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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
569/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(223)~最終章 滅亡戦争(78)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。

一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。

その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。


翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。


戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。

その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。


翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。


リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に

、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。


リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。

その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。


ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。

その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。

一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。

その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。

一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。

その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。

それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。

その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。


ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。

そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。


一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。その兵たちはアンバイドの実力の前に戦わず降参するのだった。

それが重要な問題となる。

ファルケンシュタイロはファロネンズをクローデル領に派遣し、マーゼルの真意を確かめ、ファロネンズの独断でマーゼルを始末するのだった。

そして、マーゼルが殺されたことを、マーゼルの重臣たちに見せしめ、完全服従を勝ち取る。

一方―…。

 少し時を戻す。

 場所は、ファウンデーション領。

 そこに向かっている軍団がいる。

 「リース王国を征服しようとしたミラング共和国の輩を蹴散らせ!!!」

と、馬に乗っている一人の人物が威勢よく声を出す。

 それぐらいに大きな声を出さないと、自らが率いる兵たちに声が伝わらないということを知っている。経験則から―…。

 そういう意味で、経験を大切にしているというよりかは、自分の思い通りに動かそうとしているからであろう。

 そのために有効な方法、こう使わないといけないと思っているから、仕方なくしているのかもしれない。本人の気持ちとしては後者の方であろうが、経験的には前者の方に捉えると気持ちとしては楽であろう。

 『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

 リース王国軍の中央軍の兵士は叫ぶ。

 その叫びは、勇ましい。

 なぜなら、彼らは目の前にリース王国を侵略しようとした悪い輩であるミラング共和国軍の兵士がいるのだから、それを成敗しようとしているというのを建前に、ミラング共和国軍との戦いで活躍することができれば、自分がリース王国軍の中で出世できるもしくはその兵士から奪った物を売って、金を稼ごうとしている。

 このリース王国軍、いや、リース王国軍の中央軍に、軍隊としての規律は実質、存在しないような感じになってしまっている。

 それは、何かを他人から、敵から奪うことしか頭にないのだ。

 そして、そのような兵士を指揮するのは大変だが、士気なら十分にある。

 そして、その攻撃を受けようとしているのは、勿論、ミラング共和国軍である。

 「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

 一人の人間は、そのリース王国軍の中央軍の勢いに飲み込まれてしまい、ここから逃げ出そうと考え始めるが、発狂はしていないようだ。

 だけど、それも時間の問題であろう。

 それと同時に、この近くではシエルマスの工作員の一人が観察している。

 (こいつらは、ファウンデーション領から動員した者どもだ。特に、産業で貢献している者たちは除外して若い者、もう先のない年寄どもを集めてきた。年寄がいくらいたとしてもこちらとしては負担でしかない。)

と、シエルマスの工作員の一人は思う。

 そう、この場にいるのは、ファウンデーション領から集められた者達であり、ラウナンおよびシエルマスの組織の者達にとって、重要ではないと判断された者たちだ。

 この中に金持ちはほとんどいない。

 ラウナンに逆らうのではなく、ラウナンに彼ら自身の財産の一部を貢納し、徴兵を免れたのである。金というのは、こういう戦争の場でも自らの生への終わりに繋がるかもしれない場へと一時的に向かうのを遠ざけることができる。その現実が起こっている。

 そこに、国を守るとか、社会を守るとか、そういう者はない。

 自分、そして、自分の家族というのを上位として優先順位を決められたものであり、その金持ち達の多くは普段からミラング共和国のために行動し、愛しているとばかり言うが結局は、自らの生存が一番重要なのである。

 まあ、彼らは、ミラング共和国の強さと恐怖の前に、成す術がないから、ミラング共和国に媚びを売ることで、自らが甘い汁を吸おうとしているだけなのだ。そっちの得であり、逆らって命を捨てる方が無駄であると分かっているからだ。

 だけど、彼らは結局、俗物でしかなく、こういう大事な時も自らの命のために逃げるだけの存在でしかない。それが生き残るためには重要なことであろうが、時に、それを賭けようとしない者達の勇気に敵うこともできない存在であるし、戦場に行くことから逃れることができなかった者達よりも軽蔑されても仕方ない存在である。

 だが、彼らはそのことに気づかないだろうし、生き残れば、同じことを再度繰り返し、自分と自分に擦り寄ってくる者達の利益のために行動するだろう。全員ではないだろうが―…。

 まあ、彼らを蔑んだとしても意味のないことである。

 ここで大事なのは、ミラング共和国の支配による恐怖が渦巻いており、そこから自分を守るために必死であるということだ。残念ながら、他者に構っていられるほどの状態ではないのだ。ここ数年は―…。

 その状態にさせているのは、シエルマスとアマティック教の教団員たちによる監視によってである。

 これ以上は、話が逸れることになるので、一言に纏めると、ここにいるファウンデーション領から徴兵された者達に士気もないし、練度もない。結局はある結末に向かうだけの存在でしかないのだ。

 「狼狽えるな!!! ミラング共和国の民が侵略者どもから国を守るのは当たり前のことだ!!! 勇気を出し、踏み出せ!!! 敵を殺せ!!!」

と、ミラング共和国軍の現場指揮官の一人が言う。

 今日、大きな役目を果たしてくれということをシエルマスの統領であるラウナンから言われて良い気になったが、このような危険な目に遭わないとは思ってもみなかった。だが、そのような嫌な予感はしたが、大役をするための嬉しさによって、その嫌な予感を無視してしまったのだ。

 そういう意味では、この現場指揮官の落ち度はあるが、そのようにさせたラウナンの責任がなくなることはない。それを武力で、どうとでもできるのではあるが―…。

 そういう意味で、力の前で無力であるという証明が、ここで一つなされているのだ。まあ、力がすべての強さの条件になるということはない。なぜなら、力というのも確固たる固定された概念があるとは限らないからだ。揺らぎやすいものであることに間違いはない。

 そして、その現場指揮官の声にも恐怖しながら、足をフタフタと千鳥足になっているのではないかと思えるぐらいにぎこちない動きをしながら、走るようにしてリース王国軍の中央軍へと向かい始める。

 その気持ちを押し殺すためなのか、

 『ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

と、いう声を出す。

 その声は恐怖を殺しながらも、その恐怖は声を緩めば大きな声になるかもしれないぐらいに、完全にそれを殺すことができない。

 まるで、押さえつけることができない以上、言い続けるしかない。

 本当のその正体は、人間が持つべき正しい感情であり、直感なのだ。

 その類を無視して、その恐怖が示す自らへの最悪の未来のある地点において起こるだろう結果とは、真逆の結果になることを僅かながらでも期待しながら、ただ、自らが生き残るために攻撃をする。

 それは退くと攻めるという二つがせめぎ合っているものであり、士気などなく、視野の狭い、悲しい結果をたくさん生むための無意味なものでしかない。第三者から見れば―…。

 リース王国軍の中央軍は、これから手に入る略奪物に夢を馳せながら、ファウンデーション領から集められたミラング共和国軍の兵士を斬りつけていく。始末していく。

 その動きは、軽快なものであり、欲塗れのものでしかなく、どこか嫌な感じのするものであり、第三者がいれば、あまりリース王国軍の中央軍に良い印象を抱くことはできない。

 そんななか、ミラング共和国軍のファウンデーション領から集められた兵士が殺されていく現場を隠れて見ながら、リース王国軍のことを観察する者がいる。

 (良い駒だな。リース王国軍の中でも、最初に戦った中央軍というところか。今回の戦いで敗北後に、ミグリアドへと一気に進撃させるか。包囲されることになろうが、シエルマスの戦力を動員すれば、どうとでもできるな。)

と、この人物は心の中で思う。

 この人物はラウナンである。

 シエルマスの統領であり、ミラング共和国における権力を実質握っている存在だ。

 ラウナンは、今回の戦いは、リース王国軍のどこの軍が攻めてきたのかを調べるためのものであるし、彼らの戦い方を再度観察するためのものだ。ここで勝利する必要はない。

 大事なのは、リース王国軍に隙が発生するように誘導し、その隙をシエルマスの兵力を用いて一気に混乱に陥れさせ、そこからミラング共和国軍の本軍に攻めさせ、リース王国軍の側を崩壊させること方針にするようだ。

 ラウナンという人間にとって、ファウンデーション領の者達がいくら亡くなろうが、彼自身の良心を痛めることはない。なぜなら、ファウンデーション領の人間は、数年前まではリース王国のアルデルダ領の領民であり、完全にミラング共和国民としての心構えを持った者になることなどあり得ないと思っている。

 ミラング共和国は素晴らしい国であり、シエルマスの統領である自身の掌の上で踊ることによって、人々は素晴らしい存在になることができるのだ。そう、ラウナンは自らはトップの地位に就く気はないし、それを自らが選んだ操りやすい人間に担わせて、自分の失敗の責任を擦り付け、自分の思う通りにし続けることを望んでいるのだ。国の支配において―…。

 そうであるからこそ、人の命の大切さなどこれぽっちも思っていない。

 周囲の者からしてみれば、冷徹な人間であり、このような人間をトップもしくは権力を与えてはならないと思うかもしれない。

 だが、ラウナンはミラング共和国で権力を握り、このように好き勝手に振る舞っている。そのようになるまでどうして放置したのだと思われるかもしれないが、裏で、誰にも気づかれずにコソコソされてしまえば、案外気づかない場合もあるし、予想外だと思う人もいるかもしれない。あんなに良い人そうに見えたのに―…。

 人という生き物は完全にも、完璧にもなれない存在である以上、このような第三者から見て、どうして気づかなかったという事態が起こることは十分にある。

 そして、その落ち度を理解して、それはどのように現れるのかを検証し、理解し、対策を立てることによって防げる可能性を上げておく必要がある。それでも、完全に防ぐことができるという保証はできないが―…。

 そして、この戦いは、ラウナンの予想通り、リース王国軍の中央軍が勝利することになり、ラウナンに次の戦いでの勝つ機会を与えるだけであった。

 本当にそうなるのかは、未来のある地点における結果で示されることになるだろう。

 ここで、自らの生命を終えさせられたファウンデーション領で暮らし、徴兵されたミラング共和国の兵はそのことに気づきもせず、只々、彼らにとっては無駄死に他ならなかった。

 そして、全員が殺されたというわけではなく、生き残った者もおり、彼らもリース王国軍の中央軍から酷い仕打ちを受け、自らの命を散らす者、リース王国軍の中央軍への恨みを抱く者が多かった。

 さらに、そのリース王国軍の中央軍の進軍によって支配された村や町は、女性は兵士によって強姦されるか殺されるという結末を迎えたりする者もいたという悲惨な出来事も起こった。

 戦争を望む者達は、その悲惨な出来事に目を向けないどころか、自らの欲望が達成されるための必要な犠牲とみなす。そう、自分が望むものが手に入るのに、なぜ、それをしてはならない、という欺瞞でしかないものを抱きながら―…。

 その被害を受ける者達の気持ちに寄り添うことなどなく―…。

 結局、戦争というものはこういうものだ。

 理解せよ。

 そこに、物語の英雄はいない。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(224)~最終章 滅亡戦争(79)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


では―…。

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