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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
564/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(218)~最終章 滅亡戦争(73)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。

一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。

その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。


翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。


戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。

その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。


翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。


リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に

、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。


リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。

その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。


ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。

その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。

一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。

その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。

一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。

その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。

それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。

その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。


ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。

そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。


一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。その兵たちはアンバイドの実力の前に戦わず降参するのだった。

それが重要な問題となる。

 一方、ミラング共和国軍。

 クローデル領における本陣。

 そこでは、フォルルークとクローデル領に派遣された兵士の代表の会談を終えてすぐの頃。

 本陣の中心には、陣幕が一つあり、その陣幕は大将であるファルケンシュタイロを守るかのように四角に覆っている。

 そんななかで、ファルケンシュタイロは部下からの報告を聞くのであった。

 「ファルケンシュタイロ様。最前線に派遣させたクローデル領の兵士はすぐに、リース王国軍に降伏した模様です。」

と、伝令の者が伝える。

 その言葉は、若干であるがオドオドした感じであるが、それでも、しっかりとファルケンシュタイロに伝えなければならないという意志があり、そのためにはっきりと無理矢理、自分の言葉を言わせるのであった。

 その伝令の者の言葉を聞きながら、ファルケンシュタイロは自らのイライラを強めていくのであった。

 感情をコントロールすることも大切であるが、それを完全にすることはできないし、自分という人間の感情を完全に抑え込むこともできない。なぜなら、感情を表に出せないことにより、ストレスとなってしまう場合もあるからだ。

 それでも、ある程度の感情のコントロールは必要であるし、感情ばかりに任せてしまうと、他者との関係で良いものを築いていき、かつ、より良い答えになる可能性を低くしてしまう場合がある。

 人という生き物が、どんなことをしても本当の意味で最適な答えを判断する方法を持ち合わせていない以上、今、自らの頭の中で考えられる最大と思っている方法を実践するしかないのだ。

 その実践をしたとしても、失敗を完全になくすことはできないが―…。

 「クソッ!!!」

と、ファルケンシュタイロは感情を露わにする。

 裏切られた気持ちだ。

 クローデル領の領主であるマーゼルに対する怒りの感情を強くさせる。

 憎しみに近いと言っても良い。

 ファルケンシュタイロは、自身がミラング共和国軍の英雄であることを知っているし、ミラング共和国軍の勝利のために、この五年と半年、それ以上の長い年月でどれだけ貢献をしたのかを理解している。そう思っているだけかもしれないという可能性を考慮しないといけないが、実際、貢献はしていると言っても良い。

 ファルケンシュタイロは軍事に関係している自身が判断したことに対する勉学への好奇心の類は強いが、そうでないと自身が判断したことに対してはどうしても億劫となったり、やる気がでないので、やっていなかったりする。

 すべてが名前という領域で分けられているということが現実に起こっている世界であれば、そのようなことは成り立つであろう。

 だが、世界はそうではない。

 人が人為的に名前を使って、領域を切り分けて、自身と他というものを分かりやすくしているだけに過ぎないのだから―…。

 そうである以上、軍事とは関係ないものなど、この世のどこにも存在しないことになる。ただし、その関連度の度合いが強いものと弱いものという具合の関わり合いがあるということで見ていくことは可能であろう。

 そして、ファルケンシュタイロはこれらの点を見落としているというよりも、気づきすらしていない。勝利や名誉は人から思考力を奪っていくのだろうか。いや、奪われているのは、自分が最悪になる可能性がどこかに存在しているかもしれないというものを見分ける能力であろう。その能力を奪われることによって、霧もしくは靄によって隠されてしまっているその可能性を見えなくなるがごとく、いや、そこに気づきもせずに踏み込んでしまうのだ。

 それを踏み込んで、自分が何を間違ったのかという思いを抱き、自らの可能性を閉ざした思考に陥り、自らの地位も名誉などを失っていくのだ。

 この世界は、人によって認識できることに完全に正しいということが存在しないのだから、予想外だと思えることは起こるし、自分が想像だにしないことの理由で貶められることは避けられないのだから―…。

 そのことは地位や名誉、権力を手に入れた者は理解しておいた方が良い。

 その理解なしに調子にのり、倫理的に、道徳的に社会で劣るとされる行動に出ると、自らの破滅へと足を突っ込むことになるので、気を付けた方が良い。目立ち過ぎないのが良いのであるが―…。

 そして、こういうことを理解している人は、そもそも、その危険性へのリスクを侵したいか、他者によって強引に導かれなければ、まず、そのような行動に出る可能性は低いであろう。絶対と言えないのが残念なことであるが―…。

 さて、ファルケンシュタイロは怒りを露わにしながらも、少し冷静になる。

 (……クローデル領に裏切られるとは―…。マーゼルは俺の頼みを聞きたくない態度をとっていたから、最初からリース王国に降参をする予定だったんだな。許されるべきではない。先にマーゼルを討とうとすれば、その隙を今のリース王国軍なら突いてくるかもしれない。逆に、リース王国軍の右軍との対決に集中していたら、マーゼルの野郎が挟み撃ちにしてくるかもしれない。さて、どうすべきか。)

と、ファルケンシュタイロは心の中で考える。

 ファルケンシュタイロは、今日のクローデル領から派遣された兵士達による降参という出来事に、クローデル領の領主であるマーゼルが関わっているのではないかと疑っている。

 疑わざるを得ない。

 なぜなら、クローデル領の領主がそういう指示を出さなければ、リース王国軍の右軍に降参するわけがない。

 ミラング共和国は、この五年と半年の間に、ファブラなどの小国を支配し、前回のリース王国との戦争では、ファウンデーション領を手に入れることに成功しているのだから―…。そうである以上、ミラング共和国を裏切るようなことが得策ではないということが分かるだろうに―…。

 ファルケンシュタイロはそのような思考をするかもしれないが、現実というものは、自分が思っている以上、状況というものを正確に見極めている場合も十分にあるのだ。

 そして、実際は、マーゼルとクローデル領から派遣された兵士との間に溝があり、そのクローデル領から派遣された兵士の代表が自らの意思で降参したのだ。

 そうだとすると、マーゼルにとっては、そんな馬鹿なという予想外の出来事でしかない。

 ファルケンシュタイロは、そのようなことに気づいていない。

 ちゃんとクローデル領の事情を調べ、そのことを調べ上げることができれば、このような思考になることはないだろう。

 人は完璧にも完全にもなれないし、すべてを完全に知ることができない以上、どこかしらに調べ漏れが発生することは避けらない。そうである以上、見落としがあってもおかしくはない。

 ファルケンシュタイロは、ここで重要なことを理解している。

 ここで、ミラング共和国軍は懲罰としてクローデル領の領主のいる場所へと攻めてしまえば、その隙をリース王国軍の右軍が仕掛けてくるかもしれない。

 逆に、クローデル領に懲罰を与えなければ、返って、他の領に対するミラング共和国への権威が低下していくことになったりもするし、そのようなことになれば、ミラング共和国の権勢は終わりを迎える可能性だったり、不安定なことになったりする。

 さらに、そのような罰を与えないことで、リース王国軍の右軍と対峙し続けた場合、リース王国軍側へと降ったクローデル領が背後から攻めてくるかもしれない。

 そのような考えを抱いているファルケンシュタイロは、どっちの行動をとるにしても自らにとって都合の良い結果とならないことは確かである。

 だが、第三の方法が思い浮かぶわけでも、第四の方法も思い浮かべることもできない。

 思考に時間を消費するという当然のことが起こっているが、その限られた時間の中で、ミラング共和国軍のクローデル領にいる兵士にとって有利となる解決策に辿り着いていないようだ。

 仮に辿り着いていたとしても、それが本当に正しいかは、実際に想定した通りの結果もしくは想定していなくても最終的に自らにとって望ましい結果が達成されたかによる。

 そういう意味では、ファルケンシュタイロは分岐点にいる可能性があることがわかるだろう。

 当の本人は、そのような感じを抱くことはできていないが、危機感というものは確実にある。

 (……クソッ!!!)

と、ファルケンシュタイロは悪態を吐いていた。

 そこに―…。

 「ファルケンシュタイロ様。」

と、一人の兵士がファルケンシュタイロに声をかける。

 その一人の兵士のいると思われる方向へとファルケンシュタイロは、視線を向ける。

 そこには―…。

 「ファロネンズ。」

 そう、ファロネンズ=ラットリがいた。

 彼はこの五年と半年の間に、ミラング共和国軍の天成獣部隊の部隊長というトップになっており、仕事ぶりは真面目で、ファルケンシュタイロの右腕とまで周囲から言われるようになった。それぐらいファルケンシュタイロからの信頼が厚く、ファルケンシュタイロの望んだ結果を実現させることに成功させている。

 そして、その信頼を実際にファルケンシュタイロから持たれるまでになっているので―…。

 「ファルケンシュタイロ様。お話は聞かせていただきました。今回は、かなり難しい状態になっているのが分かります。クローデル領への懲罰に関しては、私が一人で始末をつけようと思っています。そういたしましょうか?」

と、ファロネンズは言う。

 ファロネンズは、今のファルケンシュタイロの状況を理解した上で、このような発言をする。

 ファロネンズとしては、右腕として、ファルケンシュタイロの役に立ちたいという気持ちで占められていた。剣術が上手いし、暗殺もシエルマスクラスではないが、天成獣での戦いではシエルマスの西方担当首席クラスの実力を有している。

 そうである以上、天成獣の「て」の字すら知らないであろうクローデル領の兵や領主やらに負けるはずがない。それに任務で失敗することなど有り得はしないのだから―…。

 ファルケンシュタイロは考える。

 (ファロネンズだけを派遣すれば、クローデル領の領主サイドを混乱に陥れることができる。だが、ファロネンズがいなくなった場合のここでの戦力という問題が出てくる。リース王国軍の右軍にはアンバイドの姿があると、報告が上がっている。……………クソッ!!! アンバイドの奴はリース王国軍の中央軍の方に行ってくれれば良かったものを―…。……だが、それをどうにもすることはできん。なら―…、リスク覚悟でいくか。)

と。

 ファルケンシュタイロは自らの今後のこのミラング共和国軍の作戦の方針を決めるのだった。

 いつまでも悩んでいても事態が良い方向に向かうどころか悪化していく予感がしたので、作戦や方針を決めて、最悪になった場合はその時、考えれば良いのではないかという気持ちになり、ファロネンズの意見を採用する方針にしたのだ。

 「ファロネンズ。お前には、クローデル領の領主およびその周囲の家臣の始末をしてくることと、クローデル領のリース王国軍に降伏していない兵を強制召集するように―…。」

と、ファルケンシュタイロが言う。

 身内の失態は、身内によって償ってもらおうとしているのだ。

 ファルケンシュタイロにとっては、当たり前のことだとしか思っていない。

 身内であるクローデル領の派遣した兵士が、戦うことなく、リース王国軍の右軍に降伏したのだ。

 そんなことはファルケンシュタイロからしてみれば、許されることではない。

 ならば、ファルケンシュタイロを不快にさせ、ミラング共和国軍をピンチへと追いやった代償をクローデル領の人間に負ってもらうだけだ。

 そのことに、クローデル領の者達は気づきもしなかった。

 自らには一切の責任はないと思っているだけなのだから―…。

 ファロネンズは、

 「分かりました。」

と、言うと、すぐに任務を開始するために、クローデル領の首都へとすぐに向かうのであった。

 その光景を見ていたファルケンシュタイロの部下は、

 (()え――――――。)

と、心の中で思うのだった。

 ファロネンズの移動速度が目で追うことができないが、移動しているということを理解しているので、このようなことを心の中で言うことができるのだった。

 それだけの実力をファロネンズは有していることの一端を見ることができたという感じだ。

 これが、クローデル領から派遣された兵士がリース王国軍の右軍に降伏した日の夕方になる前の出来事であった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(219)~最終章 滅亡戦争(74)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


では―…。

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