番外編 ミラング共和国滅亡物語(227)~最終章 滅亡戦争(82)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。
リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に
、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。
リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。
その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。
ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。
その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。
一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。
その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。
一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。
その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。
それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。
その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。
ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。
そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。
一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。その兵たちはアンバイドの実力の前に戦わず降参するのだった。
それが重要な問題となる。
ファルケンシュタイロはファロネンズをクローデル領に派遣し、マーゼルの真意を確かめ、ファロネンズの独断でマーゼルを始末するのだった。
そして、マーゼルが殺されたことを、マーゼルの重臣たちに見せしめ、完全服従を勝ち取る。
一方―…、ファウンデーション領(旧アルデルダ領)では―…、領都のミグリアドが包囲されるのだった。
数時間後。
時はすでに夜。
ミグリアドからすぐ近く。
ミグリアドの周囲を覆っている城壁だと思わせる物の上に見張り用の塔みたいなものがある。
そこでは、二人のミラング共和国軍兵士が見張っている。
その様子から見て、緊張感のあるものである。
(………あんなにもリース王国軍の兵士がやってきて―…。このファウンデーション領のミグリアドを取り囲んじまった。まあ、こんなふうになってしまったら、いつまで籠城できるのやら。リース王国軍の兵士がここから退くのを待つしかないな。俺にできることは見張るのみ。)
と、心の中で思う。
この人物は、ミラング共和国軍の軍人であり、階級はそこまで高くはないが、将来的にはエリートコースを歩む可能性がある人物だ。家が元々、ミラング共和国の議員を輩出していたりすることもあって、軍人になるためのコネがある。
ファルケンシュタイロにも一度、目の前で会っているが、歓喜のため、ほとんど自身が何を言ったか覚えていない。ファルケンシュタイロからしたら、そこら辺にいる程度の存在でしかない。
ファルケンシュタイロは軍人としてミラング共和国の英雄であるが、この人物のような有名な家であったとしても、その子どもに興味はないし、軍人としての力量が優れていれば、印象には残ったであろうが、そうではない。平凡なのだ。
結局、コネによって軍人になることができた実力が普通の存在なのだ。そこら辺にいる兵士と変わらないぐらいの―…。
そんな中で、この人物はコネであることを気にせず、自分なりにできることをやってきている。軍人面での才能は今のところは発揮されていない。将来どうなるかは分からないので、ここでは才能がないという表現をすべきではないだろう。
人の才能は遺伝がすべてだと言うかもしれないが、人はその遺伝のすべての性質を知っているわけでも、可能性を知っているわけでもない。どういう遺伝子があり、どういう働きをするかは分かっていることの方が多いだろうし、場合によっては完璧だと思えるほどの認識がもたらされているだろう。
だけど、それをどう組み合わせれば良いのか、環境による変化も加えると、すべてを理解していると思うのは危険であろう。環境が何も影響しないというのは有り得ないからであるし、遺伝だけであれば、人という生き物は生き残ることができなかっただろうし、人に連なる過去の生物においても同様の可能性があろう。
結局、何かを知り、何かをする力を手に入れる、可能性を、世界を広げることによって、生き残る可能性と、ここまで繋がりを絶やすことがなかったというべきかもしれない。
さて、物語を戻し、この人物は、勤勉実直、態度も真面目なのだが、コネという面によって、あまりミラング共和国軍の軍人の中で、今のところ話せる仲間はいない。
そんななか―…。
自らの髪が揺れる。
それに違和感を感じる。
(!!!)
と、心の中で、それに気づき、何かを感じるのだった。
(風!!? 風を感じないのに―…。)
と、この兵士は心の中で思う。
だけど、それを言葉にすることはない。
言葉にして、近くにいる同僚に伝えたとしても、「お前は何を言っているのだ、これだからコネは」と言われるのがオチだと予想ができるからだ。
そうである以上、この人物はこの違和感を言う気はなかった。
「は~あ、眠いなぁ~。」
と、緊張感のない声で、同僚が言う。
その同僚は、緊張感を持ってはいるが、長時間持続させることができていないようだ。
いや、集中し続けることで疲れたのか、睡魔に襲われそうになる。
それでも、見張りという仕事で何かしらの異変を見逃す気はない。
この兵士は、
(今は、リース王国軍によってミグリアドが包囲されているというのに―…。緊張感を持たないといつこちらに攻めてくるか分からんというに―…。)
と、心の中で、同僚に対して、呆れるのだった。
その様子を実際に見る気はなかった。
そして―…。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。」
と、ミグリアドを包囲しているリース王国軍の方から悲鳴が聞こえるのだった。
それに気づいて、二人は一気に真剣な眼差しで、リース王国軍が包囲している軍の中を見ようとするのだった。
(何が起きてる!!!)
と、この兵士は心の中で思う。
それは―…。
リース王国軍の陣地。
少し時を戻す。
二、三分前。
リース王国軍の中央軍は、ミグリアドを包囲しながらも、油断することなく、どう攻めるかを話し合い、見張りをおいて、明日にでも攻めようかとしていた。
「何でこんな時に見張りなのかよぉ~。」
と、一人の人物が言う。
その人物は、パキルキウスと自らが名乗っている。
パキルキウスは、ここではあくまでも下っ端の一人にしかすぎず、リース王国軍の中央軍の評価もそこら辺にいる下っ端兵士の一人でしかない。いなくなっても困るような存在ではないとみなされている。
本人は、そう思われていることに対して、不満を感じていた。
自分に対する過剰な自信をもっているがゆえであろう。
自分の本当の実力を知らないというか、冷静に比較しながら判断することができないぐらいに―…。
今回の戦争において、リース王国軍の中央軍のファウンデーション領における進軍の過程での圧倒的な力をミラング共和国軍に示していることにより、有頂天になり、裏の世界でやっているようなことをし忘れているのだ。
だからこそ、気づいていない。
「嫌だよぉ~。」
と、パキルキウスは続ける。
その言葉を聞きながら、パキルキウスの同僚は、彼の言葉を聞きながら呆れるのだった。
(自慢している割には、強靭な精神を持っているわけでもないな。嘘の空威張りの男か。言葉も軽いしな。)
と、心の中で思いながら口にすることはない。
パキルキウスのような存在に対して、一々指摘していたとしても時間の無駄でしかなく、それよりも地道に功績を挙げることしか興味がなかった。
そんななか―…。
その近くでは―…。
(リース王国軍の中央軍の見張りはあの程度の者達か。聞いて呆れる。シエルマスに入ったら、初任務で死んでしまうような輩ばかりだ。)
と、心の中で思う人物がいる。
その人物は、ディキッドである。
彼は、自らの上司であるラウナンによって与えられた指令を忠実にこなそうとして、時を待つ。
この時の長さの間、音もたてることなく静かにしないといけないのは、かなり訓練を積まないとできないことだ。それでも、ディキッドは、南方首席担当の地位に就いている以上、それだけのことができる実力を有している。
その時を待ちながら、会話を聞かないといけないのだ。
「パキルキウスさん、そうは言ったって私らは一般兵に過ぎませんので、上官に逆らうことはできませんって―…。」
と、同僚の兵士は言う。
呆れてはいるが、パキルキウスが威張っている中で人望を得ようとしているのだ、それに一枚ぐらい噛んでおいても損はないと判断している。
この人物は、少しでもリース王国軍の中で出世したいという気持ちがある。一般の兵士であるが、戦功が乏しいので、誰かの手柄を手にしていそうな奴に媚びておく必要もあるのだ。
出世するためには、実力がいくらあったとしても誰かの目に留まらなければ意味はない。特に、偉い人の目に留まるのが絶対なのだ。
人という完璧性も完全性も完全に手に入れることができない人という生き物だからこそ、発生することなのかもしれない。そうである以上、実力があるからといって、恵まれた人生を送れるかというと、そうではない。
実力や能力があり、出世することができたとしても、幸せになるとは限らない。完全に別々の要素で判断するのは危険なものであろうが、完全に同じものだとしてイコールにしてしまうのも危険なものでしかない。それに実力も能力という基準自体も時間の概念のように曖昧でしかない。
結局、人という生き物は、曖昧をさも普遍性があるように仮定して、自らの社会の中での判断基準にしているだけでしかない。それしか方法がないとも言える。完全性を手に入れるという終わりがない以上―…。
「クソ―――――――――――――――――――――――、俺が上に立てば、リース王国軍はもっと強くなるのに―――――――――――――――――――――――――――――!!!」
と、パキルキウスは叫ぶ。
(俺がリース王国軍の上、さらには王になれば、あの国は俺のもんだ。今まで、俺に対して散々な扱いをしてきた奴らに見返すことだってできるし、美女たちを―…。グヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘ。)
と、心の中で妄想を膨らませる。
パキルキウスは、かなり大きな野望を持っており、そのための実力を磨き上げることはしていない。磨き上げてもその野望が叶うとは限らないし、しなくても叶うことはあるだろう。
だけど、その野望に見合う実力や能力、運というもののいろんな要素が上手く絡み合わないと、結局、最悪の未来へと自身を導くだけという結果になるだけであろう。
そのことに気づかない。
いや、野望というものが大きくて、そのことが達成されるもしくはその段階で起こるであろう良くないイベントに対する考えができないのだ。大きなものは自身に素晴らしい快楽を与えるので、そのために、デメリットに気づきにくいのかもしれない。
誇大なことにならなければ良いが―…。
まあ、近くにはシエルマスの南方担当首席がいるので、その野望は実現できない可能性が十分にあるだろうが―…。
「はあ~。」
と、パキルキウスに聞こえないように言う。
この同僚は、
(実力なき者がまだ、そのようなことを言えるのか。少しぐらい自分を客観視しろよ。)
と、心の中で思うが、何かしら言わないといけないと思うのだった。
その時の言葉の選択肢としては、一択しかない。言葉は複数という制限付きの無限にあるだろうが―…。
「大丈夫じゃないですか。裏切り者のファウンデーション領の住民を千人殺したのは、パキルキウスさんなんですから―…。英雄、パキルキウス様。」
と、同僚は言う。
面倒くさい、と心の中で思いながら―…。
それでも、こういう性格の奴は、煽てておくのが一番良い。
なぜなら、煽てておけば、勝手に調子に乗り、失敗することもあれば、とんでもない成功をすることも十分にあり得るからだ。思い込んでいるからこそ、大胆な行動もできるということがその背景にあるのだろう。
そして、煽てる人物のことを良い印象で勝手に評価してくれたりする。
要は、操縦方法を間違えなければ、何とか操ることもできるということだ。
それだけ、パキルキウスは残念な人というよりも、完全に駄目な人であることが分かる。
「ガハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ。」
と、完全に有頂天と化していた。
呆れない気持ちはないわけではないが、そのようなものを表情に出すわけにはいかない。
その会話もディキッドは聞きながら―…。
(あんな馬鹿が出世できるかよ。さっさと始末したいところだが、まだ、動きはないようだな。全体的に―…。)
と、心の中で思いながら、その時まで待つのだった。
どうしようもないアホの会話を聞いてしまったことに、ディキッドは心の中でかなり呆れるのだった。
さっさと始まってくれ~、と思いながら―…。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(228)~最終章 滅亡戦争(83)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正すると思います。
さて、一旦、ファウンデーション領(元アルデルダ領)の話へと入っています。
ここの包囲戦が終わると、クローデル領へと話は戻っていく予定です。
無理せずに執筆していきます。
では―…。