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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
563/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(217)~最終章 滅亡戦争(72)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との間に、ミラング共和国の総統となったエルゲルダの宣戦布告によって戦争が始まる。その結果、リース王国軍はミラング共和国軍と対峙することになる。その戦いの中で、リース王国軍の中の左軍でランシュとヒルバスは活躍し始めるが、中央軍の指揮官でリース王国軍の大将であるファルアールトは左軍の指揮官であるハミルニアを憎むのであった。

一方で、ミラング共和国軍では、リース王国軍の左軍を混乱させるための作戦も考え、かつ、リース王国軍を倒すための作戦会議がおこなわれるのであった。それを主導するのは総統のエルゲルダではなく、ミラング共和国の諜報および謀略組織シエルマスのトップの統領であるラウナンであった。

その中で、ラウナンやファルケンシュタイロは、一人の女性将校の言うゲリラ作戦を拒否して、リース王国軍と正面から戦うことを選択する。


翌日、ランシュとヒルバスは、ハミルニアの命令により、リース王国軍の左軍とは近くから別行動をとる。そこに、ミラング共和国軍のシエルマスが登場し、ヒルバスだけで始末するのだった。


戦いは決着を見ることがなく今日も夕方には終わるのであった。

その後、リース王国軍の会議は、ファルアールトの心の歪みによって、ハミルニアが罵倒されることになり、ハミルニアはファルアールトの心の歪みを満たすために、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣を陥落させるまで、ミラング共和国軍と戦わされることになってしまうのだった。リース王国軍の左軍はランシュとヒルバスがハミルニアと話し合うのだった。


翌日、リース王国軍とミラング共和国軍は戦いとなるが、左軍ではランシュに向かって、アウルが襲って来るのだった。すでに、アウルは何者かによって殺されて、操られていたのだ。その正体はイマニガであり、イマニガは「不死体の生」という技を発動させるが、イマニガの武器に宿っている天成獣に自身の意識を乗っ取られるのだった。イマニガという人間が消え去られた上で―…。


リース王国軍の左軍がそのような状態にあるなか、一方で、中央軍と右軍でも動きがあった。特に

、右軍の方はアンバイドの活躍により、オーロルとフィスガーを撃破、中央軍はミラング共和国軍の本陣へと―…。


リース王国軍の左軍の方は、ランシュとイマニガの体を乗っ取ったガルゲイルの対決は、ランシュが天成獣の宿っている武器である鼻ピアスを破壊して、倒すことに成功するのだった。

その後、リース王国軍の中央軍がミラング共和国の本陣へと来たので、ラウナンは撤退を宣言するのだった。イマニガを使っての作戦が失敗したことにより。エルゲルダを殺されるわけにはいかずに―…。


ミラング共和国軍は、旧アルデルダ領の首都ミグリアドで作戦会議を開き、今後の作戦を方針を決めていく。

その会議の途中に乱入したファットはどこかへと連れ去られ、国内担当首席によって始末され、金庫室に西方担当首席と国内担当首席が向かい、その中の光景を見るのであった。

一方で、ミラング共和国軍の作戦は、軍団をオットルー領、ファウンデーション領、クローデル領の守りに三つを分けるのであった。その指揮官を誰にするかを決める。

その結果、ファウンデーション領はラウナン、クローデル領はファルケンシュタイロ、オットルー領はイルターシャに決まるのであった。

一方で、リーンウルネはオットルー領へと向かっていた。

その間に、リース王国軍側でも動きがあり、旧アルデルダ領を中央軍が、クローデル領を右軍が、オットルー領を左軍がそれぞれ進軍することになった。

それは、ハミルニアにとっては、望まない結果であった。

その間、リーンウルネはオットルー領を訪れ、オットルー領の領主と会談し、リーンウルネの要求を領主に承認させるのだった。


ハミルニア率いるリース王国軍左軍は、オットルー領へと侵攻していくが、ミラング共和国軍はゲリラ戦を展開し、リース王国軍左軍は疲弊していくのであった。

そんななか、イルターシャの居場所を見つけ、降伏させることにランシュは成功する。


一方、クローデル領に進軍するリース王国軍の右軍は、ファルケンシュタイロが率いるクローデル領にいるミラング共和国軍と対峙するのであるが、その最前線にいたのは、クローデル領から徴兵された兵士達だった。その兵たちはアンバイドの実力の前に戦わず降参するのだった。

 リース王国軍の右軍。

 その本拠地には、今、クローデル領から派遣された兵士のトップがいる。

 「降参することで良いな、お前たちの軍は―…。」

と、フォルルークが尋ねる。

 フォルルークは、リース王国軍の右軍の大将であり、アンバイドに頼り切りの人物である。

 だが、自分よりもアンバイドに任せる方が右軍は上手くいくと判断しているからであり、アンバイドを信頼している。

 それに、報酬はしっかりと払うつもりであるし、アンバイドの望みも叶えられる範囲で叶えるようにする。

 リース王国の中央で権力を掌握しているラーンドル一派との間での話し合いが必要になるが、その話し合いでは絶対にアンバイドに報酬を多く渡し、叶えられる望みは叶えるようにすべきだと言う所存である。

 それぐらい、アンバイドという人物の右軍における功績は高く、その人物をタダ働きをさせたり、低い報酬しか渡さないようなことはしたくないし、フォルルークのプライドもある。

 フォルルークとしては、ここでちゃんとした報酬を渡すことができれば、今後もアンバイドとの伝手を繋げておくことができるという打算もあるし、純粋にそのように思っている節もある。

 人の気持ちを簡単な一言で表現することは難しく、原則から離れた例外を見逃すようにしないと簡単にはできない。

 そして、フォルルークは、今、目の前にいるクローデル領から派遣された兵士のトップとの会談となっていた。クローデル領全体の降伏か、それとも、その部隊だけでの降伏なのか。その判断を下さないといけないのだ。

 「はい。アンバイドの実力を見れば、我々が勝てる道理などありませんから―…。」

と、クローデル領から派遣された兵士のトップは言う。

 アンバイドの実力を目の前で見たからこそ、その印象はしっかりと残っており、降伏するしか生き残る術がないということを理解してしまうのだ。

 シエルマスに対する恐怖があるが、それよりも目で見たアンバイドの実力の印象の方が強いのだ。視覚で見た映像は、強い印象を人に与えるからだ。

 「そうか、アンバイドの実力を見て…か。お主は、普通に自分の状況を理解する能力があることは分かった。それで、聞きたいのだが、お前らの軍は降参とみなすが、クローデル領全体での降参か。」

と、フォルルークはさらに尋ねる。

 フォルルークは判断を下さないといけない。

 以上で述べたように、フォルルークは、この降参がクローデル領全体なのか、今の部隊だけなのか、ということである。

 クローデル領から派遣された兵士は、心の中で考える。

 (………クローデル領全体であることは嘘だな。私の部隊だけだ。いや、正確に言えば、クローデル領から派遣された兵士全体の降参というべきだろう。問題は、クローデル領の領主(マーゼル)が何を考えているかであろう。マーゼル(あいつ)は、たぶんだが、ここでの兵を多く派遣したのは、ミラング共和国軍の英雄と呼ばれるヌマディア=ファルケンシュタイロの脅迫があったからだろう。自身の保身のために―…。家族の命を守れないと考えて―…。だが、そのことによって、ここに派遣された兵士達にも家族や大切な人がいる。昔、先々代の領主が言っていたことはこうだ。


 ―クローデル領が不利になるのなら、領主の家族を逃がし、領主自らの命を持って身一つで立ち向かえ。その気概の無い者は、領主とみなすな。そいつのために、命を捨てるべきではない―


 そんなことを言っていたな。)

と。

 この兵士にとって、先々代のクローデル領の領主は、立派な方であり、ミラング共和国のためではなく、クローデル領のために動いた人間である。

 それは、クローデル領に住んでいる人々のためであった。

 そして、自らがピンチの時は、何故か味方が多く、生き残ることができた。

 それは、かつて、クローデル領の中で助けた者達であり、自らの領の住んでいる人々の生活を第一に考えていたし、それをできる範囲で実践していたからだ。行動力がない者を馬鹿にはしなかったが、言うだけの人間は嫌っていた。

 だけど、言うことしかできないほどの実力しかない者を、見下すことはなかった。

 その判断基準がしっかりとしていたのであり、それは先々代自らの経験というものがベースとなっていたのであろう。

 そして、この兵士は先々代のクローデル領の領主を自らの範としている。

 そのため―…。

 (マーゼルのような輩をクローデル領の領主として、庇ったとしてもクローデル領の未来のためにはならないだろう。それに、マーゼルを守る義理もない。マーゼル(やつ)が自身の保身を望むのであれば、私も自身の保身を大切にしよう。)

と、この兵士は心の中で思う。

 このクローデル領から派遣されたこの兵士に、領主であるマーゼルを守る気持ちはなくなってしまっていた。

 マーゼルは自らの命と家族の命を守るためだけに、自らの属する兵士を犠牲にしようとしているのだから、領主命令によって―…。

 それに、自らが先頭に立とうともしない以上、マーゼルに義理立てる必要はない。

 要は、この兵士にマーゼルへの忠誠心はない。

 だからこそ、このようにすぐに降参することもできる。

 自らの命を守らないといけないし、そうしないと、他人の命を守ることができないということを分かっているからだ。それと同時に、自分の命だけ助かれば良いという自分勝手な考えではないことも必要である。後者の言葉を肯定してしまえば、個人的なものとなってしまったりするし、さらに、自分の利益を他者の利益を奪ってまでもして、最大化して、最後は自らを苦しめるという結果になるからだ。

 他者を苦しめるものたちに、彼らにとっての永遠の幸福があるという未来は存在しないのだから―…。この世での永遠の安全を手に入れたければ、自らが生きることを否定しないといけなくなる。そんなこと、望みはしないだろう。どんな人も―…。

 だからこそ、他者との関係をしっかりと考慮しながら、自らの利益を手に入れないといけないのだ。他者との関係、他者の利益をも考えながら―…。それが妄想の類になってはならないのであるが、往々にして、人は完全な把握をすることができないため、そのようなことに無意識のうちに陥ることがあるので気をつけないといけない。

 自らが正しいと思い過ぎない方が良い。時に、自らのことを疑うことは大切なことになり、自らの考えのストッパーの役割を果たしてくれることであろう。

 「我々、クローデル領から今回の戦争に派遣された兵士達とその家族のみの降参です。フォルルークさん。」

と、この兵士は言う。

 クローデル領の人々への恨みはないだろうが、ここでクローデル領と全体を言ってしまえば、マーゼルをも含めてしまうことになると、この時は感じたからだ。

 これを合理的で、最適な解でないと言う者はいくらでもいよう。

 ここで、最も良い解答とされるのは、マーゼルやその取り巻きを除くクローデル領の人々である。

 だけど、人が思考するのに時間を消費して、ある物事に対して考える時間にはじめと終わりがある以上、どうしてもその思考の結果に対しては、限界というものが存在してしまうし、その時間内で纏められた考えの中で、自らの経験や価値観などによって、自らが最高だと思われる解答をすることしかできない。悲しいことに―…。

 そこに、本当の意味で合理的だと、最適だと思われると判断しても構わない答えなどない。そもそも、それを証明する方法を人は持ち合わせていない。そういうことである。

 「本当にそれで良いのだな。お前にはクローデル領の民に対する愛というものはないのか。」

と、フォルルークは尋ねる。

 フォルルークは、別に、クローデル領に住んでいる人達を傷つけようとは考えていない。

 フォルルークも分かっている。

 リース王国がミラング共和国を征服し、統治をする以上、クローデル領の人々を踏みにじるようなことをしてしまえば、反乱が起こることとなり、双方ともに大きな溝を作り出すことになり、決して、リース王国の繁栄のためには良い結果にはならないことを想像することができる。

 どんな場合でも、一介の将が冷静さを失い、自分本位だけになってしまえば、ろくな結果にならないことは分かっている。征服することよりも、征服を維持する方が大変であり、従順になってくれる可能性など少ないのであり、従順になってしまうということはその場における本当の意味での意見を吸い上げることができなくなってしまうということである。そして、そういう従順の場合の方ほど恨まれると恐ろしいことになる可能性が高い。

 結局、自分の思い通りに完全に動くことなんて一度もないし、そうなったとしても、結果は決して自分の思い通りになるとは限らない。

 フォルルークは、今、目の前にいるクローデル領から派遣された兵の代表との会談の中で、彼にはクローデル領の領民に対する愛はないのだろうか。その疑問は感じられてしまうのだ。

 愛があるから何だとは思ってしまうであろうが、何かクローデル領のことでも恨んでいるのではないかということを察してしまい、その理由を聞こうとしているのだ。

 「領民に対する愛がないわけではありません。ただし、正直に言うのであれば、クローデル領の領主とその取り巻きにはこのような場に派遣された恨みはありますが―…。」

と、この兵士は言う。

 嘘を吐いているわけではないことは、フォルルークにも分かった。

 この兵士の今の言葉の後半の方が、まるで、真剣な感じの強い言葉に感じたからだ。

 印象というかそういうものであるが―…。

 (クローデル領の領主を恨んでいるというわけか。……一体、どういう政治を―…。いや、何かしら行動をすれば、称賛も得られるし、恨みもかわれるというにもなるのか。さて、クローデル領を征服するには、アンバイドの圧倒的な力と同時に、クローデル領の領主の無能さを証明しないといけないのか。大変だ。)

と、フォルルークは心の中で思う。

 クローデル領を征服することを物理的になすことはアンバイドの力があれば可能である。アンバイドの実力は、ミラング共和国に劣っているどころか、圧倒的に強いと思われるぐらいの差というのがあるのだから―…。

 だが、ここで重要になってくるのは、クローデル領のリース王国軍の征服が領内にいる人々に受け入れられるかという問題である。

 これほどに難しいものはない。

 自分達が良いと思っている支配をしたからといって、良い結果になることはない。独りよがり、いや、自分の思考がすべてにおいて正しいと思い、他者の思考と利益を無視して行動し、他者の利益にマイナスをもたらすことである。

 他者の利益を判断するのは、他者であり、自分ではないということだ。この原則を忘れてはならない。

 そして、他者から受け入れられる言葉を完全に真に受けてもならない。自分という存在にとって都合が良いように言わないといけないと他者が思っているかもしれないからである。そのことを見極め、自らにとって都合が良いことの行動をするよりも、他者の利益に配慮しながら上手く行動し、他者の気持ちをしっかりと把握することである。そうしなければ、結局、その溝によって苦しめられるのは自分であることに間違いないのだから―…。

 行動するというのは簡単にできることであるが、その反応というものから考えると、簡単なものではないということだ。それを理解しないといけない。

 フォルルークは、そのような難しさに直面している。

 そのことを理解していなくても、難しさというものに関してはしっかりと理解している。

 だからこそ、慎重になり、考えるのだ。

 自らが正しいかどうかを疑い、悩みながら―…。

 「わかった。なるべく私としてもクローデル領の領民に危害を加えないように約束しよう。それに、そのようなことをする兵士を発見すれば、その兵士は自らにとって苦しい最後を遂げることになる。なぜなら、軍律を律さなければ、軍隊は秩序なきものとなり、不幸の象徴になってしまいますからな。」

と、フォルルークは言う。

 フォルルークの心情の中には、軍律が守られている状態が、軍隊の中で良好なものであるという考えがある。

 これは、軍律が守られなければ、軍隊というのは無秩序になり、余計な災いをもたらすことがあると、過去の戦史を読んで理解させられているし、前回のリース王国とミラング共和国との戦争で大隊の人間であったが、そのことにより、リース王国の騎士団が酷い痛手を被ったことを聞いているし、大隊の人間も巻き込まれたので分かっている。フォルルークが気づかない間にそのようになっていたのだから―…。

 今度こそという気持ちがフォルルークにはある。

 「そうですね。」

と、クローデル領から派遣されている兵士が頷く。

 そこまで深くは考えずに―…。

 その間に、フォルルークは、このクローデル領から派遣された兵士との話し合いを終えたと判断し―…。

 「これであなたがたの要望を聞くことができました。しばらくの間、監視の兵士を派遣することになりますし、前線に出てもらいますが、捨て駒にする気はありませんから―…。」

と、フォルルークは言う。

 フォルルークは兵士を捨て駒だという考えをする気はない。

 兵士達の働きがなければ、いくら自分の指揮が優れていたとしても、良い結果になることはない。

 さらに、自分は指揮能力に関しては、凡でしかなく、優れたものではないという認識をしているからこそ、優れた人材に頼るしかない。周りを頼るしかできない。

 そのことを理解しているフォルルークは、これ以上、クローデル領から派遣され、リース王国に降伏した兵士の代表と話す必要はないと判断し、会談をお開きにするのだった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(218)~最終章 滅亡戦争(73)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


では―…。

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