番外編 ミラング共和国滅亡物語(225)~最終章 滅亡戦争(80)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。
一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。
その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。
翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。
戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。
その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。
翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。
リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に
、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。
リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。
その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。
ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。
その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。
一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。
その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。
一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。
その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。
それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。
その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。
ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。
そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。
一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。その兵たちはアンバイドの実力の前に戦わず降参するのだった。
それが重要な問題となる。
ファルケンシュタイロはファロネンズをクローデル領に派遣し、マーゼルの真意を確かめ、ファロネンズの独断でマーゼルを始末するのだった。
そして、マーゼルが殺されたことを、マーゼルの重臣たちに見せしめ、完全服従を勝ち取る。
一方―…、ファウンデーション領(旧アルデルダ領)では―…。
「ミラング共和国の兵士の皆様は、ミグリアドの中に潜んでいてください。このファウンデーション領の領都ミグリアドは、この五年と半年の歳月をかけて、城砦を作り上げ、鉄壁の要塞にしたのですから―…。」
ラウナンの言葉を誰もが、そうだなと理解する。
この五年と半年の間、ファウンデーション領の領都であるミグリアドは、城壁を以前によりも頑丈にし、さらに、領主の館の守りの防壁を築き、二重で領の中枢部を守るようにしたのだ。
その城壁強化のために、土地を追われた者もいるし、強制労働につかされた者達もいる。手間賃程度は支払われるが、結局、生活をしていくためには些細な額でしかなかった。
さらに、そこでの労働にはノロマがあり、それはかなり難しいものであり、それを達成できる者はほとんどおらず、それができる者を敢えて素晴らしい存在とみなしてやることによって、そのノルマができない者は無能であることを知らしめたのだ。だけど、その達成できる者は、シエルマスの工作員であり、天成獣の宿っている武器を扱うことができる者であることから、察することができるだろう。
これは、ファウンデーション領の領民に自らの愚かさを理解させるという、ミラング共和国側の優越感のためにおこなわれていることである。
そうである以上、ファウンデーション領の領民は、ミラング共和国に逆らうことはできないが、恨みの感情はかなりあるが、今回のリース王国軍の中央軍の蛮行のせいで、精神は完全に破綻をきたす者達が現れてもおかしくはないが―…。
そして、そのことによってできた城壁は、どんなわけか、それなりに強固なものとなった。ミラング共和国側の見張りの要因があることは指摘することができるだろう。ゆえに、適当に作業をすることが強制労働につかされた者達にはできなかったというのがある。
本当に、負の遺産と言ってもおかしくはない。
ラウナンは、その鉄壁を見ながら、自分達はここから反撃ができるのだと思っていた。
ラウナンの実力と、権力、城壁、後は苦戦するリース王国軍の中央軍を見ながら―…。
「それに城壁だけで防げるとは私自身も思ってはいませんよ。なぜなら、ここに多くのシエルマスがおり、西南北、国内の最強の担当首席たちがいるのです。負けることなんてありえません。リース王国軍の中央軍を切り崩してみせましょう。そうすれば、ミラング共和国の綺麗な逆転勝利をこの目にすることになるでしょう。」
ラウナンは思っていることが、現実になると思っている。
そう思っていなければ、この場で説得することができるとは思えない。
それでも、これが本当の意味で、未来のある地点において現実のものとなるかは、人という生き物の性質において、完全に理解することはできない。
というか、未来を視ることが原則としてできないのだから―…。
ラウナンは、自らの言っていることが未来において達成されることを期待して、自らの頭の中で考えれることを実行に移していこうとする。
ラウナンの自らが動かせる戦力は、シエルマスであり、シエルマスの戦力はラウナン自身の思いとしては完全に把握していると思っているし、そういう確信がある。
その確信が当たる可能性は高いかもしれないだろうが、当たらない可能性を無視することは一切できない。
ラウナンは、自らの戦力であるシエルマスを使い、ミグリアドを包囲するかもしれないリース王国軍の中央軍の包囲を突破すること、切り崩すことができる。
なぜなら、西南北および国内担当の首席たちがこの場で潜みながら、常に、ラウナンに敵対する者がいないのかを探っているのだ。
一人のミラング共和国軍の兵士は、
(シエルマスがどういう組織になっているかは知らんが、数は多くはないだろ。リース王国軍の中央軍を切り崩すことは不可能に近い。だが、ラウナンに反抗することはできない。あいつは、気に入らない者を殺すという噂は、俺らの周辺でも絶えない。それに、あいつのさっきの圧を見れば、意見なんてできやしない。従うしかない。)
と、心の中で思う。
この兵士は、壮年期を数年後に迎えるような人物であるが、それでも、壮健な体を持っており、特に大病を患うこともなく、戦いの中で大きな重傷を負うような怪我もしたことはなかった。
運が良いことはこの説明からでも分かることだろう。
さらに、鍛え上げられた筋肉から、周囲を見た目から威圧することも簡単にできる。
だけど、ラウナンに逆らうことはできない。
なぜなら、ラウナンがシエルマスの一員であり、そのトップの地位に位置しており、ファルケンシュタイロがどんな地位が上であったとしても、逆らうようなことができないのだ。
それを知っているし、ラウナンの雰囲気から、こいつに逆らってはいけないという、勘がはたらいている。
その勘は正しく、この場で生き残っていく上では重要な力となるのは間違いない。
ラウナンにしてみれば、この兵士の考えはしてやったりという言葉で表現できるであろう。
ラウナンは、自らの掌の上で、自分以外の存在は踊っていないといけないのだ。ラウナンという人物にとって都合が良いようにするために―…。
そのラウナンの本心は知らなくても、ラウナンが自分勝手な存在であることは分かる。
「細かいことを言うのであれば―…。」
その後も、ラウナンの細かい指示が伝達されていくが、その話を聞くことに一生懸命になるしかなかった。
その作戦の落ち度が仮に存在していたとしても、それに気づくことはないだろうし、気づいたとしても、その落ち度は他者の行動によってなされたものであり、自分は関係ないという結論にいたるだろう。
そして、ラウナンの話を聞き洩らして失敗したら、その責任を押し付けられることが分かっている以上、ミラング共和国軍の兵士達の中の上級職の側近たちは一生懸命に聞きながら、確認していくのだった。
(なぜ、シエルマスという組織に我が軍が支配されないといけない。)
という不満を思いながら―…。
ラウナンは、そのような自身へと向けられる不満や恨みという感情を理解できないどころか、理解した上で、そいつらの実力が大したことのない存在であると理解しているからこそ、このような傲慢な仕方でも命令することも可能である。
ラウナンに逆らえる人物など、ミラング共和国内にはすでに存在しないのだから―…。
世界が善というもので満ちているのなら、このようなことは起きないだろうし、起こる理由もない。それに善も、加えて、悪も人の概念上においては、主観的なものであり、客観性に乏しいものである。要は、人という存在、個人のフィルターを通して判断されるものであり、そこには今までの他者との関係によって得られた知識および経験、自分の中の感情によってのものである。
だからこそ、人によって善意や悪意の基準が異なることは当たり前のことである。
だが、社会という人同士の中においては、どうしても個々の基準ばかりに頼っていると、混乱した状態になるので、ある程度、共通させておく必要がある。
ただし、ここで見落としてはならないのは、決して人は完全に正しい基準というものを知る方法も、知った知識や経験を完全に正しいと判断できる方法を持ち合わせておらず、時代によって変化することもそのせいで発生するのだ。永遠不変というものは、結局、人が言う言葉ではある地点によって創造され、そのように定義づけされたものに過ぎない。これはしっかりと理解しておいた方が良い。
そして、ラウナンは自身のために使い、自身の欲望のために使われるからこそ、そして、自らの完全性を信じるからこそ、自らがミスをすることを受け入れられなくなるし、その矛盾をなかったことにして肯定する。
だけど、その肯定をおこなったとしても、ラウナンの力や目がおよばない範囲があることを避けることができない以上、ラウナンは自らの危機から回避することはできない。出会ったら、対処するしかない。そして、対処できなければ、最悪の場合、自らの命を終わらせる結果になる。悲惨な、自身が望まない結果として―…。こんなはずではなかった、という言葉をつい言ってしまいそうになったり、思ったりすることになるだろう。
ラウナンが言い終える頃には、多くのミラング共和国軍の兵士は、聞いた内容を再度、確認するのだった。相互で―…。
「説明を終えよう。私の作戦は、シエルマスの統領で、トップである者が考えるものである以上、完璧である。失敗するようなことがあれば、それ即ち、私の完璧の作戦を聞いた者の誰かが私を引っ張った上でミスをしたことになるでしょう。その時は、私の方で、直々に処分を下しましょう。」
と、ラウナンは言う。
その言葉は恐怖でしかなかった。
ラウナンは、この言葉を確実に実行に移してくることだろう。
それを回避するためには、ラウナンの考えた作戦を実行に移し、成功させるしかない。今、彼らの中で考えられる方法は、それしかないのだ。
そして、この会議はお開きとなるのだった。
結局は、ラウナンが一方的に発言するために会議でしかなく、ミラング共和国軍はラウナンの手足として動くだけの存在でしかなくなっていたのだ。
それから一時間ほどの時間が経過した。
場所はさっきの作戦会議をやった部屋から別の部屋。
そこには、シエルマスの西南北、国内の担当首席たちが集まっていた。
国内担当首席フィード=アルクマール、西方担当首席ドグラード=ポッタラ、北方担当首席キールバ=バットーン、南方首席担当ディキッド=デイマールドである。
彼らは、自分達で集まろうとしていたわけではない。
彼らの上司による命令であり、これから重要な指令が言われることを彼らは予想している。
「ラウナン様が今回、私たちに重要な指令を下すと言われていますが―…。どのようなものかは私たちにも知らされていない。」
と、フィードは言う。
そのフィードの言葉は、心の中で言わなければならないことであるが、フィードはふいに言ったわけではない。共有していておく必要があるとフィードが思ったからである。
「だな。」
と、ディキッドは言う。
その言葉には、フィードの言っていることは真実であり、それを肯定するように頷く。
それは、この場にいる誰もが理解していることだからである。
そうこうしているうちに、
「では、皆さん。私からの指令を話すといたしましょう。」
と、声が聞こえる。
そう、ラウナンが現れるのであった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(226)~最終章 滅亡戦争(81)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
では―…。