにあてられて―…。
(軍人である私が恐怖するなど―…。ラウナンやグルゼン以外にはあり得ない。あり得るはずがない―……。)
と、ファルケンシュタイロは自らの状況を理解する。
どうして、何も恐怖がない場所で恐怖を感じるのか。
その理由が思い当たらない。
ファルケンシュタイロが恐怖したのは、ラウナンという存在と最初に対峙した時と、戦闘訓練の時のグルゼンを目にした時だ。
ラウナンと最初に対峙した時、底知れぬ、いつでも簡単に隙を突かれてファルケンシュタイロを殺してしまうことができるぐらいの恐怖があった。
その時の恐怖をファルケンシュタイロは今でも覚えているし、ラウナンには逆らうべきではないということを悟った。
さらに、ラウナンという人間がシエルマスの中で統領というトップの地位にあり、天成獣の宿っている武器を扱っていることから、確実に勝てないと思わされたし、その状態は今も続いている。
一方、グルゼンは、強いかどうかは分からないが、まるで、化け物と対峙している感じになり、常時威圧をかけ、こいつより上になることが何をやってもできないと思ったのと同時に、部下から慕われ、いろんな博識すら身に付けていく姿勢を見て、劣っていることを自覚させられ、グルゼンに嫉妬したのだ。いつか上になってやると無理矢理に思いながら―…。そして、いつか何かしらの理由でミラング共和国軍が追い出すか、始末しようとしていた。戦場で戦死してくれるのであれば、有難いが―…。
結局、ファルケンシュタイロはグルゼンがラウナンによって始末されたことを聞いているが、ラウナンの言い方からかなり怪しいと思っている。だから、グルゼンは生きている可能性があると思っていたりもするが、それを口にする気はない。その証拠がないからだ。
そして、ファルケンシュタイロは、その二人以外の人に恐怖を抱くのだ。
この叫んでいる人物が、誰なのか分かっていないからこそ、分からないからこそ恐怖するのだ。
少し考えれば分かることであろうが、その人物を目にするまでは可能性という領域から出ることはない。目で見ているものもまやかしである可能性もあるから、可能性の域というのは結局、どうやっても出ることはできないのであろうか。
さらに、人はこういう咄嗟の出来事によって、思考というもの停止することは十分にあるのだ。
そうである以上、ファルケンシュタイロの状態を馬鹿にすることはできない。
(………だが………落ち着け。……………こういう場だからこそ、落ち着くことができなければ死んでしまうぞ。………これだけの圧をかけられるのは、天成獣の宿っている武器を扱っている者に限られ、かなりの実力者のはずだ。…………考えられるのは―…。)
と、ファルケンシュタイロは心の中で思う。
その時、ファルケンシュタイロは思い出す。
―ファルケンシュタイロ様。最前線に派遣させたクローデル領の兵士はすぐに、リース王国軍に降伏した模様です―
そして―…。
(アンバイドだ。アンバイドは、リース王国軍の右軍で目撃されている。そうだと考えれば、ここにアンバイドがいて、向かってくるのなら、今の俺の状況に対して、説明がつく。)
と、ファルケンシュタイロは答えに辿り着く。
アンバイドは、この地域で、伝説の傭兵と呼ばれるぐらいに実力がかなりのものであり、天成獣の宿っている武器を扱っているとも言われている。
その情報からの判断も無意識のうちにファルケンシュタイロの頭に過ぎって、納得する。
すべてに説明がつくのだから―…。
そして、考えることは一点だ。
(アンバイドは、こちらの天成獣部隊の十数人がやられている。それも負傷じゃなく、殺されてる。そうだと、俺では敵わない。)
と、ファルケンシュタイロはそのように結論づける。
そう、ファルケンシュタイロの実力では、どのようにひっくり返ってもアンバイドに勝つことはできない。それはかなり可能性の低いことであり、ファルケンシュタイロはラウナンよりも弱いのだから―…。ラウナンが自らよりも強い人物にしないように細心の注意を払っているのだ。
そうである以上、決まっているだろう。
そして、選択肢は一つしかない。
(逃げるしかない。こんなことをしてしまえば、責任は俺に発生してしまうが、今はリース王国軍が征服へと舵をきっていることが分かっている以上、仕方ない。命がなきゃ、野望も達成できない。何で俺がこんな目に遭わないといけないんだよ!!!)
と、ファルケンシュタイロは逃げることを選択する。
そうするしかない。
いくらミラング共和国軍の英雄と言われているとしても、アンバイドは危険であることは分かる。
今の威嚇と、天成獣部隊を十数人もアンバイドによって殺されているのだから―…。
そうである以上、逃げるしかない。
逃げて、相手が自然に自滅するのを待つか、相手の考えが変わるのを待つしかない。
他己に任せるしかないのだ。
それが決まれば、どうしても必要になるのが―…。
(クローデル領の兵士を捨て駒にしている間に、逃げるに限る。)
と、ファルケンシュタイロは心の中で思っている。
そして―…。
「撤退だ!!! この俺を呼ぶ声はアンバイドだ!!! 俺らでは敵わない!!!」
と、ファルケンシュタイロは叫ぶように言う。
その選択肢はすべきではなかった。
「テメーが兵士を捨て駒にすることに罪悪感を感じない軍隊の親玉か。」
それはファルケンシュタイロの生命が終わる前に訪れた絶望か。
そうではないのか。
「ファルケンシュタイロ様!!!」
キーン!!!
剣同士がぶつかる音がなる。
ファルケンシュタイロは、自身が何もできなくなっており、いや、アンバイドの威圧を受けており、動きが普段よりも鈍くなってしまっているのだ。
そんなときに、アンバイドは素早く、ファルケンシュタイロの首を獲るために剣で斬ろうとするが、ファロネンズに防がれて、その一回目の機会を逃す。
「多く斬ったが、久々に少しはマシぐらいの奴がきたか―…。」
と、アンバイドは言う。
アンバイドとしては、ファロネンズに負けるとは一切思っていない。
実力から言っても、アンバイドの方が圧倒的に上であり、よっぽどのことがなければ負けることはない相手だ。
そんな差があることはファロネンズであったとしても理解することはできる。
だけど―…、それ以上にファルケンシュタイロを守ろうとする気持ちが強いようだ。
「ファルケンシュタイロ様を殺そうとした輩。お前ごときに負けるわけにはいかない!!!」
と、ファロネンズは言いながら、アンバイドを後ろに足をつかせ、数歩、退かせる。
(……………やっぱり少々マシなぐらいだな。気持ちで、必要以上に自らの扱える力の量を発揮しているだけに過ぎないか。それに、すでに、俺の武器の三つがすでに、砲撃を加えて、被害はそれなり出ているはずだ。)
と、アンバイドは心の中でそう思う。
アンバイドは剣を持っているだけで、それ以外の三つの武器は周囲にいるだろうミラング共和国軍を攻撃するために向けている。
避けることと、攻撃することをしっかりと命令しながら―…。
そして、アンバイドは、ファロネンズの実力をはっきりと対峙して理解してしまった以上、他のミラング共和国軍が介入しないようにする。
「ファルケンシュタイロ様!!! ここから撤退してください!!! アンバイドは私が倒しますから!!!」
と、ファロネンズは言う。
その言葉は同時に、ファロネンズはアンバイドを倒すことができないということを暗示している。文だけであれば、伝わることはないだろうが、言い方としてはそのような感じなのである。要は、強く口調での言い方ながらも、どこか自らの不安を抱えているような気持ちを押し殺すために―…。
そのことをアンバイドが見破れないはずがない。
実力を理解しているのだから―…。
そして、アンバイドは、ファルケンシュタイロに攻撃しようとするが―…。
「攻撃はさせない!!!」
と、ファロネンズが防御の態勢をとろうとする。
「クッ!!!」
と、アンバイドはファロネンズに集中せずにいられなかった。
ファルケンシュタイロを狙って、ファロネンズを始末する方法を用いることもできたが、ファロネンズの気持ちというものがかなり強いせいか、その選択をとると最悪の結果になるのではないかと思い、すぐに、ファロネンズに集中する。
戦闘における勘というものであろう。
アンバイドは戦闘経験が多いからこそ、そのような勘というものに素直に従うことができるのだ。
それがいろんな自身の経験からくるものであり、後になって直感が正しいということが証明されることがあるのだから―…。
「ファロネンズ、任せるぞ!!!」
と、ファルケンシュタイロはそう言うと、続けて、
「撤退だ!!!」
と、宣言する。
そして、ファロネンズ以外は撤退していくのだった。
その間―…。
キーン!!!
剣どうしがぶつかる音がする。
その音は、目の前に敵を殺そうとしているのだ。
そのような感じさえ感じてしまう。
「簡単に撤退してくれるのならかなり有難い。俺の名は、アンバイドだからなぁ~。」
と、アンバイドは自己紹介する。
これは、自分がどれだけ周囲に知られているのか、その意味をしっかりと理解しているからこそ言えるのだ。そして、その知名度を使って、ミラング共和国軍の側に撤退という示唆が正しいということを示そうとしているのだ。
そして、ミラング共和国軍は撤退を開始していく。
クローデル領の領民は、捨て駒であることに変わりはない。
そして、アンバイドとファロネンズは距離を取る。
(さて、どうやって倒すか。)
と、アンバイドは心の中で考えながらも、余裕の表情をする。
一方のファロネンズは、
(アンバイドだというなら、こいつに勝つのは難しい。我が軍が撤退する時間を稼ぐことに徹して、その隙に何かしらのものがあれば、そこを突く。それまではしのぐ!!!)
と、心の中で思う。
ファロネンズは覚悟が決まっているのだろうか、ミラング共和国軍を逃がす、ファルケンシュタイロが安全な場所にまで逃げ出すまで時間を稼ぐことに終始する。
そう悟られないようにするために、アンバイドへと攻めるのだった。
一歩を踏み出し、すぐにアンバイドのいる場所へと移動していき、アンバイドに攻撃しようとする。
アンバイドはそれに気づいたのか、すぐに―…。
(甘いね。)
アンバイドは心の中で、ファロネンズの動きの遅さを理解し、すぐに対処するのだった。
それに、アンバイドの三つの武器がミラング共和国軍を追いつめている。
さらに、その間に、ファロネンズの弱点を探し出し、すぐに倒そうとする。
だけど―…。
キーン!!!
ファロネンズは、アンバイドからの攻撃を無茶な態勢で防ぐ。
「そんな感じで体を捻らせて俺の攻撃をいつまでも防げるわけじゃないだろうに―…。」
と、アンバイドは言う。
アンバイドはさっさと降参して、お前らの大将の首を出せと言ってやりたい気持ちだ。
だが、そんな言葉が目の前の敵に通じることがないことは十分に分かっている。
アンバイドとしてできることは、素早くファロネンズを始末することだ。
これが戦争である以上、敵を殺さなければ、自分が殺されるかもしれないのだ。
傭兵はそのような職業だし、傭兵同士での戦いの方がまだ融通ってやつがきく。金をせびって、戦闘で負けたように偽装することはいくらでもできるのだから―…。
だけど、それを最近、国が許さなくなっている以上、当然のこととして、戦争における死者が増加する。そして、戦争を望む者達は、自らの欲望を自らは安全な場所で搾取されるべき存在に命を賭けさせるということに、何も罪悪感を抱かない。他者の生命の終わりよりも、自分が達成されるべき、手に入れた欲望を手に入れる方がよっぽど重要なのだと思っているのだ。
結局、人の欲望に底など存在しない奈落である。
「言われなくても―…。」
すぐに、ファロネンズはアンバイドから距離を取り、素早くアンバイドへと攻撃できるような状態にする。
それは、アンバイドを他へと向かわせないようにするためであった。
アンバイドも理解しているのだろう。
(少しだけ、本気で、素早くいくか。)
と、心の中で思うのだった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(236)~最終章 滅亡戦争(91)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
では―…。