番外編 ミラング共和国滅亡物語(226)~最終章 滅亡戦争(81)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。
リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に
、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。
リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。
その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。
ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。
その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。
一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。
その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。
一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。
その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。
それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。
その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。
ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。
そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。
一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。その兵たちはアンバイドの実力の前に戦わず降参するのだった。
それが重要な問題となる。
ファルケンシュタイロはファロネンズをクローデル領に派遣し、マーゼルの真意を確かめ、ファロネンズの独断でマーゼルを始末するのだった。
そして、マーゼルが殺されたことを、マーゼルの重臣たちに見せしめ、完全服従を勝ち取る。
一方―…、ファウンデーション領(旧アルデルダ領)では―…、領都のミグリアドが包囲されるのだった。
ラウナンの登場に全員が驚く。
その表情を一瞬だけさせるが、すぐに元に戻る。
それは、ラウナンという存在が自分達よりも実力が上であることを嫌というほど知っているからだ。
そうである以上、驚きすぎて、ラウナンから担当首席の実力に足らないと判断されて、命を奪われる未来など望みはしない。
だからこそ、そのような未来にならないために、すぐに、シエルマスとしての仕事モードになるのだった。
「それを言う前に、私の登場に一々驚くのは止めてもらって欲しいが―…。」
と、ラウナンは続ける。
ラウナンとしては、そのような驚き方をするようなことを教えた覚えはない。
シエルマスである以上、どんな場所にいたとしても、相手に隙を突かれないように、そして、相手にこちら側の意図を探られないようにしないといけない。
ラウナンとしては、もう少しぐらい実力を身に付けて欲しいと思うが、これ以上強くなってしまうと、ラウナンだとしても寝首を搔かれることだってある。
そのようなことになってしまえば、ラウナンがシエルマスの統領としての地位だけでなく、命そのものを失いかねない。
シエルマスは組織という体裁ととっている以上、束になってしまえば、ラウナンであったとしても、対応できない場合が存在する。動くこと、ある地点から別の地点に移動させることにおいて、速度や空間を移動することがあるので、どうしても時間というものを消費する。曖昧な時間という概念であるが、消費していることには変わらない。そうである以上、どうしても対応できる限度、動きというものの限度が発生してしまうことにより、限界が存在することになる。最高値というものでもあろう。
ラウナンはそのようなことを無意識的に理解しており、自らの命も、そして、自らが今、手にしている地位であるシエルマスの統領の地位も手放す気はない。一生涯―…。
誰かを自らの掌の上で踊らせ続ける未来を自分は送りたい。
そのことをし続けるために―…。
ラウナンの言葉に対して、各担当首席らは大人しくしながらも、油断していないという、隙もないという表情をするのだった。
(まあ、虐めるのもこれぐらいにしましょうか。)
と、ラウナンは心の中で思う。
ラウナンとしても、自らが直接に動かすことができる戦力を失いたいかと思えば、それはできない。
戦争の中で、自らが直接に動かせる戦力を、自分が気に食わないという理由だけで失ってしまえば、相手側であるリース王国軍に有利な形になってしまうだけだ。
そうであるからこそ、ラウナンはこれからの作戦で必要な彼らに指示を与えることにした。無駄話をここまでにして―…。
「さて、あなた方の指令を言い渡しましょう。」
と、ラウナンが言う。
その言葉で、全員の目がさらに真剣なそれへとなる。
ラウナンの言葉を聞き逃し、作戦を失敗させることはできない。
なので―…。
「今回、リース王国軍の中央軍と言っていいですが―…、彼らは―…。リース王国軍の中央軍がこのミグリアドを包囲してくることは避けられません。というよりか、避ける必要もないですね。今回のリース王国軍の中央軍の指揮官は、我々の工作員によると、ファルアールトというリース王国の元帥です。彼は、リース王国のラーンドル一派の息のかかった指揮官で、戦功はほぼなく、前回の我々の戦争の時は、実質、お飾りに過ぎませんでした。商人の成り上がり者が軍の指揮をしていたぐらいですからねぇ~。まあ、その商人の成り上がりはいませんし、今回の戦争で、ミラング共和国軍を緒戦で苦しめた二人の騎士は、オットルー領の方に向かいましたから―…。アンバイドはファルケンシュタイロが抑えることでしょう。なので、我々は、リース王国軍の中央軍の包囲陣へと各担当首席を長としたシエルマスの部隊を率いて四方向に派遣し、夜襲をかけ、混乱をさせ、包囲網を維持できないようにします。あわよくば、我々はリース王国軍の中央軍の指揮官であるファルアールトという元帥の首をとることにしましょう。元帥の首は私の担当になりましょうが―…。」
と、ラウナンは作戦内容を言う。
ラウナンにとっては、この作戦は上手くいく未来しか見えていない。
上手くいった後の自らのリスクというものが見えているわけではない。
成功が明るい未来をもたらすとは限らないし、その逆も十分にあり得るのだ。
我々は、完全にも完璧にもなれないからこそ、このようなことに出会うことができるのだ。
完全であり、完璧なら、自らのおこないを比較することも必要はないのだし、最初から知っていることだろう。改良も改変も、それすら言葉として存在する必要はないのだから―…。
ラウナンはこの言葉を言いながらも、自らの強さと統率力を誇ろうとしているぐらいだ。油断は一切していない。
シエルマスのトップである以上、寝首を掻かれるようなことはあってはならないのだ。
そして、今回の作戦は詳しいことは言わされていないが、どの時期で実行すれば良いのか分かっている。
リース王国軍の中央軍がミグリアドを包囲したその日の夜に開始すれば良いだということを―…。
その作戦に失敗は許されないということであり、この包囲を崩されたリース王国軍の中央軍は混乱に陥り、包囲網を維持できないような損害を与えられ、その動揺を利用して、ミグリアドにいるミラング共和国軍に攻めさせようとしているのだ。
シエルマスの各担当首席たちは、少し前におこなわれた軍事会議にも影ながら出席しており、何を話していたのかは理解できた。
そうでなければ、シエルマスの中で生き残っていくことはできないからだ。
その中で生き残ってきている猛者だからこそ、ラウナンが何をしようとしているのか理解できるし、ラウナンの強さを嫌というほど理解させられてしまっているのだ。
さらに、この作戦においてあわよくば、ラウナンがリース王国軍の中央軍の元帥であるファルアールトの首を獲ろうとしているのだ。
そうすれば、リース王国軍の中央軍は大将を失い、大混乱に陥るのは避けることができない。
このリース王国を中心とする地域では、戦における戦争の総大将を失ったとしても、別の誰かを大将に臨時にでも擁立し、自軍の形勢を立て直すことはある。
だが、総大将を失ったショックを簡単に立て直せるかと言えば、それは嘘となる。なぜなら、総大将を失ったとして、臨時総大将がそこまで人望のある人物が選ばれるかと言われれば、その可能性はケースバイケースである以上、簡単に立て直せるかは本当となるか嘘となるか、ケースによって異なってくるからである。
そのことを理解した上でも、敵の総大将を討ち取ることは決して、悪手ということにはならない。
そういう意味で、ラウナンの選択は、定石に近いものであった。
それを実行するのがシエルマスである以上、相当の効果を上げる可能性は十分にある。
「では、意見もないようなので、解散ということにしましょう。」
と、ラウナンが言うと、姿を晦ますのだった。
他の各国内担当首席たちも姿を晦ますのだった。
それぞれの持ち場へと戻って行く。
これから、奇跡という名の未来のある地点における起こるだろう現実というものを起こすために―…。
数日後。
ミグリアドは包囲される。
リース王国軍の中央軍によって―…。
そのリース王国の中央軍の陣営では―…。
「ガハハハハハハハハハハハハハハハハハ、楽しいなぁ~、おい!!!」
と、ファルアールトは意気揚々に言う。
それもそうだろう。
ミラング共和国のファウンデーション領の中に入って、ミラング共和国軍の抵抗はあったが、それでも、一回ぐらいでしかなく、その一回で大きな戦果を挙げたのだから―…。
気分が良くならないわけがない。
こんな楽勝で、自分の思いのままに進むがあるのだ。
これまでのストレスがすっきりになるものだ。
さらに、情報によると―…。
「ハミルニアの野郎は、オットルー領でゲリラ作戦に遭って、苦戦しているようだしなぁ~。向こうの方が相当の食わせ者だ。まあ、こっちは関係ないが―…。アルデルダ領の指揮官は顔も姿も分からない人だが、ミラング共和国の中ではかなりの重鎮だとか、どうとか―…。だけど、そいつはエルゲルダに過ぎん。雑魚だ。さっさとミグリアドを陥落させて、ミラング共和国の首都ラルネを包囲してやろうじゃねぇ~か。ガハハハハハハハハハハハハハハハハハ。」
と、ファルアールトは笑い上げる。
ファルアールトにとっては、今、まさに、自分の運の良さがこのような楽勝な戦いを導いているのだから―…。
それと同時に、ファルアールトの側近たちも、笑い声をあげる。
「ガハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ。」
「あ~、ミラング共和国軍の強い奴らは、アンバイドやハミルニアに押し付けるような格好になったが、あいつらは、ファルアールト様を蹴落とし、手柄を奪う輩だ。ならば、それ相応の不運に遭わなければならない。」
ファルアールトを称賛し、味方の中でも、自分達が気に食わない輩の不幸を、喜ぶのだった。
人としてクズだと周囲から言われたとしても、頷ける人は多いことであろう。
だけど、彼らにとっては、クズではなく、正当な気持ちであり、自分達を不幸にしてきたのはミラング共和国軍と同時に、ハミルニアなのだと思っているのだから―…。
気に食わない、という感情がここまで膨れ上がってしまうと、なかなか冷静に自分の気持ちを見直し、修正していくのは難しかったりする。
かなりの労力を要すのは分かっていただけるだろうし、想像することができるだろう。
さて、話を戻し。
彼らは自らの幸運を喜び、気に食わない奴の不幸を嘲笑っているが、塞翁が馬、良い時もあれば悪い時もある。さて、彼らは災い転じて福となすことができるのだろうか。
一時間後。
リース王国軍の陣中。
そこから少し離れた場所。
「俺は、ここまでの間、裏切ったアルデルダ領の奴らを千人、討ち取ってやった!!!」
と、一人の人物が威張り散らかすように言う。
元々は、リースの都市におけるゴロツキであり、上に媚びるようでしか生き残ることができない輩だ。そういう力は、裏の世界で生き残っていくためには必要なことであり、自らの実力を弁えていると言えるだろう。
だが、今回の戦争に志願兵として参加し、運良く生き残り、ファウンデーション領への遠征の方へと組み込まれ、進軍している間に、ファウンデーション領の住民を殺したのだ。
この人物は、この行いを自身の正義だと認識していた。
この人物がいた裏世界の一部の人間の中には、前回のミラング共和国との戦争でリース王国が敗れ、領土を奪われたのは、アルデルダ領(今のファウンデーション領)の住民がリース王国を裏切るような行為をしたからだ。
その具体的行為は、リース王国軍の食糧供給を妨害し、兵士へと供給できずに、食糧不足にさせ、さらに、騎士団を扇動して、ミラング共和国軍に突っ込ませ、最大の死者を出したとか、例を挙げれば、きりがない。
だけど、これはほとんどが眉唾物であり、嘘がかなり混じっている。
このような嘘がどうして発生したのか、リース王国側でも分かってはいないが、利用できるので、嘘だと公式には公表していない。
そうである以上、リース王国内でこのような考えを持っている裏の世界の者達が、時に、今回のリース王国とミラング共和国との戦争で、調子に乗り、活気づき、時に、それを信じる者を獲得していくのである。
この考えは、破滅的なものに過ぎない。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオ、すげぇ――――――――!!!」
「パキルキウスの旦那!!! リース王国の裏世界のキング!!!」
さっきの自らの手柄を自慢している人物は、パキルキウスという名の人物である。本名ではない。本当の名前なんて知る必要はないし、この人物がリース王国の裏世界の中での一番の地位の上の人物ではない。嘘を吐きながら、自慢しているだけに過ぎない。
それだけの功績があれば、ファルアールトあたりにも情報が行き渡り、謁見することも叶ったであろうが、それほどの戦績を挙げていない。
武器を持たない今回における弱者を数人殺して、威張り散らかしているだけに過ぎない。実際は―…。
こういう人物が威張れるほどであり、放置されている以上、リース王国軍の中央軍の秩序は良くないということが理解できるだろう。
そうである以上、類は友を呼ぶのか、その反対の考えの者達が沈黙することによって、暴走がさらに酷くなっていると言えるだろう。
結局、弱者が犠牲になって、強者になりたい人物、強者が好き勝手できるのが戦争であり、戦争は弱者である人々にとっては災厄そのものでしかない。
そのことを理解できない人物が戦争を起こし、多くの者達に被害を与えるのだ。
場合によっては、もう二度と戻らない。
そして、ここに集まっている人物達は、勝っている要因から、思い通りになっている要因から、奪うことができている全能感から、気づきことはない。
これは地獄への入り口であることを―…。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(227)~最終章 滅亡戦争(82)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
次回の投稿日は、2024年4月23日頃を予定しています。
では―…。