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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
566/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(220)~最終章 滅亡戦争(75)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。

一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。

その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。


翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。


戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。

その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。


翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。


リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に

、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。


リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。

その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。


ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。

その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。

一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。

その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。

一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。

その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。

それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。

その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。


ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。

そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。


一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。その兵たちはアンバイドの実力の前に戦わず降参するのだった。

それが重要な問題となる。

 (……………あっ…………………あっ………………………ああああ…………………マーゼル様が殺されてしまった。)

と、報告してきた者は心の中で思う。

 恐怖でしかない。

 人の首が刎ねられるところなど、この人物のこれまでの人生の中で見たことがない。

 家畜の首を刎ねるところなら、この人物が田舎の出身なので、何度か見たことがあるし、慣れている。

 だが、人の首というのは初めてであるし、慣れているはずもない。慣れることの方がどうかしているかもしれない。

 この人物は、このような場面を見ても、それに快楽という気持ちが湧かないところを見ると、正常であると判断して良いであろう。

 その恐怖は、今度は自らにもおよぶのではないかと思うぐらいに―…。

 いや、現実になろうとしているのだ。

 そういう未来が具体的に想像できてしまうので、この人物は恐怖を自身の力で和らげることができない。

 侵入者は、このマーゼルに報告している人物を見る。

 「分かるよなぁ~。私はミラング共和国軍の天成獣部隊のトップの者だ。お前ぐらいの存在なんぞ、クローデル領の領主のように簡単に始末することができる。」

と、ファロネンズ=ラットリは言う。

 そう、マーゼルの首を刎ねたのは、ファロネンズである。

 ファロネンズの実力ならば、マーゼルに気づかれることなく始末することも可能であったが、マーゼルがミラング共和国を裏切ろうと考えている言質をとる必要があったので、敢えて分かりやすくしたのだ。

 そして、ファロネンズならこの領主の秘密の会談で使うとされるこの部屋にいる、マーゼルへさっきの報告していた人物を始末することも可能だ。

 だが、それをしなかったのには理由がある。

 「お前は今すぐ、マーゼルがリース王国軍へと降伏しようとしていたため、ミラング共和国軍によって始末されたことをクローデル領の領民たちに宣言しろ。それと同時に―…。」

と、ファロネンズは言いながら、マーゼルの首を報告者に向かって投げる。

 僅かばかり、血が残っていたのだろうか、首の下から血がポタポタと投げられている場所で、血痕になるかようにしながら漏れていくのだった。

 その様子は恐怖でしかないし、その首をさっきマーゼルに報告しようとしている者はキャッチする。その感触が直に伝わり、恐怖心がさらに強くなって支配していくのだった。

 (…………………ウッ!!!)

と、この報告者は心の中で思う。

 気持ち悪い。

 早く、侵入者の用件を済ませてしまった方が良い。

 だけど―…。

 そのような思考にあるのだが、それよりも恐怖の大きさが優ってしまっていて、兎に角、体が動かなくなってしまっていたのだ。

 ファロネンズは歩き始める。

 「さっさと歩け!!! クローデル領はすでにミラング共和国の直轄領だ!!!」

と、ファロネンズは言う。

 さらに、続けて、

 「この領はファルケンシュタイロ様の支配下に入り、今から集められるだけの兵を集め、リース王国軍へと戦うものとする。最前線でな。お前らの中に出た裏切り者達の罪を償うためにな。」

と。

 その言葉を聞いたマーゼルの首を持っている者は、恐怖のなかでも理解できてしまった。

 この人物に逆らうことはできない。

 命令通りに動かなければ、自分の命がマーゼルと同じ道を歩むことが分からされてしまっている。

 悲しいかな、力の前に逆らうことはできない。

 強い者に従うしかない。

 この世の道理だと言われたとしても、このマーゼルの首を持っている者は肯定して頷くことができるであろう。

 だが、現実は、力の前に跪かされたとしても、完全というものと永遠というものが人の権力における体制には存在しないので、完全に強い者に媚びろ、従えという道理には完全に正しいことはない。時代は変わるのだから―…。

 さて、そのようなことに気づけるはずもなく、自らの今という状態をどうにかしないといけないので、そこに視野を狭めているし、そうしないと自らの命が終わるかもしれないので、そこに全集中せざるをえなかった。

 だからこそ、その先のことなんて見ることもできない。

 「は……い。」

と、そう返事しながら、緊張感という恐怖のままに従われているようにしか行動できなかった。

 (クローデル領の領主マーゼルをあっさりと始末することができたが、どれだけのクローデル領兵が集まるか…だな。まあ、逆らうならば、見せしめでいくつか始末するのも妥当な判断であろう。私のことをどのように悪く思うと構わない。私は、ミラング共和国軍の英雄の右腕として、ミラング共和国のため、ファルケンシュタイロ様のために行動するのみ。)

と、ファロネンズは心の中で思う。

 ファロネンズとしては、自らが悪だと、恐怖の存在だと周囲から思われることに対して、一切気にしていない。自らにとって必要なのは、ミラング共和国のために行動し、さらに、ファルケンシュタイロのために動けば良いのだから―…。

 ミラング共和国軍が不利な状況であったとしても、戦争を起こしてくれるということは敵を斬るという行為をするのは、自らの生き様を示せる、生きていると感じる場でしかない。

 ならば、それを提供してくれるミラング共和国、いや、ファルケンシュタイロには感謝の気持ちしかない。それに、このままミラング共和国が滅びるのはファロネンズにとって、許されることではない。

 そして、ファルケンシュタイロの悩みを解決するのだ。

 自らの欲望を満たすことをも含めて―…。

 人は、自らが望む欲望のままに動く、存在なのであろう。たとえ、それが自らを犠牲にすることであったとしても―…。

 そして、ファロネンズとマーゼルの首を持っている者は、大きな会議の部屋へと向かうのであった。


 大会議室。

 ここは、クローデル領の重臣たちの多くが会議をし、特別な客と公式に交渉をおこなう部屋である。

 その部屋に、クローデル領の重臣たちは集められており、何が起こるのかと噂し合っていた。

 それは、急に呼び集められたことから、何か重要なことがあるのか。

 「おいおい、噂だと、ナガランドが戦いもせずにリース王国軍の右軍に降伏したとか。」

 「まさか!!! いや、強ちその噂は本当かもしれぬな。マーゼルとナガランドは、対立していたからな。マーゼルは自分の保身しか考えないような奴だから、それをナガランドが諫めていたという。」

 「でも、ナガランドも先々代の領主を理想化しすぎるきらいがあったからな、あの話はウザいにもほどがあるな。」

 「そうそう。」

 と、一部の重臣たちの会話が聞こえる。

 この者達は、マーゼルとナガランドの仲が悪いということ、対立していることを知っている。

 人の口に戸を立てることはできない。

 漏れない情報は、この世にないのだから―…。

 根も葉もない噂という形か、事実だと思われる出来事か、多様なケースがあろう。

 そして、ナガランドに対しては、そこまで高く評価していなかった。

 彼ら、クローデル領の重臣たちにとってマーゼルも自分の保身ばかりだなと感じるが、そこから自分達の利益を得ていることが分かっているので、悪く思う気持ちがあったとしても、今、手にしている利益を手放したいかというとそうではない。

 結局、この重臣たちも、自らの利益を欲している存在であることに間違いない。

 利益を手放して、不安定な未来の可能性に身を投じるよりも、ただ、このまま終わる可能性の低いと自身が思っている利益という快楽に浸っていたい。これ以上の利益などを探すよりも、今の―…。

 これはある意味で正しい選択にもなり得るであろうが、それは自らの思考と危機への察知できる能力というものを低下させるだけでしかない。

 この世に、人が創り出したものに永遠に存在し続けるものなどない。

 権力や何々体制だというものも同じ運命を辿っており、これまでの私たちが知っている過去である歴史において、それを証明し続けているだろうに―…。未来において、自分達は例外だという馬鹿な考えは抱いていないだろうか。それなら、お前は始まりのあるものに終わるがあるということを無視している…いや、それを見ようとしていない愚か者でしかない。

 そして、会話は―…。

 「静まれ、クローデル領の愚か者ども!!!」

と、ファロネンズは激昂しているのではないかと思えるぐらいの迫力で言う。

 その言葉は、この部屋の隅々まで響き渡ることとなり、クローデル領の重臣たちを震え上がらせるには十分だ。威圧だ。

 ファロネンズの言葉によって、この部屋の声は静まりかえるのだった。

 (………何だ、この声は!!!)

 (……………………マーゼルの声じゃない。)

 と、クローデル領の重臣たちは心の中で思いながら、それを探りながらも、まだ、何々なのかを理解することができなかった。

 すでに、この部屋にファロネンズと、マーゼルの首を持っている人が入ってきているのに―…。

 そして、周囲をキョロキョロと見渡しているクローデル領の重臣の一人が、領主がいる場所の近くに、二人の人物がいるのに気づく。

 そして、領主が儀式をおこなう時に座ると思われる椅子の上には―…。

 「ひぃ!!!」

と、驚くのだった。

 そして、その悲鳴に近い声によって、マーゼルが普段座ると思われる椅子に向かって視線を向ける。

 そこには―…。

 「ようやく気付いたようだな。クローデル領の領主マーゼル=クローデルは、ミラング共和国を裏切ろうとしたため、天成獣部隊の隊長ファロネンズ=ラットリがミラング共和国軍のトップ元帥で、ミラング共和国軍の英雄ヌマディア=ファルケンシュタイロ様から与えられた権限に基づき、始末した。これが証拠だ!!!」

と、ファロネンズは叫ぶように言う。

 そのファロネンズの言葉とともに、クローデル領の重臣たちは、マーゼルの首だけになっている物を見る。

 そして、この世にマーゼルがいなくなり、そうすることができたのが、マーゼルの首が座っている椅子のクローデル領の重臣たちから見て右横にいる人物である。

 知っているのだ。

 クローデル領の重臣たちの中にも、ファロネンズの存在を―…。

 ゆえに―…。

 「ファロネンズ=ラットリ……。ミラング共和国軍の英雄の右腕と称される男。一度だけ、何かの式典で見たことがある。本物だ……。」

と、クローデル領の重臣の一人が言う。

 その言い方は、こいつが如何にヤバい存在であるかを知っているふうでもあった。

 実際は、そんなことを知っているわけではないが、式典の雰囲気やそこでの会話から、こいつが自分達では太刀打ちができないと思わせられることが可能な人物であるということを、理解させられてしまったからだ。

 さらに、マーゼルを始末して、ここに一人しかいないのではないかと思わせることができ、かつ、さっきの威圧の一言で理解してしまうのだ。

 無理だ。

 逆らうべきではない。

 そして、他のクローデル領の重臣たちも、マーゼルが殺されたことに気づき、驚きながらも、まだ、完全に受け入れられるような状態ではなかった。あまりにも急に起こってしまったのだから―…。

 「驚くのも無理はないだろうが、マーゼルを私が殺したのは事実だ。こいつは、再度言うが、ミラング共和国を裏切ろうとしたから殺した。つまり…、お前らもミラング共和国に逆らうようなことをすれば、こいつのように私が血祭にあげてあげよう。さあ、お前らはどうする。」

と、ファロネンズは言う。

 その言葉に軽いような雰囲気を思わせる言い方はない。

 ただ、ミラング共和国を裏切るような真似をするようであれば、見つけ次第、すぐにでも、マーゼルのように始末する。さらに、その始末から逃れることはできないという自信すら含ませていた。

 ファロネンズは、剣術でミラング共和国の一番の実力者であり、過去にグルゼンがその一番だと言われていたが、グルゼンは前回のミラング共和国とリース王国との戦争の中で行方を晦まし、かつ、ラウナンの嘘情報のせいで、グルゼンはこの世からいなくなったという言説が罷り通っている。

 ゆえに、ファロネンズは自らが一番の使い手であることを認識しているし、過去のラウナンよりも強くなっているように思っている。天成獣の宿っている武器に選ばれ、その武器が剣だから余計にファロネンズにとって都合が良かった。さらに、生の属性であったことから、自らにとって扱いやすかった。

 そして、この場にいるクローデル領の重臣たちの命も、クローデル領の領民たちの命でさえ、今、ファロネンズ自身、いや、ファルケンシュタイロ自身が握っていることを明確に理解し、自身の言うことを自由に聞かせることができ、逆らえる者は一人もいない。

 天成獣の宿っている武器を扱う者がクローデル領にいないことは、シエルマスの情報により把握済み。

 だから、ここで予想外なことが起きなければ、ファロネンズの思い通りに動かせるのは当然の成り行きだった。

 そして、クローデル領の重臣たちは―…。

番外編 ミラング共和国滅亡物語(221)~最終章 滅亡戦争(76)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次回の投稿は、2024年4月9日頃の予定です。

では―…。

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